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第三章 建国祭と学園と
37.入学式
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楽しかった建国祭からあっという間に数ヶ月経ち、今日は学園の入学式です!
いや、まだ私じゃなくて、マリーアのね。
「どうかな?制服」
と、ハニカミながら、私に制服姿を披露するマリーア。
それはもちろん似合っている。
ヒロインの風格、ここにありだ。
「とっても素敵よ!マリー姉さま!きっとこの国で一番似合っていると思う!」
「大げさよ、リリー。でも、ありがとう」
頬を少し赤く染めて、ふわっと微笑むマリーア。おうっ、久しぶりにヒロインオーラを浴びたぞ。
そういえば、最近のマリーアはちょっとキャラ変が激しかったような……?もしかしなくても私のせいかしら。
正統派ヒロインのはずなのに、黙っていれば可愛い系に向かっているような気も……。いやいや、大丈夫、大丈夫。まだまだ充分キラキラしている。
「テンダーが選んでくれた髪飾りも似合ってる!ほんとに制服に合うものを選んでくれたねぇ」
「ほんとよ!早く会ってお礼しなくちゃね」
「姉さま、一度くるっと回って見せて!」
「え、ええ?こう?」
マリーアが戸惑いながらもくるっと体を回転させる。
テンダーがマリーアに選んでくれたのは、グリーンとピンクのラインストーンの、小花がいくつも咲いたような髪飾りだ。マリーアの金髪によく映える。くるっと回ると、髪飾りもマリーアもキラキラと光に反射して、輝くばかりだ。
「ま、眩しい……!姉さま、もう一度……」
「リリー、いい加減になさいな。遅れるから、もう行きますよ」
5回目を頼もうとしたら、さすがにお母様に止められた。「はあい」と、しぶしぶ引き下がる。
「ふふっ、リリーの気持ちも分かるけど。とても似合ってるわ、マリー。あなたのお母様も素敵だったけど、それ以上に可愛いわ!……なんて言ったら、怒られてしまうかしらね?」
お母様は微笑しながらそう言って、そっとマリーアの頬を撫でる。そしてマリーアも「えへへ、ありがとうございます」と、幸せそうに頬擦りする。
「ほら、みんな、そろそろ馬車に乗りなさい」
そんな幸せ風景に一番泣きそうになっていたお父様が、必死に涙を堪えて声をかけてきて、家族で馬車に乗り込む。学園の入学式は、家族も参加できるのだ。
ファーブル王国にはいくつか学園があるが、私たちが通うのは王立の魔法学園である。魔力が一定以上の者しか通えないため、ほとんどが上位の貴族だ。
前世を思うと、階級か……とも一瞬過ったけど、よくよく考えると魔力で学校を分けるのも、学力と同じで必要なことなのかもと気づく。どうしても、学ぶものの差が出てしまうのだろうから。
これがまた、結構厳密に厳しくて、上位貴族でも深緑以上の魔力持ちじゃないと入学できないのだ。そして素行不良者は、魔力を封印する腕輪を嵌められて、即退学となるらしい。ちょっと怖い。けどまあ、強い魔力持ちには必要だよね。
そんな訳で、人数もそう多くない。6年制だけど、全学年で350人前後くらいだ。うーん、ノーブルですなあ。
さらにそんな訳で、式典には家族が参加できる事が多かったりするのだ。
学園に着くと、新入生は一旦教室に、家族は講堂に案内される。日本での入学式と同じ感じだ。原作が日本だから、それもそうか。季節も春だしね。桜がないのが残念だけど、春の花々が咲き誇っていて、馴染み深い光景に何だかそわそわする。春って浮かれない?私だけかしら。
新入生が並んで講堂に入場し、式が始まる。
開会宣言から始まり、学園長の挨拶に来賓の挨拶と続く。この辺も慣れた光景だ。そして新入生代表の挨拶はもちろんフィスだ。魔法学園の生徒として恥じないように、と、そつなくこなしていた。さすが王子様。周りの生徒や新入生の姉妹にも熱視線を送られている。ここのところ、ルシーアとのやり取りで素を見すぎているせいで忘れていたが、歴とした正統派美形王子だもんね。
なんてことを考えていると、壇上から降りるフィスと目が合った。お疲れ様の意味も込めてこっそり小さく手を振ると、とっても甘い顔で微笑み返された。それを見た周りのお嬢様方の、声にならない悲鳴が伝わってくる。
(こ、この雰囲気はなかなか怖い!マリーア、フィスと仲良いけど、やっかまれなければいいなあ)
でもあれか、聖女と勇者だし、大丈夫かな。
あれ?今気づいたけど、聖女マリーアに勇者フィス。フィス殿下の優秀な側近二人、ヒンターもマークも同級生。さらには愛し子テンダーまで加わって。この学年、黄金期なのでは?
3つも年下の私って、必要……?
うん、協力するって張り切ってるけどさ。あれ?
悪役以外の役割がないような気もしたりして……って、いやいや、ルシーアの愛し子になっておいて、それはないわ!……ないよね?
お嬢様生活を満喫したい気持ちに変わりはないし、誰に恨みもないし!うん、大丈夫大丈夫!
