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それから
19.グレイの事情(本人視点) その3
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お礼が遅れました!
初!エール!!ありがとうございます、感謝感謝です!
反応を頂けるのは、本当に嬉しいです(*^^*)
これからも少しでも楽しんでいただけますように!
─────────────────────────
「ただいま……」
「あっ、お帰り、グレイ兄!」
「……アズ?」
ぐずぐずしながらも家に帰ると、まさかのアズがいた。
「なんでいるんだ?」
「ちょっと言い方!ひどくない?」
「……!あ、ああ、すまない。少し驚いた」
あまりのタイミングに。でも確かにアズはひとつも悪くない。八つ当たりだ。
そこは素直に謝り、いつもの応接室に移動する。
「今日は父の商談について来たの。ちょっとお祝いを伝えたくて」
「お祝い?」
「うん!グレイ兄、王立学園で生徒会入りしたんでしょ?すごいじゃない!おめでとう!」
「……ああ」
「?嬉しくないの?」
「い、や。そんなことはない。ありがとう」
「そうよね?あっ、シャルリア様もご一緒なんでしょう?羨ましいわ!」
アズの一言に固まってしまう。そんな様子を見て、アズが怪訝な顔をした。
「……グレイ兄?やっぱり変。何かあったの?」
「…………何も」
「本当に?」
アズはそう言って、真っ直ぐに俺を見つめる。……と、言うより、睨み付けている。俺は数十秒黙っていたと思うが、アズは全く目を逸らさない。それに俺はいつも根負けするんだ。
「……シャルリア様が」
「うん」
「どうやら、アズと俺が恋仲と思っている節があるみたいで」
「え……」
「何で、何がそうなったのよ?!」
アズは一瞬呆けた後、俺に食ってかかってきた。俺はまた、しぶしぶ今日の出来事を話す。
そして全てを聞いたアズは、アーロン達のように項垂れて頭を手で支えている。
「うん……グレイ兄が不器用なのと、顔が強面なのは知ってた……知ってたけど……」
「だから、顔は仕方ないだろ」
「そうだけど!何で直ぐに弟妹や犬猫には甘いんです!!って言わなかったのよ!」
「し、仕方ないだろ!そんな風に思われてるなんて、考えもしなかったんだ!」
アズの無茶振りに、つい俺も大声で言い返してしまう。
普通ならびっくりされる所だが、俺に慣れているアズは動じずに冷たい視線を送って来る。
「……悪い。でも、シャルリア様が言ってくれれば……そりゃあ俺だって訂正したよ……」
「……グレイ兄。そう、そうだよね、グレイ兄がそんなに人の機微に敏ければ、いつも苦労しないわよね。ごめんね、私も無茶を言ったわ」
「…………」
何だかフォローされているのか馬鹿にされているのか微妙な慰めだが、まあ真実その通りだ。
「で?」
「うん?」
「シャルリア様に勘違いされて落ち込んでるってことは、グレイ兄、シャルリア様に気があるんだ~?」
「!!」
「ん?」
「そ、んな訳ないだろ……っ!」
「いやいや、そんなに顔を真っ赤にして否定されても誰も信じないわよ」
「うっ」
年下にも言い負かされる俺。この手のことは、どうにも儘ならない。結局グイグイ来る幼馴染みに、全てを吐かされた。
「ふっふ~ん!さすが私達のシャルリア様!お小さい頃から器が違うわ」
「……そうだな」
何故か自慢気なアズに、適当に相槌をうつ。
「何よ、その適当な返事。グレイ兄にもチャンスが巡って来たんじゃない!頑張らないの?」
「俺なんて烏滸がまし過ぎるだろ。……それに、殿下も出てきたみたいだし……」
「で、殿下?は~、世界が違うけど、そうかあ、そうだよねぇ、公爵家のお姫様だもんねぇ。本当、私達に親しくしてくださるから時々忘れがちだけど、そうよねぇ」
「……そうだろ」
アズはしみじみと納得しながら話す。そう、その通りなんだ。
でも……。
「で、も!納得できないんだね?グレイ兄」
「そんな、ことは……」
「うっそだ~!だって今、眉間の皺がすごいよ?大抵の人が逃げるくらいになってるよ?そういう時のグレイ兄って、無理してる時じゃない」
「!!で、でも……うちは……」
「爵位とか、シャルリア様は気にしなさそうだけどなあ。まあ?うちは所詮平民だから、お貴族様のルールは分からないけれど……騙されたし……でも、シャルリア様は違う気がする。甘やかされてるから、楽観視しちゃってるからかもだけど。……でも、ロイエ様とも、公爵家同士だからって婚約していた訳じゃないと思うのよね。人を、見てくれるっていうか……」
