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破壊

ミツカッタライイデスネ

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 勇者が居なくなって数日。平和な日々が続いている。ようやくこれで安心出来ると胸を撫で下ろしながら、俺は街の民に挨拶しつつ問題がないか見て回る。まだ勇者に付けられた傷跡が癒えていないからな。
「ん?あ、おい、危ない」
 そうして歩いていると、目の前をふらふら歩いている髪の長い女性を見つけて咄嗟に身体を支える。
「大丈夫か?体調が悪いのか?」
 パッとこちらを見た女性はピンクの髪と緑の目で、まるでアルフィを女の子にしたような顔だった。まだ歳も若そうだ。ひとりでカストまで来たのか?こんなふらふらになりながら。
「おい、なにがあった?問題なら力になるぞ?」
「え?あぁ、え?あ、私ですか?」
「え?おう」
 今起きたような顔で俺を見た女性は、ニコッと笑って頭を下げる。
「あはは、すいません。私体調悪そうにみえるだけでいつもこれで絶好調なんです。たいていは半分寝てるので。紛らわしくてごめんなさい」
 しっかりと頭を下げられて驚いた俺は、慌ててすぐに頭を上げてもらう。
「おいおい、こっちが勘違いしたんだ。頭を上げてくれ。それより見ない顔だが、観光か?」
 最近は観光客が更に多くなっているからな。名物料理と銘打った物も定着してきたし、付加価値を付けた観光地を開発したりと頑張った甲斐がある。
「いえ、人探しみたいな感じですかね。それより出店が多いですが、今日はお祭りですか?」
「いや、旅の商人さ。実際居着いてここで商売する人間も多いが、ああやって街に来た時だけ屋台をやる行商人が多いんだよ。あれはね、店の売上に関係なく、屋台も街が用意して1日定額なんだ。腕に覚えのある商人はこぞってあれをやりたがる。それで得る儲けは少なくはなるが、こうやって毎日が祭り気分になるし、なにより観光客もここの民もすぐに店が入れ替わるから飽きないんだよ。収入は観光客からってわけさ。だから君も良かっったら是非利用してくれよ」
 「ニコッと笑うと怖いですね」とよく言われる俺の曰く付きのスマイルを向けると、旅の女性はふむふむと頷きながらチラッと俺を見た。やっぱり怖かったのか。
「詳しいですね。まさかここの伯爵だったりして?」
 まあ伯爵がこんなにフランクなことはなかなか無いからな。相手も冗談半分なんだろう。よし、驚かせて。
「もし貴方が伯爵なら話が早いんですけどね。アルフォンソの居場所も知ってるでしょうし」
「んー?」
「いえ、この街に私の弟がいるはずなんですよ」
「いや、ん?」
 あれ?アルフィにお姉さんなんかいたのか?物語には出て来なかったし、アルフィから聞いたことも。
「何処にいるんでしょうかね?私と同じでピンクの髪の19歳の男なんですが」
 ん?あー。あ、ああ。ああああ!てか!お姉さんでもなんでもヤバいぞ!?待て待て待て!勇者か!?あいつが侯爵や子爵にチクったんだ!くそ、やっぱそうなるよな。やっぱり生かして帰すべきじゃなかったか。
「伯爵にも会ってみたいんですよね」
「ナナナナナナ、ナナナンデ?」
「あの馬鹿みたいに強い勇者さんに勝ったらしいですから、さぞお強いんだろうなと」
「ち、ちなみに、ですよ?」
「はい?」
「その探し人が見つかったら、どうするんですか?」
「んー?お話を聞くんですよ?なんだか魔族がどうだとか変な話もあるみたいですから、私も自身の領地ではないとはいえ、近隣の土地を預かる子爵として放っておけませんし」
「ししゃーく?」
「はい。ししゃーくですよぉ。フィデロ・ディ・バークフォードと申します」
 しっかりと貴族の礼をされたので、咄嗟に貴族として礼を返してしまったが、なにも無かった顔をして背を向ける。
「ミツカッタライイデスネ」
「ありがとうございまーす」
 今俺に出来るのは足早に去って、出来る限り早くアルフィに報告することだけだ。
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