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13.聖女は真面目です

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「俺とローズは、俺が6歳、ローズが5歳の時に婚約者として引き合わされたんだ。あの時のローズも、ピンクのドレスがとても似合っていて可愛かったが…コホン、そこではないな、ともかくその時に二人で同時に思い出したんだ、前世を」

「…早かったのね」

「ああ、でも二人とも教育は始まっていたし、良かったかなとも思うよ」

「二人で静かに泣き出したから、周りはびっくりしていたけどね」ローズが苦笑しながら話す。

「ああ、そうだった」ジークはどこか楽しげだ。


「それで、二人で会うたびに記憶を擦り合わせて」

「乙ゲーの世界と気づいた、と?」

「そうね」

そもそもはローズの前世はなかなかのオタクで、乙ゲーはずいぶんとやり込んだらしい。ジークは話を付き合いながら何となく見ていて、結構いろいろと覚えていたそうだ。

そしてもちろん気付いた。このままだとローズが国外追放の可能性もあると。二人の気持ちは確かでも、エマの動きでどう転ぶかわからない。


「12歳で俺が立太子して、王太子権限の影が付くようになった。一部、ローズにも」

王家の情報で平民のエマを見つけるのは、まあ容易いだろう。そして、あの魔力測定。

「その時から本殿に影を忍ばせ、情報を得ていた。……その情報を聞く限りだと、危惧していたような人となりではない。しかし、攻略対象は気を許しているように見える。私たちに接触が少ないのはどういうことかと警戒し、対応が遅くなってしまった。すまない。
……監視のようなことをしていた事も含めてだ」

ジークが静かに頭を下げる。

「エマ、私からもごめんなさい、ジークの行動は、私を想ってくれてのことなの。でも、エマからしたら不愉快よね……本当にごめんなさい」

ローズもお辞儀をする。まあ、監視とか、いい気持ちがする訳はないけれど。

「やだ、二人とも顔を上げてよー!」

私は笑顔で言う。

「確かに、監視って響きはちょっと怖いけど(笑)。私が二人の立場でもそうするもの。ジークはローズを護りたかったし、ローズだって、ずっとジークと一緒に居たいんでしょ?そりゃ、ヒロインの動きは気になるよ。
それに、見ていてくれたからこそ、ゲームのエマとの違いに気づいて貰えたのもあるだろうし」

「「エマ……」」

「中身がこんなオバチャンだとも思わなかったろうしね?いや、ちゃんとエマとして16歳を満喫しているけどね?!」

三人でふふっと笑う。空気がちょっと緩む。

「ありがとう、エマ」

ジークの微笑み。うわ、さすが王道ルートの王子様!

「エマあ…ありがとう…これからも友だちでいてくれる?」

泣き笑いのローズ。ありがとうございます。

「もちろんよ!」


その時ちょうど、予鈴が鳴った。

「ああ、時間か」

「えー、早いー!」

「確かに、まだいろいろと確認したいこともあるしな…午後はサボるか?」

「さんせーい!」

えっ、いやお二人盛り上がっていらっしゃいますが!

「や、ごめん!私、午後の授業出たいの!今日の魔法理論、『異なる特性の併せ方、その1』だから楽しみにしていたの!」

「……本当にエマは真面目よね」苦笑するローズ。

「違いない」楽しそうなジーク。

「仕方ないな、確かに学生の本分は勉強だからな!授業に戻ろう。でもエマ、今日の放課後はまた話せるかい?」

「ええ、でも…」大丈夫だろうか、あの四人。

「ん?ああ、私からの命令にしたらいいよ。これでも王太子だからね。まあ、奴らに騒がれても面倒だし、続きは城でにしよう。ローズ、よろしくね」

「お任せ下さいませ、ジーク様。きちんとエマを連れて参りますわ」令嬢の顔に戻るローズ。

「頼もしいな。では、また後ほどに」

「はい」

スイッチオン!ほんとに頼もしい。


私も深呼吸をして、『聖女エマ』へと戻る。

「さあ、戻りましょうか、エマ様」

「はい、ローズ様」


私は安心感と共に教室へと戻った。
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