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■勇者幽閉編
【10】
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ロゼンが投獄されてから3日経過。
時間経過とともに守備隊の警戒も薄れてきて、今や国中で見かけることのできたその姿もほとんどなくなってきた。
そんな中、リーダー不在のロゼンパーティーは途方にくれていた。
「ダメ、やっぱりこんな当てずっぽうなやり方で、国の中から犯人を探しだすなんて無理だわ……」
ゼンスの背中にしがみついているティアは、しおしおとした顔でつぶやいた。
「ていうか当然のように俺を馬扱いする癖やめろよ」
「ううう、こんなに頭使って考えているのにさらに歩けだなんて……いいわ切り捨ててちょうだい……私はしょせん都合のいい時だけ利用される女……」
「ただ歩くだけなのにどんだけ重い言い方してくるんだ。もういいわかった」
しおしお状態のティアに負け、ゼンスは馬を継続する。
その横でミモザはもまた、しおしお超えたしおしおしお状態で歩いていた。
「だ、大丈夫かよ」
こっちのほうが深刻ではと思いながらゼンスが尋ねると、ミモザは少し時間を置いてから答える。
「この3日……犯人が他にもなにか動きをみせるかと待っていた部分はあるのですがなにもなく過ぎてしまいました。赤い髪の女性もやっぱり見つかりませんし、無意味に消費したのは時間だけ……こうなったらお城に突撃して破壊のかぎりを尽くしてロゼン様を救出するのが正解なのでは……」
「ブブー! 不正解! 俺でもわかるダメな答えだろそれ!」
しおしお状態の彼女たちのために、ゼンスはロゼンの役割を必死に補っていた。
そんなやりとりをしながら歩いていると、不意にゼンスが手を伸ばしミモザの腕を引っ張った。
「あ……失礼しました」
ミモザは誰かとぶつかりそうになっていたのに気づいて頭を下げて謝罪した。
ぶつかりそうになった守備隊の制服を着た若い男がこちらに頭を下げてくる。
「こちらこそ申し訳ありません。ついよそ見をしておりましてな。お互いに気をつけていきましょう」
守備隊の男が同じく謝罪をしてくると、ロゼンパーティーはそのまますれ違って歩いていった。
「気をつけて、今のは勇者の仲間だよ」
「わかっております、まさか目の前にいるとは私も驚きました。姿が違うとこうも歩きにくいのですな」
「その口調もなんだか年寄り臭いよ。もっと若い感じにして」
「え……ああ、あー……わ、わかったぜ……慣れませんな、こういう役はアルナ殿に任せたかったところです」
「さすがに剣を持ちこんでは入れないからね。いざという時、あなたじゃないと対処できないから」
「わかっております、あ……わかってるぜ」
守備隊の男は小さな声で胸ポケットに語りかけながら、目的地に向かって歩きだした。
時間経過とともに守備隊の警戒も薄れてきて、今や国中で見かけることのできたその姿もほとんどなくなってきた。
そんな中、リーダー不在のロゼンパーティーは途方にくれていた。
「ダメ、やっぱりこんな当てずっぽうなやり方で、国の中から犯人を探しだすなんて無理だわ……」
ゼンスの背中にしがみついているティアは、しおしおとした顔でつぶやいた。
「ていうか当然のように俺を馬扱いする癖やめろよ」
「ううう、こんなに頭使って考えているのにさらに歩けだなんて……いいわ切り捨ててちょうだい……私はしょせん都合のいい時だけ利用される女……」
「ただ歩くだけなのにどんだけ重い言い方してくるんだ。もういいわかった」
しおしお状態のティアに負け、ゼンスは馬を継続する。
その横でミモザはもまた、しおしお超えたしおしおしお状態で歩いていた。
「だ、大丈夫かよ」
こっちのほうが深刻ではと思いながらゼンスが尋ねると、ミモザは少し時間を置いてから答える。
「この3日……犯人が他にもなにか動きをみせるかと待っていた部分はあるのですがなにもなく過ぎてしまいました。赤い髪の女性もやっぱり見つかりませんし、無意味に消費したのは時間だけ……こうなったらお城に突撃して破壊のかぎりを尽くしてロゼン様を救出するのが正解なのでは……」
「ブブー! 不正解! 俺でもわかるダメな答えだろそれ!」
しおしお状態の彼女たちのために、ゼンスはロゼンの役割を必死に補っていた。
そんなやりとりをしながら歩いていると、不意にゼンスが手を伸ばしミモザの腕を引っ張った。
「あ……失礼しました」
ミモザは誰かとぶつかりそうになっていたのに気づいて頭を下げて謝罪した。
ぶつかりそうになった守備隊の制服を着た若い男がこちらに頭を下げてくる。
「こちらこそ申し訳ありません。ついよそ見をしておりましてな。お互いに気をつけていきましょう」
守備隊の男が同じく謝罪をしてくると、ロゼンパーティーはそのまますれ違って歩いていった。
「気をつけて、今のは勇者の仲間だよ」
「わかっております、まさか目の前にいるとは私も驚きました。姿が違うとこうも歩きにくいのですな」
「その口調もなんだか年寄り臭いよ。もっと若い感じにして」
「え……ああ、あー……わ、わかったぜ……慣れませんな、こういう役はアルナ殿に任せたかったところです」
「さすがに剣を持ちこんでは入れないからね。いざという時、あなたじゃないと対処できないから」
「わかっております、あ……わかってるぜ」
守備隊の男は小さな声で胸ポケットに語りかけながら、目的地に向かって歩きだした。
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