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失踪5日目
04話
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本当に足立の失踪に事件性は無いのか。学校を出て駅前まで来た坂上はひとりで考える。大きな時計が置いてあるだけの、どこにでもありそうな駅前広場。高校の最寄り駅ではあるが、市内の中では比較的遊ぶ場所が多いこの駅は、登校日でなくとも夏休みの間同じ高校の生徒が多く遊びに来ている。
一昨日、すなわち失踪から3日後に足立は和田達に目撃されている。それがこの駅前広場。坂上は周囲で楽しそうに遊ぶ同じ制服の学生を何気なく見ていた。確かにここで見たなら違和感もない。和田達が居た理由も、男連れの足立が居た理由も自然に想像が付くのだ。
──でも、あの奈々恵が彼氏が出来たからって、おばさんに連絡もせずに外泊し続けるなんて考えられない。むしろ変な男に騙されてたり、いや無理矢理連れ回されてる可能性もある。
色々考え過ぎて疲れた坂上は、アイスでも食べようと近くのファーストフード店に入る。空調の効いた店内に入ると、無意識に深い吐息が出る。肺に入る空気さえ冷たくて、さっきまでなぜ外で考え事をしていたのかと、自分で自分に文句を言いたくなる程である。
「はあああ」
涼しい店内でバニラアイスを食べながら、敢えてホットのコーヒーを飲むプチ贅沢を堪能していた坂上は、いつもの癖でスマホを握る。そして何気なく、本当になにも考えずに指が黄泉通信を押していた。
「あうっ!」
表示されるのは午後の更新で出てしまったラッキーピエロ。視線を緊急回避しなんとか苦手なピエロは見ずに済んだし、音楽も初めの1回だけだったらしく、勝手に大きな音が鳴ることも無かったので安堵する。薄目で画面を見ながら、どうにか更新ボタンを押す。
本来ならポイントが無ければ更新出来ないのだが、かつて足立に紹介されてアプリを取った坂上は、キャンペーンで100ポイント付与されていた。そこにラッキーピエロで増えた10ポイントを足して110回。今消費した1ポイントを引いても109回、これが坂上が後更新出来る回数。興味のない人間にとっては、多過ぎる回数である。
「はあ、危なかった」
ピエロじゃ無くなったサムネイルを眺めながら、口の中で最後のアイスの欠けらを溶かす。
「んー、え?」
並んでる写真は10枚。相変わらず意味のわからない加工がされた写真達。頭が伸びた男の子や、目だけ大きくなった女の人。その中に1枚、どうしても無視出来ない写真が混ざっている。
「な、なんで?嘘でしょ?」
急いでそれをタップすると、画像が大きく表示される。見知った顔の女子が、無理矢理作ったような笑い顔でピースしている。それは正しく今坂上が探している少女、足立奈々恵であった。
「さがして」
コメントの欄にはそう書かれている。コメントはランダムで決められるはずなので、これにはなんの意味も無い。本来ならそうなのだろう。しかし今の状況で全く関係ないなんて誰が言えようか。
「これ、どこ?どこで」
写真を撮った場所を特定しようとヒントを探していて背筋が凍る。
「嘘でしょ、なんでこの写真……」
加工がされていないのだ。本来なら自動で加工されてアップされるはずなのに。そしていつかの記憶が蘇り、写真の中で歪な笑顔を浮かべる少女が、あの日言った言葉を口にする。
「死んだはずの人間が写っている写真は、無加工でアップされる」
偶然だ、そう思いたい。なにかのバグか、それかどこが加工されているか自分が理解出来てないだけ。必死にそう思おうとする坂上だが、写真の下にあるハートマークの中に書いてある数字が、急激に増えていくのに気付いて目を丸くする。これは更新後も特定の写真が見られるようにする為の、お気に入り機能によって登録された数を表すカウントだ。
「なによ、これ」
すぐにSNSで検索を掛けると、あの写真が多く拡散されていた。噂の無加工写真だと、一種の祭り状態になっている。だが今はそんなことに構ってられない。気持ちを切り替えて写真を観察する。
──どこ、ここは。お世辞にも綺麗に刈り取ったとは思えない、生え放題の草木。あまり管理が行き届いていない公園?それなら端に写る汚れた白はなに?
