27 / 81
第二章 夢と魔法の国
23.王城再び
しおりを挟む
妖精さんの祝福のレア度に騒ぎはしたものの、その後はいつものように朝食を美味しくいただいた。
落ち着いてから、私はリリスから「いつでも呼んで」と言われたことを思い出しお父様に伝えたが、陛下にお伝えするまで自粛するように言われてしまった。ちぇっ。
仕方ないけどさ。こんなことなら黙ってれば良かったと過るけども、私も勉強不足でしたしね……。後悔先に立たずだ。
そんなこんなで二日後。
私たち家族は王城に来ています。仕事早いな~、陛下。
しかし、こんなすぐにまたお城に来ようとは想定外もいいとこだよ。
原作でももちろんこんなイベントないし。そりゃそうだよね、家族仲が最悪だったわけだし。そこが変わっただけで、運命って変わるんだなあ。何となく理解していたけど、改めて凄さと言うか怖さも感じてしまう。けれど、自分で望んだことでもあるんだし!人間万事塞翁が馬を信じて突き進もう。守るぞ、お嬢様生活。楽しもう、せっかくのファンタジー。
「よく来てくれた、サバンズ家の皆」
今日は謁見の間ではなく、王宮の応接室に通された。ひとまず、まだ王家とうちだけの話にしたいらしい。
陛下と王妃殿下、そして王太子殿下も一緒だ。殿下の弟君もいるけれど、まだ5歳なのでお留守番なのだろう。
王族の登場に、ソファーから立ち上がろうとした私たちを、陛下が手で制する。
「そのままでよい。畏まった挨拶も不要だ。皆、急な呼び出しに応じてもらい、感謝する」
「とんでもないことでございます」
陛下の言葉にお父様が座ったまま頭を下げ、私たちも黙って頭を下げる。
殿下の色味は陛下と同じだけど、この中性的なキラキラ感は、どうやらお母様の王妃殿下似だ。
「マリーア嬢、リリアンナ嬢。サーフィスが世話になっているね。仲良くしてくれて、ありがとう」
「特別に仲良くしている訳ではないですよ、陛下」
にこやかに私たち姉妹に話しかけてくれた陛下に、私たちが返事をする前にお父様が黒い笑顔で返す。え、大丈夫なの?
「そんなにつれないことを言わんでもいいだろうが、アルバート」
「それは失礼致しました」
ん?と首を傾げる私たちに、王妃殿下が優しく説明してくれる。
「ふふっ。陛下と侯爵は学園の同級生で親友なのよ。マリーアさんもリリアンナさんも、サーフィスと友人になってくれたら嬉しいわ」
「王妃殿下、あくまで友人ですからな!」
「分かってますよ。本当にお嬢様たちが大切なのね、侯爵」
王妃殿下も、空のように広い心で返してくれる。後で聞いたら、王妃殿下も同級生だったんだって。だからか。まあ、お父様の家族への溺愛ぶりをみていたら、いろいろ諦めてくれたのかもしれない。
「サバンズ侯爵、先日は夫人にも世話になった。お嬢様方にも友人になることを認めてもらえたので、今後ともよろしく頼む」
「あくまで友人ですがな!」
殿下とお父様にも火花が見えます。殿下もさすが王族と言うべきか、こんな面倒な、げふんげふん、家族思いのお父様に負けずに笑顔で張り合ってる。
お母様は静観を決め込んだようで、安定のアルカイックスマイルだ。
「コホン。ではそろそろ本題に入ろうか。リリアンナ嬢、粗方お父上から聞いているが、妖精と会った経緯を改めて聞かせてもらえるかな?」
「はい、陛下」
良かった、いつまでこの不毛な争いが続くのかと思ったよ。
やっと話が進むわと思いつつ、リリスとの出会いを順を追って説明する。
「王宮庭園に仲間がたくさんいると?」
「はい。わたくしも、お茶会の時は見えなかったのですが。そして、殿下のこともあの子って。大切に想われてそうでしたよ」
「そうなんだ……」
殿下が不思議そうな顔で呟いた。
「はい。殿下はお会いしたことはなかったのですか?」
「残念だけどね」
そうなのか。意外なような、納得できるような。
