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□初心に戻れ!編
【地雷カレーバトル】②
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始まったカレー調理対決。
審査員の席に座るのはゼンス。
その彼の前に並ぶ調理人たちはもちろん──
ティア、ミモザ、そしてロゼン。
「タイムアウト」
試合が始まっていないのにゼンスは謎の宣言したあと、ロゼンの首根っこを捕まえて引きずってきた。
「な、なにも始まっていないのに貴重なタイムアウトを使うなんていったいなにを考えて……」
「それはこっちのセリフだ、なにを考えてそっち側に立ってやがる。てめえは鍋しか作れないんだからこっちにいないとおかしいだろ」
「なんだと……? お前も俺をただの鍋奉行しかできない男だと思っているのか?」
ロゼンの雰囲気が変わったため、ゼンスはたじろいだ。
「いいか俺は鍋だけの男じゃない。カレーだってパーティーナンバー1になるポテンシャルを秘めている。それを証明するのはいつなのか……今でっしゃろ!」
変な語尾はともかく、それはあまりにも熱い語りだったそうな。
「……そうか、頑張れよ」
とくにこれ以上言うこともなくなったゼンスは審査員席に戻ろうとする。
「待て、これをつけろ」
ロゼンがなにかを手渡してきたため、ゼンスはそれを受けとった。
それは目隠しだった。
つまり調理場面を見るな、見てしまうと絶対にティアが作ったカレーを選ぶから、そんなことは許さないといったことなのだろう。
ゼンスは物事をさらにめんどくさくしたリーダーをぶっとばそうとしたが、これを受けとるのを拒否するというのはズルしますというを認めることにもなる。
「面白れぇ……」
ゼンスは審査員席に座ってから目隠しをつけた。
ティアとの付き合いは一番長い。カレーの味ぐらいしっかり覚えている。
どうやら調理が開始したようだ。
聞こえてくるのは具材を切る音、煮込む音。カレーとすぐわかる匂い。
(……ぶっちゃけ味の違いを判断する自身はねぇ。隠し味とかさっぱりわからん。だがカレーで単純にわかりやすいのは甘い辛いの味付け。ティアのカレーは甘口。判断するのはそこだ)
甘くて旨い。これだけに絞り味を評価する。あとは運だめしだ。
「できました。目隠しをとってください」
ミモザの声に従い、ゼンスは視界を解放した。
目の前に並べられたカレーライスは3皿。正解の確率は3分の1。
「………!」
ゼンスは一番左に置かれたカレーを食べた。まろやかな甘さ。普通に旨い。
「………!」
次に真ん中のカレーを食べた。コクのある甘さ。普通に旨い。
「………!」
最後に右に置かれたカレーを食べた。柔らかな甘さ。普通に旨い。
結論、全部甘口カレーで旨かった。
(や、やべえ……わかんねえ……)
ゼンスはあせった。どのカレーが正解なのかという言ってみればつまらない地雷源に足を踏み込んだ程度の状況ではあるが、もうあと戻りはできないのだ。
(左、真ん中、右……どれだ、どれが正解だ……)
旨さは3つとも本物。地雷が混じっているとわかっているのに、どれを何口食べてもそれは変わらない。
「……ち、ちくしょう、全部うめえ……どれが正解だ……」
ゼンスは頭を抱えて悩んでいた。
そんな光景を見ながら、調理人3人はひそひそと話す。
「ほら俺が言った通り選ばないだろ? 2番なんてないんだって」
「同感です。結局、ゼンスはあなたのことをよくわかってないふりをしながらわかっているのですよ」
「うー……」
ロゼン、ミモザに言われ、ティアは顔を赤らめた。
「わ、わかんねぇ……全部マジで旨い……どうなってんだ!?」
ゼンスは、ティアが作った3つのカレーを何度も食べ比べながらずっと悩んでいたそうな。
審査員の席に座るのはゼンス。
その彼の前に並ぶ調理人たちはもちろん──
ティア、ミモザ、そしてロゼン。
「タイムアウト」
試合が始まっていないのにゼンスは謎の宣言したあと、ロゼンの首根っこを捕まえて引きずってきた。
「な、なにも始まっていないのに貴重なタイムアウトを使うなんていったいなにを考えて……」
「それはこっちのセリフだ、なにを考えてそっち側に立ってやがる。てめえは鍋しか作れないんだからこっちにいないとおかしいだろ」
「なんだと……? お前も俺をただの鍋奉行しかできない男だと思っているのか?」
ロゼンの雰囲気が変わったため、ゼンスはたじろいだ。
「いいか俺は鍋だけの男じゃない。カレーだってパーティーナンバー1になるポテンシャルを秘めている。それを証明するのはいつなのか……今でっしゃろ!」
変な語尾はともかく、それはあまりにも熱い語りだったそうな。
「……そうか、頑張れよ」
とくにこれ以上言うこともなくなったゼンスは審査員席に戻ろうとする。
「待て、これをつけろ」
ロゼンがなにかを手渡してきたため、ゼンスはそれを受けとった。
それは目隠しだった。
つまり調理場面を見るな、見てしまうと絶対にティアが作ったカレーを選ぶから、そんなことは許さないといったことなのだろう。
ゼンスは物事をさらにめんどくさくしたリーダーをぶっとばそうとしたが、これを受けとるのを拒否するというのはズルしますというを認めることにもなる。
「面白れぇ……」
ゼンスは審査員席に座ってから目隠しをつけた。
ティアとの付き合いは一番長い。カレーの味ぐらいしっかり覚えている。
どうやら調理が開始したようだ。
聞こえてくるのは具材を切る音、煮込む音。カレーとすぐわかる匂い。
(……ぶっちゃけ味の違いを判断する自身はねぇ。隠し味とかさっぱりわからん。だがカレーで単純にわかりやすいのは甘い辛いの味付け。ティアのカレーは甘口。判断するのはそこだ)
甘くて旨い。これだけに絞り味を評価する。あとは運だめしだ。
「できました。目隠しをとってください」
ミモザの声に従い、ゼンスは視界を解放した。
目の前に並べられたカレーライスは3皿。正解の確率は3分の1。
「………!」
ゼンスは一番左に置かれたカレーを食べた。まろやかな甘さ。普通に旨い。
「………!」
次に真ん中のカレーを食べた。コクのある甘さ。普通に旨い。
「………!」
最後に右に置かれたカレーを食べた。柔らかな甘さ。普通に旨い。
結論、全部甘口カレーで旨かった。
(や、やべえ……わかんねえ……)
ゼンスはあせった。どのカレーが正解なのかという言ってみればつまらない地雷源に足を踏み込んだ程度の状況ではあるが、もうあと戻りはできないのだ。
(左、真ん中、右……どれだ、どれが正解だ……)
旨さは3つとも本物。地雷が混じっているとわかっているのに、どれを何口食べてもそれは変わらない。
「……ち、ちくしょう、全部うめえ……どれが正解だ……」
ゼンスは頭を抱えて悩んでいた。
そんな光景を見ながら、調理人3人はひそひそと話す。
「ほら俺が言った通り選ばないだろ? 2番なんてないんだって」
「同感です。結局、ゼンスはあなたのことをよくわかってないふりをしながらわかっているのですよ」
「うー……」
ロゼン、ミモザに言われ、ティアは顔を赤らめた。
「わ、わかんねぇ……全部マジで旨い……どうなってんだ!?」
ゼンスは、ティアが作った3つのカレーを何度も食べ比べながらずっと悩んでいたそうな。
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