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第二章 夢と魔法の国
18.殿下の来訪
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マリーアと殿下の運命の出会いであったはずのお茶会が、違ったインパクトを持って終わってから数日後。
なんと殿下が側近候補の二人を連れて、侯爵家にやってきた。
もちろん、先触れとかありましたよ。お父様に、「二人とも、心当たりは?」と、低い声で確認されたけど。あの流れで色っぽい話じゃないだろうし、もちろん「ないですわ」と、二人で答えました。そして、ないのなら断ろうとか無茶なことを言い出してお母様に怒られ、本日に至ります(マリーアが舌打ちしたようにも見えたけど、気のせいよね?)。そして、お父様は本日もお仕事です。
「ようこそいらっしゃいました、殿下。そしてアクシーズ公爵令息、オロス伯爵令息」
「サバンズ侯爵夫人、本日は急な対応に世話をかけた。ご厚意に感謝する」
「とんでもないことでございます。マリーア、リリアンナ、ご挨拶を」
ようこそいらっしゃいました、と、二人でカーテシーをする。
「本日は、そう畏まらずにいてもらえると嬉しい。……お二人に、これを」
殿下はそう言って、大きな花束を私たちに差し出す。
「わ、きれい……」
「よかった。今朝、王宮の庭園から摘んできたんだ。マリーア嬢もリリアンナ嬢も、庭園の花たちを気に入ってくれたと聞いたから」
おおっ、あの庭園のお花たちですか!それは華やかなはずだわ。王宮の花と私が勝手に意識しているからか、やけにキラキラして見える。花束を貰うのって、テンションあがるよね?!私は嬉しい!
「殿下が摘んでくださったのですか?」
「うん。庭師にいろいろ聞きながら……」
「嬉しいです!ありがとうこざいます!香りもとても好きです」
自然に笑顔も出るよね~!本当にキレイ。珍しいお花もあるから、後で調べようっと。
「……っ、喜んでもらえて良かった」
なぜか殿下が口元に拳をあてて少し後ずさり、咳払いをする。あれ?ちょっと耳が赤い?慣れてそうだけれど、急に恥ずかしくなったのかしら。後ろに控えている側近くんたちが、肩をポンポンしています。まだ12歳だもんね!ここはオバチャンがさくさく進めますよ。
「スザンヌ!綺麗にお部屋に飾ってね?」
「はい、畏まりました、お嬢様」
「お姉さま、お花、嬉しいですね!」
「そうね。ありがとうございます、殿下」
「いや……」
あ、あれ?やっぱり殿下とマリーアの間には、妙な緊張感があるな……?お互い意識して甘酸っぱい!というのではなくて、何だか一触即発的な……?
おや、そういえば。
「今日は殿下もヒンター様も、変な違和感がない……」
私の発言に、殿下以下三人が一斉に振り返る。しまった、声に出してしまったらしい。
「リリー、あなた……」
「さあさ!いつまでもエントランスでも仕方ないわ。皆様、ティールームにご案内致しますので、どうぞ」
マリーアが言いかけた一瞬先に、お母様が皆さまを案内するために声をかけた。それに応えてマリーアも一旦口を閉じて笑顔装着をする。殿下方も微笑みで応えて、皆で部屋へ向かう。
……うん、一見すると平和なんだけど、何でしょう……?
な、なんだか急に緊張感が出てきた感じなんですけど?
とりあえず、頑張ろう……?私。
我が家のティールームは、前世でいうところのロココ調な感じかな。白と金色がベースなんだけど、ギラギラせずに華やかで落ち着いている。ソファーや椅子の背凭れの細工もすっごく細かくて、優美だ。昔はこんなお部屋でアフタヌーンティーをいただくのが夢でした。機会がなくて果たせずだったけど、今生でのリベンジ!リベンジどころか、自宅!!ありがとうこざいます!
「リリアンナ?どうしたの?早くお座りなさいな」
「は、はいっ、すみません」
お母様の声で、トリップから戻る。いかんいかん、妙な緊張感からつい現実逃避をしてしまった。
「では、わたくしは失礼いたしますわね。せっかくの子どもたちの集まりに無粋でしょうから。皆様、どうぞごゆっくりなさってくださいませ」
「ありがとう、侯爵夫人」
お茶のセッティングが終わるのを見届けて、お母様は退出する。うちの侍女や殿下の護衛の人たちも、ドアの外で待機だ。
「改めて、先日はお茶会への参加をありがとう。そして今日も、時間を作ってもらえて感謝する」
「いえ、こちらこそ!楽しいお茶会でした、ありがとうございました!ねっ?お姉さま」
「そうね、リリアンナが可愛かったし」
う、うん?やっぱりマリーアおかしいぞ?いやね、私を好きでいてくれるのは、日々感じていて嬉しいんだけども。
そして、他のお三方、緊張しすぎじゃないですかね?
頭にハテナがいっぱいなのは、私だけ?
「あ、あの、皆様、今日はどうされました?いつもと違うような……いえ、殿下方にお会いしたのは先日が初めてですから何ともですけれど、その……」
なぜかしら、お姉さまも、って言いづらいわ。
私の言葉に、殿下はますます緊張した面持ちになり、側近くんたちはやや苦笑気味になる。マリーアは、うん、スンッて感じだ。
そして殿下は紅茶をひと口含んで、意を決したような顔をし、私の方を見て口を開いた。
「今日は……リリアンナ嬢に謝りに来たんだ」
え、何でしょう?
