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洗脳
さっさと出て行け、クソ野郎
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昨日の夜、勇者が泊まる宿屋の店主に手紙を預けておいたので、今日は屋敷に勇者が踏み入ることなく、街のカフェで集合することが出来た。カフェは盛況ですでに数人の客が入っている。いくら話が通じない相手でも、これだけ多くの民の目があるなかで抜刀はしまい。
寝不足の俺達が遅刻しなかったのに、勇者が来たのは約束の時間を軽く2時間過ぎた後だったが、来てくれたから文句もない。アルフィがすでにキレそうだが、大丈夫だ。大丈夫なはずだ。アルフィの肩を撫でながら落ち着かせ、話を始める。
「なにしに来たわけ?」
苛立ちながらアルフィが切り出したが、勇者は返事もしない。足を組んでふんぞり返って座ったまま、おちょくったような顔でこちらを見ている。
「おい、返事ぐらいしろよ」
アルフィの声が聞いたことないぐらい低くなっていく。胃が痛い。たぶん俺だけなんだが、恋人と一緒に元恋人に会ってる感覚だ。経験無いけど。
「ちっ。人が楽しくやってる所に頼まれても無いくせに土足でズカズカと入り込んで来て。仕方なくこっちが顔見せてやったのに自分はそんな態度で黙り?」
ここまで言われて、それでも話さない。むしろ俺が言い訳したくなってくる。勇者が無視したままなので、そっと俺が話し掛ける。
「えっと、なんで話さないんだ?」
「ん?洗脳されてる馬鹿と話しても仕方ないだろ?今日はどんな具合か見に来ただけだ。お見事、まさに洗脳されているようだ」
ふふっと笑って机の上に乗っていたコーヒーを飲もうと手を伸ばしたが、アルフィがそれを奪って勇者に向かってぶち撒ける。ある程度時間は経っているがホットのコーヒーだ。しかし勇者はそれでも動かない。
「ふう、そんなに俺が人形遊びをしてる所がみたいのか?」
「お前!」
「アルフィ!落ち着いて!」
なんとかアルフィを座らせると、逆に勇者が立ち上がる。
「やはり洗脳を解かないとこいつは使い物にならなさそうだな。まんまと洗脳される程度のやつに時間を割くぐらいなら、他を探した方が早いが。ふむ、やはり面白そうだ。なにかヒントが無いか少しこの街を探ってみるか」
まるでゲームでもしてるみたいに、最後まで俺達を無視してひとりで話しているような態度。アルフィが怒りで震えている。俺は立ち上がって勇者の前に立つ。
「すまない、熱かっただろ?」
そう言って俺が飲んでいたアイスコーヒーを勇者の頭からしっかり掛けて、笑顔で出口を指差した。
「さっさと出て行け、クソ野郎」
「ふっ、安い挑発だ」
ドンと身体を俺にぶつけて去って行く勇者。俺はそれを睨みながら見送り、アルフィに駆け寄る。
「アルフィ、ごめんな」
「なんでシャルル様が謝るの!?こっちこそ、僕のせいであんなやつと関わらせて、本当に」
「もうアルフィは2度とあいつに会わせない。俺が間違っていた。これ以上アルフィを傷付けるような真似はさせない」
アルフィを抱き締めてそう言うと、アルフィは黙って俺の胸に顔を埋めた。
「ダカストロ様、どうしたの?」
「あっ」
心配した子供に話し掛けられて、咄嗟に手を離す。そういえば店の中だった。店にいた民達が全員注目している。
「みんなの前であんな格好良いことされたら、流石に僕も恥ずかしいよ」
良かった、アルフィが笑ってる。俺は店の人間や客に謝って、店長が止める中しっかり掃除してから店を出た。
寝不足の俺達が遅刻しなかったのに、勇者が来たのは約束の時間を軽く2時間過ぎた後だったが、来てくれたから文句もない。アルフィがすでにキレそうだが、大丈夫だ。大丈夫なはずだ。アルフィの肩を撫でながら落ち着かせ、話を始める。
「なにしに来たわけ?」
苛立ちながらアルフィが切り出したが、勇者は返事もしない。足を組んでふんぞり返って座ったまま、おちょくったような顔でこちらを見ている。
「おい、返事ぐらいしろよ」
アルフィの声が聞いたことないぐらい低くなっていく。胃が痛い。たぶん俺だけなんだが、恋人と一緒に元恋人に会ってる感覚だ。経験無いけど。
「ちっ。人が楽しくやってる所に頼まれても無いくせに土足でズカズカと入り込んで来て。仕方なくこっちが顔見せてやったのに自分はそんな態度で黙り?」
ここまで言われて、それでも話さない。むしろ俺が言い訳したくなってくる。勇者が無視したままなので、そっと俺が話し掛ける。
「えっと、なんで話さないんだ?」
「ん?洗脳されてる馬鹿と話しても仕方ないだろ?今日はどんな具合か見に来ただけだ。お見事、まさに洗脳されているようだ」
ふふっと笑って机の上に乗っていたコーヒーを飲もうと手を伸ばしたが、アルフィがそれを奪って勇者に向かってぶち撒ける。ある程度時間は経っているがホットのコーヒーだ。しかし勇者はそれでも動かない。
「ふう、そんなに俺が人形遊びをしてる所がみたいのか?」
「お前!」
「アルフィ!落ち着いて!」
なんとかアルフィを座らせると、逆に勇者が立ち上がる。
「やはり洗脳を解かないとこいつは使い物にならなさそうだな。まんまと洗脳される程度のやつに時間を割くぐらいなら、他を探した方が早いが。ふむ、やはり面白そうだ。なにかヒントが無いか少しこの街を探ってみるか」
まるでゲームでもしてるみたいに、最後まで俺達を無視してひとりで話しているような態度。アルフィが怒りで震えている。俺は立ち上がって勇者の前に立つ。
「すまない、熱かっただろ?」
そう言って俺が飲んでいたアイスコーヒーを勇者の頭からしっかり掛けて、笑顔で出口を指差した。
「さっさと出て行け、クソ野郎」
「ふっ、安い挑発だ」
ドンと身体を俺にぶつけて去って行く勇者。俺はそれを睨みながら見送り、アルフィに駆け寄る。
「アルフィ、ごめんな」
「なんでシャルル様が謝るの!?こっちこそ、僕のせいであんなやつと関わらせて、本当に」
「もうアルフィは2度とあいつに会わせない。俺が間違っていた。これ以上アルフィを傷付けるような真似はさせない」
アルフィを抱き締めてそう言うと、アルフィは黙って俺の胸に顔を埋めた。
「ダカストロ様、どうしたの?」
「あっ」
心配した子供に話し掛けられて、咄嗟に手を離す。そういえば店の中だった。店にいた民達が全員注目している。
「みんなの前であんな格好良いことされたら、流石に僕も恥ずかしいよ」
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