☆なんちゃってクエスト★

Natsu

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□初心に戻れ!編

【落ちた黒き蜘蛛の物語】③

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 ブラックスパイダーはお城のてっぺんから飛び降ると、世闇よやみに溶け込み民家の屋根をつたい目標の美術館に向かっていく。
 
「あ……あぁ……あぁあぁぁ、美しいぃぃ!」

 変態ナルシスト怪盗ブラックスパイダーは自分の美しさに酔いしれるあまり、隠密おんみつ行動中なのを忘れて我慢できずに叫んでいた。

「──止まりな!」

 しかし、その先に進むのをこばむ言葉が飛んできた。
 ブラックスパイダーは足を止め、次に飛び乗ろうとしていた民家の屋根に座っている男を見て笑みを浮かべる。

「守備隊……ではないようですね。だがワタクシのことはご存知ぞんじのようだ。ならばたずねておきましょう、あなたは一体いったい何者でしょうか?」

 男はゆっくり立ち上がると、虹色にじいろの光をその身に包んで剣を構える。

「俺の名はロゼン。この国の王に依頼され、国宝名画を盗もうなんて考える不埒ふらちな野郎を成敗せいばいしにきた冒険者さ」

「ほう……なるほど、わかりました。つまりその七色の光でこのワタクシに美しさを争う勝負をしかけてきたわけですね」

「そうだ……ん? んん……ん? なんか、それはおかしくない?」

「評価します、確かにその七色の光は美しい……だが、ワタクシのほうがさらに美しい!」

「やっぱりおかしくない!?」

 ロゼンの叫びを無視して、ブラックスパイダーが屋根を蹴ってちゅうった。

「……よ、よしかかって来な!」

 展開はわかっていないが向かってきたブラックスパイダーを見て、ロゼンはむかええうつために構えをとった。

「サンダーエキサイティングビューティフルデリシャスワンダフルベリーベリーキュートサンキューフォーエバー蜘蛛の糸スパイダーネット!」

 そう叫びながらブラックスパイダーが腕輪型うでわがた魔導具まどうぐの能力を発動させると、見えづらいが固く頑丈がんじょうな糸が腕輪から発射され、さながら蜘蛛くもの巣に絡まった蝶のごとくロゼンを捕獲してしまう。

「お……おお……おおお!?」

 あまりにも長い呪文みたいな言葉聞きとろうとしていたロゼンは、抵抗も忘れてなすすべなく捕らえられてしまった。

「お、おい、ふざけんな! な、なんだ今のズルいだろ!」

 ロゼンは蜘蛛の糸にもがきながら叫ぶが、余計に糸に絡まっていく。

「ズルい……あなたがおっしゃる通り、まさしく美しいとは罪なのです。ですがワタクシは狙った獲物以外は興味がありません。あなたはそこでもがき苦しみ、そしてワタクシ美しい!」

「ええ!? ちょっと待って意味わかんない!」

 興味のない獲物の叫びを置き去りにし、ブラックスパイダーは目的地に向かってまた跳ぶのだった。
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