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第四章 そして学園
61.ご挨拶
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マリーアとヒンターの甘酸っぱい話からの翌日。
登校時、ちょうど校門前でヒンターと時間が重なり、私たちを馬車からエスコートしてくれた。
私はかなり顔がニヤけていたらしく、ヒンターに「いいことでもあったのか?」と怪訝な顔で聞かれる。
「うふふ。そりゃあ、もう、ねぇ?」
「り、リリー!」
「いいじゃない!姉さま!これからもよろしくね?ヒンターお兄様?」
さっそくイジれるタイミングが来たわ~!ここはウキウキで言っちゃうよ!
「---っ!」
ヒンターはバッと顔を赤くして後退り、マリーアを見る。そしてマリーアが口を開く……前に、
「リリー?ヒンターをお兄様って?どういうこと?」
「ひゃっ?!ふぃ、フィス?!おは、おはよう!」
「おはよう。ねぇ、どういうこと?」
ぐいっとサーフィスが登場してきた。いつの間に!そして笑顔が若干怖い。たたた確か、まだ内緒なんだよね?
「い、いやあ~、昨日も学園案内してもらって頼りになったし、今もエスコートしてもらったし、お兄ちゃんみたいだな、って……」
何だか浅い言い訳だなと自分でも思いながら、あわあわ話す。フィスは軽く口を尖らせて納得していないご様子だわ。ちょっとかわい……じゃなく、他に言い訳を……
「ふぅ~ん?……俺のことそう呼んだことないくせに……」
ん?
「……フィス。お前はリリーの兄を目指している訳じゃないだろ?」
「そうだけど!何だか悔しい!」
ヒンターが冷静さを取り戻し、目を細めてサーフィスの肩をポンと叩いた。そして私に何か言えとの圧力をかけてくる。ぐぬぬ、難題を……!しかし、サーフィスが二人の事に考えが及ばなかったのはよしとはいえ、元はと言えば私の軽口が原因、捻り出さねば……!
「ええっと?フィスの事もお兄ちゃんみたいに頼りにしてるよ……?」
結局私はどう応えるのが正解か判らず、ふわっと言葉を返した。何だかんだ、頼りにしているのは事実だし。これで合ってるといいのだけれど、自信ないわ。
「うん。頼りにしてくれるのは嬉しい。けどやっぱり……」
「マリーア様!リリアンナ様!おはようございます!」
にひゃりと緩んだ顔をしながら、サーフィスがまた難癖?をつけそうな時、元気な声が入ってきた。ちょっと助かったけど。
「ソーニャ様。おはようこざいます」
「おはよう」
マリーアと共に挨拶を返す。
この子はいつもこう、タイミングがいいと言うか、何と言うかの時に現れるなあ。たまたま、なのだろうけれど。
今朝も小動物のように、てててと寄ってくる。うん、あざとかわいい。
「!ヒンター様と、で、殿下?!気づかず、も、申し訳ありません、ご無礼を!」
ちょうど昇降口の壁の陰になっていた二人が見えなかったようで、慌てて頭を下げる。この辺のきちんとフィスを殿下と扱う辺りは、変な心配しなくていいのかなあ。
「構わないよ。君は1年生かな?」
サーフィスがキラキラ王太子モードで優しく返す。この辺はさすがだ。ソーニャは「ま、眩しい……」と、やや現実から飛びそうになっている。フォロー、フォローだ。
「フィス様。わたくしのクラスメイトのソーニャ=シュマール様ですわ」
「シュマール男爵家の?そうか、君が。優秀と聞いている。これからも頑張ってね、期待しているよ」
「勿体ないお言葉です!」
ソーニャは両手を胸の前で振りそうになるのを慌てて抑えて、淑女の礼をとる。うん、及第点だ。
「学園だし、そこまで畏まらなくていいよ」
「あ、ありがとうございます!あの、お二人は毎朝ご一緒なのですか?素敵ですね!」
「お二人?」
「殿下と、聖女マリーア様です!」
「ああ……」サーフィスは呟きながら、私たちに目線を配り、ソーニャに対して笑顔を向ける。
「それはないかな。もちろん、今日みたいにたまたま会えば教室までは共に行くけどね。敢えて、はないかな。ねぇ?マリー?」
「そうですね。フィス様とは教室でも会えますので、できるだけリリーとの時間を取りたいですもの」
「ふふ。マリーの1番はリリーだものな」
「もちろんですわ」
今朝もマリーアの愛が重い。思わずちらりとヒンターを見てしまう。ヒンターは私の視線に気づいて、パチンと笑顔で軽くウインクした。こういうことがサラッとできて似合ってしまうのが凄いわ。そして二人は余計な心配なんていらないくらいの関係性なんだね。このシスコンぶりを余裕を持って見てくれる人はなかなかいないだろう、貴重だ。ほっとするやら、羨ましいやらだね!