「……」
「まあそれでも?グレイ兄が諦めるなら、本人が決める事だから仕方ないけどさ!逃げる理由を探して、後で後悔しないようにね?」
「!」
その言葉に、弾かれるように顔を上げてアズを見る。アズもアーロンたちのような顔をしていた。
だって、仕方なくないか?殿下だぞ?本物の王子様だぞ?敵うわけないじゃないか。仕方ない。
でも……。
アーロンたちとの話からこっち、何度も過る気持ちもあるんだ。
(……子どもの頃と同じように、黙って見ているのか?俺は)
ずっと憧れていた。でも何も出来なかった子ども時代。
何も出来なかったくせに、しばらく落ち込んだ。
じゃあ、今は?……今も大して成長出来ていないような俺だけど。
近くにいられる機会ができた。そこを逃したくないと思う自分も確かにいるんだ。誰かがシャルリア様の横に立つのを、もう、黙って見ているのは……やっぱり、嫌だ。
「……俺は、」
俺が口を開くと同時に、部屋のドアがノックされる。父たちの用事が済んだらしく、侍女がアズを迎えに来た。
「はーい、ありがとうございます。今行きます。グレイ兄、何?」
「ああ、その……やっぱり俺、少し頑張ってみようと思う」
わざわざ宣言する必要もないのだろうが、ひとつでも逃げ道を減らそう。情けないけどな。
「うん!そっか!それでこそグレイ兄だね!私も応援するから!」
急な俺の言葉に一瞬驚いた顔をした後、アズはそう言ってガッツポーズをしながらいい笑顔で帰って行った。
「さて、明日はあいつらにもちゃんと話すか……」
こっぱずかしいけどな。でも友達が心配してくれている訳だしな。うん。人に宣言するなんてかなり恥ずかしいが、自分には必要な気がするから。
そして人生で一度くらいは、当たって砕けてみてもいいだろう。
……できれば、砕けたくないけど……。
「さっそくシャルリア様にお会いしないと……まずはアネシス様がいいかしら?いえやっぱり、誤解を……ぶつぶつ」
「どうかなさいましたか?アズ様」
「い、いえ!お気になさらず!」
帰りの道中に幼馴染みが、何やら計画を練っていることには気づかなかったけど。
頑張ってみよう、と思う。
初!エール!!ありがとうございます、感謝感謝です!
反応を頂けるのは、本当に嬉しいです(*^^*)
これからも少しでも楽しんでいただけますように!
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「ただいま……」
「あっ、お帰り、グレイ兄!」
「……アズ?」
ぐずぐずしながらも家に帰ると、まさかのアズがいた。
「なんでいるんだ?」
「ちょっと言い方!ひどくない?」
「……!あ、ああ、すまない。少し驚いた」
あまりのタイミングに。でも確かにアズはひとつも悪くない。八つ当たりだ。
そこは素直に謝り、いつもの応接室に移動する。
「今日は父の商談について来たの。ちょっとお祝いを伝えたくて」
「お祝い?」
「うん!グレイ兄、王立学園で生徒会入りしたんでしょ?すごいじゃない!おめでとう!」
「……ああ」
「?嬉しくないの?」
「い、や。そんなことはない。ありがとう」
「そうよね?あっ、シャルリア様もご一緒なんでしょう?羨ましいわ!」
アズの一言に固まってしまう。そんな様子を見て、アズが怪訝な顔をした。
「……グレイ兄?やっぱり変。何かあったの?」
「…………何も」
「本当に?」
アズはそう言って、真っ直ぐに俺を見つめる。……と、言うより、睨み付けている。俺は数十秒黙っていたと思うが、アズは全く目を逸らさない。それに俺はいつも根負けするんだ。
「……シャルリア様が」
「うん」
「どうやら、アズと俺が恋仲と思っている節があるみたいで」
「え……」
「何で、何がそうなったのよ?!」
アズは一瞬呆けた後、俺に食ってかかってきた。俺はまた、しぶしぶ今日の出来事を話す。
そして全てを聞いたアズは、アーロン達のように項垂れて頭を手で支えている。
「うん……グレイ兄が不器用なのと、顔が強面なのは知ってた……知ってたけど……」
「だから、顔は仕方ないだろ」
「そうだけど!何で直ぐに弟妹や犬猫には甘いんです!!って言わなかったのよ!」
「し、仕方ないだろ!そんな風に思われてるなんて、考えもしなかったんだ!」
アズの無茶振りに、つい俺も大声で言い返してしまう。