「ふむ。そのリリスとやらは呼べば会えると?」
「はい」
陛下は少し逡巡した後、「皆で庭園に行ってみるか」と提案した。もちろん誰も反対せず、ソファーから立ち上がる。そして陛下とお父様を筆頭に、庭園に向かって歩きだした。陛下はしきりにお父様に何かを話して睨まれている。小声だから聞こえないけど、また不毛な争いかなあ、あれ……。
「リリアンナ嬢。今日も来てくれてありがとう。妖精なんて凄く驚いたけど、また会えて嬉しいよ」
いつの間にか隣を歩いていた殿下が、王子様スマイルで恥ずかしげもなく、さらりとそんなことを言ってきた。すごいなー、私がちょっと照れちゃうよ。ここは平常心、平常心。
「こちらこそ、私事でお時間を取っていただいて、ありがとうございます」
「私事でもないんじゃないか?それにしてもすごいね、リリアンナ嬢は。妖精にも好かれるなんて、さすがというか」
「そ、う、でしょうか?でも、殿下にいただいたお花に付いてきたみたいですから。そもそも殿下が好かれていたのだと思いますよ?」
「そうかな?だったらわたしも嬉しいな」
「きっとそうですよ!」
ふふっ、殿下も嬉しそう。ずっとニコニコしている。妖精さんに見守られていたなんて、幸せだもんね!わかるわかる!私もつられてニコニコしちゃう。「お庭で会えるの楽しみです!」と、テンション上がりまくりだ。緊張も解れてきて、だんだん楽しくなってきた。
赤い顔を横に背けて「……妖精に、感謝だな」と呟いた殿下の声も聞こえないほどに。
「あらあら、まあまあ。可愛い二人だわあ。ねえ?ジョセフィーヌ」
「左様でございますね。子ども同士は微笑ましいですわね。……マリーアもいってらっしゃい?」
「!はいっ、お任せください、お義母様!」
後ろでもそんなやり取りがあったのも知らず、合流してきたマリーアと楽しく手を繋ぎ、殿下の微妙な笑顔にも気づかずウキウキな私。
リリス、今会いに行きますわ!
落ち着いてから、私はリリスから「いつでも呼んで」と言われたことを思い出しお父様に伝えたが、陛下にお伝えするまで自粛するように言われてしまった。ちぇっ。
仕方ないけどさ。こんなことなら黙ってれば良かったと過るけども、私も勉強不足でしたしね……。後悔先に立たずだ。
そんなこんなで二日後。
私たち家族は王城に来ています。仕事早いな~、陛下。
しかし、こんなすぐにまたお城に来ようとは想定外もいいとこだよ。
原作でももちろんこんなイベントないし。そりゃそうだよね、家族仲が最悪だったわけだし。そこが変わっただけで、運命って変わるんだなあ。何となく理解していたけど、改めて凄さと言うか怖さも感じてしまう。けれど、自分で望んだことでもあるんだし!人間万事塞翁が馬を信じて突き進もう。守るぞ、お嬢様生活。楽しもう、せっかくのファンタジー。
「よく来てくれた、サバンズ家の皆」
今日は謁見の間ではなく、王宮の応接室に通された。ひとまず、まだ王家とうちだけの話にしたいらしい。
陛下と王妃殿下、そして王太子殿下も一緒だ。殿下の弟君もいるけれど、まだ5歳なのでお留守番なのだろう。
王族の登場に、ソファーから立ち上がろうとした私たちを、陛下が手で制する。
「そのままでよい。畏まった挨拶も不要だ。皆、急な呼び出しに応じてもらい、感謝する」
「とんでもないことでございます」
陛下の言葉にお父様が座ったまま頭を下げ、私たちも黙って頭を下げる。
殿下の色味は陛下と同じだけど、この中性的なキラキラ感は、どうやらお母様の王妃殿下似だ。
「マリーア嬢、リリアンナ嬢。サーフィスが世話になっているね。仲良くしてくれて、ありがとう」
「特別に仲良くしている訳ではないですよ、陛下」
にこやかに私たち姉妹に話しかけてくれた陛下に、私たちが返事をする前にお父様が黒い笑顔で返す。え、大丈夫なの?
