2 / 80
第一章 サバンズ侯爵家
2.まず、第一印象!
しおりを挟む
私の会心の笑顔に、お母様はもちろん、お父様まで驚いた顔をしている。失礼な。
今まで確かに貴族のお嬢様で、ちょっとわがままだったけれど、子どものご愛嬌…くらいだったと思うよ?…多分。
ともかく、第一印象、大事。超大事。いろんな本で書いてあった気がする。あんまり読んだことはなかったけど。TVとかで特集されてたよね~。
「り、リリー?そんな無理をして笑顔を作らなくてもいいのよ?驚いたでしょう?」
お母様が逆フォローしてくる。きっと、私が「聞いてない!お姉さまなんか認めない!」とか、暴れることを期待していたんだろうな。そうすれば、少しはお父様を困らせられるもんね。でも、ごめんね。後でちゃんとフォローするから!
「驚きましたけど、わたくし、お姉さまがずっと欲しかったんだもの!うれしいです!」
「そうか、そうか。リリーが喜んでくれて、お父様も嬉しいよ」
ニコニコ答える私に、ほっとした笑顔で頭を撫でるお父様。私も可愛い娘であることをアピールしなくては。
「でも、妹なら分かるけど、お姉さまって、どうやってできたの?前に家庭教師の先生に、お兄さまかお姉さまが欲しいわ!とお話したら、えっと、ふつう?には難しいって、教えていただいたのですけれど?」
それでも、純粋な嫌味のひとつやふたつは受けていただきたい。9歳の素朴な疑問よ。首をコテンってして、可愛いでしょ?
お父様はピシッと笑顔で固まり、お母様は平然を装いながらも肩が少し揺れている。ちょっとは溜飲が下がったかしら?
「り、リリー、あの、それはだな」
いくら貴族然として娘を育てていたとしても、さすがに齢よわい9つの娘には説明しにくいとみえる。
良かった、お父様がロクデナシじゃなくて。
「リリアンナお嬢様、マリーアお嬢様をお庭にご案内して差し上げたらいかがでしょうか?美味しいお菓子も準備しますゆえ」
明らかに動揺し始めた父をフォローするように、執事のセバスチャンがスマートに話に入ってくる。うんうん、執事といえばセバスチャンだよね。
「スリールのシュークリームもある?」
「もちろんでございます」
「やったあ!じゃあ、お姉さま、参りましょう!わたくしのことはリリーと呼んでくださいな」
もちろん、セバスチャンのフォローは無駄にしない。子どもらしく興味を逸らさなくちゃね。決して王都一の絶品シュークリームに釣られた訳ではないぞ。
そして私の言葉に、少し俯きがちだったマリーアがぱっと顔を上げ、
「わ、わた、くしもマリーと呼んでもらえたら、その、嬉しいわ、り、リリー?」
照れたような上目遣いではにかんだ笑顔でのひと言…!さすがヒロイン!殺傷能力が半端ない!可愛い!!華があるって、こういうことをいうんだろうなあ。
「わかったわ、マリーお姉さま!」
私の言葉に、「!!」と、嬉しさ満面でパアアアアっとさらに花開くような笑顔を浮かべるお姉さま。目が、目がぁぁぁぁぁ!
よくこれと張り合おうとしたな、物語のリリー。生粋の侯爵令嬢としてのプライドか、ただの負けず嫌いか。どちらにしても、ある意味尊敬するわ。
ちなみに、リリー……私も、器量は悪くない。てゆーか、さすが高位貴族だけあって、美人に入る。母と同じの青銀髪にエメラルドの瞳……前世を考えたら、美少女でテンションが上がるほどだ。けどね!ちょっとキツそうで、脇役の中の美人というか?まあ、要するに華が足りない。こればかりはどうしようもなかろうな、と。そう思えるのは大人の記憶を思い出したからかもしれないけれど。
ともかく、私は蕩けそうな足元をこらえつつ、マリーと仲良く手を繋いでお庭へ向かいましたとさ。
後は大人たちで少し頑張れ。
そして、私たち姉妹の初めてのお茶会は、「こんな美味しいシュークリームは初めて食べた」と、泣き笑いのマリーアに、私がうっかり前世のオバチャンモードが発動してもらい泣きをしたものの、恙無く、なんなら周りの使用人たちに微笑ましく見守られながら、ほっこりと過ごすことができました。
今まで確かに貴族のお嬢様で、ちょっとわがままだったけれど、子どものご愛嬌…くらいだったと思うよ?…多分。
ともかく、第一印象、大事。超大事。いろんな本で書いてあった気がする。あんまり読んだことはなかったけど。TVとかで特集されてたよね~。
「り、リリー?そんな無理をして笑顔を作らなくてもいいのよ?驚いたでしょう?」
お母様が逆フォローしてくる。きっと、私が「聞いてない!お姉さまなんか認めない!」とか、暴れることを期待していたんだろうな。そうすれば、少しはお父様を困らせられるもんね。でも、ごめんね。後でちゃんとフォローするから!
