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■手に汗握る博打編
【3】
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ロゼンたちは賭国の中央にそびえ立つ建物の前に来ていた。
きらびやか装飾がほどこされ、魔導具の力を使った噴水がアーチを描き、色鮮やかな花々が一面を飾り付ける光景はまるで別世界に訪れたと錯覚してしまいそうになる。
ここではすべての人間が日ごろの自分を忘れて夢を追い求める挑戦者に成り代わる、まさに一世一代のバトルフィールド──
「ようするにカジノなんだけど、みんな羽目を外しすぎないようにね」
瞳に熱き情熱を宿した仲間たちに、ロゼンは忠告した。
「その通りです。ゼンス、ティア、気をつけなさい」
「おもにキミに言ったんだけど伝わらなかったか」
ロゼンの心配な気持ちは、いつの間にかギャンブルで生きる女みたいなドレスを着ているミモザには届いていなかった。
「安心しろ、俺は誰にも負けねえ」
「いや、あんま勝ち負けにこだわり過ぎないようにしてくれ。あくまでミモザの強烈な要望で立ち寄った程度なんだからさ」
「私も誰にも負けないと誓ぁあばばばばぁあぁっ」
「え、急にどうした!?」
喋っている最中いきなりティアがぶるぶると震えだした。
「あばばばばばっ」
ティアは自身の魔導服から、振動している大きな黒い本“魔本”を取り出す。
「……あー、びっくりした。なんか連絡きたみたい」
冒険者の必需品"魔本"。
出会うモンスターを知る図鑑としても使われるが、この本はその他にも機能があり、そのひとつが魔本を使った通信が可能であること。
ロゼンパーティーは魔本を開いて、浮かび上がる文章を読んでいく。
「んー……魔物研究所からトイが逃げた、か。冒険者全員に捕獲の依頼が来てるけど、さすがにどこに逃げたのかわからないモンスターを見つけるのは無理がないか?」
「見つけたら捕まえといてね、ぐらいの意味でしょ。世界守備隊も動いてると思うしどうせすぐ捕まるよ」
ティアの答えに、それもそうかとロゼンは思った。
「じゃ、今は冒険者忘れてギャンブラーになりますか。でも繰り返すが節度を持った行動を心がけるよう」
「わかりましたから早く入りましょう。さあさあ」
ミモザがロゼンをぐいぐい押してカジノの中に入っていくため、ゼンスとティアもあとに続いていった。
きらびやか装飾がほどこされ、魔導具の力を使った噴水がアーチを描き、色鮮やかな花々が一面を飾り付ける光景はまるで別世界に訪れたと錯覚してしまいそうになる。
ここではすべての人間が日ごろの自分を忘れて夢を追い求める挑戦者に成り代わる、まさに一世一代のバトルフィールド──
「ようするにカジノなんだけど、みんな羽目を外しすぎないようにね」
瞳に熱き情熱を宿した仲間たちに、ロゼンは忠告した。
「その通りです。ゼンス、ティア、気をつけなさい」
「おもにキミに言ったんだけど伝わらなかったか」
ロゼンの心配な気持ちは、いつの間にかギャンブルで生きる女みたいなドレスを着ているミモザには届いていなかった。
「安心しろ、俺は誰にも負けねえ」
「いや、あんま勝ち負けにこだわり過ぎないようにしてくれ。あくまでミモザの強烈な要望で立ち寄った程度なんだからさ」
「私も誰にも負けないと誓ぁあばばばばぁあぁっ」
「え、急にどうした!?」
喋っている最中いきなりティアがぶるぶると震えだした。
「あばばばばばっ」
ティアは自身の魔導服から、振動している大きな黒い本“魔本”を取り出す。
「……あー、びっくりした。なんか連絡きたみたい」
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出会うモンスターを知る図鑑としても使われるが、この本はその他にも機能があり、そのひとつが魔本を使った通信が可能であること。
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「んー……魔物研究所からトイが逃げた、か。冒険者全員に捕獲の依頼が来てるけど、さすがにどこに逃げたのかわからないモンスターを見つけるのは無理がないか?」
「見つけたら捕まえといてね、ぐらいの意味でしょ。世界守備隊も動いてると思うしどうせすぐ捕まるよ」
ティアの答えに、それもそうかとロゼンは思った。
「じゃ、今は冒険者忘れてギャンブラーになりますか。でも繰り返すが節度を持った行動を心がけるよう」
「わかりましたから早く入りましょう。さあさあ」
ミモザがロゼンをぐいぐい押してカジノの中に入っていくため、ゼンスとティアもあとに続いていった。
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