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■勇者幽閉編
【11】
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若い守備隊の男がお城に向かって歩いていた。
「すまないが、まだ警備の強化中でね。守備隊でもお城に入れるには身分証をみせる必要があるよ」
城門を通過するとき兵士にそう言われ、若い男は守備隊であること証明する手帳を提示した。
「どうも。ところでお城になんの用なんだ?」
「守備隊員を派遣してくれと指示を受けて来た。ちょっとした問題が発生したと聞いている」
「あー、雑用で来たわけかご苦労さんだな。お仕事頑張っておくれ」
「こちらこ……いや、ありがとう」
守備隊の男は城門を通り抜け、城内に入っていった。
(口調に気をつけてクルトン)
守備隊の男──いや、そのように変化しているクルトンの頭の中で声が響いた。
ちらりと胸ポケットを見ると、そこに隠れられるぐらいちっちゃくなったビクリアと目があった。
(せっかくうまく入れ替わったのに、小さなミスで失敗しないようにね)
(申し訳ない、わかっていてもなかなか難しいですな。ところで精神魔法を使用しての会話に負担はないのですか?)
(まったくないわけではないけれど、これほど近距離で相手があなたならそう問題ないわ)
(それなら結構。しかし頂いた遊び道具の中にまさか小人になれるものまであるとは驚きました。あの御方は本当になんでもありですな)
(それは言いすぎだわ。傀儡、透明、小人なんてかなり特殊な条件下でしか発生しない状態異常だから、さすがにつくるのに時間もかかっていたし同じものはもう作れないかもしれないって笑ってた)
(ふむ、まだ存在が不安定な我々だからこんな無茶苦茶な使い方をしても特に問題はないだろうと言っておりましたし、便利な状態異常も落とし穴があるのですね)
(しょせん状態異常は状態異常だからね。透明化や小人化だって普通の人間なら使用状態によってはなにかしらの後遺症が残るリスクはあるし……)
そこでビクリアは言葉を止める。
(さて、勉学の時間はここまでにして、作戦に集中しましょうか)
(ええ。私がサポートするから、あなたは周りに違和感を与えないよう振る舞って)
牢獄がある地下に入るための鉄格子まで歩いてきたクルトンに、ここを守る兵士が声をかけてくる。
「おい、守備隊さん。なにも聞いてないけど地下牢になにか用なのか?」
そう尋ねられると、クルトンは一回咳払いをしてから、
「第一地下牢にいる囚人に用がある。そいつがある情報を隠しているみたいで、聞きだすように命を受けてきた」
「はあ? なんだそりゃ、聞いてないぞそんなこ…と……」
怪訝そうな表情をしていた兵士が言葉を止める。
「……そうだったな、すまなかった……お仕事頑張ってくれ」
地下牢に続く鉄格子の門が開錠された。
「こちらこそ、ご親切にどうもありがとうございます」
クルトンは薄暗い階段を降りて行った。
「すまないが、まだ警備の強化中でね。守備隊でもお城に入れるには身分証をみせる必要があるよ」
城門を通過するとき兵士にそう言われ、若い男は守備隊であること証明する手帳を提示した。
「どうも。ところでお城になんの用なんだ?」
「守備隊員を派遣してくれと指示を受けて来た。ちょっとした問題が発生したと聞いている」
「あー、雑用で来たわけかご苦労さんだな。お仕事頑張っておくれ」
「こちらこ……いや、ありがとう」
守備隊の男は城門を通り抜け、城内に入っていった。
(口調に気をつけてクルトン)
守備隊の男──いや、そのように変化しているクルトンの頭の中で声が響いた。
ちらりと胸ポケットを見ると、そこに隠れられるぐらいちっちゃくなったビクリアと目があった。
(せっかくうまく入れ替わったのに、小さなミスで失敗しないようにね)
(申し訳ない、わかっていてもなかなか難しいですな。ところで精神魔法を使用しての会話に負担はないのですか?)
(まったくないわけではないけれど、これほど近距離で相手があなたならそう問題ないわ)
(それなら結構。しかし頂いた遊び道具の中にまさか小人になれるものまであるとは驚きました。あの御方は本当になんでもありですな)
(それは言いすぎだわ。傀儡、透明、小人なんてかなり特殊な条件下でしか発生しない状態異常だから、さすがにつくるのに時間もかかっていたし同じものはもう作れないかもしれないって笑ってた)
(ふむ、まだ存在が不安定な我々だからこんな無茶苦茶な使い方をしても特に問題はないだろうと言っておりましたし、便利な状態異常も落とし穴があるのですね)
(しょせん状態異常は状態異常だからね。透明化や小人化だって普通の人間なら使用状態によってはなにかしらの後遺症が残るリスクはあるし……)
そこでビクリアは言葉を止める。
(さて、勉学の時間はここまでにして、作戦に集中しましょうか)
(ええ。私がサポートするから、あなたは周りに違和感を与えないよう振る舞って)
牢獄がある地下に入るための鉄格子まで歩いてきたクルトンに、ここを守る兵士が声をかけてくる。
「おい、守備隊さん。なにも聞いてないけど地下牢になにか用なのか?」
そう尋ねられると、クルトンは一回咳払いをしてから、
「第一地下牢にいる囚人に用がある。そいつがある情報を隠しているみたいで、聞きだすように命を受けてきた」
「はあ? なんだそりゃ、聞いてないぞそんなこ…と……」
怪訝そうな表情をしていた兵士が言葉を止める。
「……そうだったな、すまなかった……お仕事頑張ってくれ」
地下牢に続く鉄格子の門が開錠された。
「こちらこそ、ご親切にどうもありがとうございます」
クルトンは薄暗い階段を降りて行った。
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