☆なんちゃってクエスト★

Natsu

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■手に汗握る博打編

【11】

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 ロゼンとティアがポーカーテーブルを囲む群衆のそばまでやってくると、

「おいおい……どうすんだこれ……」

「つ、つええ……」

 静かにざわつく声が聞こえてきた。
 盛り上がりと正反対の暗い雰囲気をかもし出している群衆を見て、2人はすぐになにかが起きていることに気がついた。

「ロゼン」

「わかってるよ。悪いちょっと通してくれ」

 ロゼンは群衆の壁に割り込み、ティアがあとに続いてテーブルのほうに近づいていく。

「───」

 テーブルの姿が見えてきて2人は驚いた。

 見えたのは、席に座っている人型のブリキの人形みたいな存在と、テーブルのそばの床に並べられている4人の人間たちの姿。

「ミ、ミモザ!」

 床に横たわっている人間のひとりが自分たちの仲間だったため、ティアは駆け寄っていく。

『オマエガ ツギノ チョウセンシャカ?』

 ミモザの状態を確認するティアに、ブリキ人形が尋ねてきた。

「……あなたトイね。魔物研究所から脱走してこんなところにいたの?」

『ベツニ ドコニ イヨウガ ボクノ カッテダロ。オマエハ ソイツノ ナカマカ?』

「寝ているのをみると、ミモザはあなたとのゲームに負けたのね」

『イマノ トコロ ソイツトノ アソビガ イチバン タノシカッタゾ。ツヅイテキタ ヤツラハ ダメダメダ。オマエハ スコシ カシコソウ ダナ。ドウスル アソブカ?』

 トイとティアのやりとりを見て、ロゼンはそばにいた群衆のひとりに尋ねる。

「なあ、なんでモンスターとゲームなんかしてるんだ? さっさと捕まえちまえばいいんじゃないのか?」

「──その質問には私がお答えしよう」

 横からおじさんが急に割り込んできた。

「だれ?」

「この国の守備隊長をしているものだ」

「隊長って……だったら国のピンチはあんたが一番に動かないといけないだろ」

「この国ではカジノ運営を止めないようこっそり対処しなければならんのだ。私の部下を2人ゲームに送ったがあっさり負けた。やつは強いぞ」

「だからそれはゲームの話だろ。4人も倒れてんだからもう力づくでいけばいいだろ」

「キミは冒険者だから簡単にそんなことが言えるんだ。キミの国だって独自のルールがあったりするだろ? この国でそれは最終手段だ。カジノ側もこれ以上客が入ってこないようにしてくれているし、客の人数が減りしだい状況に応じて武力で動くつもりではいる」

「……ああ、そう。モンスター1匹に大変だな」

「ここじゃなければいくらでも対処の仕様があるのだが。簡単に侵入させてしまったこちらのミスはいなめないだろう。それにゲームに勝てばいうことを聞くと言っているし、トランプの魔人と言われた私も一発挑んでみるかな」

 トランプの魔人と言われたらしい守備隊長が動き出す。

『ン? ツギハ オマエカ?』

「ああ、そして私で最後だ」

 かっこいいセリフを言いながら守備隊長は席についた。
 いざ、勝負開始!
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