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第一章 サバンズ侯爵家

2.まず、第一印象!

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私の会心の笑顔に、お母様はもちろん、お父様まで驚いた顔をしている。失礼な。

今まで確かに貴族のお嬢様で、ちょっとわがままだったけれど、子どものご愛嬌…くらいだったと思うよ?…多分。

ともかく、第一印象、大事。超大事。いろんな本で書いてあった気がする。あんまり読んだことはなかったけど。TVとかで特集されてたよね~。

「り、リリー?そんな無理をして笑顔を作らなくてもいいのよ?驚いたでしょう?」

お母様が逆フォローしてくる。きっと、私が「聞いてない!お姉さまなんか認めない!」とか、暴れることを期待していたんだろうな。そうすれば、少しはお父様を困らせられるもんね。でも、ごめんね。後でちゃんとフォローするから!

「驚きましたけど、わたくし、お姉さまがずっと欲しかったんだもの!うれしいです!」

「そうか、そうか。リリーが喜んでくれて、お父様も嬉しいよ」


ニコニコ答える私に、ほっとした笑顔で頭を撫でるお父様。私も可愛い娘であることをアピールしなくては。


「でも、妹なら分かるけど、お姉さまって、どうやってできたの?前に家庭教師の先生に、お兄さまかお姉さまが欲しいわ!とお話したら、えっと、ふつう?には難しいって、教えていただいたのですけれど?」

それでも、純粋な嫌味のひとつやふたつは受けていただきたい。9歳の素朴な疑問よ。首をコテンってして、可愛いでしょ?

お父様はピシッと笑顔で固まり、お母様は平然を装いながらも肩が少し揺れている。ちょっとは溜飲が下がったかしら?

「り、リリー、あの、それはだな」

いくら貴族然として娘を育てていたとしても、さすがに齢よわい9つの娘には説明しにくいとみえる。

良かった、お父様がロクデナシじゃなくて。

「リリアンナお嬢様、マリーアお嬢様をお庭にご案内して差し上げたらいかがでしょうか?美味しいお菓子も準備しますゆえ」

明らかに動揺し始めた父をフォローするように、執事のセバスチャンがスマートに話に入ってくる。うんうん、執事といえばセバスチャンだよね。

「スリールのシュークリームもある?」

「もちろんでございます」

「やったあ!じゃあ、お姉さま、参りましょう!わたくしのことはリリーと呼んでくださいな」

もちろん、セバスチャンのフォローは無駄にしない。子どもらしく興味を逸らさなくちゃね。決して王都一の絶品シュークリームに釣られた訳ではないぞ。

そして私の言葉に、少し俯きがちだったマリーアがぱっと顔を上げ、

「わ、わた、くしもマリーと呼んでもらえたら、その、嬉しいわ、り、リリー?」

照れたような上目遣いではにかんだ笑顔でのひと言…!さすがヒロイン!殺傷能力が半端ない!可愛い!!華があるって、こういうことをいうんだろうなあ。

「わかったわ、マリーお姉さま!」

私の言葉に、「!!」と、嬉しさ満面でパアアアアっとさらに花開くような笑顔を浮かべるお姉さま。目が、目がぁぁぁぁぁ!

よくこれと張り合おうとしたな、物語のリリー。生粋の侯爵令嬢としてのプライドか、ただの負けず嫌いか。どちらにしても、ある意味尊敬するわ。

ちなみに、リリー……私も、器量は悪くない。てゆーか、さすが高位貴族だけあって、美人に入る。母と同じの青銀髪にエメラルドの瞳……前世を考えたら、美少女でテンションが上がるほどだ。けどね!ちょっとキツそうで、脇役の中の美人というか?まあ、要するに華が足りない。こればかりはどうしようもなかろうな、と。そう思えるのは大人の記憶を思い出したからかもしれないけれど。


ともかく、私は蕩けそうな足元をこらえつつ、マリーと仲良く手を繋いでお庭へ向かいましたとさ。


後は大人たちで少し頑張れ。


そして、私たち姉妹の初めてのお茶会は、「こんな美味しいシュークリームは初めて食べた」と、泣き笑いのマリーアに、私がうっかり前世のオバチャンモードが発動してもらい泣きをしたものの、恙無つつがなく、なんなら周りの使用人たちに微笑ましく見守られながら、ほっこりと過ごすことができました。

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