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そして
10.自分の気持ち
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「爵位も年も下ですけれど。ずっと、貴女の横に立ちたい。もう、他の男ひとが貴女の横に立つのは見たくない。どうか、私にもチャンスをください」
グレイさんが立ち上がり、真っ直ぐに私の目を見て言う。
いつものように怖い顔ではなく、必死さと緊張を湛えた顔で。
えっ、待って待って。
彼は何て言った?アズさんの事は私の誤解で……ずっと、慕っていたのは、私?グレイさんの言葉が頭に染み込むと、カッと全身に熱を持ったのが分かった。それに、ずっとって、いつから?
「ずっと、慕ってくれて……?」
私は見上げる形でグレイさんにそう聞いた。
「うっ、だからその上目遣いが……ゴホン。えっとあの、以前お話した、お茶会の時からです。ずっとずっと遠くから見ていて……何も出来なかったのに、シャルリア様が婚約をされた時は勝手に落ち込んで。それでも、幸せをお祈りして。……そんな中に今回の事があって。すごく腹が立ちました。彼にも……それをどこか喜んでしまった自分にも」
「グレイさん……」
「無謀だとは分かっています。殿下やフォンス様の足元にも及ばない事も。身の程知らずだということも。でも、傍にいればいるほどに、一日ごとに貴女に惹かれていく自分がいるのです。もう何もせずに見ているだけなんて、無理です。到底できません」
えっ、ちょ、待って、この人、グレイさん?別人が入った訳じゃないわよね?!ものすごく恥ずかしくて、嬉しいことを言ってくれている。きっと今私、全身真っ赤だ。
「こんな武骨な男は、シャルリア様からすると完全に対象外でしょうが、それでも……」
「そんなことは、ありません!!」
グレイさんが自嘲的に発した言葉に、マナー違反と思いながらも遮って否定する。
彼に、自分を卑下して欲しくない。
……だって私は今、こんなに、こんなに嬉しいもの。
霧が晴れたような心地だ。そうか、私は自覚のないまま、グレイさんに惹かれていたんだ。真っ直ぐな瞳に自分を写してもらいたかったんだ。
「シ、シャルリア、様……?」
「ごめんなさい、はしたなく大声を出して。でも私は、グレイさんを否定して欲しくはないのです」
私も立ち上がり、グレイさんの隣まで歩いていく。グレイさんは何が起こったのか分からないような顔をして、私を見つめている。
「グレイさんは真っ直ぐで素敵な方です。ご自分を否定しないで下さい」
「いや、しかし、本当に不器用で……その、」
「グレイさん」
「は……」
私が諌めるようにキッと見ると、グレイさんは見たこともないほどに真っ赤になり、何とも言えない顔をした。
そんな顔も可愛いなと思ってしまう。「くそ、こんな顔されたら、ヤバい……」と私には聞こえない声で何かぼやいていたけれど。
ルト様やフォンス様のことも、頭を過る。二人が真剣に私の事を考えて、想って、行動してくれたのも知っている。ちょっと後ろめたいような、複雑な気持ちだってある。
でも。
だからこそ、自分の気持ちを大切にしなければ。
「エスコート、よろしくお願いいたします」
私は微笑んでグレイさんに告げた。
グレイさんが立ち上がり、真っ直ぐに私の目を見て言う。
いつものように怖い顔ではなく、必死さと緊張を湛えた顔で。
えっ、待って待って。
彼は何て言った?アズさんの事は私の誤解で……ずっと、慕っていたのは、私?グレイさんの言葉が頭に染み込むと、カッと全身に熱を持ったのが分かった。それに、ずっとって、いつから?
「ずっと、慕ってくれて……?」
私は見上げる形でグレイさんにそう聞いた。
「うっ、だからその上目遣いが……ゴホン。えっとあの、以前お話した、お茶会の時からです。ずっとずっと遠くから見ていて……何も出来なかったのに、シャルリア様が婚約をされた時は勝手に落ち込んで。それでも、幸せをお祈りして。……そんな中に今回の事があって。すごく腹が立ちました。彼にも……それをどこか喜んでしまった自分にも」
「グレイさん……」
「無謀だとは分かっています。殿下やフォンス様の足元にも及ばない事も。身の程知らずだということも。でも、傍にいればいるほどに、一日ごとに貴女に惹かれていく自分がいるのです。もう何もせずに見ているだけなんて、無理です。到底できません」
えっ、ちょ、待って、この人、グレイさん?別人が入った訳じゃないわよね?!ものすごく恥ずかしくて、嬉しいことを言ってくれている。きっと今私、全身真っ赤だ。
「こんな武骨な男は、シャルリア様からすると完全に対象外でしょうが、それでも……」
「そんなことは、ありません!!」
グレイさんが自嘲的に発した言葉に、マナー違反と思いながらも遮って否定する。
彼に、自分を卑下して欲しくない。
……だって私は今、こんなに、こんなに嬉しいもの。
霧が晴れたような心地だ。そうか、私は自覚のないまま、グレイさんに惹かれていたんだ。真っ直ぐな瞳に自分を写してもらいたかったんだ。
「シ、シャルリア、様……?」
「ごめんなさい、はしたなく大声を出して。でも私は、グレイさんを否定して欲しくはないのです」
私も立ち上がり、グレイさんの隣まで歩いていく。グレイさんは何が起こったのか分からないような顔をして、私を見つめている。
「グレイさんは真っ直ぐで素敵な方です。ご自分を否定しないで下さい」
「いや、しかし、本当に不器用で……その、」
「グレイさん」
「は……」
私が諌めるようにキッと見ると、グレイさんは見たこともないほどに真っ赤になり、何とも言えない顔をした。
そんな顔も可愛いなと思ってしまう。「くそ、こんな顔されたら、ヤバい……」と私には聞こえない声で何かぼやいていたけれど。
ルト様やフォンス様のことも、頭を過る。二人が真剣に私の事を考えて、想って、行動してくれたのも知っている。ちょっと後ろめたいような、複雑な気持ちだってある。
でも。
だからこそ、自分の気持ちを大切にしなければ。
「エスコート、よろしくお願いいたします」
私は微笑んでグレイさんに告げた。
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