異世界転生を果たした、おば、コホン、お姉さまは、お嬢様生活のために悪役回避、頑張ります!

渡 幸美

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第四章 そして学園

65.浄化

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マリーアの手のひらから白く輝く光が出て、アンクレットを優しく包み込む。アンクレットは自我があるかのようにピシッビシッと揺れ動き、やがて諦めたかのように微かな、でも真っ黒な息を吐き出すようにして---静かになった。中心に嵌め込まれていた赤かった石は、透明なガラスのようになっている。

「浄化、できたと思うわ」
「はわわわわ……!マリー姉さま、すごい!さすが!浄化初めて見た~!姉さまも魔法も綺麗ね!!」

浄化中はマリーアもキラキラしていて、本当に聖女様だった。ファンタジー好きの私は、目をキラキラさせて興奮気味にマリーアに詰め寄る。だって、レア体験よ!

「ふふっ、ありがとう。リリーにそう言ってもらえると嬉しいわ」
「いやもう、本当に神々しい……」
『リリー。気持ちは解らんでもないが、話をすすめるぞ』

マリーアのハニカミ笑顔にさらに神を感じた私に、ルシールが冷静に突っ込んできた。

「そうよね。ごめんなさい」
「ははっ、リリーも相変わらずマリー大好きなんだなあ」
「だって~、自慢の姉さまだもん。ごめんって。話、話よ!進めてください!」

サーフィスにもクスクス笑われながら、頭をポンポンされる。ルシールも楽しそうな顔をしながら、デュオルのアンクレットを外した。

「みなさんは……本当に、仲がよろしいのですね……」

さて、このアンクレットはどうしようか、やはり一度イデアーレに分析を頼もうとか、やいのやいのしていると、エレナのそんな呟きが聞こえてきた。その声は自分が思ったより大きかったみたいで、話し合いを止めてエレナを振り返った私たちを見て、慌てて「邪魔をしてすみません」と謝ってきた。

『構わぬ。こちらこそ済まぬな、呼びつけておいて。弟も心配だろうが、そろそろ目覚めるゆえ』
「いえ……はい、ありがとうございます」
「そうだ、グリッタ嬢も確認してほしい。さっき似ていると言っていたけれど」

ルシールとサーフィスにそう言われ、エレナはおずおずと手を伸ばしてアンクレットを受け取る。

「……ええ、似ていますわ」
「これを見て、何か思い出せないか?」

サーフィスの問いに、エレナは申し訳なさそうに首を横に振る。あの時から何度も思い出そうとしてくれてるみたいなのだが、どうにも何時誰にもらったかを全く思い出せないらしい。

「そう、今振り返ると……身に付け始めてから頭にモヤがかかると申しますか……何かを忘れてしまうような……言い訳ですけれど、自分の欲が強く出て来てしまう、みたいな……いえ、全て自分の欲と弱さが悪いのですけれど」
「欲のない人なんていませんよね?人間だもの。わたくしも、弱いです」
「え、でもみなさんは……」
「少なくとも私は欲だらけです。……あの時も、怖くて動けずでしたし、弱々です。ただ、姉さまと楽しく一生お嬢様生活を続けたい野望がありますから!そのためには頑張ろうと!」
「え、えっ?と?お、お嬢様?」

自嘲的になってしまっているエレナに、私も大して変わらないと伝えたい。誰だって欲はあるし、それがあるからこそ向上心だってあるわけで。私だって弱々だ。ただ、みんなが助けてくれるから、幸せ者なだけで。

「だから、魔王復活は嫌だなって!それだけですよ」
「は……、でも、精霊様に」
「る、シルフ様にはたまたま見つけてもらえただけですよぉ。運が良かっただけです。あっ、姉さまはちょっと違います、魂の頃から女神様に鍛えられていたみたいで!さすが聖女様ですよね!」
「え、ええと……愛し子様もなかなかなれないと思うわ」
「はい。ので!自分の欲のために、が、正直一番なんですけど……シルフ様に選んで良かったと思ってもらえるようには頑張りたいと考えてます!」

「幸運なのは認識しているので~」と、本当にただのラッキーなんだよな、ルシールはデュオルやみんなにはああ説明してくれたけど、やはり幸運の部分は大きい、と思いながら話す私を、エレナはなぜか眩しそうに見ていた。

「そう、なのね。お嬢様生活のために、みんなで平穏でいたいのね。ふふっ、シルフ様がリリアンナ様を選ばれた理由がなんとなく判った気が致します」
『そうだろう?』
「はい。やはり、わたくしなどとは違うと」
『……そうかのう?そなたもずいぶんと変わったように思うが』
「精霊様にそう言っていただけるだけで僥倖でございます。これからも、微力ながらにお手伝いをさせてくださいませ。……弟も、救っていただき、ありがとうございました。しっかりと指導致しますので」

何だか私への勘違いはあまり消えてなさそうだけど、しっかりと前向きの表情になった彼女は清廉としていて美しく、私はそれ以上何も言えなかった。
マリーアもサーフィスも、優しく微笑んでいる。

そんなしんみりと、それでも美しく終わろうとした場に。

『あらあ、素敵になったわねぇ。それなら、しっかりと協力してもらおうかしら~?』

麗しくもマイペースな声が響いてきた。

これは、まさかの最後の方ですか?

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