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■勇者幽閉編
【29】
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ゼンスとティアはお城の前までやって来た。
すでにミモザが城門前に立っており、爛々とした瞳で手に持った札束を数えている。
「おーい、ミモザー」
ティアが呼ぶと、ミモザは輝く瞳のまま顔を振り向けてきた。
「体調は良くなったようですね。安心しました」
「ありがと……で、そのお金はなんなの?」
ティアが指摘すると、ミモザはニコニコと笑いながら、
「この国の守備隊長に依頼された仕事の報酬ですよ。うやむやにするわけにもいかないので、ネズミ退治から含めての働きをきっちりと請求した結果、想定した通り色濃く……いえ、まあ妥当ともいえる正答な報酬を頂くことができました」
その説明を聞きながら、きっと色濃く報酬が貰えるようゴネたんだろうな、とティアとゼンスは思った。
「しかしまあ、こんな面倒な事態だったのに、ひとりだけのんびり牢屋なんかでくつろいじゃって許せないわね」
ティアはもうすぐお城の牢獄から出てくるであろう仲間を思い浮かべ不満を口にする。
「確かに。あいつだけなにもせずにだらだらと過ごしやがって。これはお仕置きが必要だな」
ゼンスもそれに同意し、有言実行するためなのかその場でストレッチを始める。
投獄されたのは自分の意志ではないから完全に冤罪なんですけど、と指摘しようかどうかミモザは考えた。
少し待っていると、ようやく馴染みのある顔が城門を通過してこちらに向かってくるのが見えた。
見送りなのか看守と思える男がそばにおり、仲間の元に帰ろうとする男と最後の会話をする。
「短い間でしたがお世話になりました看守さん……看守さんがいなかったら俺………」
看守は涙を流して頭を下げる男の肩を軽く叩く。
「ああ、なにも言うなわかっている。俺も別れはさみしい。だが、お前ならやっていけるさ」
きっと牢獄のなかでもなんか色々あったんだろうな、と思いながらミモザたちはその様子を眺めていた。
別れが済んだのか、男と看守はもうこれ以上言葉がいらないといわんばかりに互いに背を向けて歩きだした。
そして、
「よお、久しぶり。大変だったみたいだな」
ミモザたちのそばまで来たロゼンがさわやかに声をかけてきた。
「おらあ!」
ゼンスはさわやか野郎にラリアットをぶちかました。
「こんぶっ! ……ちょ、なにすんの!」
「うっせぇ! こっちは面倒くさい出来事のあとで疲れてんのに、てめえはなにさわやかやってんだよ!」
「……そんなになんかあったの? 詳しいことは牢獄出てから仲間に聞いてくれって言われたけど、俺のそっくりさんが出たって話はマジ?」
さわやかではなくなったロゼンが聞いてくるとミモザが答える。
「外での出来事に気がつかなかったのですか?」
「監獄は外の情報とかは遮断する作りなんだよ。ただネズミがどうとかって大きい声とかは聞こえてきたから、なんかやってるんだろうなとは思った。その時光力使いすぎて若干意識飛んでたからうろ覚えなんだけど」
「ちょっと待ってよ、なんで牢獄のなかでそんな状態になっているわけ?」
ティアが話に入ってきたため、ロゼンは現れた守備隊に事件を解明する要素になるから光力が欲しいと言われた出来事を話した。
「……それで水晶玉に限界ギリギリまで光力注いじゃったわけ? そこまでギリギリまで引き出すと生命力まで絞らないといけなくなるから、その水晶玉にはあなたの生命エネルギーも混じってるわけね」
「……たぶん」
「それを回収し利用したと……。なんというか辻褄があいました。そういう計画だったわけですか。これは……私たちの完敗ですね」
どんよりとしているパーティーの中、口を開いたのはゼンスはだった。
「お前らがなに話してるかわかんねぇけど久しぶり全員揃ったんだ。ここで喋ってねえで、さっさとめしでも食いに行かねえか?」
その言葉にパーティーは顔を見合わせる。
「まあ、今度のことはゆっくり考えていきますか」
「その通りですね。ロゼン様、出所祝いなので好きなもの食べていいですよ」
「マジで!? じゃあいつもなら絶対食べれない超高級のステーキが食べたい!」
「わかりました。ではそこのラーメン屋さんに入りましょう」
「待って、わかっていない。キミはなにもわかっていないと思うんだ」
ラーメン屋に入るのを阻止するためロゼンとゼンスは前面でディフェンスに徹し、ティアはミモザの服を引っ張って入店を妨害する。
こんな馬鹿なことがやれる仲間たち。
