113 / 145
■舞台は夢の世界編
【10】
しおりを挟む
テントの中に入ってきたのは、透き通るような肌を持ち、妖艶な真っ白な長髪を揺らし、白いワンピースで自身を着飾っている、まるで名画からこぼれ落ちてきたような美貌をもつ女だった。
世界守備隊の隊員たちはそんな女を警戒しているような様子で伺っており、とりわけ彼らの注意を引いたのは、透き通るように白く美しい女が背負うにはあまりにも不釣り合いに見える真っ赤に染まった大きな鎌だった。
白と赤の対比が美しさと恐ろしさを同時に表現しており、初めて間近で姿を見たものはふたつの意味で目を奪われることになるとされるが、まさにその通りだった。
そして、驚くべきは見た目だけではなく、彼女が冒険者としての強さにおける“最強”の称号を与えられていることもあるだろう。
その称号の名前の由来は、本気で最強を名乗りたいのであれば誰よりも突きでた強さを見せてみよ、と言われたのが始まりだとされる。
突きでるならば、競い、争い、誰にもそのつのを折らせないという意味として角がふさわしい。
そして人数は、究極を極めて完成を意味する数字ともされる9とするのがいいだろう。
ゆえに、その称号はこう名付けられた──“九角”と。
「──ごめんね、遅くなってしまったかな」
集まっているパーティーたちの前に来ると、白い髪を揺らしながら女は第一声に謝罪の言葉を投げかけてきた。
彼女こそ、最強の称号である九角の一人──勇者イデア。
この世界の冒険者において、その強さの頂点に立つ者の1人である。
「なにも謝ることはないぞ、私たちもさっき来たばかりだ。しかし珍しいな、お前が布で隠さずにブラッドを持ち歩くとは」
ガイアに言われ、イデアはくすりと微笑みながら答える。
「すれ違う人が驚くから普段は隠しているだけだよ。でも、ここではそんな人いないだろうからいいかなと思ってね」
答えながらイデアは手を背後に回し、ブラッドと呼ばれた真っ赤な大鎌を指でそっと撫でる。
「うむ、その通りだ。そうしてると、あだ名の通り白き死神っぽいぞ」
「……そのあだ名恥ずかしいからやめて欲しいな。それに私はこれでも勇者だから死神という呼ばれ方はあまり好きじゃない」
イデアはそう言うと、すまんかったと謝っているガイアの横にいるロゼンを見た。
「よお、イデア」
「久しぶりだねロゼン。元気そうでなによりだよ」
「当たり前だろ。俺は元気だけが取り柄の男だぜ」
「とても素敵なことだね」
集合した勇者たちが話していると、ほっほっほ、と笑い声が響く。
「よし、3人の勇者が揃ったな。ではここからは依頼としてしっかり仕事してもらおうかの。エルフはおるか?」
『は、はははい! ここにぴます!』
ククルの呼びかけに答え、姿の見えないなにかが噛み噛みで返事をした。
世界守備隊の隊員たちはそんな女を警戒しているような様子で伺っており、とりわけ彼らの注意を引いたのは、透き通るように白く美しい女が背負うにはあまりにも不釣り合いに見える真っ赤に染まった大きな鎌だった。
白と赤の対比が美しさと恐ろしさを同時に表現しており、初めて間近で姿を見たものはふたつの意味で目を奪われることになるとされるが、まさにその通りだった。
そして、驚くべきは見た目だけではなく、彼女が冒険者としての強さにおける“最強”の称号を与えられていることもあるだろう。
その称号の名前の由来は、本気で最強を名乗りたいのであれば誰よりも突きでた強さを見せてみよ、と言われたのが始まりだとされる。
突きでるならば、競い、争い、誰にもそのつのを折らせないという意味として角がふさわしい。
そして人数は、究極を極めて完成を意味する数字ともされる9とするのがいいだろう。
ゆえに、その称号はこう名付けられた──“九角”と。
「──ごめんね、遅くなってしまったかな」
集まっているパーティーたちの前に来ると、白い髪を揺らしながら女は第一声に謝罪の言葉を投げかけてきた。
彼女こそ、最強の称号である九角の一人──勇者イデア。
この世界の冒険者において、その強さの頂点に立つ者の1人である。
「なにも謝ることはないぞ、私たちもさっき来たばかりだ。しかし珍しいな、お前が布で隠さずにブラッドを持ち歩くとは」
ガイアに言われ、イデアはくすりと微笑みながら答える。
「すれ違う人が驚くから普段は隠しているだけだよ。でも、ここではそんな人いないだろうからいいかなと思ってね」
答えながらイデアは手を背後に回し、ブラッドと呼ばれた真っ赤な大鎌を指でそっと撫でる。
「うむ、その通りだ。そうしてると、あだ名の通り白き死神っぽいぞ」
「……そのあだ名恥ずかしいからやめて欲しいな。それに私はこれでも勇者だから死神という呼ばれ方はあまり好きじゃない」
イデアはそう言うと、すまんかったと謝っているガイアの横にいるロゼンを見た。
「よお、イデア」
「久しぶりだねロゼン。元気そうでなによりだよ」
「当たり前だろ。俺は元気だけが取り柄の男だぜ」
「とても素敵なことだね」
集合した勇者たちが話していると、ほっほっほ、と笑い声が響く。
「よし、3人の勇者が揃ったな。ではここからは依頼としてしっかり仕事してもらおうかの。エルフはおるか?」
『は、はははい! ここにぴます!』
ククルの呼びかけに答え、姿の見えないなにかが噛み噛みで返事をした。
20
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
りんねに帰る
jigoq
ファンタジー
人間の魂を回収し、輪廻に乗せる仕事を担う下級天使のルシア。ある日、バディのフーガと魂の回収に向かった先で死神の振るう大鎌に殺されそうになる。それを庇ったフーガが殺されたかに思えた。しかし大鎌は寸前で止められる。その時ルシアの耳朶を打ったのは震える声。――死神は泣いていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる