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第四章 そして学園

64.アンクレット

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私とルシールはお互いの顔を見て、頷き合う。
デュオルを覆うモヤモヤはまだうっすらとしているし、周りの皆は気づいていない。

『少年、気分が優れないか?顔色が悪い』
「あ、いえ、そん―……」

声をかけられたデュオルが言い切る前に、ルシールは自然な仕草で彼に手をかざし、眠らせたようだ。突然倒れそうになるデュオルに周りから少し悲鳴が上がったが、ルシールがさらりと横抱きにする。

『おやおや、疲れておったのかのぅ。我が休める場所へ連れて行こう。リリー、案内をしておくれ』
「はいっ。よろしいでしょうか?先生」
「も、もちろんです。お願いしてよろしいでしょうか、シルフ様」

先生は何となくルシールの動きに気づいたようだったけど、預けてくれるようだ。

『任せておけ』

あのモヤモヤが見えたということは、デュオルも何か関わっている、というか、関わってしまった、が正しいのかな、ともかく、確認をしないとだ。

「あっ、あの!わたくしもご一緒してもよろしいでしょうか?…婚約者なので…」
「シュマールさん。気持ちは分かりますが精霊様とのことなので、今回はサバンズさんにおませしましょう」
「でも」
「ソーニャ様。何かありましたら、わたくしからきちんとお伝えしますから」
「リリアンナ様。……はい、承知いたしましたわ。お願いいたします」

複雑な表情を見せながらも、ソーニャはそう頷いてくれた。心配だよね、婚約者だもんね。
ちゃんと確認するからね!

「お預かりしますね。シルフ様、医務室はあちらです」
『承知した』

私はソーニャに目礼をして、ルシールと医務室に向かって歩き出す。

「ルシー。やっぱりまた魔道具か何かなの?」
『おそらく。ここでは身体検査はできぬからの。移動してから……そうだ、妖精たち』

『はーい、はい!』

ルシールの呟くような呼び掛けにも、学園妖精さんたちが2、3人パッと現れる。いつもかわいい。

『マリーを呼んで来てくれ。王子もいた方がいいだろう。な?リリー』
「うん、その方が心強いね。あ、それと、エレナ様もいた方が良くないかな?どう?ルシー」
『ふむ、確かに……彼女のブレスレットの件もまだはっきりとせんしな。エレナも呼べるか?』
『わかった~!』
『任せて、任せて!』
『マリーとエレナ、いっしょよ、いっしょ!きっと大丈夫~!』

くるくるっと、妖精さんたちが飛んで行く。
こんな時だけど、癒しだわ。



医務室に到着し、養護の先生に事情を話して席を外してもらう。養護の先生もルシール登場にかなり驚いていたけれど、落ち着いて理解してくれた。

先生が部屋を出てすぐにマリー達が医務室に着く。三人とも、あまり騒ぎにしてもと思ってくれたようで、それぞれ具合を悪くしたていで来てくれた。さすがだ。

もっともエレナ様は顔を真っ青にしていて、本当に病人のような顔をしてしまっているが。ベッドに寝かされている弟を見れば、無理もない。

「デュオル……!あの、この子が何を?……まさか?!わたくしのように?!」
『落ち着け。まだ大丈夫だ。ただ、がある』
「えっ、は、えっ?!貴方様は?まさか」

取り乱し始めたエレナ様をなだめるようにルシールが声をかけたが、精霊様の存在に余計にテンパらせてしまったので、私が慌てて間に入り、三人に説明する。エレナ様もルシールに恐縮しつつも状況をしっかりと把握してくれたようだ。

『マリー、どうだ?』
「ええ、微かだけれど、確かにあの時と同じ気配ね」
「確かに感じる。足首辺り?」
「あら、悔しいけれど正解よ。……アンクレットね」

ルシールの問いに、マリーアはさらりと答え、更にサーフィスも当ててきた。えっ、すごい。
サーフィスがそっとデュオルの制服の左足の裾をめくると、その足首にはアンクレットが付いていた。

「……わたくしが付けていたブレスレットと似ていますわ……」

エレナが視線を下げながら悲しそうに呟く。彼女がしていたものは粉々に砕けてしまったので、現物は彼女しか知らないのだ。

『……そうか、似てるか……』

縄と波模様に彫られたプラチナのようなアンクレットは、中心に赤い石が嵌められていて、前世でのミサンガを彷彿とさせる。流行ったよね、ミサンガ。切れたら願いがかなうとかって。えっ、知らない?世代間ギャップは仕方ないわね。

「……そういえば……エレナ様もあの時願いが叶うとか……?」

小さく一人言る。あんまり関係ないかな、どうだろう。いや、関係ないか。私の前世の話だし。

「リリー?どうかした?」
「ううん!なんでもない!姉さま、浄化できそう?」
「ええ。きっと大丈夫」
『頼んだぞ。貴重な足跡だ』

ルシールの言葉にマリーアは真剣な顔で頷き、私たちが見つめる中、デュオルのアンクレットに手をかざした。

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