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第二章 夢と魔法の国
17.運命の?お茶会。FINAL.
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「……そうではないが、やはり才能がある者が上に、と思う者は多いだろう?」
私の言葉に険があったのは認める。殿下はほんの少しだけ、怯んだように見えた。
「そうでしょうか?わたくしでしたら、もしもその方がその才能に…力に傲るような方でしたら、嫌ですわ」
「……君たちは、そうではないだろう?」
「そうありたいですし、そう思っていただけるのは光栄ですが。ええ、イデアーレ様やお姉さまはそんな方々ではございませんけれども、人間、いつ変わるかなど分からないものですし、国のトップがまず力ありきの考え方はどうかと。力さえありさえすれば、人格などは二の次に軽視されているようで、臣下、国民としては悲しく思いますわ」
「そのようなつもりはない!」
「そのおつもりがなくとも、先ほどまでの殿下のお言葉はそう聞こえましたもので。魔力量さえあれば、わたくしやお姉さまではなくともよろしいのでしょう?妃殿下に本当に求められるものとは、何なのでしょう?本当に魔力量ですか?」
「……っ、」
「ちょっと、リリアンナ様、わたくしは?!」と食い下がってくるグローリア様を横目に、私は殿下を見つめる。また暴走しちまった!と、若干後悔しているが、言ってしまった以上は仕方がない。
だって、魔力量、魔力量って。確かにありがたい才能だし、嬉しいし誇らしいし、人の役に立てたらなと思う。そしてお金も稼ぎたい。が、魔力量だけが私ではない。例え魔力量がたいしてなくたって、楽しく生きるために力を尽くしますよ!私は!
「リリアンナ嬢。言いたい事は分かるが、その辺にしてやってくれ。フィスは、魔力量だけに拘ってはいないよ。王家もだ。……ただ、どうしても指標になってしまうだろう、まず王家が力をと考える貴族たちは少なくないし」
白熱スイッチが入りかけた私に、ヒンター様が諭すように話しかけて来た。かなり、複雑な顔をして。
「まあ、分からなくはないのですけれど」
正直、ちょっと助かりました。
殿下相手にも言い過ぎたか。言い過ぎたな。子どもだから、ギリ許されるかしら。
「リリアンナ様、サーフィス様にさすがに失礼過ぎませんこと?」
「大丈夫だ、グローリア。フィスはそんなに狭量じゃないよ。今日はお互いを知るための機会だし。ねっ?フィス」
「……ああ、もちろんだ」
そうですよね、グローリア様。でも良かった、ギリギリ許されるらしい。殿下的には微妙な感じも受け取れるけど……ある意味、ちょうどよかったりするかしら?こんな生意気な女は嫌だとか。だったらそれはそれで結果オーライかしらね。
「そうよ、リリアンナ。あなたはまだ10歳だもの。少しワガママでもいいくらいなんだから」
えっ、ここでマリーア参戦?いくら子どもでも、あんまり王家と事を構えるのはよろしくなくないですか?
「でも、お姉さま。わたくし、つい言い過ぎてしまうのは反省しないと」
「いいのよ、それがリリアンナの良いところだもの!いざとなったら姉妹二人で国外で冒険者をしながらでも生活できるわよ」
「お、お姉さま?」
「「マリーア嬢?!」」
私も驚いたが、殿下とヒンター様も同時に叫ぶくらいに慌てた様子だ。いや、そりゃそうよね。国に囲っておきたい姉妹が出て行くなんて仄めかしたら。
「あ、でも、それこそ、リリアンナが本気で嫌がりでもしたら、侯爵家ごと国外に出るとか言い出すんじゃないかしら?お父様。今朝のご様子を見ていると。友人だけを作って来いなんて、親バカだもの」
「まさか、そんなこと……」
ないとは言えない気もする。最近のお父様は、鬱陶しいほどに家族への愛情を隠さない。今まで(勝手に)押さえつけていた反動のように。
「ねっ?あり得るわよね?」と、言葉に詰まった私にきゃっきゃと言い募る姉。いやだから、美人で可愛くて、とても素敵な笑顔なんだけど、何だか凄みがあるって。あれ?聖女候補(仮)ですよね?
「マリーア嬢。冗談でも困るよ。サバンズ家が抜けられたら国の一大事だ」
「うふふっ、冗談で済むといいですわよね?」
なぜかヒンター様とマリーアの間に火花が見える。
あーれー?
「ま、マリーア嬢とリリアンナ嬢は本当に仲良しだよね。羨ましいよね?イデアーレ嬢」
「ほっ、本当に!姉妹で国外旅行ですとか、楽しそうですよね!」
慌てたようにマークス様がイデアーレ嬢を巻き込み、イデアーレ様は話を旅行にすり替えてくれている。優しい。
「ヒンター。もう結構いい時間だよな?殿下も全てのテーブルを回った事だし、それぞれ自由にテーブルを行き来してもらう頃合いじゃないか?」
「そ、そうだ、そうだな。フィス、どうでしょう?」
「あ、ああ。いい頃合いだと思うぞ。そうしてくれ。お嬢様方も、好きなように皆と歓談して欲しい。挨拶でも言ったが、横の繋がりを持ってもらうのも、今日の目的だからね」
ただの二人のフォローかと思ったが、本当に当初から考えられていたらしく、殿下の合図で侍女さんたちが他のテーブルにも声をかけ、立食形式のように場をあっという間に整えた。
その後は和やかに他の子達とも話ができて、それなりに楽しく過ごせたけれど。
私としてのお茶会は成功と果たして言えるのか?これ?
