【完結】ハードな甘とろ調教でイチャラブ洗脳されたいから悪役貴族にはなりたくないが勇者と戦おうと思う

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風呂は後で入るから早く帰れ

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「といった事情で、悪いがまたオカンには隠れて貰わないといけない」
「なんやまたかいな。アルフィの兄ちゃんなんやったら挨拶せなあかんやろ」
「いいの!相手は魔法に精通した人間なんだから、魔族って気付かれる可能性があるだろ!?」
「なんやのんな、怒鳴らんでもええやんか。あーこわ、こわ」
「マスターも!民から薬とかヤバいやつ回収しとけよ?」
「ええ、ちゃんと鍵付きの金庫に入れろと指示しています」
「回収しろって!てか絶対まだ売ってるだろ!?」
 フィデロの対処について盛り上がっていた時、ガラガランと扉に付いたベルが鳴った。まあ俺達以外にも客が来ることはたまにあるから珍しくないが。アルフィが変な顔して固まってるから出来たら扉の方は見たくない。
「おや?奇遇ですね」
「に、兄さん」
「な!ダカストロ様、ほら!挨拶!挨拶を!」
 マスターがぐいぐい押してくる。挨拶出来なかったこともしっかり報告したからだ。しかし俺は秘策の『変顔して顔を歪めて、こいつは伯爵じゃないなと思わせる作戦』を決行中なので話せない。
「アルフォンソを探して歩いていて、寝そうなぐらい疲れたから休もうと思って入った店にいるなんて、なんていう奇跡なんでしょう」
 えらく説明口調で嘘臭い。両手を合わせて喜ぶ仕草がより嘘臭い。だが俺は口を歪めてやや白目なので見えづらい。
「ひ、久しぶりだね、兄さん」
「そうですね。また大きくなりました?」
「また兄さんが縮んだんじゃないの?」
「もう、そんなはずないでしょ?あ、そちらの方は先日お会いしましたね?」
 しっかり俺の目の前に立って退路を断つフィデロに対し、俺はようやく椅子から立ち上がる。見下ろすフィデロは160cmぐらいのアルフィより更に小さい。190cm越えの俺が見ると、首が痛いほど見下さないと見れない。俺は真っ直ぐ下を見るようにフィデロの顔を覗き、眉間に皺を寄せて言った。
「ごめんなさい、俺がシャルル・ダカストロです」
 もう身分が無ければ土下座していたぐらいしっかり頭を下げた。
「知ってますよー?ふふ。弟も居ますしフィデロと呼んで下さい。私も『シャルルさん』か『おいお前』のどちらかで呼ばせて頂きますね」
 わあ、笑い方がアルフィに似てる。やっぱ兄弟だな。そしてやっぱ根に持つタイプの人だぁ。あはは。
「座っても?」
「どうぞ」
 マスターが椅子を勧める。そこでアルフィが黙っていることに気付き顔を見ると、何故か真っ青だ。別に会っても問題ないと言っていたのに。あれ?おい、なんだ?なんで1番奥の指定席に、いつもどおりパンチパーマのばばあが座ってんだ!?おおおい!
「そちらの方のご紹介は?アルフォンソやシャルルさんのお友達ではないのですか?」
 わざわざマスターが1番遠い席に座らせたのに、椅子から立ってオカンに近付き、頭のモジャモジャを「ほー」と言いながら眺めているフィデロ。
 帰るタイミングもなく奇襲的に店内に入られて、どうしようもなくなっているオカンは、俺と目配せをしてから溜息を吐く。いやまあこの段階で隠すのは不自然すぎるからな。幸いパッと見ただのおばちゃんでしかないのが救いだ。
「おばちゃんはオカン。それ以上でもそれ以下でもない、ただのオカンや」
「私はアルフィの兄のフィデロ・ディ・バークフォードです。お会い出来て光栄です」
 オカンが挨拶と共に出した右手は、握られることなく宙に浮いている。ただこちらからは見えないが、フィデロの顔はきっと笑顔なんだろう。
「オカン様、ご用事とやらは良かったのですか?」
「あ、あぁ、そうやったな。あんたらおばちゃんもう帰るで!知らんからな!早よ風呂入りや!?帰るで!?」
「風呂は後で入るから早く帰れ」
「もう知らんからな!おやすみ!」
 マスターの機転で急いで店を出るオカン。店の中の変な空気はいったん弛緩した。
「面白いヒト、でしたね。うふふ」
 なんか『人』の言い方に含みがあった気がする。フィデロが再び席に座ると、俺越しに弟であるアルフィが話し掛ける。
「それで、兄さんなにしに来たの?」
「そりゃあもちろん、アルフォンソを連れ戻しに来たんですよ?」
「なっ!?駄目だ!アルフィは渡さない!絶対だ!」
「あはは、嘘ですよ、嘘」
 俺がアルフィを抱き締めていると、アルフィがひょこっと俺の腕から顔を出していう。
「そもそもここに来たのだって、兄さんが休暇取ってここに視察半分で旅行にでも行ってこいって言うから」
「家に居ても仕事どころか部屋からも出てこない引き篭もりの弟に、家から出る口実を与えたら帰って来なくなったんですよ?心配しました」
「うっ。ごめんって」
 引き篭もり?アルフィが?そんな感じには見えなかったし、出会った時から明るくて人当たりの良い性格だったのに。
「でもごめん。シャルル様が言う通り、僕はここにずっと居たいと思ってる」
 フィデロはなにも言わない。ん?そうか、そうだ、そうなんだよ!今彼にアルフィがここに居る許可を貰えば、あの物語のシナリオみたいになることはない!
