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■救助編
【2】
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30分後。町の広場の隅っこでゼンスは力尽きていた。
ようやく動きを止めた彼のそばに少女が近づいていく。
「あ、あの……そろそろいいですか?」
少女は、倒れているゼンスに話しかけた。
その言葉に反応したのかゼンスがゆっくりと身体を起こす。
「まだ…だ……」
「………へ?」
「まだ、俺は…始まったばかりな…んだ」
「はい?」
「できないからやらねえんじゃねえ…やらないからできねえんだろ…?」
「はぁ?」
まだまだ俺はこんなもんじゃねえ、などとなんかドラマみたいなストーリーに持っていこうとするゼンスに、どうやって話かけようか少女は迷ったあげく、
「カット」
「───!」
ゼンスに合わせて会話することにした。
「な、なぜだ監督! 俺のどこがダメなんだ!?」
ゼンスは焦った。こんなところで役者の夢は散ってしまうのか。
「うん。キミは自分のことに集中すると周りが見えなくなるね? それではダメなんだ。きちんと人の話を聞き意見を取り入れることができる者こそ真の役者なのだよ」
この小娘は何者でしょう。只者ではありませんね。
「───っ」
小娘の言葉に大きくうなだれるゼンス。自分には足りないものがたくさんあったのだ。
「そうか……つまり俺たちの冒険はこれからだったのか!」
ゼンスは朝日に向かって走りだ
「ちょっと待て! い、いや待って!」
そうとしたが、少女に行く手を阻まれてしまった。
「お、俺よりも早く……お前ただのモブキャラじゃないな?」
「話! 話を聞いてください!」
ようやく会話が成立し、ゼンスと少女は広場のベンチに腰を下ろした。
「で、なんだ?」
ゼンスが尋ねると、少女は真剣な表情のままこぶしを握りしめ口を開く。
「じ、じつは、私の村を救ってもらいたいんです!」
「いいぞ」
「そこをなんとか! ──ってえぇ!? そんなにあっさり!? まだ内容も言ってませんけど!」
「まあ、どうせOKの流れになるだろうしな。とりあえず仲間のとこに戻るからついて来いよ。そこで話してくれ」
「は、はい」
前座の茶番はなんだったのか、あっさり話が終わった2人は宿屋に向かって歩きだした。
ようやく動きを止めた彼のそばに少女が近づいていく。
「あ、あの……そろそろいいですか?」
少女は、倒れているゼンスに話しかけた。
その言葉に反応したのかゼンスがゆっくりと身体を起こす。
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「………へ?」
「まだ、俺は…始まったばかりな…んだ」
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「できないからやらねえんじゃねえ…やらないからできねえんだろ…?」
「はぁ?」
まだまだ俺はこんなもんじゃねえ、などとなんかドラマみたいなストーリーに持っていこうとするゼンスに、どうやって話かけようか少女は迷ったあげく、
「カット」
「───!」
ゼンスに合わせて会話することにした。
「な、なぜだ監督! 俺のどこがダメなんだ!?」
ゼンスは焦った。こんなところで役者の夢は散ってしまうのか。
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「───っ」
小娘の言葉に大きくうなだれるゼンス。自分には足りないものがたくさんあったのだ。
「そうか……つまり俺たちの冒険はこれからだったのか!」
ゼンスは朝日に向かって走りだ
「ちょっと待て! い、いや待って!」
そうとしたが、少女に行く手を阻まれてしまった。
「お、俺よりも早く……お前ただのモブキャラじゃないな?」
「話! 話を聞いてください!」
ようやく会話が成立し、ゼンスと少女は広場のベンチに腰を下ろした。
「で、なんだ?」
ゼンスが尋ねると、少女は真剣な表情のままこぶしを握りしめ口を開く。
「じ、じつは、私の村を救ってもらいたいんです!」
「いいぞ」
「そこをなんとか! ──ってえぇ!? そんなにあっさり!? まだ内容も言ってませんけど!」
「まあ、どうせOKの流れになるだろうしな。とりあえず仲間のとこに戻るからついて来いよ。そこで話してくれ」
「は、はい」
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