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■舞台は夢の世界編
【4】
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土下座したロゼンに、妖精は目をぱちくりさせる。
「違うんです。無防備に人間の前に出てくるのは大丈夫なのかという確認は、妖精を売買目的で捕まえる人間もいるから気をつけたほうがいいっていうお節介だっただけで、世界守備隊のお妖精様に危害を加えるつもりなんて、つゆほども思っておりません。なんの罪でお越しになったのは存じあげませんが、大人しく捕まりますのでこれ以上罪を追加するのだけはどうかご勘弁いただけないでしょうか。1日でも早くブタ箱からは出たいのです」
もの凄い早口でそう言ったロゼンに、妖精は慌てて口を開く。
『ち、違います、今回はあなた様に依頼があって来たのです。言葉足らずで勘違いさせて申し訳ありませんでした。それほどまでに黒く汚れて頑張っておられるなか、わたくしの配慮が足らずに……なんとお詫びしたらよいか……』
「とんでもない、こんな裾汚れに気をつかって頂く心の広さに感服致します。もしよろしければその寛大なお心でブタ箱送りを見逃して頂けると大変ありがたく思ったりするのですが」
「せこい命乞いをやめてきちんと話を聞くべきです。妖精さんは依頼があると言っておりますよ」
ミモザに指摘されて、ロゼンは目をぱちくりさせる。
「あ、依頼か……え、世界守備隊から依頼?」
『はい、本来なら魔本でやりとりをしてからお願いするのが順序なのでしょうが今回はとにかく急いでおりますためご了承ください。とにかくあなた様に返事を頂き、すぐに連れて来いと指令を受けているので』
妖精の話を聞いて、ティアが口をはさむ。
「世界守備隊がそこまで急ぐってことはよっぽどよね。依頼の内容は?」
『悪魔が目覚めたので、その討伐が依頼です』
ロゼンパーティー全員が目をまん丸くさせた。
──悪魔。
それは人間種族にとっての天敵。10年に一度の厄災とまで言われる厄介な種族。
「そ、想像以上に凄いのが来たな……でもそれってひとつの冒険者パーティーに依頼するレベルを超えてない?」
『今回、目覚めた悪魔の名はナイトメア。すでに攻撃が始まっており、北国がその能力の支配下におかれております。討伐についての詳しいことはすべての勇者が揃ってから話されるとのことです』
「ああ、合同依頼か……って、勇者揃って? あいつらも来るの?」
ロゼンの驚いた声に、妖精はうなずいた。
『ロゼンパーティー様。すでに被害は大きく出ており、時間がたてばさらに拡大します。悪魔ナイトメアの討伐依頼、引き受けて頂きますか?』
妖精の言葉にロゼンは笑う。
「断る、なんていう勇者がどこにいる。早く案内してくれ」
『では、これを受けとって皆様集まってください』
妖精が両手を伸ばしてきたため、ロゼンも同じ動作をとった。
すると、ロゼンの両手に乗るサイズの水晶玉が現れ、それを受けとったリーダーの元に仲間たちが集まってきた。
『今から空間転移を開始します。その水晶玉のそばから離れず動かないでください。すいません頭失礼します』
ロゼンの頭の上に立った妖精はそう言うと、その小さな口を開いて歌を歌いだした。
歌う。これが空間転移能力の頂点にたつ種族“妖精”の能力発動条件。
人間ではどんなに極めても数十メートルが限界とされる空間転移を、歌う長さに合わせて最大で数百キロを移動することができるとされる、絶対的に超えることができない種族特有の能力。
「お……!」
一瞬、視界がぶれ、景色が変わった。
ロゼンが真っ先に見たのは、真っ黒な盾を真っ白な剣が貫く絵が描かれた大きなテントだった。
「違うんです。無防備に人間の前に出てくるのは大丈夫なのかという確認は、妖精を売買目的で捕まえる人間もいるから気をつけたほうがいいっていうお節介だっただけで、世界守備隊のお妖精様に危害を加えるつもりなんて、つゆほども思っておりません。なんの罪でお越しになったのは存じあげませんが、大人しく捕まりますのでこれ以上罪を追加するのだけはどうかご勘弁いただけないでしょうか。1日でも早くブタ箱からは出たいのです」
もの凄い早口でそう言ったロゼンに、妖精は慌てて口を開く。
『ち、違います、今回はあなた様に依頼があって来たのです。言葉足らずで勘違いさせて申し訳ありませんでした。それほどまでに黒く汚れて頑張っておられるなか、わたくしの配慮が足らずに……なんとお詫びしたらよいか……』
「とんでもない、こんな裾汚れに気をつかって頂く心の広さに感服致します。もしよろしければその寛大なお心でブタ箱送りを見逃して頂けると大変ありがたく思ったりするのですが」
「せこい命乞いをやめてきちんと話を聞くべきです。妖精さんは依頼があると言っておりますよ」
ミモザに指摘されて、ロゼンは目をぱちくりさせる。
「あ、依頼か……え、世界守備隊から依頼?」
『はい、本来なら魔本でやりとりをしてからお願いするのが順序なのでしょうが今回はとにかく急いでおりますためご了承ください。とにかくあなた様に返事を頂き、すぐに連れて来いと指令を受けているので』
妖精の話を聞いて、ティアが口をはさむ。
「世界守備隊がそこまで急ぐってことはよっぽどよね。依頼の内容は?」
『悪魔が目覚めたので、その討伐が依頼です』
ロゼンパーティー全員が目をまん丸くさせた。
──悪魔。
それは人間種族にとっての天敵。10年に一度の厄災とまで言われる厄介な種族。
「そ、想像以上に凄いのが来たな……でもそれってひとつの冒険者パーティーに依頼するレベルを超えてない?」
『今回、目覚めた悪魔の名はナイトメア。すでに攻撃が始まっており、北国がその能力の支配下におかれております。討伐についての詳しいことはすべての勇者が揃ってから話されるとのことです』
「ああ、合同依頼か……って、勇者揃って? あいつらも来るの?」
ロゼンの驚いた声に、妖精はうなずいた。
『ロゼンパーティー様。すでに被害は大きく出ており、時間がたてばさらに拡大します。悪魔ナイトメアの討伐依頼、引き受けて頂きますか?』
妖精の言葉にロゼンは笑う。
「断る、なんていう勇者がどこにいる。早く案内してくれ」
『では、これを受けとって皆様集まってください』
妖精が両手を伸ばしてきたため、ロゼンも同じ動作をとった。
すると、ロゼンの両手に乗るサイズの水晶玉が現れ、それを受けとったリーダーの元に仲間たちが集まってきた。
『今から空間転移を開始します。その水晶玉のそばから離れず動かないでください。すいません頭失礼します』
ロゼンの頭の上に立った妖精はそう言うと、その小さな口を開いて歌を歌いだした。
歌う。これが空間転移能力の頂点にたつ種族“妖精”の能力発動条件。
人間ではどんなに極めても数十メートルが限界とされる空間転移を、歌う長さに合わせて最大で数百キロを移動することができるとされる、絶対的に超えることができない種族特有の能力。
「お……!」
一瞬、視界がぶれ、景色が変わった。
ロゼンが真っ先に見たのは、真っ黒な盾を真っ白な剣が貫く絵が描かれた大きなテントだった。
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