75 / 81
第四章 そして学園
65.浄化
しおりを挟む
マリーアの手のひらから白く輝く光が出て、アンクレットを優しく包み込む。アンクレットは自我があるかのようにピシッビシッと揺れ動き、やがて諦めたかのように微かな、でも真っ黒な息を吐き出すようにして---静かになった。中心に嵌め込まれていた赤かった石は、透明なガラスのようになっている。
「浄化、できたと思うわ」
「はわわわわ……!マリー姉さま、すごい!さすが!浄化初めて見た~!姉さまも魔法も綺麗ね!!」
浄化中はマリーアもキラキラしていて、本当に聖女様だった。ファンタジー好きの私は、目をキラキラさせて興奮気味にマリーアに詰め寄る。だって、レア体験よ!
「ふふっ、ありがとう。リリーにそう言ってもらえると嬉しいわ」
「いやもう、本当に神々しい……」
『リリー。気持ちは解らんでもないが、話をすすめるぞ』
マリーアのハニカミ笑顔にさらに神を感じた私に、ルシールが冷静に突っ込んできた。
「そうよね。ごめんなさい」
「ははっ、リリーも相変わらずマリー大好きなんだなあ」
「だって~、自慢の姉さまだもん。ごめんって。話、話よ!進めてください!」
サーフィスにもクスクス笑われながら、頭をポンポンされる。ルシールも楽しそうな顔をしながら、デュオルのアンクレットを外した。
「みなさんは……本当に、仲がよろしいのですね……」
さて、このアンクレットはどうしようか、やはり一度イデアーレに分析を頼もうとか、やいのやいのしていると、エレナのそんな呟きが聞こえてきた。その声は自分が思ったより大きかったみたいで、話し合いを止めてエレナを振り返った私たちを見て、慌てて「邪魔をしてすみません」と謝ってきた。
『構わぬ。こちらこそ済まぬな、呼びつけておいて。弟も心配だろうが、そろそろ目覚めるゆえ』
「いえ……はい、ありがとうございます」
「そうだ、グリッタ嬢も確認してほしい。さっき似ていると言っていたけれど」
ルシールとサーフィスにそう言われ、エレナはおずおずと手を伸ばしてアンクレットを受け取る。
「……ええ、似ていますわ」
「これを見て、何か思い出せないか?」
サーフィスの問いに、エレナは申し訳なさそうに首を横に振る。あの時から何度も思い出そうとしてくれてるみたいなのだが、どうにも何時誰にもらったかを全く思い出せないらしい。
「そう、今振り返ると……身に付け始めてから頭にモヤがかかると申しますか……何かを忘れてしまうような……言い訳ですけれど、自分の欲が強く出て来てしまう、みたいな……いえ、全て自分の欲と弱さが悪いのですけれど」
「欲のない人なんていませんよね?人間だもの。わたくしも、弱いです」
「え、でもみなさんは……」
「少なくとも私は欲だらけです。……あの時も、怖くて動けずでしたし、弱々です。ただ、姉さまと楽しく一生お嬢様生活を続けたい野望がありますから!そのためには頑張ろうと!」
「え、えっ?と?お、お嬢様?」
自嘲的になってしまっているエレナに、私も大して変わらないと伝えたい。誰だって欲はあるし、それがあるからこそ向上心だってあるわけで。私だって弱々だ。ただ、みんなが助けてくれるから、幸せ者なだけで。
「だから、魔王復活は嫌だなって!それだけですよ」
「は……、でも、精霊様に」
「る、シルフ様にはたまたま見つけてもらえただけですよぉ。運が良かっただけです。あっ、姉さまはちょっと違います、魂の頃から女神様に鍛えられていたみたいで!さすが聖女様ですよね!」
「え、ええと……愛し子様もなかなかなれないと思うわ」
「はい。見つけてもらえたので!自分の欲のために、が、正直一番なんですけど……シルフ様に選んで良かったと思ってもらえるようには頑張りたいと考えてます!」
「幸運なのは認識しているので~」と、本当にただのラッキーなんだよな、ルシールはデュオルやみんなにはああ説明してくれたけど、やはり幸運の部分は大きい、と思いながら話す私を、エレナはなぜか眩しそうに見ていた。
「そう、欲なのね。お嬢様生活のために、みんなで平穏でいたいのね。ふふっ、シルフ様がリリアンナ様を選ばれた理由がなんとなく判った気が致します」
『そうだろう?』
「はい。やはり、わたくしなどとは違うと」
『……そうかのう?そなたもずいぶんと変わったように思うが』
「精霊様にそう言っていただけるだけで僥倖でございます。これからも、微力ながらにお手伝いをさせてくださいませ。……弟も、救っていただき、ありがとうございました。しっかりと指導致しますので」
何だか私への勘違いはあまり消えてなさそうだけど、しっかりと前向きの表情になった彼女は清廉としていて美しく、私はそれ以上何も言えなかった。
マリーアもサーフィスも、優しく微笑んでいる。
そんなしんみりと、それでも美しく終わろうとした場に。
『あらあ、素敵になったわねぇ。それなら、しっかりと協力してもらおうかしら~?』
麗しくもマイペースな声が響いてきた。
これは、まさかの最後の方ですか?