そんな彼らにも出会いの物語りがある。
そのきっかけになったのも、悲しきこと過去ではあるが“魔王”という存在が関わっていた。
すでにミモザが城門前に立っており、爛々とした瞳で手に持った札束を数えている。
「おーい、ミモザー」
ティアが呼ぶと、ミモザは輝く瞳のまま顔を振り向けてきた。
「体調は良くなったようですね。安心しました」
「ありがと……で、そのお金はなんなの?」
ティアが指摘すると、ミモザはニコニコと笑いながら、
「この国の守備隊長に依頼された仕事の報酬ですよ。うやむやにするわけにもいかないので、ネズミ退治から含めての働きをきっちりと請求した結果、想定した通り色濃く……いえ、まあ妥当ともいえる正答な報酬を頂くことができました」
その説明を聞きながら、きっと色濃く報酬が貰えるようゴネたんだろうな、とティアとゼンスは思った。
「しかしまあ、こんな面倒な事態だったのに、ひとりだけのんびり牢屋なんかでくつろいじゃって許せないわね」
ティアはもうすぐお城の牢獄から出てくるであろう仲間を思い浮かべ不満を口にする。
「確かに。あいつだけなにもせずにだらだらと過ごしやがって。これはお仕置きが必要だな」
ゼンスもそれに同意し、有言実行するためなのかその場でストレッチを始める。
投獄されたのは自分の意志ではないから完全に冤罪なんですけど、と指摘しようかどうかミモザは考えた。
少し待っていると、ようやく馴染みのある顔が城門を通過してこちらに向かってくるのが見えた。
見送りなのか看守と思える男がそばにおり、仲間の元に帰ろうとする男と最後の会話をする。
「短い間でしたがお世話になりました看守さん……看守さんがいなかったら俺………」
看守は涙を流して頭を下げる男の肩を軽く叩く。
「ああ、なにも言うなわかっている。俺も別れはさみしい。だが、お前ならやっていけるさ」
きっと牢獄のなかでもなんか色々あったんだろうな、と思いながらミモザたちはその様子を眺めていた。
別れが済んだのか、男と看守はもうこれ以上言葉がいらないといわんばかりに互いに背を向けて歩きだした。
そして、
「よお、久しぶり。大変だったみたいだな」
ミモザたちのそばまで来たロゼンがさわやかに声をかけてきた。
「おらあ!」
ゼンスはさわやか野郎にラリアットをぶちかました。
「こんぶっ! ……ちょ、なにすんの!」
「うっせぇ! こっちは面倒くさい出来事のあとで疲れてんのに、てめえはなにさわやかやってんだよ!」
「……そんなになんかあったの? 詳しいことは牢獄出てから仲間に聞いてくれって言われたけど、俺のそっくりさんが出たって話はマジ?」
さわやかではなくなったロゼンが聞いてくるとミモザが答える。
「外での出来事に気がつかなかったのですか?」
「監獄は外の情報とかは遮断する作りなんだよ。ただネズミがどうとかって大きい声とかは聞こえてきたから、なんかやってるんだろうなとは思った。その時光力使いすぎて若干意識飛んでたからうろ覚えなんだけど」
「ちょっと待ってよ、なんで牢獄のなかでそんな状態になっているわけ?」
ティアが話に入ってきたため、ロゼンは現れた守備隊に事件を解明する要素になるから光力が欲しいと言われた出来事を話した。
「……それで水晶玉に限界ギリギリまで光力注いじゃったわけ? そこまでギリギリまで引き出すと生命力まで絞らないといけなくなるから、その水晶玉にはあなたの生命エネルギーも混じってるわけね」
「……たぶん」
「それを回収し利用したと……。なんというか辻褄があいました。そういう計画だったわけですか。これは……私たちの完敗ですね」
どんよりとしているパーティーの中、口を開いたのはゼンスはだった。
「お前らがなに話してるかわかんねぇけど久しぶり全員揃ったんだ。ここで喋ってねえで、さっさとめしでも食いに行かねえか?」
その言葉にパーティーは顔を見合わせる。
「まあ、今度のことはゆっくり考えていきますか」
「その通りですね。ロゼン様、出所祝いなので好きなもの食べていいですよ」
「マジで!? じゃあいつもなら絶対食べれない超高級のステーキが食べたい!」
「わかりました。ではそこのラーメン屋さんに入りましょう」
「待って、わかっていない。キミはなにもわかっていないと思うんだ」
ラーメン屋に入るのを阻止するためロゼンとゼンスは前面でディフェンスに徹し、ティアはミモザの服を引っ張って入店を妨害する。
こんな馬鹿なことがやれる仲間たち。
そんな彼らにも出会いの物語りがある。
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