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■勇者幽閉編
【4】
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太陽が沈んでいき、夜の時間に移ろうとしていた。
国の中は静けさが増していくが、逆にこの時間ならではの盛り上がりをみせる店もあったり、昼間とはまた違う顔に変わっていく。
自由時間を各自楽しんだロゼンパーティーは、宿屋のなかに集まり就寝の準備をしていた。
「昼間にゼンスと定食屋でご飯食べてたら依頼が来たんだけど」
ロゼンが歯磨きをしながら話しだすと、鏡台の前に座っていたミモザが聞き返す。
「どんな依頼なのですか?」
「この国の南地区で7日後に行われる"踊り狂え酒池肉林イベント"に参加してしてくれないかって」
「絶対嫌だ」
ベッドの上に寝そべって雑誌を読んでいたティアが問答無用で拒否してきた。
「ちなみに依頼料は?」
「嫌だ」
「いえ受けませんよ。聞いただけです」
「たしか20万¢だったかな」
「………」
「嫌だ嫌だ嫌だ」
「わ、わかっていますって」
一瞬悩んだミモザだったが、ティアの言葉に従った。
「ぐごー」
その定食屋の名物だった山盛りにんにく丼を食べきったゼンスは満腹ですでに眠っていた。
わちゃわちゃとやりとりをしながらも各自就寝の準備ができたため、
「じゃ、そろそろ消すぞ」
ロゼンは部屋の明かりを消し、自分もベッドにはいっていった。
1時間、2時間……と時間は流れ、真夜中と呼ばれる頃になっていく。
暗くなった部屋のなかは、みなの寝息やいびきだけが支配していた。
──だが、そんな安らぎを崩すように爆発音が響き部屋が小さく揺れた。
「あぁ?」
一番最初に起きたのはゼンスだった。
すぐに周りを確認し、部屋は揺れているが、この部屋のなかで異常が起きていないことを確認する。
残りの仲間たちも遅れて起き上がるが、すでに立ち上がっているゼンスが慌てている様子ではないため、慌てずになにが起きているか考える。
「悪い、寝ぼけてたけど今の地震か?」
「いえ、爆発したような音でしたが」
「鍋でも爆発したのかな?」
「ドジっ娘ヒロインかよ」
ロゼンパーティーが話していると、部屋のドアが勢いよく叩かれる。
「勇者さんはいますか! お願いします、助けてください!」
廊下の向こうから聞こえる叫びに、いったい何事かとロゼンは急いでドアを開けた。
「うおっ!?」
開けたとたんになかに入ってきたのは赤い長髪の女だった。
そして、その勢いのままこちらの胸のなかに飛びこんできたため、反射的にロゼンは女を抱きしめるような形になってしまう。
「……な、なな!?」
思わずミモザの顔がひきつった。
「た、助けてください勇者さん! モンスターが暴れていて! 私の家族がそこで襲われているんです!」
それを聞くと、優しく女の身体を横にずらし、ロゼンはうなずいた。
「よし、わかった任せろ。ゼンス武器」
ロゼンが走りだすと、
「なにやってんだ行くぞ」
「うおわぁ!?」
ゼンスは右腕でティアを抱えこみ、右手でそばに立てかけてあった剣を掴んであとに続く。
「………」
遅れて武器を手にとってミモザも走るが、ドアですれ違う赤い髪の女を見るとき、なんともいえない表情になってしまった。
少し間を開けてから残された女は廊下に目をやり、ロゼンパーティーの姿が見えないことを確認すると、
「地獄へいってらっしゃーい、なんてね」
楽しそうに笑いながら手のひらを振った。
国の中は静けさが増していくが、逆にこの時間ならではの盛り上がりをみせる店もあったり、昼間とはまた違う顔に変わっていく。
自由時間を各自楽しんだロゼンパーティーは、宿屋のなかに集まり就寝の準備をしていた。
「昼間にゼンスと定食屋でご飯食べてたら依頼が来たんだけど」
ロゼンが歯磨きをしながら話しだすと、鏡台の前に座っていたミモザが聞き返す。
「どんな依頼なのですか?」
「この国の南地区で7日後に行われる"踊り狂え酒池肉林イベント"に参加してしてくれないかって」
「絶対嫌だ」
ベッドの上に寝そべって雑誌を読んでいたティアが問答無用で拒否してきた。
「ちなみに依頼料は?」
「嫌だ」
「いえ受けませんよ。聞いただけです」
「たしか20万¢だったかな」
「………」
「嫌だ嫌だ嫌だ」
「わ、わかっていますって」
一瞬悩んだミモザだったが、ティアの言葉に従った。
「ぐごー」
その定食屋の名物だった山盛りにんにく丼を食べきったゼンスは満腹ですでに眠っていた。
わちゃわちゃとやりとりをしながらも各自就寝の準備ができたため、
「じゃ、そろそろ消すぞ」
ロゼンは部屋の明かりを消し、自分もベッドにはいっていった。
1時間、2時間……と時間は流れ、真夜中と呼ばれる頃になっていく。
暗くなった部屋のなかは、みなの寝息やいびきだけが支配していた。
──だが、そんな安らぎを崩すように爆発音が響き部屋が小さく揺れた。
「あぁ?」
一番最初に起きたのはゼンスだった。
すぐに周りを確認し、部屋は揺れているが、この部屋のなかで異常が起きていないことを確認する。
残りの仲間たちも遅れて起き上がるが、すでに立ち上がっているゼンスが慌てている様子ではないため、慌てずになにが起きているか考える。
「悪い、寝ぼけてたけど今の地震か?」
「いえ、爆発したような音でしたが」
「鍋でも爆発したのかな?」
「ドジっ娘ヒロインかよ」
ロゼンパーティーが話していると、部屋のドアが勢いよく叩かれる。
「勇者さんはいますか! お願いします、助けてください!」
廊下の向こうから聞こえる叫びに、いったい何事かとロゼンは急いでドアを開けた。
「うおっ!?」
開けたとたんになかに入ってきたのは赤い長髪の女だった。
そして、その勢いのままこちらの胸のなかに飛びこんできたため、反射的にロゼンは女を抱きしめるような形になってしまう。
「……な、なな!?」
思わずミモザの顔がひきつった。
「た、助けてください勇者さん! モンスターが暴れていて! 私の家族がそこで襲われているんです!」
それを聞くと、優しく女の身体を横にずらし、ロゼンはうなずいた。
「よし、わかった任せろ。ゼンス武器」
ロゼンが走りだすと、
「なにやってんだ行くぞ」
「うおわぁ!?」
ゼンスは右腕でティアを抱えこみ、右手でそばに立てかけてあった剣を掴んであとに続く。
「………」
遅れて武器を手にとってミモザも走るが、ドアですれ違う赤い髪の女を見るとき、なんともいえない表情になってしまった。
少し間を開けてから残された女は廊下に目をやり、ロゼンパーティーの姿が見えないことを確認すると、
「地獄へいってらっしゃーい、なんてね」
楽しそうに笑いながら手のひらを振った。
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