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□始まり編
【仲間たち】
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ロゼンとミモザは宿から出ていく。
「!」
が、いきなりロゼンの顔つきが変わった。
理由は簡単、外で待っていた仲間の1人がすぐそこに立っていたからだ。
「遅いよ。なにしてたの?」
と、腕を組んで立っていたのは、大きな黒い帽子をかぶった小柄な少女。
怒ってる。彼女は明らかに怒っている。
これはヤバい、とロゼンは言い訳を始める。
「ち、違うんだ、ティア。これにはわけが」
「うるさい」
言い訳タイム、終了。
「いや、ちょっと待てよ。なにしてたの? て聞いてき」
「うるさい」
説得タイム、終了。
「分かった、事実だけを告げよう。寝ぼうしたのさ、なにか文句あるか!」
逆ギレタイム開始。
投げやりになったロゼンを見て、少女はため息をついた。
この少女の名前は、ティア。職業は魔法使い。
ロゼンパーティーの1人であり、仲間の中でもっとも年齢が若い女の子。
「………」
魔法使いのトレードマークであるつばの広い黒いとんがり帽子を指でくいっと上げながら、ティアは不機嫌そうに目を細めた。
「な、なんだよ、やる気かこの野郎」
威嚇のため腰から剣を抜きとり、ロゼンはびくびくしながら構える。
「おしおきよ、やっておしまい」
ティアは腰に当てて言った。
瞬間、ティアの後ろから物凄い速さでなにかが飛び出してくる。
「ちょっ」
気付いたロゼンはそのなにかから逃げようとしたが、
「――ぐわしっ!」
逃げれなかった。身体に衝撃が走り、勢いよくぶっ飛ばされていく。
そのまま後ろにあった宿屋の壁に激突。
「……う…うう……」
さっきと同じく壁からずりずりとまた出る羽目になった。
宿屋で一晩眠って回復したのに、村からでる前になんかもう瀕死状態だ。
「ゼンス、今のはやりすぎですよ」
ふびんに思ったのか、ミモザがロゼンを蹴り跳ばした男に注意する。
いや、お前はまったく人のこと言えないよ、とロゼンが思ったのは内緒。
ロゼンを蹴り跳ばしたのは頭にハチマキを巻いた男。
彼の名前はゼンス。職業は武道家。頭に巻いたハチマキが闘う男をイメージさせる。
「やりすぎって言われてもよ。こいつがやれって言うからやったんだぜ」
ミモザの注意を聞き、ゼンスはティアの頭を軽くこついた。
「だってムカついたもん」
ティアは悪気もなく言う。
「わかりました。でも次からは気をつけなさい。ロゼン様も一応人間ですので、やりすぎると死んでしまいますからね」
はーい、へーい、とティアとゼンスは返事をした。
(一応……? 正真正銘、人間なんですけど……)
自分の扱いが軽すぎてロゼンはなんだか納得いかないが、こんなのはもう日常茶飯事。慣れてしまった自分が怖いと思う今日この頃。
「おい、ロゼン。演技はやめて早くこいよ」
「いやいやいや、演技でリアルな鼻血は出せないから」
ロゼンは鼻血を拭いてふらふらと立ち上がる。
そんなこんなとロゼン、ミモザ、ティア、ゼンス。パーティーを組む4人が集合した。
「うっし」
さすが勇者。異常な回復力で復活し、軽くストレッチなんかしてしまう。
「んじゃ、そろそろ旅に出発しますか!」
ロゼンはリーダーらしく仲間たちに号令をかける。
……しかし返事がない。仲間たちの姿がすでになかったのだ。
「いや、なんで!?」
ロゼンがあせって顔を振り向けると、村の入り口に背中を向けて歩く仲間たちを見つけた。
「ちょ、待って、置いてかないで!」
置いてきぼりをくらいそうになり、ロゼンは仲間の元にダッシュした。
「!」
が、いきなりロゼンの顔つきが変わった。
理由は簡単、外で待っていた仲間の1人がすぐそこに立っていたからだ。
「遅いよ。なにしてたの?」
と、腕を組んで立っていたのは、大きな黒い帽子をかぶった小柄な少女。
怒ってる。彼女は明らかに怒っている。
これはヤバい、とロゼンは言い訳を始める。
「ち、違うんだ、ティア。これにはわけが」
「うるさい」
言い訳タイム、終了。
「いや、ちょっと待てよ。なにしてたの? て聞いてき」
「うるさい」
説得タイム、終了。
「分かった、事実だけを告げよう。寝ぼうしたのさ、なにか文句あるか!」
逆ギレタイム開始。
投げやりになったロゼンを見て、少女はため息をついた。
この少女の名前は、ティア。職業は魔法使い。
ロゼンパーティーの1人であり、仲間の中でもっとも年齢が若い女の子。
「………」
魔法使いのトレードマークであるつばの広い黒いとんがり帽子を指でくいっと上げながら、ティアは不機嫌そうに目を細めた。
「な、なんだよ、やる気かこの野郎」
威嚇のため腰から剣を抜きとり、ロゼンはびくびくしながら構える。
「おしおきよ、やっておしまい」
ティアは腰に当てて言った。
瞬間、ティアの後ろから物凄い速さでなにかが飛び出してくる。
「ちょっ」
気付いたロゼンはそのなにかから逃げようとしたが、
「――ぐわしっ!」
逃げれなかった。身体に衝撃が走り、勢いよくぶっ飛ばされていく。
そのまま後ろにあった宿屋の壁に激突。
「……う…うう……」
さっきと同じく壁からずりずりとまた出る羽目になった。
宿屋で一晩眠って回復したのに、村からでる前になんかもう瀕死状態だ。
「ゼンス、今のはやりすぎですよ」
ふびんに思ったのか、ミモザがロゼンを蹴り跳ばした男に注意する。
いや、お前はまったく人のこと言えないよ、とロゼンが思ったのは内緒。
ロゼンを蹴り跳ばしたのは頭にハチマキを巻いた男。
彼の名前はゼンス。職業は武道家。頭に巻いたハチマキが闘う男をイメージさせる。
「やりすぎって言われてもよ。こいつがやれって言うからやったんだぜ」
ミモザの注意を聞き、ゼンスはティアの頭を軽くこついた。
「だってムカついたもん」
ティアは悪気もなく言う。
「わかりました。でも次からは気をつけなさい。ロゼン様も一応人間ですので、やりすぎると死んでしまいますからね」
はーい、へーい、とティアとゼンスは返事をした。
(一応……? 正真正銘、人間なんですけど……)
自分の扱いが軽すぎてロゼンはなんだか納得いかないが、こんなのはもう日常茶飯事。慣れてしまった自分が怖いと思う今日この頃。
「おい、ロゼン。演技はやめて早くこいよ」
「いやいやいや、演技でリアルな鼻血は出せないから」
ロゼンは鼻血を拭いてふらふらと立ち上がる。
そんなこんなとロゼン、ミモザ、ティア、ゼンス。パーティーを組む4人が集合した。
「うっし」
さすが勇者。異常な回復力で復活し、軽くストレッチなんかしてしまう。
「んじゃ、そろそろ旅に出発しますか!」
ロゼンはリーダーらしく仲間たちに号令をかける。
……しかし返事がない。仲間たちの姿がすでになかったのだ。
「いや、なんで!?」
ロゼンがあせって顔を振り向けると、村の入り口に背中を向けて歩く仲間たちを見つけた。
「ちょ、待って、置いてかないで!」
置いてきぼりをくらいそうになり、ロゼンは仲間の元にダッシュした。
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