「驚きましたけど、わたくし、お姉さまがずっと欲しかったんだもの!うれしいです!」
「そうか、そうか。リリーが喜んでくれて、お父様も嬉しいよ」
ニコニコ答える私に、ほっとした笑顔で頭を撫でるお父様。私も可愛い娘であることをアピールしなくては。
「でも、妹なら分かるけど、お姉さまって、どうやってできたの?前に家庭教師の先生に、お兄さまかお姉さまが欲しいわ!とお話したら、えっと、ふつう?には難しいって、教えていただいたのですけれど?」
それでも、純粋な嫌味のひとつやふたつは受けていただきたい。9歳の素朴な疑問よ。首をコテンってして、可愛いでしょ?
お父様はピシッと笑顔で固まり、お母様は平然を装いながらも肩が少し揺れている。ちょっとは溜飲が下がったかしら?
「り、リリー、あの、それはだな」
いくら貴族然として娘を育てていたとしても、さすがに齢よわい9つの娘には説明しにくいとみえる。
良かった、お父様がロクデナシじゃなくて。
「リリアンナお嬢様、マリーアお嬢様をお庭にご案内して差し上げたらいかがでしょうか?美味しいお菓子も準備しますゆえ」
明らかに動揺し始めた父をフォローするように、執事のセバスチャンがスマートに話に入ってくる。うんうん、執事といえばセバスチャンだよね。
「スリールのシュークリームもある?」
「もちろんでございます」
「やったあ!じゃあ、お姉さま、参りましょう!わたくしのことはリリーと呼んでくださいな」
もちろん、セバスチャンのフォローは無駄にしない。子どもらしく興味を逸らさなくちゃね。決して王都一の絶品シュークリームに釣られた訳ではないぞ。
そして私の言葉に、少し俯きがちだったマリーアがぱっと顔を上げ、
「わ、わた、くしもマリーと呼んでもらえたら、その、嬉しいわ、り、リリー?」
照れたような上目遣いではにかんだ笑顔でのひと言…!さすがヒロイン!殺傷能力が半端ない!可愛い!!華があるって、こういうことをいうんだろうなあ。
「わかったわ、マリーお姉さま!」
私の言葉に、「!!」と、嬉しさ満面でパアアアアっとさらに花開くような笑顔を浮かべるお姉さま。目が、目がぁぁぁぁぁ!
よくこれと張り合おうとしたな、物語のリリー。生粋の侯爵令嬢としてのプライドか、ただの負けず嫌いか。どちらにしても、ある意味尊敬するわ。
ちなみに、リリー……私も、器量は悪くない。てゆーか、さすが高位貴族だけあって、美人に入る。母と同じの青銀髪にエメラルドの瞳……前世を考えたら、美少女でテンションが上がるほどだ。けどね!ちょっとキツそうで、脇役の中の美人というか?まあ、要するに華が足りない。こればかりはどうしようもなかろうな、と。そう思えるのは大人の記憶を思い出したからかもしれないけれど。
ともかく、私は蕩けそうな足元をこらえつつ、マリーと仲良く手を繋いでお庭へ向かいましたとさ。
後は大人たちで少し頑張れ。
そして、私たち姉妹の初めてのお茶会は、「こんな美味しいシュークリームは初めて食べた」と、泣き笑いのマリーアに、私がうっかり前世のオバチャンモードが発動してもらい泣きをしたものの、恙無く、なんなら周りの使用人たちに微笑ましく見守られながら、ほっこりと過ごすことができました。
14
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!
アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。
「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」
王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。
背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。
受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ!
そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた!
すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!?
※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。
※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。
※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。
【二部開始】所詮脇役の悪役令嬢は華麗に舞台から去るとしましょう
蓮実 アラタ
恋愛
アルメニア国王子の婚約者だった私は学園の創立記念パーティで突然王子から婚約破棄を告げられる。
王子の隣には銀髪の綺麗な女の子、周りには取り巻き。かのイベント、断罪シーン。
味方はおらず圧倒的不利、絶体絶命。
しかしそんな場面でも私は余裕の笑みで返す。
「承知しました殿下。その話、謹んでお受け致しますわ!」
あくまで笑みを崩さずにそのまま華麗に断罪の舞台から去る私に、唖然とする王子たち。
ここは前世で私がハマっていた乙女ゲームの世界。その中で私は悪役令嬢。
だからなんだ!?婚約破棄?追放?喜んでお受け致しますとも!!
私は王妃なんていう狭苦しいだけの脇役、真っ平御免です!
さっさとこんなやられ役の舞台退場して自分だけの快適な生活を送るんだ!
って張り切って追放されたのに何故か前世の私の推しキャラがお供に着いてきて……!?
※本作は小説家になろうにも掲載しています
二部更新開始しました。不定期更新です
転生農家の俺、賢者の遺産を手に入れたので帝国を揺るがす大発明を連発する
昼から山猫
ファンタジー
地方農村に生まれたグレンは、前世はただの会社員だった転生者。特別な力はないが、ある日、村外れの洞窟で古代賢者の秘蔵書庫を発見。そこには世界を変える魔法理論や失われた工学が眠っていた。
グレンは農村の暮らしを少しでも良くするため、古代技術を応用し、便利な道具や魔法道具を続々と開発。村は繁栄し、噂は隣領や都市まで広がる。
しかし、帝国の魔術師団がその力を独占しようとグレンを狙い始める。領主達の思惑、帝国の陰謀、動き出す反乱軍。知恵と工夫で世界を変えたグレンは、これから巻き起こる激動にどう立ち向かうのか。
田舎者が賢者の遺産で世界へ挑む物語。
このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる