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第三章 建国祭と学園と
36.新しい仲間
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『おお、ようやく我の愛し子になる決心がついたか?テンダーよ』
「……いやでも、兄上は立派だからいいとして。俺が調子に乗りすぎたりするのでは……?」
意外と優柔不断……もとい、慎重派らしい。サラマンダーもやれやれと天を仰いでいる。けれど。
「サラマンダー様は、テンダー様のこういう所もお気に入りなのですね」
『まあなあ。力をただ振り回すだけの奴は困るからのう。自分を疑う素質とでも言おうか、まあ、疑い過ぎても困るのだが……己を諫められる者、がやはり好ましい。おい、シルフ、リリアンナは聡い娘だな』
『そうだろう?』
『ふっ、だからこその明らかな男性性か。なるほどな』
何がなるほどなのか。サラマンダーはニヤッとした納得顔で、私の頭をポンポンする。
『奔放なシルフの珍しい執着だ。楽しそうであるが、ふむ、いろいろ頑張れよ、リリアンナ』
そして周りを見ながら楽しそうに言われた。何だか話が恥ずかしい方に向かっている気がする。
「いっ、今は!テンダー様の祝福ですよね?テンダー様はやっぱりお嫌なのですか?」
強引に話を戻す。
「嫌では、ないが。その、どうしてもだな」
えええー。まだそこ?確かに慎重なのは美徳なのだろうけれど。ちょっともったりとした時間が流れてしまう。
「確かに、お兄さまがご当主向きなのですね、何となく分かりました」
マリーアの囁き声に、うんうんと頷く。そして本人はまだ悩んでいる。いい子には違いないが、周りに付く人によってはちょっと心配だ。
『そこはそうじゃな』
「剣技は迷いがないけどね」
「本当に。自分達も鍛練を欠かせませんが、質が違うのが分かるほどです」
『そうじゃろ?そこも気に入っている』
フィスとヒンターが苦笑でフォローし、マークも頷いている。サラマンダーも心なしかドヤ顔だ。
「テンダー。君は今でも充分な強さがあるが。わたしとしても、サラマンダー様に守護をされた君が、有事に共にいてくれるならとても心強い」
「殿下」
フィスが王太子然として、テンダーを真っ直ぐに見て力強く語りかける。この辺は、さすが王子で勇者候補だ。
「それに、もし調子に乗られるようなら、みんなで叱ってさしあげます!ねっ、お姉さま!」
「任せてちょうだい」
「はは、そうか、それはありがたいですね」
「わたくしも乗ってしまったら、叱ってくださいませ。皆さま、よろしくお願いいたしますわ」
「そうよね、お互いによね、リリー」
「うる……厳しいヒンターもマークもいる。そんなに乗るようなことはない気もするぞ?」
「もちろん必要な進言はしますが……フィス?」
「ぷっ、ははははは!そう、そうですよね。みんなで……うん、ありがとうございます」
私たちのやり取りに一通り笑った後、テンダーはすっきりとした表情でサラマンダーを見て、きっぱりと言った。
「サラマンダー様。祝福を、ご加護をお願いいたします」
サラマンダーは優しく頷いて微笑んだ。そして美少年(仮)の姿から、ルビーを溶かしたような赤いキラキラした美しい髪の、端麗な姿に戻る。精霊さんのこの姿は、本当に神々しくて見惚れてしまう。
サラマンダーは、すっとテンダーの額に手を当て、目を閉じる。すると、ぱあっと一瞬、テンダーの体が輝いた。
『終いじゃ。テンダー、我が愛し子。これからの加護を約束しよう』
「ありがとう、ございます。正しい道を進むことを誓います」
テンダーの言葉に、嬉しそうに微笑むサラマンダー。ルシーも加護を与えるのは親和性がとても大事って言っていたから、我が子に近い感覚なのかな。
「……って、あれ?終わりですか?額にキスは?」
『うん?しても良いが、必ずしも必要ではないぞ?』
なんですと?じゃあ、ルシーのあれこれは?
「へぇぇぇ、そうなんですね、なるほど。……ルシーア?」
『あ~、その、愛情表現だ……怒ったか?』
うっ、美麗少年の上目遣いは反則だ!
「おこ、っていうか、その」
『ああ、そういう……。リリアンナ、精霊は愛情表現が豊かなのでな、許してやってくれ』
「ダメですよ!サラマンダー様の進言(?)でも、それはダメです!」
『ははは、オルソンの王子も頑張るしかないのぅ』
「……ああ、もう!精霊様って!そういう問題では!」
だんだんと精霊相手に雑な態度になっているフィスを、かなり面白がっているサラマンダー。
『まあまあ。ともかく、我の愛し子も頼むぞ、皆』
そうだった。今はそちらだ。
「う、ん。はい。コホン。テンダー、決心してくれてありがとう。これからもよろしく頼む」
「はい、こちらこそお願いいたします」
テンダーは何事もなかったかのように礼をとった。大人だ。
『よし、用は済んだな?祭りの続きを回ろうぞ!』
『飴といい、はしゃぎすぎではないか?シルフよ』
『なかなか楽しいぞ。お主もどうだ?』
一番大人なはずのルシーアが一番はしゃいでいるが。ま、せっかくのお祭りだしね!
「テンダー様もいかがですか?」
「お邪魔でなければ、是非」
「もちろんだ、行こう!」
そうして街に戻って、あちこち回って、お揃いのものを買ったりして、みんなで一日中楽しく過ごした。最後の方はテンダーも敬称なしで、普通に話せるようになっていた。
まさかのサラマンダーにも会えたし!やっぱり仲間が増えるのは嬉しいな!
