異世界転生を果たした、おば、コホン、お姉さまは、お嬢様生活のために悪役回避、頑張ります!

渡 幸美

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第三章 建国祭と学園と

49.懸念の確定

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グローリア様に紹介されたグリッタ様は、優雅に私たちに礼を取る。
その表情はにこやかだ。水色の髪色と紺色の瞳は全体的に色素が薄くて、何なら儚げにさえ見える。

(あんな嫌味を言う人には見えないけど。貴族コワイ)

笑顔でのマウント取りは今生でも苦手なんだよなあ。でもマリーアの為なら頑張るぞ!

「ご挨拶ありがとうございます。リリアンナ=サバンズでございます」
「イデアーレ=ドゥルキスでございます」

とりあえずは無難に挨拶だ。
こちらから喧嘩を売るのもアレだし。
妖精さん情報だから間違い……ということはないとは思うけど、たまたまということもなくはない、かもだし。

「才女と名高いお二人にお会いできて光栄ですわ。先だってはご挨拶も出来ずに申し訳ございませんでした。つい、未来の国母であるグローリア様と話し込んでしまって」

ん?

「まあ、エレナ!まだ決まった事ではないわ」
「ほぼ決定でございましょう。お小さい頃からのお付き合いといい、お血筋といい、殿下をお支えするための覚悟といい、グローリア様を差し置いて他にはいらっしゃらないですわ」

「もう、エレナったら、わたくしなんて」と、言いながらグローリア様は満更でもない顔だ。
イデアと私は思わず顔を見合わせた。

……うん、別にいいけど。いいはず、だけど。フィスの隣を強く望んでいる訳ではない私が、偉そうにいろいろ思うべきではないのだろうけれど。

「まあ、グリッタ様。グローリア様は確かに素敵な方ですし、それぞれのお考えは結構ですけれど、まだ殿下のご婚約者は未定とのこと。このような公の場で決まったように話されるのは」
「だって、お二人はもうご辞退されたのでしょう?」

グリッタ様が心底当然と言った笑顔で被せてくる。この笑顔は、何だか怖い。アルカイックスマイルと言われたらそうなのかもしれないけれど、それとは違って怪しい宗教に嵌まっている人のような、何と言うか。

(まさか、グリッタ様も操られ……?)

とは思っても、彼女の周りに黒いモヤモヤはないし、仲良しのグローリア様がいつもの調子なのだから、これが通常運転てことだよね?

「それでも、ですわ」

とりあえず、勝手だとは思うけど、フィスの婚約者どうこうは釘を刺させてもらう。フィスの立場上仕方がないのかもしれないけれど、彼の意向を完全に置いてきぼりはダメだと思うのだ。いやほんと、おまいうとか言われそうなんだけどさ!

「まあ、まさかを、ですとか考えていらっしゃるのかしら?」
「……偽者?」
「最近まで市井にいた、自称聖女の貴女の義理のお姉様ですわ」
「……マリーアお姉様のことをおっしゃっているのであるならば、訂正して下さい。お姉様は精霊様にも陛下にも認められた、歴とした聖女です」
「それにしては、ねぇ?聖魔法も歴代聖女には遠く及ばないのではなくて?」
「ーーー!!」

一瞬カッとなったけど、イデアがきゅっと手を握ってくれて、我に返る。そうだ、落ち着け、私。後ろに控えている侍女二人も、心配そうに状況を見つめている。と言うか、スザンヌに至っては笑顔なのに目が据わっているけれど。

そして改めて周りを見れば、遠巻きに生徒たちや野次馬たちが集まっていることに気付く。この面子で揃っているのだ、仕方ない。ざわざわと、聖女?ああ、愛し子の?とか婚約がとかいろいろ聞こえて来る。

「お姉様は間違いなく聖女ですわ。は聖魔法の素養すらないのですし」
「わたくしを馬鹿にしているの?」
「わたくしと申しました」
「っ、」

へーん、事実だもんね!この野次馬さんたちの中にだっていないだろう。確かになとか、聖女がどうしたとか、周りのざわめきは益々増える。

「だ……!」
「もうおよしなさい、エレナ」
「でも、グローリア様」
「わたくしを思っての言葉はありがたいですわ。でもそれ以上は……陛下への不敬にもなりかねませんわ。曲がりなりにも、マリーア様はサバンズ家のご後継ですし」
「曲がりなりにもって」
「?ご後継なのよね?」
「……そうですけれど」 

地か、地なんだな、グローリア様。お貴族思考はちょいちょい出ちゃうんだな。悪気なく。苦笑しかできないわー。

「人も増えましたし、移動しましょう。サーフィス様との約束に遅れてしまいますわ」
「そうでした!殿下がお待ちかねですよね」
「まあ、ふふっ、どうかしら」
「きっとそうですよ」

「では、リリアンナ様、イデアーレ様。失礼致しますわ」と、グローリア様たちは何事も無かったかのように会釈して去って行った。野次馬さんたちも、散り散りになっていく。

「もう、何なのよ……」

出鼻を挫かれて、一気に疲れてしまった。せっかくのお祭りなのに。

「ごめんね、リリー。わたし役立たずで」

イデアまでしょげてしまった。いやいや、引きこもりご令嬢が逃げずにいてくれただけで有難いです!

「そんなことはないわ。イデアが手を握ってくれて、落ち着いたもの。ありがとう」
「リリー」
「これで暗くなっても勿体ないよね!予定通りに行きましょ!」
「ええ!」

イデアと手を繋ぎ直して、改めて手芸部の展示教室を目指す。嫌なことに引き摺られて、楽しめないのは悔しいもんね!切り替えてやる!

……しっかし、懸念が確定しちゃったなあ。次に会ったらもうちょっと言えるように鍛えようっと!

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