普通ならびっくりされる所だが、俺に慣れているアズは動じずに冷たい視線を送って来る。
「……悪い。でも、シャルリア様が言ってくれれば……そりゃあ俺だって訂正したよ……」
「……グレイ兄。そう、そうだよね、グレイ兄がそんなに人の機微に敏ければ、いつも苦労しないわよね。ごめんね、私も無茶を言ったわ」
「…………」
何だかフォローされているのか馬鹿にされているのか微妙な慰めだが、まあ真実その通りだ。
「で?」
「うん?」
「シャルリア様に勘違いされて落ち込んでるってことは、グレイ兄、シャルリア様に気があるんだ~?」
「!!」
「ん?」
「そ、んな訳ないだろ……っ!」
「いやいや、そんなに顔を真っ赤にして否定されても誰も信じないわよ」
「うっ」
年下にも言い負かされる俺。この手のことは、どうにも儘ならない。結局グイグイ来る幼馴染みに、全てを吐かされた。
「ふっふ~ん!さすが私達のシャルリア様!お小さい頃から器が違うわ」
「……そうだな」
何故か自慢気なアズに、適当に相槌をうつ。
「何よ、その適当な返事。グレイ兄にもチャンスが巡って来たんじゃない!頑張らないの?」
「俺なんて烏滸がまし過ぎるだろ。……それに、殿下も出てきたみたいだし……」
「で、殿下?は~、世界が違うけど、そうかあ、そうだよねぇ、公爵家のお姫様だもんねぇ。本当、私達に親しくしてくださるから時々忘れがちだけど、そうよねぇ」
「……そうだろ」
アズはしみじみと納得しながら話す。そう、その通りなんだ。
でも……。
「で、も!納得できないんだね?グレイ兄」
「そんな、ことは……」
「うっそだ~!だって今、眉間の皺がすごいよ?大抵の人が逃げるくらいになってるよ?そういう時のグレイ兄って、無理してる時じゃない」
「!!で、でも……うちは……」
「爵位とか、シャルリア様は気にしなさそうだけどなあ。まあ?うちは所詮平民だから、お貴族様のルールは分からないけれど……騙されたし……でも、シャルリア様は違う気がする。甘やかされてるから、楽観視しちゃってるからかもだけど。……でも、ロイエ様とも、公爵家同士だからって婚約していた訳じゃないと思うのよね。人を、見てくれるっていうか……」
「……」
「まあそれでも?グレイ兄が諦めるなら、本人が決める事だから仕方ないけどさ!逃げる理由を探して、後で後悔しないようにね?」
「!」
その言葉に、弾かれるように顔を上げてアズを見る。アズもアーロンたちのような顔をしていた。
だって、仕方なくないか?殿下だぞ?本物の王子様だぞ?敵うわけないじゃないか。仕方ない。
でも……。
アーロンたちとの話からこっち、何度も過る気持ちもあるんだ。
(……子どもの頃と同じように、黙って見ているのか?俺は)
ずっと憧れていた。でも何も出来なかった子ども時代。
何も出来なかったくせに、しばらく落ち込んだ。
じゃあ、今は?……今も大して成長出来ていないような俺だけど。
近くにいられる機会ができた。そこを逃したくないと思う自分も確かにいるんだ。誰かがシャルリア様の横に立つのを、もう、黙って見ているのは……やっぱり、嫌だ。
「……俺は、」
俺が口を開くと同時に、部屋のドアがノックされる。父たちの用事が済んだらしく、侍女がアズを迎えに来た。
「はーい、ありがとうございます。今行きます。グレイ兄、何?」
「ああ、その……やっぱり俺、少し頑張ってみようと思う」
わざわざ宣言する必要もないのだろうが、ひとつでも逃げ道を減らそう。情けないけどな。
「うん!そっか!それでこそグレイ兄だね!私も応援するから!」
急な俺の言葉に一瞬驚いた顔をした後、アズはそう言ってガッツポーズをしながらいい笑顔で帰って行った。
「さて、明日はあいつらにもちゃんと話すか……」
こっぱずかしいけどな。でも友達が心配してくれている訳だしな。うん。人に宣言するなんてかなり恥ずかしいが、自分には必要な気がするから。
そして人生で一度くらいは、当たって砕けてみてもいいだろう。
……できれば、砕けたくないけど……。
「さっそくシャルリア様にお会いしないと……まずはアネシス様がいいかしら?いえやっぱり、誤解を……ぶつぶつ」
「どうかなさいましたか?アズ様」
「い、いえ!お気になさらず!」
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頑張ってみよう、と思う。
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