86 / 141
■結成編
【14】
しおりを挟む
走りだす王子を見て、隊長は大きく動揺する。
待ってください──そう叫びそうになるが、死んでほしくないという自分の個人的感情が先行していることに気づき言葉を飲み込んだ。
今までは守る対象をして見てきたが、もう違うのかもしれない。
なら、今の彼は自分にとってどういう存在になっているのだろう。
『ただの実験で来ていただけとはいえ、勇者と戯れるのも一興か。簡単に死んでくれるなよ?』
向かってくる勇者に楽しげな口調で語りかけながら、ドラゴンの口から火炎の断片が漏れ出した。
しかし、その火炎が固まりとなり放たれることはなく、突如その巨大な体がまるで足の力が抜けたかのように崩れ落ちた。
これはドラゴンも想定外だったのか、あきらかに動揺したのが周りに伝わってくる。
いきなり倒れたドラゴンに、業をぶつけようとしていた王子も思わず驚きのため発動が遅れてしまう。
「おせえ、先行くぞ」
そして、その瞬間を狙ったかのように、七色の光を追いこし、青い光がドラゴンの目の前まで飛び出てきた。
さきほどドラゴンの上までぶっ飛ばしてくれた武道家だった。しかしその青い光がさっきまでと違く、見ると青と黒が混ざり合って同時に輝くような、通常の武道家には見られない奇妙な光を輝かせていた。
「『極・剛拳・青花火』」
その業の発動と共に、ドラゴンの巨体が浮き上がった。
遅れて衝撃が風のうねりに変わって周りに伝わってくる。
この業がとんでもない一撃だったことを、光力の使えない人間でもわからされるほどの光景。
そして、戦士、武道家なら、極の業に到達したものがいることに対してのとてつもない驚きがあっただろう。
「『魔法剣・神龍』」
武道家の極の業で浮かび上がったドラゴンに向かって、王子が手に持つ剣を勢いよくぶん投げると、剣は銀色に輝く竜に変化すると同時に力の塊となって飛んでいき、衝突と共に巨体をえぐって確実にダメージといえる一撃を与えた。
一連の出来事にそれを見ていた者たちは絶句した。
倒れたドラゴンは身体が震わすだけで、意識があるのがわかる状態なのに起き上がってこようとしない。
これは、あきらかにこちらにとって優勢だとわかる状態だった。
これが最後の好機かもしれない。攻めるのが正解とか不正解とか考える時間すら今は必要ない。
「持てる力を全部ぶつけてください! これを最後にしましょう!」
隊長が叫ぶと周りの隊員たちが一斉に各々の業を放つため動きだす。
だが、倒れたドラゴンのそばにまだ二人の人間が倒れているのが見える。
おそらく、自分の限界に達する業を放った反動で動けなくなっている可能性が高い。
(私が行かないと──)
今度は自分が王子を救う番だ。
隊長は紫の光を輝かせ、大地を力強く蹴った。
待ってください──そう叫びそうになるが、死んでほしくないという自分の個人的感情が先行していることに気づき言葉を飲み込んだ。
今までは守る対象をして見てきたが、もう違うのかもしれない。
なら、今の彼は自分にとってどういう存在になっているのだろう。
『ただの実験で来ていただけとはいえ、勇者と戯れるのも一興か。簡単に死んでくれるなよ?』
向かってくる勇者に楽しげな口調で語りかけながら、ドラゴンの口から火炎の断片が漏れ出した。
しかし、その火炎が固まりとなり放たれることはなく、突如その巨大な体がまるで足の力が抜けたかのように崩れ落ちた。
これはドラゴンも想定外だったのか、あきらかに動揺したのが周りに伝わってくる。
いきなり倒れたドラゴンに、業をぶつけようとしていた王子も思わず驚きのため発動が遅れてしまう。
「おせえ、先行くぞ」
そして、その瞬間を狙ったかのように、七色の光を追いこし、青い光がドラゴンの目の前まで飛び出てきた。
さきほどドラゴンの上までぶっ飛ばしてくれた武道家だった。しかしその青い光がさっきまでと違く、見ると青と黒が混ざり合って同時に輝くような、通常の武道家には見られない奇妙な光を輝かせていた。
「『極・剛拳・青花火』」
その業の発動と共に、ドラゴンの巨体が浮き上がった。
遅れて衝撃が風のうねりに変わって周りに伝わってくる。
この業がとんでもない一撃だったことを、光力の使えない人間でもわからされるほどの光景。
そして、戦士、武道家なら、極の業に到達したものがいることに対してのとてつもない驚きがあっただろう。
「『魔法剣・神龍』」
武道家の極の業で浮かび上がったドラゴンに向かって、王子が手に持つ剣を勢いよくぶん投げると、剣は銀色に輝く竜に変化すると同時に力の塊となって飛んでいき、衝突と共に巨体をえぐって確実にダメージといえる一撃を与えた。
一連の出来事にそれを見ていた者たちは絶句した。
倒れたドラゴンは身体が震わすだけで、意識があるのがわかる状態なのに起き上がってこようとしない。
これは、あきらかにこちらにとって優勢だとわかる状態だった。
これが最後の好機かもしれない。攻めるのが正解とか不正解とか考える時間すら今は必要ない。
「持てる力を全部ぶつけてください! これを最後にしましょう!」
隊長が叫ぶと周りの隊員たちが一斉に各々の業を放つため動きだす。
だが、倒れたドラゴンのそばにまだ二人の人間が倒れているのが見える。
おそらく、自分の限界に達する業を放った反動で動けなくなっている可能性が高い。
(私が行かないと──)
今度は自分が王子を救う番だ。
隊長は紫の光を輝かせ、大地を力強く蹴った。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる