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17.光と闇 その2
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「ほら、二人ともそろそろ落ち着いた?そんなに泣くと、身体中の水分がなくなっちゃってない?温かいお茶を淹れ直したから、飲んで。王太子様の手ずからだよ」
軽くウインクをしながら、ジークは私たちの前にお茶を差し出してくれた。
それにしてもジーク…そんな日本男児ではなかなかできないような仕草を、いつ覚えた!と聞きたい。
……聞いたら嫌な顔をされるだろうから、聞かないけど…それに。
「ふふっ、王太子手ずからにお茶を…何か贅沢」
「ジークの淹れてくれるお茶、美味しいのよ」
うん、確かに美味しい。
温かいものを飲むとホッと力が抜けるよね。
「あ、ねぇ、ローズ、ジーク。落ち着いたところで、私ちょっと思うことがあるんだけど」
何?という顔で、二人がこちらを見る。
「闇魔法なんだけど…癒しにも使えるんじゃないかなって」
「「え?!」」
「教会とか授業だとざっくりとしたことしか教わらないけど、前世で本をいろいろ読んでたからさ。闇魔法って破壊的なイメージがあるかもだけど…」
光魔法も闇魔法も、ある意味「時間」に干渉できる側面もあるのでは、ということ。
「光魔法でケガを治す時は、細胞の働きの時間を早めてケガを塞いで治す。闇魔法はその逆」
「逆……」
「うん、『ケガをする前の状態に戻す』ってこと」
「「!」」
「きっと、使い方次第では、うーんと、怖く感じる例えだと、そこにあった建物とかを元に戻すと更地になるわけじゃん。それで破壊っぽいイメージが先行しているのかと。全てを無に帰す!みたいな」
「…なるほど、一理あるな」
「もちろんさ、それだけじゃ説明つかないことなんて山ほどあるけどね?腕とかの再生の時は細胞を再構築している感覚だから、また、時間とは違うようなとも思うけど……でも、闇も光も……っていうか、魔法自体が精神力いるし、人によってカラー?個性?も違ってくるでしょう、同じ属性でも。一つの側面だけじゃ、語れないよね」
「……確かに」
「だからさ、闇だけひとくくりに、何かこわっ!!ってなってるのがおかしいんだよ。包丁とかもそうだけど、なければ困るし、使い方でしょ?火魔法だってそれこそ怖いじゃん、感情のまま暴れられたら。ジーク火魔法持ちだし、分かるでしょ?」
「…………確かに」
「生活するのだってさー、いつも光を浴びてるだけじゃ、かえって辛いよ?夜の闇があるから安らげる。どっちも大事」
「…それも、そうだよな……」
「うん、それにローズ」
私は改めてローズに向かい合う。
「ローズは自分を律する事ができている。しかも凄く優しくて、人に寄り添える。さっき背中を撫でていてくれている時、とても安心したの…ローズの髪色と同じ…銀色の月の光に癒されているような。
きっと……人の心を安らげることができる、優しい月夜の宵闇のような魔法が使えるんじゃないかしらと思うの」
「エマ……ありがとう……私、そんな風に考えたこともなくて……まだ混乱しているわ」
それはそうかも知れない。子どもの頃にゲームの記憶を思い出したのだ。責任感の強い彼女のこと、今の自分でないとはいえ、きっとずっと気に病んでいたのだろう。
自分の力に対する恐怖と戦いながら。
「これは……そうなれば、あるいは……黙らせられる」
ボソッとジークが溢した独り言。
「……黙らせる?」
完全に無意識で、失言だったのだろう。わたしが聞き返すと「いや、何でもない」と、珍しく慌てている。
黙らせる……誰を、だ。
「まさかとは思うけど……ローズが闇魔法持ちだからって、王太子妃としてどうかとかって話が、うるさい年寄り連中から出てたりしてる訳じゃないわよね……?!」
前世の本好き女の想像力をなめんなよ。
後から聞いたら、この時の笑顔は、しばらく夢に見るくらい怖かったらしい。その恐怖からか、
「えっ…と、その」普段はポーカーフェイスのくせに、目が泳ぐジーク。
「……ジーク…」ローズは手を額に当てて、がっくりしている。
「ジークゥゥゥ?!そしてまさか、聖女を妃に、なんて話は出てないわよねぇぇぇぇ?!?!」
「「!!!」」
「!!!じゃないわよー!!何じゃそりゃああああ!!!」
「エ、エマ、落ち着いて、ね?」
「ね、じゃないわよ、ローズ!!!あんたもっと怒りなさいよ!小さい時からこんな、頑張って、いろいろ我慢して、勉強して努力してこんな、こんな立派な淑女を」
「エマ……」
「たかが魔法属性くらいでー!!ぽっと出の聖女なんかと一緒にすんなー!!」
私はもう、怒り心頭で、若干支離滅裂だ。
・・・。
「ぽっ、ぽっと出って、エマ、自分のことなのに、ちょっとやだ、おかしいっ、ダメ、笑っちゃう」
ローズが目に涙を浮かべて笑い出す。ジークまで声を上げて笑っている。何だよ、ちくしょう。
「…ほんとにムカついてるのにぃ」
「わ、分かってるわ、ありがとう、エマ。人の事にそんなに怒ってくれるから……嬉しくて。
こんな時にあれだけど…あの四人、あ、先生たちもか、エマに惹かれるのは解るのよねぇ。ジークも解るでしょ?」
「そうだな、客観的に見て」
「え、あの四人のあれはゲームの強制力ってやつ?だと思ってるけど?地は出してない(はずだ)し」
「「まあ、そういう所も含めてよ」だ」
どういう所だ。
軽くウインクをしながら、ジークは私たちの前にお茶を差し出してくれた。
それにしてもジーク…そんな日本男児ではなかなかできないような仕草を、いつ覚えた!と聞きたい。
……聞いたら嫌な顔をされるだろうから、聞かないけど…それに。
「ふふっ、王太子手ずからにお茶を…何か贅沢」
「ジークの淹れてくれるお茶、美味しいのよ」
うん、確かに美味しい。
温かいものを飲むとホッと力が抜けるよね。
「あ、ねぇ、ローズ、ジーク。落ち着いたところで、私ちょっと思うことがあるんだけど」
何?という顔で、二人がこちらを見る。
「闇魔法なんだけど…癒しにも使えるんじゃないかなって」
「「え?!」」
「教会とか授業だとざっくりとしたことしか教わらないけど、前世で本をいろいろ読んでたからさ。闇魔法って破壊的なイメージがあるかもだけど…」
光魔法も闇魔法も、ある意味「時間」に干渉できる側面もあるのでは、ということ。
「光魔法でケガを治す時は、細胞の働きの時間を早めてケガを塞いで治す。闇魔法はその逆」
「逆……」
「うん、『ケガをする前の状態に戻す』ってこと」
「「!」」
「きっと、使い方次第では、うーんと、怖く感じる例えだと、そこにあった建物とかを元に戻すと更地になるわけじゃん。それで破壊っぽいイメージが先行しているのかと。全てを無に帰す!みたいな」
「…なるほど、一理あるな」
「もちろんさ、それだけじゃ説明つかないことなんて山ほどあるけどね?腕とかの再生の時は細胞を再構築している感覚だから、また、時間とは違うようなとも思うけど……でも、闇も光も……っていうか、魔法自体が精神力いるし、人によってカラー?個性?も違ってくるでしょう、同じ属性でも。一つの側面だけじゃ、語れないよね」
「……確かに」
「だからさ、闇だけひとくくりに、何かこわっ!!ってなってるのがおかしいんだよ。包丁とかもそうだけど、なければ困るし、使い方でしょ?火魔法だってそれこそ怖いじゃん、感情のまま暴れられたら。ジーク火魔法持ちだし、分かるでしょ?」
「…………確かに」
「生活するのだってさー、いつも光を浴びてるだけじゃ、かえって辛いよ?夜の闇があるから安らげる。どっちも大事」
「…それも、そうだよな……」
「うん、それにローズ」
私は改めてローズに向かい合う。
「ローズは自分を律する事ができている。しかも凄く優しくて、人に寄り添える。さっき背中を撫でていてくれている時、とても安心したの…ローズの髪色と同じ…銀色の月の光に癒されているような。
きっと……人の心を安らげることができる、優しい月夜の宵闇のような魔法が使えるんじゃないかしらと思うの」
「エマ……ありがとう……私、そんな風に考えたこともなくて……まだ混乱しているわ」
それはそうかも知れない。子どもの頃にゲームの記憶を思い出したのだ。責任感の強い彼女のこと、今の自分でないとはいえ、きっとずっと気に病んでいたのだろう。
自分の力に対する恐怖と戦いながら。
「これは……そうなれば、あるいは……黙らせられる」
ボソッとジークが溢した独り言。
「……黙らせる?」
完全に無意識で、失言だったのだろう。わたしが聞き返すと「いや、何でもない」と、珍しく慌てている。
黙らせる……誰を、だ。
「まさかとは思うけど……ローズが闇魔法持ちだからって、王太子妃としてどうかとかって話が、うるさい年寄り連中から出てたりしてる訳じゃないわよね……?!」
前世の本好き女の想像力をなめんなよ。
後から聞いたら、この時の笑顔は、しばらく夢に見るくらい怖かったらしい。その恐怖からか、
「えっ…と、その」普段はポーカーフェイスのくせに、目が泳ぐジーク。
「……ジーク…」ローズは手を額に当てて、がっくりしている。
「ジークゥゥゥ?!そしてまさか、聖女を妃に、なんて話は出てないわよねぇぇぇぇ?!?!」
「「!!!」」
「!!!じゃないわよー!!何じゃそりゃああああ!!!」
「エ、エマ、落ち着いて、ね?」
「ね、じゃないわよ、ローズ!!!あんたもっと怒りなさいよ!小さい時からこんな、頑張って、いろいろ我慢して、勉強して努力してこんな、こんな立派な淑女を」
「エマ……」
「たかが魔法属性くらいでー!!ぽっと出の聖女なんかと一緒にすんなー!!」
私はもう、怒り心頭で、若干支離滅裂だ。
・・・。
「ぽっ、ぽっと出って、エマ、自分のことなのに、ちょっとやだ、おかしいっ、ダメ、笑っちゃう」
ローズが目に涙を浮かべて笑い出す。ジークまで声を上げて笑っている。何だよ、ちくしょう。
「…ほんとにムカついてるのにぃ」
「わ、分かってるわ、ありがとう、エマ。人の事にそんなに怒ってくれるから……嬉しくて。
こんな時にあれだけど…あの四人、あ、先生たちもか、エマに惹かれるのは解るのよねぇ。ジークも解るでしょ?」
「そうだな、客観的に見て」
「え、あの四人のあれはゲームの強制力ってやつ?だと思ってるけど?地は出してない(はずだ)し」
「「まあ、そういう所も含めてよ」だ」
どういう所だ。
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