「浄化、できたと思うわ」
「はわわわわ……!マリー姉さま、すごい!さすが!浄化初めて見た~!姉さまも魔法も綺麗ね!!」
浄化中はマリーアもキラキラしていて、本当に聖女様だった。ファンタジー好きの私は、目をキラキラさせて興奮気味にマリーアに詰め寄る。だって、レア体験よ!
「ふふっ、ありがとう。リリーにそう言ってもらえると嬉しいわ」
「いやもう、本当に神々しい……」
『リリー。気持ちは解らんでもないが、話をすすめるぞ』
マリーアのハニカミ笑顔にさらに神を感じた私に、ルシールが冷静に突っ込んできた。
「そうよね。ごめんなさい」
「ははっ、リリーも相変わらずマリー大好きなんだなあ」
「だって~、自慢の姉さまだもん。ごめんって。話、話よ!進めてください!」
サーフィスにもクスクス笑われながら、頭をポンポンされる。ルシールも楽しそうな顔をしながら、デュオルのアンクレットを外した。
「みなさんは……本当に、仲がよろしいのですね……」
さて、このアンクレットはどうしようか、やはり一度イデアーレに分析を頼もうとか、やいのやいのしていると、エレナのそんな呟きが聞こえてきた。その声は自分が思ったより大きかったみたいで、話し合いを止めてエレナを振り返った私たちを見て、慌てて「邪魔をしてすみません」と謝ってきた。
『構わぬ。こちらこそ済まぬな、呼びつけておいて。弟も心配だろうが、そろそろ目覚めるゆえ』
「いえ……はい、ありがとうございます」
「そうだ、グリッタ嬢も確認してほしい。さっき似ていると言っていたけれど」
ルシールとサーフィスにそう言われ、エレナはおずおずと手を伸ばしてアンクレットを受け取る。
「……ええ、似ていますわ」
「これを見て、何か思い出せないか?」
サーフィスの問いに、エレナは申し訳なさそうに首を横に振る。あの時から何度も思い出そうとしてくれてるみたいなのだが、どうにも何時誰にもらったかを全く思い出せないらしい。
「そう、今振り返ると……身に付け始めてから頭にモヤがかかると申しますか……何かを忘れてしまうような……言い訳ですけれど、自分の欲が強く出て来てしまう、みたいな……いえ、全て自分の欲と弱さが悪いのですけれど」
「欲のない人なんていませんよね?人間だもの。わたくしも、弱いです」
「え、でもみなさんは……」
「少なくとも私は欲だらけです。……あの時も、怖くて動けずでしたし、弱々です。ただ、姉さまと楽しく一生お嬢様生活を続けたい野望がありますから!そのためには頑張ろうと!」
「え、えっ?と?お、お嬢様?」
自嘲的になってしまっているエレナに、私も大して変わらないと伝えたい。誰だって欲はあるし、それがあるからこそ向上心だってあるわけで。私だって弱々だ。ただ、みんなが助けてくれるから、幸せ者なだけで。
「だから、魔王復活は嫌だなって!それだけですよ」
「は……、でも、精霊様に」
「る、シルフ様にはたまたま見つけてもらえただけですよぉ。運が良かっただけです。あっ、姉さまはちょっと違います、魂の頃から女神様に鍛えられていたみたいで!さすが聖女様ですよね!」
「え、ええと……愛し子様もなかなかなれないと思うわ」
「はい。見つけてもらえたので!自分の欲のために、が、正直一番なんですけど……シルフ様に選んで良かったと思ってもらえるようには頑張りたいと考えてます!」
「幸運なのは認識しているので~」と、本当にただのラッキーなんだよな、ルシールはデュオルやみんなにはああ説明してくれたけど、やはり幸運の部分は大きい、と思いながら話す私を、エレナはなぜか眩しそうに見ていた。
「そう、欲なのね。お嬢様生活のために、みんなで平穏でいたいのね。ふふっ、シルフ様がリリアンナ様を選ばれた理由がなんとなく判った気が致します」
『そうだろう?』
「はい。やはり、わたくしなどとは違うと」
『……そうかのう?そなたもずいぶんと変わったように思うが』
「精霊様にそう言っていただけるだけで僥倖でございます。これからも、微力ながらにお手伝いをさせてくださいませ。……弟も、救っていただき、ありがとうございました。しっかりと指導致しますので」
何だか私への勘違いはあまり消えてなさそうだけど、しっかりと前向きの表情になった彼女は清廉としていて美しく、私はそれ以上何も言えなかった。
マリーアもサーフィスも、優しく微笑んでいる。
そんなしんみりと、それでも美しく終わろうとした場に。
『あらあ、素敵になったわねぇ。それなら、しっかりと協力してもらおうかしら~?』
麗しくもマイペースな声が響いてきた。
これは、まさかの最後の方ですか?
21
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
【完結】あなたの思い違いではありませんの?
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?!
「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」
お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。
婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。
転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!
ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/19……完結
2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位
2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位
2024/08/12……連載開始


初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

【完結】聖女ディアの処刑
大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。
枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。
「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」
聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。
そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。
ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが――
※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・)
※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・)
★追記
※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。
※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。
※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる