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失踪7日目
15話
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結局成田と別れてからも特に進展は無いままだ。いつの間にか終わっていた黄泉通信の自動更新後も、何回か手動で更新してみたが新しい写真は見つからなかった。
暗くなって来たので、大人しく家に帰った坂上。朝そっと抜け出したことに対してお小言を言われながらも、夕食はしっかり完食して今は湯船でひと休み中だ。
歩き回った疲れを癒していると、ちゃんと友人がご飯を食べられているのか急に心配になる。今こうやっている間に、足立の身になにかが起こっているかも知れない。そう考えると坂上はなにも出来ない自分が嫌になった。
暖かい湯船に浸かりながら、首を伸ばして頭だけシャワーで冷水を浴びせる。しばらくそうしていると、なんだか少しだけ落ち着けた気がした。そのまま目を瞑って、頭の中で情報を整理していく。
足立が目撃されたのが失踪から3日目。場所は駅前広場。40代ぐらいの男と一緒だった。
そして5日目、坂上が失踪を知った日に、足立の写真が黄泉通信にアップされた。写真の場所は高校の近くの公園。そこには加藤と滝田が居た。
6日目、またもや写真がアップされる。今度の場所は廃墟の一軒家。駅前広場からも、公園からも徒歩圏内だ。そこにも加藤と滝田が居た。
公園も廃墟も心霊スポットとして有名らしい。坂上は知らなかったが、特に廃墟には加藤も滝田も来たことがある様子だった。
そして今日、新たな情報が手に入った。2つの写真がアップされた日に、それぞれ写真の場所で殺人事件が起こっていたのだ。どちらも被害者は若い女性で、拘束されていて、性的暴行を受けた痕跡があったらしい。
2つの共通点。心霊スポットと殺人事件。どちらが足立に関係するのか、それともどちらも関係しているのだろうか。どちらも無関係だとは、思えない。
広場で一緒に居たという男が殺人事件の犯人ならば、足立が連れ回されていることになる。ただそれならなぜわざわざ写真をアップするのか。愉快犯か、それとも意図があるのか。
気になるのはもう一点、坂上が廃墟で見た足立らしき女性。制服を着たその少女の顔は見えていない。だが背格好や髪型が足立と重なるのだ。
彼女は本当に足立だったのか。足立の母親にも確認したので確かだが、失踪当日は写真に写っている私服を着て出ている。制服も持って行っていたということなのか。
「あ、部屋に制服あった」
坂上はシャワーを止めると顔を上げる。そして足立の部屋に行った際、制服がしっかりとハンガーに掛けられていたことを思い出す。それならやはりあれは足立じゃないのだろうか。
「あーもう、わけわかんない」
せっかく冷めた頭を、湯船に潜ってまた温める。
「ぷはっ」
あれは自分の脳が作り出した幻想だったのか。一度そう思ってしまうと、あの時本当に人を見たのかさえ不安になってくる。
──そう言えば、あの時加藤さん凄く慌ててたなぁ。
坂上が足立の名を呼んだ時、押し退けてでも外を確認しようとした加藤。坂上が見てすぐだったが、彼女はなにも見ていないらしい。
和田達の話が本当なら、加藤は足立のことなどさして興味は無かったらしい。それがなぜ今はあそこまで必死に足立を探すのか。和田達が言うように、虐めが原因で失踪したとすれば自分の責任になるからか。しかし坂上はその考えにはいささか賛同しかねる。
必死さが、違う気がするのだ。ただやり過ぎを後悔して探しているとか、ちょっとした自己保身の為だとか、そういう風には見えない。もっとなにか、どうしても足立を見つけないといけないといった執念のようなものを感じていた。
更に言うならば、公園にも先に来ていて、廃墟の場所も知っていた加藤。あの写真そのものについても、なにか知っているのではないか。坂上はそこまで考えて、やはり明日はどうにか加藤を探し出し、しっかり話をしようと思い、湯船から出る。
タオルで身体を拭いていた時、不意にスマホから例の曲が流れる。またもや意味不明なタイミングでのラッキーピエロ。冷静になって曲を聞いていると、なにかに誘われているような、不気味な感覚になる。声を上げるのは我慢出来たが、いまだにこの曲には慣れない。
坂上は挙動不審になりながら周囲を確認すると、すぐに慣れた手付きと薄目によって、アプリを即座に落とす。どうやら今回はなにも起こらないみたいだ。
「こんだけ出るなら、ラッキーでもなんでもないじゃん」
敢えて声に出したのは、強がって自分を騙そうとしたから。そして服を着て、部屋へと戻りながら、ピエロだらけで見たくも無いサムネイルを変える為に、更新ボタンを押した。
「え?」
まだ濡れていた髪を拭いていたタオルが落ちる。廊下で立ったまま食い入るようにスマホを見る坂上。小さなサムネイルのひとつをタップすると、無加工の写真が大きく表示される。
