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■舞台は夢の世界編
【13】
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テントが揺れるほどのエネルギーが放出され、招集された冒険者たち、そして世界守備隊たちは一斉に元凶に顔を向ける。
「──ふぇあ!? な、なにごと!?」
みなの視線が集まるなか、ティアは自身からあふれ出したエネルギーに自分でびっくりしていた。
しかし、それは一瞬の出来事で、まるでみな同時に幻覚でも見ていたかのように、テントの揺れは嘘のようにぱたりとおさまってしまう。
「おい、お前どういうつもりだ!」
一瞬とはいえ許されることはなく、テントの破壊行動ともとらえられる今の出来事に、世界守備隊の何人かが怒りをあらわにしてティアに詰め寄ってくる。
「なんだ、やる気かこの野郎」
事態をよくわかっていないが、ゼンスは青い光に身を包んでティアを守ろうと戦闘態勢をとる。
「い、今のはなに……まさか私のなかに眠る魔法の潜在能力が解放されてしまったの……?」
ティアも混乱しているのがよくわかる状況になっていた。
『あわわわ、み、皆さん落ち着いてくだちょい! 今のは悪魔タナトスの仕業ですす! な、なにか……言いたいことがある感じみたいですけど……』
一触即発になりそうな空間が、エルフの言葉で無事不発に終わった。
だが悪魔の名が出たことで、どういうことかと新たな混乱が生まれる。
「ティア、今のはタナトスがやったのですか?」
ミモザが尋ねる。
「わ、わかんないけど、そういうことなんだよね……でも私とゼンスの許可なく外には出られない契約だし、今のも私を通じてこっちに干渉したわけじゃないから意味わかんない……こっちの状況を見ることはできるみたいだから、このタイミングでこんなことしてきたってことは……」
ティアは言いづらいのか、そこで言葉を止める。
「ほっほっほ、構わん。このテントの中はナイトメアの世界と繋げるため、エルフの魔力によって基本世界とズレた亜空間になっておる。タナトスはそのズレに干渉して力を送り込んできたのだろう。その気になれば無理矢理こっちの世界にやって来ることも可能だったはずだ。だがそれをせず、このタイミングでこんなことしてきたってことは、自分を呼んでくれと向こうなりに優しくお前さんにお願いしておるのではないか?」
ククルの言葉を聞き、ティアは思わずゼンスを見た。
ゼンスはよくわからんといった顔をしていた。
「ゼンス。呼ぶよ、タナトス」
「……なぬ?」
ゼンスは誰がどう見ても無茶苦茶嫌そうな顔になった。
「本当に凄い嫌そうな顔だな……」
少し離れた位置にいるガイアが見ても、そう感じるほどだった。
そんな顔をしているゼンスをなんとかするため、ティアは説得を続ける。
「わかってる、私だって怖いよ。契約してるっていっても私のエルフの魔力を封印してもらってるだけでそれ以外はなんの縛りもないし、呼んだら本当に呼ぶだけだからあっちに頭下げてお願いするしかないし、それでどうするかもあっち任せだし、正直自分で契約結んどいてなんだけど結構理不尽だとは思うよ」
「……はあ?」
「それでも私は彼のことやっぱり仲間だと思ってるし、エルフの魔力を封印してもらったことは本当に感謝してるし、だから」
「おい待て、なんの話をしてるんだ?」
「いや、だから、あなたはタナトスのこと仲間と認めてないから呼ぶの嫌なんでしょ?」
「いや、あいつを呼んでる最中、お前とずっと手を繋いでるのが恥ずかしいからなんだけど」
ゼンスはそう答えたあと、結構思いっきり顔面をパンチされた。
「──ふぇあ!? な、なにごと!?」
みなの視線が集まるなか、ティアは自身からあふれ出したエネルギーに自分でびっくりしていた。
しかし、それは一瞬の出来事で、まるでみな同時に幻覚でも見ていたかのように、テントの揺れは嘘のようにぱたりとおさまってしまう。
「おい、お前どういうつもりだ!」
一瞬とはいえ許されることはなく、テントの破壊行動ともとらえられる今の出来事に、世界守備隊の何人かが怒りをあらわにしてティアに詰め寄ってくる。
「なんだ、やる気かこの野郎」
事態をよくわかっていないが、ゼンスは青い光に身を包んでティアを守ろうと戦闘態勢をとる。
「い、今のはなに……まさか私のなかに眠る魔法の潜在能力が解放されてしまったの……?」
ティアも混乱しているのがよくわかる状況になっていた。
『あわわわ、み、皆さん落ち着いてくだちょい! 今のは悪魔タナトスの仕業ですす! な、なにか……言いたいことがある感じみたいですけど……』
一触即発になりそうな空間が、エルフの言葉で無事不発に終わった。
だが悪魔の名が出たことで、どういうことかと新たな混乱が生まれる。
「ティア、今のはタナトスがやったのですか?」
ミモザが尋ねる。
「わ、わかんないけど、そういうことなんだよね……でも私とゼンスの許可なく外には出られない契約だし、今のも私を通じてこっちに干渉したわけじゃないから意味わかんない……こっちの状況を見ることはできるみたいだから、このタイミングでこんなことしてきたってことは……」
ティアは言いづらいのか、そこで言葉を止める。
「ほっほっほ、構わん。このテントの中はナイトメアの世界と繋げるため、エルフの魔力によって基本世界とズレた亜空間になっておる。タナトスはそのズレに干渉して力を送り込んできたのだろう。その気になれば無理矢理こっちの世界にやって来ることも可能だったはずだ。だがそれをせず、このタイミングでこんなことしてきたってことは、自分を呼んでくれと向こうなりに優しくお前さんにお願いしておるのではないか?」
ククルの言葉を聞き、ティアは思わずゼンスを見た。
ゼンスはよくわからんといった顔をしていた。
「ゼンス。呼ぶよ、タナトス」
「……なぬ?」
ゼンスは誰がどう見ても無茶苦茶嫌そうな顔になった。
「本当に凄い嫌そうな顔だな……」
少し離れた位置にいるガイアが見ても、そう感じるほどだった。
そんな顔をしているゼンスをなんとかするため、ティアは説得を続ける。
「わかってる、私だって怖いよ。契約してるっていっても私のエルフの魔力を封印してもらってるだけでそれ以外はなんの縛りもないし、呼んだら本当に呼ぶだけだからあっちに頭下げてお願いするしかないし、それでどうするかもあっち任せだし、正直自分で契約結んどいてなんだけど結構理不尽だとは思うよ」
「……はあ?」
「それでも私は彼のことやっぱり仲間だと思ってるし、エルフの魔力を封印してもらったことは本当に感謝してるし、だから」
「おい待て、なんの話をしてるんだ?」
「いや、だから、あなたはタナトスのこと仲間と認めてないから呼ぶの嫌なんでしょ?」
「いや、あいつを呼んでる最中、お前とずっと手を繋いでるのが恥ずかしいからなんだけど」
ゼンスはそう答えたあと、結構思いっきり顔面をパンチされた。
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