「パンダだ」
塗装が剥げてボロボロのパンダのスプリング遊具。坂上はいつかどこかで見た光景を必死に思い出す。そして高校周辺の地図を検索し、ようやくお目当ての公園を見つけた。
「あった」
飲み掛けのコーヒーごと全てゴミ箱に捨てて、急いで店を出る。無加工の写真、謎の男、しかしなにより、足立が無理矢理笑っているのを見ると酷く不安になる。これが彼女の意思で無いのなら、誰が、なんの為に。
だから走った。駅から20分は離れていたが、それでも止まることなく走り続けた。
一昨日、すなわち失踪から3日後に足立は和田達に目撃されている。それがこの駅前広場。坂上は周囲で楽しそうに遊ぶ同じ制服の学生を何気なく見ていた。確かにここで見たなら違和感もない。和田達が居た理由も、男連れの足立が居た理由も自然に想像が付くのだ。
──でも、あの奈々恵が彼氏が出来たからって、おばさんに連絡もせずに外泊し続けるなんて考えられない。むしろ変な男に騙されてたり、いや無理矢理連れ回されてる可能性もある。
色々考え過ぎて疲れた坂上は、アイスでも食べようと近くのファーストフード店に入る。空調の効いた店内に入ると、無意識に深い吐息が出る。肺に入る空気さえ冷たくて、さっきまでなぜ外で考え事をしていたのかと、自分で自分に文句を言いたくなる程である。
「はあああ」
涼しい店内でバニラアイスを食べながら、敢えてホットのコーヒーを飲むプチ贅沢を堪能していた坂上は、いつもの癖でスマホを握る。そして何気なく、本当になにも考えずに指が黄泉通信を押していた。
「あうっ!」
表示されるのは午後の更新で出てしまったラッキーピエロ。視線を緊急回避しなんとか苦手なピエロは見ずに済んだし、音楽も初めの1回だけだったらしく、勝手に大きな音が鳴ることも無かったので安堵する。薄目で画面を見ながら、どうにか更新ボタンを押す。
本来ならポイントが無ければ更新出来ないのだが、かつて足立に紹介されてアプリを取った坂上は、キャンペーンで100ポイント付与されていた。そこにラッキーピエロで増えた10ポイントを足して110回。今消費した1ポイントを引いても109回、これが坂上が後更新出来る回数。興味のない人間にとっては、多過ぎる回数である。
「はあ、危なかった」
ピエロじゃ無くなったサムネイルを眺めながら、口の中で最後のアイスの欠けらを溶かす。
「んー、え?」
並んでる写真は10枚。相変わらず意味のわからない加工がされた写真達。頭が伸びた男の子や、目だけ大きくなった女の人。その中に1枚、どうしても無視出来ない写真が混ざっている。
「な、なんで?嘘でしょ?」
急いでそれをタップすると、画像が大きく表示される。見知った顔の女子が、無理矢理作ったような笑い顔でピースしている。それは正しく今坂上が探している少女、足立奈々恵であった。
「さがして」
コメントの欄にはそう書かれている。コメントはランダムで決められるはずなので、これにはなんの意味も無い。本来ならそうなのだろう。しかし今の状況で全く関係ないなんて誰が言えようか。
「これ、どこ?どこで」
写真を撮った場所を特定しようとヒントを探していて背筋が凍る。
「嘘でしょ、なんでこの写真……」
加工がされていないのだ。本来なら自動で加工されてアップされるはずなのに。そしていつかの記憶が蘇り、写真の中で歪な笑顔を浮かべる少女が、あの日言った言葉を口にする。
「死んだはずの人間が写っている写真は、無加工でアップされる」
偶然だ、そう思いたい。なにかのバグか、それかどこが加工されているか自分が理解出来てないだけ。必死にそう思おうとする坂上だが、写真の下にあるハートマークの中に書いてある数字が、急激に増えていくのに気付いて目を丸くする。これは更新後も特定の写真が見られるようにする為の、お気に入り機能によって登録された数を表すカウントだ。
「なによ、これ」
すぐにSNSで検索を掛けると、あの写真が多く拡散されていた。噂の無加工写真だと、一種の祭り状態になっている。だが今はそんなことに構ってられない。気持ちを切り替えて写真を観察する。
──どこ、ここは。お世辞にも綺麗に刈り取ったとは思えない、生え放題の草木。あまり管理が行き届いていない公園?それなら端に写る汚れた白はなに?
「パンダだ」
塗装が剥げてボロボロのパンダのスプリング遊具。坂上はいつかどこかで見た光景を必死に思い出す。そして高校周辺の地図を検索し、ようやくお目当ての公園を見つけた。
「あった」
飲み掛けのコーヒーごと全てゴミ箱に捨てて、急いで店を出る。無加工の写真、謎の男、しかしなにより、足立が無理矢理笑っているのを見ると酷く不安になる。これが彼女の意思で無いのなら、誰が、なんの為に。
だから走った。駅から20分は離れていたが、それでも止まることなく走り続けた。
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