59 / 128
破壊
ミツカッタライイデスネ
しおりを挟む
勇者が居なくなって数日。平和な日々が続いている。ようやくこれで安心出来ると胸を撫で下ろしながら、俺は街の民に挨拶しつつ問題がないか見て回る。まだ勇者に付けられた傷跡が癒えていないからな。
「ん?あ、おい、危ない」
そうして歩いていると、目の前をふらふら歩いている髪の長い女性を見つけて咄嗟に身体を支える。
「大丈夫か?体調が悪いのか?」
パッとこちらを見た女性はピンクの髪と緑の目で、まるでアルフィを女の子にしたような顔だった。まだ歳も若そうだ。ひとりでカストまで来たのか?こんなふらふらになりながら。
「おい、なにがあった?問題なら力になるぞ?」
「え?あぁ、え?あ、私ですか?」
「え?おう」
今起きたような顔で俺を見た女性は、ニコッと笑って頭を下げる。
「あはは、すいません。私体調悪そうにみえるだけでいつもこれで絶好調なんです。たいていは半分寝てるので。紛らわしくてごめんなさい」
しっかりと頭を下げられて驚いた俺は、慌ててすぐに頭を上げてもらう。
「おいおい、こっちが勘違いしたんだ。頭を上げてくれ。それより見ない顔だが、観光か?」
最近は観光客が更に多くなっているからな。名物料理と銘打った物も定着してきたし、付加価値を付けた観光地を開発したりと頑張った甲斐がある。
「いえ、人探しみたいな感じですかね。それより出店が多いですが、今日はお祭りですか?」
「いや、旅の商人さ。実際居着いてここで商売する人間も多いが、ああやって街に来た時だけ屋台をやる行商人が多いんだよ。あれはね、店の売上に関係なく、屋台も街が用意して1日定額なんだ。腕に覚えのある商人はこぞってあれをやりたがる。それで得る儲けは少なくはなるが、こうやって毎日が祭り気分になるし、なにより観光客もここの民もすぐに店が入れ替わるから飽きないんだよ。収入は観光客からってわけさ。だから君も良かっったら是非利用してくれよ」
「ニコッと笑うと怖いですね」とよく言われる俺の曰く付きのスマイルを向けると、旅の女性はふむふむと頷きながらチラッと俺を見た。やっぱり怖かったのか。
「詳しいですね。まさかここの伯爵だったりして?」
まあ伯爵がこんなにフランクなことはなかなか無いからな。相手も冗談半分なんだろう。よし、驚かせて。
「もし貴方が伯爵なら話が早いんですけどね。アルフォンソの居場所も知ってるでしょうし」
「んー?」
「いえ、この街に私の弟がいるはずなんですよ」
「いや、ん?」
あれ?アルフィにお姉さんなんかいたのか?物語には出て来なかったし、アルフィから聞いたことも。
「何処にいるんでしょうかね?私と同じでピンクの髪の19歳の男なんですが」
ん?あー。あ、ああ。ああああ!てか!お姉さんでもなんでもヤバいぞ!?待て待て待て!勇者か!?あいつが侯爵や子爵にチクったんだ!くそ、やっぱそうなるよな。やっぱり生かして帰すべきじゃなかったか。
「伯爵にも会ってみたいんですよね」
「ナナナナナナ、ナナナンデ?」
「あの馬鹿みたいに強い勇者さんに勝ったらしいですから、さぞお強いんだろうなと」
「ち、ちなみに、ですよ?」
「はい?」
「その探し人が見つかったら、どうするんですか?」
「んー?お話を聞くんですよ?なんだか魔族がどうだとか変な話もあるみたいですから、私も自身の領地ではないとはいえ、近隣の土地を預かる子爵として放っておけませんし」
「ししゃーく?」
「はい。ししゃーくですよぉ。フィデロ・ディ・バークフォードと申します」
しっかりと貴族の礼をされたので、咄嗟に貴族として礼を返してしまったが、なにも無かった顔をして背を向ける。
「ミツカッタライイデスネ」
「ありがとうございまーす」