しかも、マリーアを守るとか言って、守られたような……。あれぇ?
うん、済んだことはよしとしよう!
私の言葉に険があったのは認める。殿下はほんの少しだけ、怯んだように見えた。
「そうでしょうか?わたくしでしたら、もしもその方がその才能に…力に傲るような方でしたら、嫌ですわ」
「……君たちは、そうではないだろう?」
「そうありたいですし、そう思っていただけるのは光栄ですが。ええ、イデアーレ様やお姉さまはそんな方々ではございませんけれども、人間、いつ変わるかなど分からないものですし、国のトップがまず力ありきの考え方はどうかと。力さえありさえすれば、人格などは二の次に軽視されているようで、臣下、国民としては悲しく思いますわ」
「そのようなつもりはない!」
「そのおつもりがなくとも、先ほどまでの殿下のお言葉はそう聞こえましたもので。魔力量さえあれば、わたくしやお姉さまではなくともよろしいのでしょう?妃殿下に本当に求められるものとは、何なのでしょう?本当に魔力量ですか?」
「……っ、」
「ちょっと、リリアンナ様、わたくしは?!」と食い下がってくるグローリア様を横目に、私は殿下を見つめる。また暴走しちまった!と、若干後悔しているが、言ってしまった以上は仕方がない。
だって、魔力量、魔力量って。確かにありがたい才能だし、嬉しいし誇らしいし、人の役に立てたらなと思う。そしてお金も稼ぎたい。が、魔力量だけが私ではない。例え魔力量がたいしてなくたって、楽しく生きるために力を尽くしますよ!私は!
「リリアンナ嬢。言いたい事は分かるが、その辺にしてやってくれ。フィスは、魔力量だけに拘ってはいないよ。王家もだ。……ただ、どうしても指標になってしまうだろう、まず王家が力をと考える貴族たちは少なくないし」
白熱スイッチが入りかけた私に、ヒンター様が諭すように話しかけて来た。かなり、複雑な顔をして。
「まあ、分からなくはないのですけれど」
正直、ちょっと助かりました。
殿下相手にも言い過ぎたか。言い過ぎたな。子どもだから、ギリ許されるかしら。
「リリアンナ様、サーフィス様にさすがに失礼過ぎませんこと?」
「大丈夫だ、グローリア。フィスはそんなに狭量じゃないよ。今日はお互いを知るための機会だし。ねっ?フィス」
「……ああ、もちろんだ」
そうですよね、グローリア様。でも良かった、ギリギリ許されるらしい。殿下的には微妙な感じも受け取れるけど……ある意味、ちょうどよかったりするかしら?こんな生意気な女は嫌だとか。だったらそれはそれで結果オーライかしらね。
「そうよ、リリアンナ。あなたはまだ10歳だもの。少しワガママでもいいくらいなんだから」
えっ、ここでマリーア参戦?いくら子どもでも、あんまり王家と事を構えるのはよろしくなくないですか?
「でも、お姉さま。わたくし、つい言い過ぎてしまうのは反省しないと」
「いいのよ、それがリリアンナの良いところだもの!いざとなったら姉妹二人で国外で冒険者をしながらでも生活できるわよ」
「お、お姉さま?」
「「マリーア嬢?!」」
私も驚いたが、殿下とヒンター様も同時に叫ぶくらいに慌てた様子だ。いや、そりゃそうよね。国に囲っておきたい姉妹が出て行くなんて仄めかしたら。
「あ、でも、それこそ、リリアンナが本気で嫌がりでもしたら、侯爵家ごと国外に出るとか言い出すんじゃないかしら?お父様。今朝のご様子を見ていると。友人だけを作って来いなんて、親バカだもの」
「まさか、そんなこと……」
ないとは言えない気もする。最近のお父様は、鬱陶しいほどに家族への愛情を隠さない。今まで(勝手に)押さえつけていた反動のように。
「ねっ?あり得るわよね?」と、言葉に詰まった私にきゃっきゃと言い募る姉。いやだから、美人で可愛くて、とても素敵な笑顔なんだけど、何だか凄みがあるって。あれ?聖女候補(仮)ですよね?
「マリーア嬢。冗談でも困るよ。サバンズ家が抜けられたら国の一大事だ」
「うふふっ、冗談で済むといいですわよね?」
なぜかヒンター様とマリーアの間に火花が見える。
あーれー?
「ま、マリーア嬢とリリアンナ嬢は本当に仲良しだよね。羨ましいよね?イデアーレ嬢」
「ほっ、本当に!姉妹で国外旅行ですとか、楽しそうですよね!」
慌てたようにマークス様がイデアーレ嬢を巻き込み、イデアーレ様は話を旅行にすり替えてくれている。優しい。
「ヒンター。もう結構いい時間だよな?殿下も全てのテーブルを回った事だし、それぞれ自由にテーブルを行き来してもらう頃合いじゃないか?」
「そ、そうだ、そうだな。フィス、どうでしょう?」
「あ、ああ。いい頃合いだと思うぞ。そうしてくれ。お嬢様方も、好きなように皆と歓談して欲しい。挨拶でも言ったが、横の繋がりを持ってもらうのも、今日の目的だからね」
ただの二人のフォローかと思ったが、本当に当初から考えられていたらしく、殿下の合図で侍女さんたちが他のテーブルにも声をかけ、立食形式のように場をあっという間に整えた。
その後は和やかに他の子達とも話ができて、それなりに楽しく過ごせたけれど。
私としてのお茶会は成功と果たして言えるのか?これ?
しかも、マリーアを守るとか言って、守られたような……。あれぇ?
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