「あった」
それは『さがして』というお決まりのメッセージと共に、泣きそうな顔をしてピースをしている足立の無加工写真だった。
暗くなって来たので、大人しく家に帰った坂上。朝そっと抜け出したことに対してお小言を言われながらも、夕食はしっかり完食して今は湯船でひと休み中だ。
歩き回った疲れを癒していると、ちゃんと友人がご飯を食べられているのか急に心配になる。今こうやっている間に、足立の身になにかが起こっているかも知れない。そう考えると坂上はなにも出来ない自分が嫌になった。
暖かい湯船に浸かりながら、首を伸ばして頭だけシャワーで冷水を浴びせる。しばらくそうしていると、なんだか少しだけ落ち着けた気がした。そのまま目を瞑って、頭の中で情報を整理していく。
足立が目撃されたのが失踪から3日目。場所は駅前広場。40代ぐらいの男と一緒だった。
そして5日目、坂上が失踪を知った日に、足立の写真が黄泉通信にアップされた。写真の場所は高校の近くの公園。そこには加藤と滝田が居た。
6日目、またもや写真がアップされる。今度の場所は廃墟の一軒家。駅前広場からも、公園からも徒歩圏内だ。そこにも加藤と滝田が居た。
公園も廃墟も心霊スポットとして有名らしい。坂上は知らなかったが、特に廃墟には加藤も滝田も来たことがある様子だった。
そして今日、新たな情報が手に入った。2つの写真がアップされた日に、それぞれ写真の場所で殺人事件が起こっていたのだ。どちらも被害者は若い女性で、拘束されていて、性的暴行を受けた痕跡があったらしい。
2つの共通点。心霊スポットと殺人事件。どちらが足立に関係するのか、それともどちらも関係しているのだろうか。どちらも無関係だとは、思えない。
広場で一緒に居たという男が殺人事件の犯人ならば、足立が連れ回されていることになる。ただそれならなぜわざわざ写真をアップするのか。愉快犯か、それとも意図があるのか。
気になるのはもう一点、坂上が廃墟で見た足立らしき女性。制服を着たその少女の顔は見えていない。だが背格好や髪型が足立と重なるのだ。
彼女は本当に足立だったのか。足立の母親にも確認したので確かだが、失踪当日は写真に写っている私服を着て出ている。制服も持って行っていたということなのか。
「あ、部屋に制服あった」
坂上はシャワーを止めると顔を上げる。そして足立の部屋に行った際、制服がしっかりとハンガーに掛けられていたことを思い出す。それならやはりあれは足立じゃないのだろうか。
「あーもう、わけわかんない」
せっかく冷めた頭を、湯船に潜ってまた温める。
「ぷはっ」
あれは自分の脳が作り出した幻想だったのか。一度そう思ってしまうと、あの時本当に人を見たのかさえ不安になってくる。
──そう言えば、あの時加藤さん凄く慌ててたなぁ。
坂上が足立の名を呼んだ時、押し退けてでも外を確認しようとした加藤。坂上が見てすぐだったが、彼女はなにも見ていないらしい。
和田達の話が本当なら、加藤は足立のことなどさして興味は無かったらしい。それがなぜ今はあそこまで必死に足立を探すのか。和田達が言うように、虐めが原因で失踪したとすれば自分の責任になるからか。しかし坂上はその考えにはいささか賛同しかねる。
必死さが、違う気がするのだ。ただやり過ぎを後悔して探しているとか、ちょっとした自己保身の為だとか、そういう風には見えない。もっとなにか、どうしても足立を見つけないといけないといった執念のようなものを感じていた。
更に言うならば、公園にも先に来ていて、廃墟の場所も知っていた加藤。あの写真そのものについても、なにか知っているのではないか。坂上はそこまで考えて、やはり明日はどうにか加藤を探し出し、しっかり話をしようと思い、湯船から出る。
タオルで身体を拭いていた時、不意にスマホから例の曲が流れる。またもや意味不明なタイミングでのラッキーピエロ。冷静になって曲を聞いていると、なにかに誘われているような、不気味な感覚になる。声を上げるのは我慢出来たが、いまだにこの曲には慣れない。
坂上は挙動不審になりながら周囲を確認すると、すぐに慣れた手付きと薄目によって、アプリを即座に落とす。どうやら今回はなにも起こらないみたいだ。
「こんだけ出るなら、ラッキーでもなんでもないじゃん」
敢えて声に出したのは、強がって自分を騙そうとしたから。そして服を着て、部屋へと戻りながら、ピエロだらけで見たくも無いサムネイルを変える為に、更新ボタンを押した。
「え?」
まだ濡れていた髪を拭いていたタオルが落ちる。廊下で立ったまま食い入るようにスマホを見る坂上。小さなサムネイルのひとつをタップすると、無加工の写真が大きく表示される。
「あった」
それは『さがして』というお決まりのメッセージと共に、泣きそうな顔をしてピースをしている足立の無加工写真だった。
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