「……いやでも、兄上は立派だからいいとして。俺が調子に乗りすぎたりするのでは……?」
意外と優柔不断……もとい、慎重派らしい。サラマンダーもやれやれと天を仰いでいる。けれど。
「サラマンダー様は、テンダー様のこういう所もお気に入りなのですね」
『まあなあ。力をただ振り回すだけの奴は困るからのう。自分を疑う素質とでも言おうか、まあ、疑い過ぎても困るのだが……己を諫められる者、がやはり好ましい。おい、シルフ、リリアンナは聡い娘だな』
『そうだろう?』
『ふっ、だからこその明らかな男性性か。なるほどな』
何がなるほどなのか。サラマンダーはニヤッとした納得顔で、私の頭をポンポンする。
『奔放なシルフの珍しい執着だ。楽しそうであるが、ふむ、いろいろ頑張れよ、リリアンナ』
そして周りを見ながら楽しそうに言われた。何だか話が恥ずかしい方に向かっている気がする。
「いっ、今は!テンダー様の祝福ですよね?テンダー様はやっぱりお嫌なのですか?」
強引に話を戻す。
「嫌では、ないが。その、どうしてもだな」
えええー。まだそこ?確かに慎重なのは美徳なのだろうけれど。ちょっともったりとした時間が流れてしまう。
「確かに、お兄さまがご当主向きなのですね、何となく分かりました」
マリーアの囁き声に、うんうんと頷く。そして本人はまだ悩んでいる。いい子には違いないが、周りに付く人によってはちょっと心配だ。
『そこはそうじゃな』
「剣技は迷いがないけどね」
「本当に。自分達も鍛練を欠かせませんが、質が違うのが分かるほどです」
『そうじゃろ?そこも気に入っている』
フィスとヒンターが苦笑でフォローし、マークも頷いている。サラマンダーも心なしかドヤ顔だ。
「テンダー。君は今でも充分な強さがあるが。わたしとしても、サラマンダー様に守護をされた君が、有事に共にいてくれるならとても心強い」
「殿下」
フィスが王太子然として、テンダーを真っ直ぐに見て力強く語りかける。この辺は、さすが王子で勇者候補だ。
「それに、もし調子に乗られるようなら、みんなで叱ってさしあげます!ねっ、お姉さま!」
「任せてちょうだい」
「はは、そうか、それはありがたいですね」
「わたくしも乗ってしまったら、叱ってくださいませ。皆さま、よろしくお願いいたしますわ」
「そうよね、お互いによね、リリー」
「うる……厳しいヒンターもマークもいる。そんなに乗るようなことはない気もするぞ?」
「もちろん必要な進言はしますが……フィス?」
「ぷっ、ははははは!そう、そうですよね。みんなで……うん、ありがとうございます」
私たちのやり取りに一通り笑った後、テンダーはすっきりとした表情でサラマンダーを見て、きっぱりと言った。
「サラマンダー様。祝福を、ご加護をお願いいたします」
サラマンダーは優しく頷いて微笑んだ。そして美少年(仮)の姿から、ルビーを溶かしたような赤いキラキラした美しい髪の、端麗な姿に戻る。精霊さんのこの姿は、本当に神々しくて見惚れてしまう。
サラマンダーは、すっとテンダーの額に手を当て、目を閉じる。すると、ぱあっと一瞬、テンダーの体が輝いた。
『終いじゃ。テンダー、我が愛し子。これからの加護を約束しよう』
「ありがとう、ございます。正しい道を進むことを誓います」
テンダーの言葉に、嬉しそうに微笑むサラマンダー。ルシーも加護を与えるのは親和性がとても大事って言っていたから、我が子に近い感覚なのかな。
「……って、あれ?終わりですか?額にキスは?」
『うん?しても良いが、必ずしも必要ではないぞ?』
なんですと?じゃあ、ルシーのあれこれは?
「へぇぇぇ、そうなんですね、なるほど。……ルシーア?」
『あ~、その、愛情表現だ……怒ったか?』
うっ、美麗少年の上目遣いは反則だ!
「おこ、っていうか、その」
『ああ、そういう……。リリアンナ、精霊は愛情表現が豊かなのでな、許してやってくれ』
「ダメですよ!サラマンダー様の進言(?)でも、それはダメです!」
『ははは、オルソンの王子も頑張るしかないのぅ』
「……ああ、もう!精霊様って!そういう問題では!」
だんだんと精霊相手に雑な態度になっているフィスを、かなり面白がっているサラマンダー。
『まあまあ。ともかく、我の愛し子も頼むぞ、皆』
そうだった。今はそちらだ。
「う、ん。はい。コホン。テンダー、決心してくれてありがとう。これからもよろしく頼む」
「はい、こちらこそお願いいたします」
テンダーは何事もなかったかのように礼をとった。大人だ。
『よし、用は済んだな?祭りの続きを回ろうぞ!』
『飴といい、はしゃぎすぎではないか?シルフよ』
『なかなか楽しいぞ。お主もどうだ?』
一番大人なはずのルシーアが一番はしゃいでいるが。ま、せっかくのお祭りだしね!
「テンダー様もいかがですか?」
「お邪魔でなければ、是非」
「もちろんだ、行こう!」
そうして街に戻って、あちこち回って、お揃いのものを買ったりして、みんなで一日中楽しく過ごした。最後の方はテンダーも敬称なしで、普通に話せるようになっていた。
まさかのサラマンダーにも会えたし!やっぱり仲間が増えるのは嬉しいな!
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