「リリアンナ様が……1番……」
そんな中でのソーニャの呟きは、私たちの耳には届かなかった。
「ソーニャ様?そろそろ教室に向かいましょう?」
「あ、はい!あの、すみません、マリーア様。リリアンナ様との時間を……」
「やだ、そこは気にしないで。リリーのお友だちと一緒も嬉しいもの」
「マリーア様……!」
憧れのマリーアの笑顔に、感動した面持ちなるソーニャ。うきうきと共に教室へと向かう。
その様子を、デュオルが少し困り顔で見ていたことなど、気づかずに。
登校時、ちょうど校門前でヒンターと時間が重なり、私たちを馬車からエスコートしてくれた。
私はかなり顔がニヤけていたらしく、ヒンターに「いいことでもあったのか?」と怪訝な顔で聞かれる。
「うふふ。そりゃあ、もう、ねぇ?」
「り、リリー!」
「いいじゃない!姉さま!これからもよろしくね?ヒンターお兄様?」
さっそくイジれるタイミングが来たわ~!ここはウキウキで言っちゃうよ!
「---っ!」
ヒンターはバッと顔を赤くして後退り、マリーアを見る。そしてマリーアが口を開く……前に、
「リリー?ヒンターをお兄様って?どういうこと?」
「ひゃっ?!ふぃ、フィス?!おは、おはよう!」
「おはよう。ねぇ、どういうこと?」
ぐいっとサーフィスが登場してきた。いつの間に!そして笑顔が若干怖い。たたた確か、まだ内緒なんだよね?
「い、いやあ~、昨日も学園案内してもらって頼りになったし、今もエスコートしてもらったし、お兄ちゃんみたいだな、って……」
何だか浅い言い訳だなと自分でも思いながら、あわあわ話す。フィスは軽く口を尖らせて納得していないご様子だわ。ちょっとかわい……じゃなく、他に言い訳を……
「ふぅ~ん?……俺のことそう呼んだことないくせに……」
ん?
「……フィス。お前はリリーの兄を目指している訳じゃないだろ?」
「そうだけど!何だか悔しい!」
ヒンターが冷静さを取り戻し、目を細めてサーフィスの肩をポンと叩いた。そして私に何か言えとの圧力をかけてくる。ぐぬぬ、難題を……!しかし、サーフィスが二人の事に考えが及ばなかったのはよしとはいえ、元はと言えば私の軽口が原因、捻り出さねば……!
「ええっと?フィスの事もお兄ちゃんみたいに頼りにしてるよ……?」
結局私はどう応えるのが正解か判らず、ふわっと言葉を返した。何だかんだ、頼りにしているのは事実だし。これで合ってるといいのだけれど、自信ないわ。
「うん。頼りにしてくれるのは嬉しい。けどやっぱり……」
「マリーア様!リリアンナ様!おはようございます!」
にひゃりと緩んだ顔をしながら、サーフィスがまた難癖?をつけそうな時、元気な声が入ってきた。ちょっと助かったけど。
「ソーニャ様。おはようこざいます」
「おはよう」
マリーアと共に挨拶を返す。
この子はいつもこう、タイミングがいいと言うか、何と言うかの時に現れるなあ。たまたま、なのだろうけれど。
今朝も小動物のように、てててと寄ってくる。うん、あざとかわいい。
「!ヒンター様と、で、殿下?!気づかず、も、申し訳ありません、ご無礼を!」
ちょうど昇降口の壁の陰になっていた二人が見えなかったようで、慌てて頭を下げる。この辺のきちんとフィスを殿下と扱う辺りは、変な心配しなくていいのかなあ。
「構わないよ。君は1年生かな?」
サーフィスがキラキラ王太子モードで優しく返す。この辺はさすがだ。ソーニャは「ま、眩しい……」と、やや現実から飛びそうになっている。フォロー、フォローだ。
「フィス様。わたくしのクラスメイトのソーニャ=シュマール様ですわ」
「シュマール男爵家の?そうか、君が。優秀と聞いている。これからも頑張ってね、期待しているよ」
「勿体ないお言葉です!」
ソーニャは両手を胸の前で振りそうになるのを慌てて抑えて、淑女の礼をとる。うん、及第点だ。
「学園だし、そこまで畏まらなくていいよ」
「あ、ありがとうございます!あの、お二人は毎朝ご一緒なのですか?素敵ですね!」
「お二人?」
「殿下と、聖女マリーア様です!」
「ああ……」サーフィスは呟きながら、私たちに目線を配り、ソーニャに対して笑顔を向ける。
「それはないかな。もちろん、今日みたいにたまたま会えば教室までは共に行くけどね。敢えて、はないかな。ねぇ?マリー?」
「そうですね。フィス様とは教室でも会えますので、できるだけリリーとの時間を取りたいですもの」
「ふふ。マリーの1番はリリーだものな」
「もちろんですわ」
今朝もマリーアの愛が重い。思わずちらりとヒンターを見てしまう。ヒンターは私の視線に気づいて、パチンと笑顔で軽くウインクした。こういうことがサラッとできて似合ってしまうのが凄いわ。そして二人は余計な心配なんていらないくらいの関係性なんだね。このシスコンぶりを余裕を持って見てくれる人はなかなかいないだろう、貴重だ。ほっとするやら、羨ましいやらだね!
「リリアンナ様が……1番……」
そんな中でのソーニャの呟きは、私たちの耳には届かなかった。
「ソーニャ様?そろそろ教室に向かいましょう?」
「あ、はい!あの、すみません、マリーア様。リリアンナ様との時間を……」
「やだ、そこは気にしないで。リリーのお友だちと一緒も嬉しいもの」
「マリーア様……!」
憧れのマリーアの笑顔に、感動した面持ちなるソーニャ。うきうきと共に教室へと向かう。
その様子を、デュオルが少し困り顔で見ていたことなど、気づかずに。
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