「フィデロさん!アルフィを、いやアルフォンソを俺の執事として雇いたい!どうだ!?」
「執事?ですか?」
「うん!今は執事だった人間が辞めたばかりで、誰か適任者を探していたんだ!どうだ!?」
 アルフィがポカンと口を開けている。可愛い。ちゅうしたい。いや、集中しろ、俺。
「うーん、まあ家に居てもなにもしませんし、そちらが良いなら私から父上にも話しておきましょう。その代わり、バークフォード家の名前に傷を付けるような真似は慎むんですよ?良いですね?アルフォンソ」
「え?は、はい!良いの!?僕がシャルル様の執事!?正式に!?」
「ああ!やったなアルフィ!今日からアルフィは俺のエッチな執事だ!」
「ありがとう!でも心の声が漏れやすくなってるから気を付けてね!身内が居るから!忘れないで!」
「あはは!やったぞ!」
「あ、でも兄さん。連れ戻す気がないならなんで来たの?やっぱ勇者が?」
「ええ、彼が魔族がなんだと五月蝿いので、じゃあ見て来るから大人しくしてなさいって言って、仕方なく私が見に来たんですよ。彼、一度言ったら聞きませんから」
「フィデロさん、あの、この街も俺も、えっと、その」
 魔族と関係無いと言いたいが、関係無くもないので言い辛い。
「わかってますよ、全部。安心して下さい」
「そ、そうか。良かった」
「それよりお腹空きました。マスター、なにか食べれるものは?出来ればチャンサンマハの気分です」
 よし、これで問題は解決だ。そうだよ、あんな性格の勇者の話なんて誰も信じない。そして敵になるはずだったフィデロが俺達の関係を認めてくれたとなれば、シナリオは成り立たなくなって、俺は勇者に殺されることはなくなる!ん?そうなのか?少なくとも勇者はもう、俺のこと滅茶苦茶警戒してるし、いつか滅ぼすとか言ってた気もするぞ?
「え?本当にチャンサンマハ出来るんですか?」
「ラム肉はある程度の部位なら常備しております」
「ここ本当になんでも出てくるよ、怖いぐらいに。バーという概念はすでに僕の中からは消えてるからね」
 楽しそうに話すフィデロに念の為聞いておく。
「なあ、勇者やっぱ怒ってた?」
「ええ、それはそれはとても怒ってましたよ?彼負けたこと無かったんで、プライドが酷く傷付いたんでしょう」
「いや!でもな!?あれはあっちから!」
「はは、私としたら良い薬になるし、負けた経験もいつか旅に出る時に必要になると思いますし、良い経験をしたなと考えてたぐらいですよ」
「そう言って貰えると安心したよ。出来ればその、フィデロさんからも言ってくれないか?勇者に、その、あんまり俺らと関わるなって」
「そうですね。彼が勘違いしてる部分はしっかり私から説明してみます。まあ彼、私の言うことも全然聞きませんから、あまり期待はしないで欲しいですけど」
「ありがとう」
「御注文のチャンサンマハと季節の果物です」
「わぁ!美味しそう!いただきます!」
 良かった、これで解決に向かいそうな気がしてきた。まあまた勇者が攻めてきたらその時はその時だ。オカンのことがバレなかったら問題ない。なんか気付いてたっぽいけど。大丈夫だよな?
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