なんと殿下が側近候補の二人を連れて、侯爵家にやってきた。
もちろん、先触れとかありましたよ。お父様に、「二人とも、心当たりは?」と、低い声で確認されたけど。あの流れで色っぽい話じゃないだろうし、もちろん「ないですわ」と、二人で答えました。そして、ないのなら断ろうとか無茶なことを言い出してお母様に怒られ、本日に至ります(マリーアが舌打ちしたようにも見えたけど、気のせいよね?)。そして、お父様は本日もお仕事です。
「ようこそいらっしゃいました、殿下。そしてアクシーズ公爵令息、オロス伯爵令息」
「サバンズ侯爵夫人、本日は急な対応に世話をかけた。ご厚意に感謝する」
「とんでもないことでございます。マリーア、リリアンナ、ご挨拶を」
ようこそいらっしゃいました、と、二人でカーテシーをする。
「本日は、そう畏まらずにいてもらえると嬉しい。……お二人に、これを」
殿下はそう言って、大きな花束を私たちに差し出す。
「わ、きれい……」
「よかった。今朝、王宮の庭園から摘んできたんだ。マリーア嬢もリリアンナ嬢も、庭園の花たちを気に入ってくれたと聞いたから」
おおっ、あの庭園のお花たちですか!それは華やかなはずだわ。王宮の花と私が勝手に意識しているからか、やけにキラキラして見える。花束を貰うのって、テンションあがるよね?!私は嬉しい!
「殿下が摘んでくださったのですか?」
「うん。庭師にいろいろ聞きながら……」
「嬉しいです!ありがとうこざいます!香りもとても好きです」
自然に笑顔も出るよね~!本当にキレイ。珍しいお花もあるから、後で調べようっと。
「……っ、喜んでもらえて良かった」
なぜか殿下が口元に拳をあてて少し後ずさり、咳払いをする。あれ?ちょっと耳が赤い?慣れてそうだけれど、急に恥ずかしくなったのかしら。後ろに控えている側近くんたちが、肩をポンポンしています。まだ12歳だもんね!ここはオバチャンがさくさく進めますよ。
「スザンヌ!綺麗にお部屋に飾ってね?」
「はい、畏まりました、お嬢様」
「お姉さま、お花、嬉しいですね!」
「そうね。ありがとうございます、殿下」
「いや……」
あ、あれ?やっぱり殿下とマリーアの間には、妙な緊張感があるな……?お互い意識して甘酸っぱい!というのではなくて、何だか一触即発的な……?
おや、そういえば。
「今日は殿下もヒンター様も、変な違和感がない……」
私の発言に、殿下以下三人が一斉に振り返る。しまった、声に出してしまったらしい。
「リリー、あなた……」
「さあさ!いつまでもエントランスでも仕方ないわ。皆様、ティールームにご案内致しますので、どうぞ」
マリーアが言いかけた一瞬先に、お母様が皆さまを案内するために声をかけた。それに応えてマリーアも一旦口を閉じて笑顔装着をする。殿下方も微笑みで応えて、皆で部屋へ向かう。
……うん、一見すると平和なんだけど、何でしょう……?
な、なんだか急に緊張感が出てきた感じなんですけど?
とりあえず、頑張ろう……?私。
我が家のティールームは、前世でいうところのロココ調な感じかな。白と金色がベースなんだけど、ギラギラせずに華やかで落ち着いている。ソファーや椅子の背凭れの細工もすっごく細かくて、優美だ。昔はこんなお部屋でアフタヌーンティーをいただくのが夢でした。機会がなくて果たせずだったけど、今生でのリベンジ!リベンジどころか、自宅!!ありがとうこざいます!
「リリアンナ?どうしたの?早くお座りなさいな」
「は、はいっ、すみません」
お母様の声で、トリップから戻る。いかんいかん、妙な緊張感からつい現実逃避をしてしまった。
「では、わたくしは失礼いたしますわね。せっかくの子どもたちの集まりに無粋でしょうから。皆様、どうぞごゆっくりなさってくださいませ」
「ありがとう、侯爵夫人」
お茶のセッティングが終わるのを見届けて、お母様は退出する。うちの侍女や殿下の護衛の人たちも、ドアの外で待機だ。
「改めて、先日はお茶会への参加をありがとう。そして今日も、時間を作ってもらえて感謝する」
「いえ、こちらこそ!楽しいお茶会でした、ありがとうございました!ねっ?お姉さま」
「そうね、リリアンナが可愛かったし」
う、うん?やっぱりマリーアおかしいぞ?いやね、私を好きでいてくれるのは、日々感じていて嬉しいんだけども。
そして、他のお三方、緊張しすぎじゃないですかね?
頭にハテナがいっぱいなのは、私だけ?
「あ、あの、皆様、今日はどうされました?いつもと違うような……いえ、殿下方にお会いしたのは先日が初めてですから何ともですけれど、その……」
なぜかしら、お姉さまも、って言いづらいわ。
私の言葉に、殿下はますます緊張した面持ちになり、側近くんたちはやや苦笑気味になる。マリーアは、うん、スンッて感じだ。
そして殿下は紅茶をひと口含んで、意を決したような顔をし、私の方を見て口を開いた。
「今日は……リリアンナ嬢に謝りに来たんだ」
え、何でしょう?
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