☆なんちゃってクエスト★

Natsu

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■勇者幽閉編

【6】

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 騒ぎに駆けつけた守備隊は、炎があがる民家の消火活動、怪我人などの救助活動、そして犯人であるロゼンを迅速じんそく連行れんこうしていった。

 仲間たちはその光景を黙って見つめていることしかできなかった。

「って、見つめとる場合じゃない!」

 このままではロゼンパーティーのリーダーが本当に捕まってしまうため、仲間たちはロゼンをぐるぐる巻きに縛って運んでいる守備隊の元に慌てて走る。

「待ちたまえ」

 が、そばにいる守備隊の男に止められてしまった。

「私はこの国の守備隊長だ。キミたちは彼の仲間たちかね?」

 守備隊長を前にして、2人は口々に叫ぶ。

「話も聞かずにこんなやり方は横暴なのでは!? まずは我々に釈明しゃくめいの時間を与えるべきです! ティアもなにか言ってください!」

「権力の暴力反対! 冒険者には有無を言う人権すらないわけ!? ゼンスもなにか言ってよ!」

「……え…………お、俺のサンドバッグを返せこの野郎!」

 ギャーギャー叫ぶ3人に、守備隊長は首をうなずかせた。

「キミたちの言いたいことはわかった。いや、正直最後はよくわからなかったが、彼を捕まえるなという思いは伝わってきた。しかしそれは無理な相談だ。目撃者の証言や記録水晶といった物的証拠まである。少なくとも今この場で彼を解放することはできないし、キミたちも感情的になって過ちを起こさないでくれ。これ以上国の被害を出したくない気持ちは共有していると信じたい。それにここで口論することはキミたちにとっても自分たちの印象を悪化させるだけの行為になってしまうのではないか?」

 守備隊長の機関銃のような説得に、ロゼンのいないロゼンパーティーはたじろいだ。
 たしかに野次馬含めて周りでこちらを見ている人間たちの目は冷ややかな様子だった。
 この国の住人からしたら、外からやってきた冒険者の一人が暴れ、その仲間たちが騒いでいるというはた迷惑な状況にしか見えないのかもしれない。

「……では、諦める以外の選択肢をとるならばどうすればいいのです?」

 ミモザの落ち着きを見て、守備隊長は安堵あんどしたのか表情をやわらげる。

「ひとまず朝になったら守備署に来てくれ。キミたちなりの弁明べんめいを聞こうじゃないか。こちらとしても、なぜ彼がこんなことをしでかしたのか知りたいことはあるからね」

 いや、それってロゼンが犯人なのこと前提になってない?
 と思ったが、ここで言い返したら今は負けだ。

「わかりました……出直します」

 ミモザがそう言って歩きだすと、ティアとゼンスも不満そうな表情であとに続き宿屋のほうに向かっていった。

 そんなやりとりを、離れた民家の木々の隙間から見ている影があった。

「ふむ、今のやりとりを見るに作戦のひとつめは成功ですかな。では離れましょうか」

 影は夜の闇のなかに身を隠していった。
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