ただもしかしたら、役立たずで終わる可能性もあるかもなあ。
いや、まだ私じゃなくて、マリーアのね。
「どうかな?制服」
と、ハニカミながら、私に制服姿を披露するマリーア。
それはもちろん似合っている。
ヒロインの風格、ここにありだ。
「とっても素敵よ!マリー姉さま!きっとこの国で一番似合っていると思う!」
「大げさよ、リリー。でも、ありがとう」
頬を少し赤く染めて、ふわっと微笑むマリーア。おうっ、久しぶりにヒロインオーラを浴びたぞ。
そういえば、最近のマリーアはちょっとキャラ変が激しかったような……?もしかしなくても私のせいかしら。
正統派ヒロインのはずなのに、黙っていれば可愛い系に向かっているような気も……。いやいや、大丈夫、大丈夫。まだまだ充分キラキラしている。
「テンダーが選んでくれた髪飾りも似合ってる!ほんとに制服に合うものを選んでくれたねぇ」
「ほんとよ!早く会ってお礼しなくちゃね」
「姉さま、一度くるっと回って見せて!」
「え、ええ?こう?」
マリーアが戸惑いながらもくるっと体を回転させる。
テンダーがマリーアに選んでくれたのは、グリーンとピンクのラインストーンの、小花がいくつも咲いたような髪飾りだ。マリーアの金髪によく映える。くるっと回ると、髪飾りもマリーアもキラキラと光に反射して、輝くばかりだ。
「ま、眩しい……!姉さま、もう一度……」
「リリー、いい加減になさいな。遅れるから、もう行きますよ」
5回目を頼もうとしたら、さすがにお母様に止められた。「はあい」と、しぶしぶ引き下がる。
「ふふっ、リリーの気持ちも分かるけど。とても似合ってるわ、マリー。あなたのお母様も素敵だったけど、それ以上に可愛いわ!……なんて言ったら、怒られてしまうかしらね?」
お母様は微笑しながらそう言って、そっとマリーアの頬を撫でる。そしてマリーアも「えへへ、ありがとうございます」と、幸せそうに頬擦りする。
「ほら、みんな、そろそろ馬車に乗りなさい」
そんな幸せ風景に一番泣きそうになっていたお父様が、必死に涙を堪えて声をかけてきて、家族で馬車に乗り込む。学園の入学式は、家族も参加できるのだ。
ファーブル王国にはいくつか学園があるが、私たちが通うのは王立の魔法学園である。魔力が一定以上の者しか通えないため、ほとんどが上位の貴族だ。
前世を思うと、階級か……とも一瞬過ったけど、よくよく考えると魔力で学校を分けるのも、学力と同じで必要なことなのかもと気づく。どうしても、学ぶものの差が出てしまうのだろうから。
これがまた、結構厳密に厳しくて、上位貴族でも深緑以上の魔力持ちじゃないと入学できないのだ。そして素行不良者は、魔力を封印する腕輪を嵌められて、即退学となるらしい。ちょっと怖い。けどまあ、強い魔力持ちには必要だよね。
そんな訳で、人数もそう多くない。6年制だけど、全学年で350人前後くらいだ。うーん、ノーブルですなあ。
さらにそんな訳で、式典には家族が参加できる事が多かったりするのだ。
学園に着くと、新入生は一旦教室に、家族は講堂に案内される。日本での入学式と同じ感じだ。原作が日本だから、それもそうか。季節も春だしね。桜がないのが残念だけど、春の花々が咲き誇っていて、馴染み深い光景に何だかそわそわする。春って浮かれない?私だけかしら。
新入生が並んで講堂に入場し、式が始まる。
開会宣言から始まり、学園長の挨拶に来賓の挨拶と続く。この辺も慣れた光景だ。そして新入生代表の挨拶はもちろんフィスだ。魔法学園の生徒として恥じないように、と、そつなくこなしていた。さすが王子様。周りの生徒や新入生の姉妹にも熱視線を送られている。ここのところ、ルシーアとのやり取りで素を見すぎているせいで忘れていたが、歴とした正統派美形王子だもんね。
なんてことを考えていると、壇上から降りるフィスと目が合った。お疲れ様の意味も込めてこっそり小さく手を振ると、とっても甘い顔で微笑み返された。それを見た周りのお嬢様方の、声にならない悲鳴が伝わってくる。
(こ、この雰囲気はなかなか怖い!マリーア、フィスと仲良いけど、やっかまれなければいいなあ)
でもあれか、聖女と勇者だし、大丈夫かな。
あれ?今気づいたけど、聖女マリーアに勇者フィス。フィス殿下の優秀な側近二人、ヒンターもマークも同級生。さらには愛し子テンダーまで加わって。この学年、黄金期なのでは?
3つも年下の私って、必要……?
うん、協力するって張り切ってるけどさ。あれ?
悪役以外の役割がないような気もしたりして……って、いやいや、ルシーアの愛し子になっておいて、それはないわ!……ないよね?
お嬢様生活を満喫したい気持ちに変わりはないし、誰に恨みもないし!うん、大丈夫大丈夫!
ただもしかしたら、役立たずで終わる可能性もあるかもなあ。
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