「そんなにつれないことを言わんでもいいだろうが、アルバート」
「それは失礼致しました」
ん?と首を傾げる私たちに、王妃殿下が優しく説明してくれる。
「ふふっ。陛下と侯爵は学園の同級生で親友なのよ。マリーアさんもリリアンナさんも、サーフィスと友人になってくれたら嬉しいわ」
「王妃殿下、あくまで友人ですからな!」
「分かってますよ。本当にお嬢様たちが大切なのね、侯爵」
王妃殿下も、空のように広い心で返してくれる。後で聞いたら、王妃殿下も同級生だったんだって。だからか。まあ、お父様の家族への溺愛ぶりをみていたら、いろいろ諦めてくれたのかもしれない。
「サバンズ侯爵、先日は夫人にも世話になった。お嬢様方にも友人になることを認めてもらえたので、今後ともよろしく頼む」
「あくまで友人ですがな!」
殿下とお父様にも火花が見えます。殿下もさすが王族と言うべきか、こんな面倒な、げふんげふん、家族思いのお父様に負けずに笑顔で張り合ってる。
お母様は静観を決め込んだようで、安定のアルカイックスマイルだ。
「コホン。ではそろそろ本題に入ろうか。リリアンナ嬢、粗方お父上から聞いているが、妖精と会った経緯を改めて聞かせてもらえるかな?」
「はい、陛下」
良かった、いつまでこの不毛な争いが続くのかと思ったよ。
やっと話が進むわと思いつつ、リリスとの出会いを順を追って説明する。
「王宮庭園に仲間がたくさんいると?」
「はい。わたくしも、お茶会の時は見えなかったのですが。そして、殿下のこともあの子って。大切に想われてそうでしたよ」
「そうなんだ……」
殿下が不思議そうな顔で呟いた。
「はい。殿下はお会いしたことはなかったのですか?」
「残念だけどね」
そうなのか。意外なような、納得できるような。
「ふむ。そのリリスとやらは呼べば会えると?」
「はい」
陛下は少し逡巡した後、「皆で庭園に行ってみるか」と提案した。もちろん誰も反対せず、ソファーから立ち上がる。そして陛下とお父様を筆頭に、庭園に向かって歩きだした。陛下はしきりにお父様に何かを話して睨まれている。小声だから聞こえないけど、また不毛な争いかなあ、あれ……。
「リリアンナ嬢。今日も来てくれてありがとう。妖精なんて凄く驚いたけど、また会えて嬉しいよ」
いつの間にか隣を歩いていた殿下が、王子様スマイルで恥ずかしげもなく、さらりとそんなことを言ってきた。すごいなー、私がちょっと照れちゃうよ。ここは平常心、平常心。
「こちらこそ、私事でお時間を取っていただいて、ありがとうございます」
「私事でもないんじゃないか?それにしてもすごいね、リリアンナ嬢は。妖精にも好かれるなんて、さすがというか」
「そ、う、でしょうか?でも、殿下にいただいたお花に付いてきたみたいですから。そもそも殿下が好かれていたのだと思いますよ?」
「そうかな?だったらわたしも嬉しいな」
「きっとそうですよ!」
ふふっ、殿下も嬉しそう。ずっとニコニコしている。妖精さんに見守られていたなんて、幸せだもんね!わかるわかる!私もつられてニコニコしちゃう。「お庭で会えるの楽しみです!」と、テンション上がりまくりだ。緊張も解れてきて、だんだん楽しくなってきた。
赤い顔を横に背けて「……妖精に、感謝だな」と呟いた殿下の声も聞こえないほどに。
「あらあら、まあまあ。可愛い二人だわあ。ねえ?ジョセフィーヌ」
「左様でございますね。子ども同士は微笑ましいですわね。……マリーアもいってらっしゃい?」
「!はいっ、お任せください、お義母様!」
後ろでもそんなやり取りがあったのも知らず、合流してきたマリーアと楽しく手を繋ぎ、殿下の微妙な笑顔にも気づかずウキウキな私。
リリス、今会いに行きますわ!
5
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。

ドアマット扱いを黙って受け入れろ?絶対嫌ですけど。
よもぎ
ファンタジー
モニカは思い出した。わたし、ネットで読んだドアマットヒロインが登場する作品のヒロインになってる。このままいくと壮絶な経験することになる…?絶対嫌だ。というわけで、回避するためにも行動することにしたのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる