上 下
77 / 128
支配

密書だよ?

しおりを挟む
 今日はアルフィと街をぶらぶらしながらデート。ふふ、2人でこんなにゆっくり出来るのは、もしかしたらアルフィがカストに来た頃以来じゃないか?
「都市化に伴って減少した農地にも用水がしっかり行き届くように設計してるわけだけど、どうしてもフォローしきれない部分が出てきて、これが理由でまた農地が減ってという悪循環は否めないよね」
 アルフィは俺がかつてしたように、バークフォードの街を歩いて案内してくれている。カストと違ってかなり都会な街だから、人口も多く職業の幅も広い。それにしても必死に街を説明するアルフィの横顔は尊いなぁ。額に入れたい。
 いかんいかん。せっかくアルフィが説明してくれているのだ。俺も今まで寝ていたわけじゃないというところを見せねばな。
「そう言えばそこの宿屋の掃除係のおばさんも、つい最近までは麦を育てていたと言っていたな。そうか、トニーが言っていたうまい話ってのはそれだな?なるほど、確かに農家を辞めた人間の中には、戻りたいと思う人間も少なからずいるわけか」
「ちょ、ちょっと待ってシャルル様」
「ん?」
 その時店から出てきた年配の男性に声を掛けられる。
「おお!ダカストロ様!先日はありがとうございました!」
「おや、今日は杖の調子が良さそうですね」
「はは!年寄りを虐めんで下さい!」
「なにを仰る!あはは!」
 まったくいつ会っても愉快な方だ。おや、あれはベーカリーの奥さん。
「ちょっとダカストロ様!これ食べてっておくれよ!」
「新作ですか?ふむ、ん?これは塩ですか?それも上質な。何処でこれを?」
「それは企業秘密さね。あんまり客が付くと値が上がるからね」
「そうですか?大量の顧客が見込まれるなら、大量に入荷して安く広く売った方が儲かると、商人ならそう考えそうですが?」
「なるほどねぇ。これ、商品化しようとすると単価が高くなるのよ。少し抑えられるかしら?」
「この素晴らしい味が安く食べられるなら、努力する価値はあるでしょうね」
「本当かい!?さすがダカストロ様だよ!」
 ふふ、ライラも上手くやってるな。岩塩の消費率がどんどん上がっている。このまま普及させて、違う商品のルートにも使わせて貰おう。
「ダカストロ様!ダカストロ様!カストのお友達と一緒に作ったの!」
「おお!これはカスト冠!上手く出来てるね!俺も昔よく作ったよ!」
 この前街の子供集めて逃走中やった時の子だ。
「ダカストロ様!大変だよ!今度は舌の肥えた商人が団体で来るって!」
 まったく、エラーリアさんはまたこんなに慌てて。
「大丈夫。あれだけ練習したでしょう?あなたなら出来ます!」
「本当かい?あぁ、私に出来るかね?」
「言ったでしょ?自分を信じられなくなったら、あなたを信じた人を思い出して下さい」
「あ、あぁ、そうだね!いつかってのは今日だ!使うよ!先代の包丁!」
「頑張って下さい!」
 走り去っていく後ろ姿に手を振っていると、また違う声に話し掛けられる。
「シャルル様!」
「なんですかって、アルフィか。どうした?」
「いや!なんでシャルル様たった1ヶ月でこんな街の中心人物になってるの!?」
「そんなことは無いぞ?俺は普通にぶらぶらしてて、初めはカストの民が上手く仕事にあり付けるように手助けをし、その上でバークフォードの民にも少しだけ手を貸しただけだ」
「な!ウチの民になにをした!?」
「誠心誠意、出逢う人全員と話をして、悩みを聞いて、共に考え、動き、励ました」
「くうう!夜はあんなだらしないのに!放っておくとすぐ有能ぶる!ちょっと!僕がすること無くなるから、あんまり目立たないでよ!?」
「はっはっは!こんな広い街を俺1人がどうこう出来るわけが無いだろ?心配するなよ」
 その時、ハットを目深に被った怪しい男が俺にぶつかる。
「おっと、すいません」
「いえいえ」
 俺はぶつかった瞬間に受け取った封筒を確かめようとして。
「待て待て待て!なんだそれは!」
「え?密書だよ?」
「なんで密書受け取ってんだ!なんの密書だ!」
「いや、さすがにこれは言えないよ。だって密書だもん」
「シャルル様絶対この街の裏でも暗躍してるでしょ!?止めてよ!もう!あいつ絶対マフィアじゃん!なに裏組織とも繋がってるの!?」
「いや、魔族に裏組織との繋がり怒られても」
「今正論いらねえよ!」
 俺が正論言うとすぐ怒られる。辛い。
「ちなみにアルフィ。この街に何故か魔道具が流通してるんだが、なにか知ってるか?」
「え?知らないよ。てかシャルル様が知らないことは僕も知らないよ、そっちの方が詳しいんだから。どうせマスターでしょ?」
「いや、オカンが居ないからマスターは商品を入荷出来ない。本人も嘆いていたから確かだ」
「じゃあ、誰?」
「謎のローブの男。店長と呼ばれているらしい。そいつから買えるって噂が広まってる」
「店長?あ、あぁ」
「なんだ?やっぱり知ってるのか?」
「えっと。そう言えば、なんか生き生きしてるねシャルル様。そんなにこの街楽しい?」
「ん?はは!もちろんだろ?ここはアルフィの故郷で、もうすでに俺とカストの民が住む第2の故郷だ」
 アルフィが唇をクネクネさせて変な顔をしている。なんだかわからんがレア可愛い。
「今日もちょっとだけサービスしてあげる」
「やった!」
 なんだか夜はサービス付きらしい!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

弟の可愛さに気づくまで

Sara
BL
弟に夜這いされて戸惑いながらも何だかんだ受け入れていくお兄ちゃん❤︎が描きたくて…

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

処理中です...