私は仕事がしたいのです!

渡 幸美

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19.改めてよろしく

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「そんな訳で。せっかく今生でありがたい能力を授かったからさ。頑張りたいなって」

「その能力を、恋愛方面に生かさないのがエマらしいな」

「うーん、恋愛を拒否してる訳でもないのよ?ジークとローズみたいなカップル、羨ましいなと思うし、見てるの大好きだもん」

むしろ大好物です。

二人が照れ笑いをしているし。

可愛すぎて、尊い。

「前世もさー、そりゃ結婚生活はきれい事だけじゃないけど、お陰さまで幸せだったんですよ。ほんとに文句なくて。だから、結婚なんて!とかはなくて、いい人いたらね、とは思う。エマとして」


「そっか……じゃあ、あの四人じゃ、役者不足よね」

「そもそも、婚約者がいるのに他の女にちょっかい出すとか、その時点でない。せっかくのイケメンも、もうアホな子にしか見えない」

「辛辣だな。しかし同意だ」

自分の身も切らず、相手にも失礼だ。


「だよね?あー、あの四人より、そのご婚約者様たちと仲良くなりたかったのに……あいつらのせいで、声をかけづらくなっちゃってさあ」

「そうなのか?」

「そうよう。あ、言ってなかったわね、エマの事業計画!」

「へぇ、何々?」

「ワタクシ、この国に保育園兼小学校を作りたいです!あと、光魔法を使いながらの薬の研究ももっと深く…
あとあと、私が食べるの大好きなのは、もうバレバレだと思うのですが」

「「そうね」だな」

「米作りを!!したい!」


おー!と二人が言う。

「あー、そこは解るな」

「恋しいわよね」

「だからさあ、あの人達のご婚約者様たちの方が、ビジネスパートナーとしてね……」

それぞれ、水魔法や土魔法のスペシャリストで、光魔法を使える人もいる。水田作りにチャレンジしたい。

「声をかける前にこんなことに…」

「エマ、彼女たちと話をしたいなら私に任せて」

「ローズ…でも、不快にさせないかな?」

「エマ、彼女たちは貴族令嬢よ。きちんといろいろと弁えていると思うわ。大丈夫よ」

「…そう?じゃあ、お願いしようかな。彼女たちの魔法と能力、ぜひご一緒したいの!」


「あと俺からもひとつ。子どもたちは教会が面倒を見てくれてるだろう?それだけでは足りないか?」

「そうね、よくやってくれてるなあとは思うけど、人手不足感はあるし。ほら、孤児院としての役割もあるから。文字とか教えてくれるし、孤児院の子達とも遊べるけど、せいぜい2、3時間なんだよね」

「うん」

「うちの母、刺繍が得意なのね?だから家で内職みたいに仕事ができて、母子家庭でもそれなりに何とかなったけど、私を預けられていたらきっと、オートクチュールを手掛けるようなお店に勤められてたと思うの」

「エマ……」

二人が困ったような顔をする。

「あ、母から何か言われた訳じゃないよ?私が勝手に思ってるだけで。でも、長時間預かってくれる所があれば、選択肢は広がる。父子家庭のパパも助かると思わない?保育士って職業も増えるし!」

「確かにそうだな」


「私は前世の記憶を思い出したとき、まず、なぜ私?って思ったのよ。特に前がひどい…と言ったら語弊があるけど、大変な人生ではなかったし。でもこの国を知って、ローズとジークに会えて、ああ、この為だったのか、と今は思う」

私は二人を真っ直ぐに見て、

「ジークフリート=グリーク王太子殿下とローズマリー妃殿下の治世に、私、エマは聖女として精一杯勤めさせていただきます。共にこの国の発展に尽くさせてください」

最敬礼のカーテシーをする。改めての、聖女としての宣誓だ。


「ありがとう、聖女エマ」

「私も…精一杯、エマの忠心に答えられる妃になります」

二人も、王太子殿下と妃殿下として、答えてくれる。


そう、優しくて頑張り屋の二人と、二人の大切な国民と共に、みんなで幸せになるのだ。
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