私は仕事がしたいのです!

渡 幸美

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10.生徒会室へ

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「トーマス、エトル、アレン、ビル。最近生徒会で見ないと思ったら、何をしているのかしら?」

ローズマリー様は笑顔だけれど、目の奥が笑っていない。

「「「「あ、いや、その……」」」」

何だよ、いやその、って!

「エマ様」

しどろもどろな四人は放置で、ローズマリー様が私に声をかける。

「はっ、はい!」

「今日のお昼休みは、久しぶりに私に時間をいただけるかしら?レイチェル様、カリン様、よろしい?」

「「はい!」」

「ありがとう、ではエマ様、こちらへ」

颯爽と現れたローズマリー様に圧倒され、みんな少し茫然自失気味だ。

私は、ローズマリー様に促されて歩き出す。



「ごめんなさい、大変だったでしょう?」

教室から少し離れてきた所で、ローズマリー様が声をかけてきた。

「正直に言いましたら、少し……でも、ローズマリー様のせいではありませんし。今日も助かりました、ありがとうございます」

「いえ……私にも責任があるのよ。一時期、監視…いえ、見守ることにしたものですから」

ん?今、監視って言った?ちょっと不穏な言葉が聞こえましたけど?さらっと言い直してるけどー!

「先生も気にされていたけれど、立場的に中に入れなかったのよね…」

何が?

「あの……ローズマリー様?」

そしてここは何処だろう、あまり来ない廊下だ。

「ああ、ごめんなさい。後で詳しく説明するわ。殿下も部屋でお待ちになってるから……」

は?!殿下も?どゆこと?


「着きましたわ」

おお、これは生徒会室!お初だわー、って、現実逃避をしてる場合じゃない。

ローズマリー様がノックする。

「殿下、エマ様をお連れしましたわ」

「ああ、ご苦労様。お入り」

重厚なドアを開け、ローズマリー様が入って行く。

私も後をついて行く。

「失礼します…」

「エマ嬢久しぶりだね。ここしばらく苦労をかけたようだ、すまない」

「いえっ、あの、殿下が謝罪されるとか!そんな畏れ多い!そもそも、先程ローズマリー様にもお言葉を頂きましたが…お二人のせいでは…」

「いや……」

三人掛けのソファーの両端に、殿下とローズマリー様が座っている。その向かいのソファーに座るように私を案内しつつ、殿下は話を続ける。

「もう少し早くに決断しても良かったのだ」

何をでしょう。

私はちょっと首をかしげた。

「ジーク、ますます分からないわよ」

あら、ジーク呼び!きゃっ。

「そうだな、どこから話そうか……ああ、昼食まだだろう?軽食で申し訳ないが、食べてくれ」

軽食と言っても、素敵なアフタヌーンティーセットがテーブルの上に置かれている。

「遠慮なくいただきます」

うん、落ち着いてきたら空腹感が一気に襲って来たので、ありがたく。


「うん、食べながらでいいので、聞いてくれ」

ハイ、ありがとうございます。美味しいです。先程までの面倒事を忘れるくらいです。


「エマ嬢…君は、乙女ゲームというものを聞いたことがあるか?」


「!!?」


びっくりし過ぎて、次のサンドイッチに手を伸ばしたまま、私はお二人の顔を見た。

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