今俺に出来るのは足早に去って、出来る限り早くアルフィに報告することだけだ。
「ん?あ、おい、危ない」
そうして歩いていると、目の前をふらふら歩いている髪の長い女性を見つけて咄嗟に身体を支える。
「大丈夫か?体調が悪いのか?」
パッとこちらを見た女性はピンクの髪と緑の目で、まるでアルフィを女の子にしたような顔だった。まだ歳も若そうだ。ひとりでカストまで来たのか?こんなふらふらになりながら。
「おい、なにがあった?問題なら力になるぞ?」
「え?あぁ、え?あ、私ですか?」
「え?おう」
今起きたような顔で俺を見た女性は、ニコッと笑って頭を下げる。
「あはは、すいません。私体調悪そうにみえるだけでいつもこれで絶好調なんです。たいていは半分寝てるので。紛らわしくてごめんなさい」
しっかりと頭を下げられて驚いた俺は、慌ててすぐに頭を上げてもらう。
「おいおい、こっちが勘違いしたんだ。頭を上げてくれ。それより見ない顔だが、観光か?」
最近は観光客が更に多くなっているからな。名物料理と銘打った物も定着してきたし、付加価値を付けた観光地を開発したりと頑張った甲斐がある。
「いえ、人探しみたいな感じですかね。それより出店が多いですが、今日はお祭りですか?」
「いや、旅の商人さ。実際居着いてここで商売する人間も多いが、ああやって街に来た時だけ屋台をやる行商人が多いんだよ。あれはね、店の売上に関係なく、屋台も街が用意して1日定額なんだ。腕に覚えのある商人はこぞってあれをやりたがる。それで得る儲けは少なくはなるが、こうやって毎日が祭り気分になるし、なにより観光客もここの民もすぐに店が入れ替わるから飽きないんだよ。収入は観光客からってわけさ。だから君も良かっったら是非利用してくれよ」
「ニコッと笑うと怖いですね」とよく言われる俺の曰く付きのスマイルを向けると、旅の女性はふむふむと頷きながらチラッと俺を見た。やっぱり怖かったのか。
「詳しいですね。まさかここの伯爵だったりして?」
まあ伯爵がこんなにフランクなことはなかなか無いからな。相手も冗談半分なんだろう。よし、驚かせて。
「もし貴方が伯爵なら話が早いんですけどね。アルフォンソの居場所も知ってるでしょうし」
「んー?」
「いえ、この街に私の弟がいるはずなんですよ」
「いや、ん?」
あれ?アルフィにお姉さんなんかいたのか?物語には出て来なかったし、アルフィから聞いたことも。
「何処にいるんでしょうかね?私と同じでピンクの髪の19歳の男なんですが」
ん?あー。あ、ああ。ああああ!てか!お姉さんでもなんでもヤバいぞ!?待て待て待て!勇者か!?あいつが侯爵や子爵にチクったんだ!くそ、やっぱそうなるよな。やっぱり生かして帰すべきじゃなかったか。
「伯爵にも会ってみたいんですよね」
「ナナナナナナ、ナナナンデ?」
「あの馬鹿みたいに強い勇者さんに勝ったらしいですから、さぞお強いんだろうなと」
「ち、ちなみに、ですよ?」
「はい?」
「その探し人が見つかったら、どうするんですか?」
「んー?お話を聞くんですよ?なんだか魔族がどうだとか変な話もあるみたいですから、私も自身の領地ではないとはいえ、近隣の土地を預かる子爵として放っておけませんし」
「ししゃーく?」
「はい。ししゃーくですよぉ。フィデロ・ディ・バークフォードと申します」
しっかりと貴族の礼をされたので、咄嗟に貴族として礼を返してしまったが、なにも無かった顔をして背を向ける。
「ミツカッタライイデスネ」
「ありがとうございまーす」
今俺に出来るのは足早に去って、出来る限り早くアルフィに報告することだけだ。
1
お気に入りに追加
208
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる