【完結】ハードな甘とろ調教でイチャラブ洗脳されたいから悪役貴族にはなりたくないが勇者と戦おうと思う

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君臨

あうあうあー

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 バークフォードの外壁と城塞、及び勇者襲来で被害を受けた全箇所の修復が完了した。魔族達の尽力によりわずか1ヶ月での完成となった。外壁はより強固な材料で補強され、ダミーと本物それぞれの城塞も新たな罠を取り付けて新製された。
 ただそれよりも目立っているのが、ついでに設置された各広場の大型モニターだ。広場の中心にあった噴水や時計塔に取り付けられたモニターには、今の気温や街のニュース、お得な情報などが随時流れている。前の世界ではそこそこ田舎に住んでいたので、こんな光景は地元ではあり得なかった。その名に恥じない大都会となったな。
 部屋のモニターに映る街の様子を観ながら、そんな感慨に耽っていた。そろそろ時間か。普段あまりしない正装で、司令室に久々に座った俺達は佇まいを直す。
「準備は良い?」
「いつでもどうぞ」
 俺と並ぶアルフィは少し緊張しているようだ。
「アルフィ、大丈夫だよ」
「シャルル様」
「だって俺の方が何倍も緊張してるからな」
 少しどころか滅茶苦茶緊張してる俺は、もうさっきから足がガタガタ震えて、表情がいっさい動かない。関係無いことを必死に考えてないと、失敗するイメージで頭がいっぱいになるぐらいだ。
「落ち着いてね?シャルル様」
「オウ、マカセロ」
 アルフィの手元にあるスイッチを押せば、街にある全モニターの映像が俺達を映し出す。
「いくよ、3、2」
「ちょ!早い!10からやって!」
「えー?10、9、8、7、6」
「と!トイレ大丈夫!?」
「行っとく?」
「いや、俺は大丈夫だ」
「じゃあなんで止めたの。10、9」
「アルフィ!手!机の下で手握ってて良い!?」
「はいはい。これで良い?」
「お水持って来ようか?」
「スタート!」
 急にボタンが押され、画面の上の方に放送中の文字が浮かぶ。
「ええ!?あ!あっ!」
「バークフォードの民達よ!今日は大切な話がある!」
 始まった!?あ、どうしよう頭真っ白!
「まず初めにみなに感謝したい。先の戦いで勇者を撃ち倒せたこと、これは我々全員の、バークフォードの民全員の勝利である!尽力してくれた者、応援してくれた者、信じていてくれた者。全ての勝利だ。本当にありがとう」
「あうあうあー」
「目標であった勇者討伐は成した。なのでここからは未来の話をしよう。しかしその前に、もうみなも知っているだろうが、この街に欠かせない人物を紹介したい。私の隣に座る彼こそが、人の身で勇者と戦い、裏ではみなの生活を支え、良き友として、隣人として、常にこの街と民を愛する男、シャルル・ダカストロだ!」
「あの、その、ち、ちーす」
 アルフィが繋いだ手をギュッと握る。俺ははっとして深呼吸をした。
「すーはー、よし」
 一度目を閉じて、パッと開く。
「私はこの街に住むただの住民の1人だ。そう、みなと同じ。この街を愛するただのひとりの人間だ。そしてアルフォンソを、アルフィを愛する人間だ。ただの人間な私はひとりでは無力で、だけどアルフィと、この街をこれからも守りたい。だから今日はお願いがある。無力な私だが!なんにも出来ない私だが!どんなことがあろうと、私がみんなを守るから!みんなでこの街を、そしてアルフィを守ってくれないか!」
 街の様子を映し出すモニターが人々の顔を映し出す。元カストの住人やドールズ達、街で仲良くなった人や魔道具工場の魔族。みなが頷き歓声をあげている。
「みんな聞いてくれ!私はこの瞬間から!魔王軍を抜ける!」
 盛り上がっていた住民達だが、アルフィのその言葉で静まり返る。
「幹部では無くなった私と、この街は、魔族と敵対することになるだろう。勇者を撃退し、魔族である私が支配することで、王国からも狙われている今、この判断が自分達の首を絞める行為だということは理解している」
 みんなが真剣にその言葉に耳を傾けていく。
「しかし私は考える。このまま魔王軍に属する限り、人間と魔族との真の平等は成されない。この街の人間が自らに誇りを持ち、魔族を助ける存在になるために、そしてこの街の魔族が自由になって、人間を心から愛することが出来るようになるために、私は魔王軍幹部の名を捨て、この街以外の世界の全てと戦うことを選択した!」
 それぞれが、それぞれの立場でその言葉を理解しようとしている。そしてみんなが待っている。その時を。
「もう逃げたければ逃げろと、この街を去れとは言わない。あの日みんなに願ったことを、もう一度願おう。この街に!バークフォードに住む全ての民よ!私!アルフォンソ・ディ・バークフォードと共に戦ってくれ!今日からここは!独立国家バークフォード王国だ!」
 民が両手を上げて歓声をあげる。魔族が空を飛び、花火が上がった。
「それともうひとつ相談がある」
「ん?」
 なんだ?これで終わりだろ?
「国王には、シャルル・ダカストロを推薦したい!」
 なんだ?なに言い出してんの?そんなの誰も納得するわけーーー
 地震か。本気でそう思ったぐらいに、先程以上の歓声が響く。卑屈で自分を信じられないこの俺だが、モニターに映る民達の顔を見てしまったからには認めざるを得ない。彼らのその歓喜の表情が嘘だなんて、誰が言えようか。
「俺で、良いのか?」
「シャルル様以外にいないよ」
 こうして俺はこの国の王となった。
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