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11.ファータ=マレッサにて その2
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「ルーエン兄様のこと、好きなの?」
サージュの言葉に固まる私。好き?私が?ルーエン様を?確かに初恋の人だ。再会した今だって、素敵な人だと思っている。私を否定しないし、話も合う。……主に魔法研究についてだけれども!
……でも、公爵家の木に一緒に登ろうと言ってくれた。昔の小さな約束を覚えていてくれて。シア姫、って恥ずかしいのに揶揄って笑う、意地悪な笑顔も嬉しくて。研究ばかりじゃ婚約者候補らしくないと、あれこれ考えてくれて……。私達二人だと、結局出掛けられたのはここに来た時だけ、だけど。
研究も、若造がとか女がとかを一切出さず、対等に意見を求められたり求めたり。こんな充実感は初めてなのだ。でも。
「よく、分からないわ」
あれこれ考えて、私の口から出たのは何とも言えない返事。これは、いわゆる恋なのか?ただの懐かしさと共に研究をできる、居心地の良さだけではないのかとも思うのだ。
私の曖昧な返事に、サージュが何か言おうと口を開くと同時に、部屋のドアがノックされる。
「どうぞ」
「失礼します。お待たせ致しました、限定プレートと、初摘み茶でございます」
そのままサージュが答え、給仕が部屋に入り、素早くテーブルセッティングをする。この給仕の優雅さも、ファータ=マレッサはさすがだ。
それにこの、限定プレート!先日のルーエン様との時は席だけの予約だったので売り切れてしまっていたのだ。
ルーエン様の、好きなものを選んで欲しくて、の気持ちも嬉しかったし、『春の宵』はいろんな意味でまた嬉しかったけれど、実は、かなり気になっていたのだ。
所詮私、まだまだ色気より食い気だなあ…。
そして、給仕が去った後。
「さて、頂こうか!ダリシア姉様のために、二人で限定プレートの取り置きを頼んだんだ」
「えっ、そうなの?お店にご迷惑なんじゃ?」
さらりと王子権限を感じて、心配してしまう。
「……王子権限を使った訳じゃないからな?俺とサージュの誕生日が近いだろ?プレゼントだって、レイチェル様が」
私の思考を読んだように、アンドレイが言う。アンドレイにはよく心を読まれるのよね。なぜだ。さすがは幼馴染みか。うーん、でも私は最近のアンドレイの心は読めないなあ。とか考えつつ。
「わ、じゃあ良かった!けれど、それはそれで私までご相伴にあずかって申し訳ないわね」
「気にしないでよ、付き合ってもらってるんだし!ね、兄上!」
「ああ。……それにダリシアに食べさせたかったし……」
「何?ああ、の後聞こえなかったわ、アンドレイ。もう一度いい?」
「~~~!何でもない!とにかく、気にせずに食え!」
「兄上……」
何故か額に手を当てる、サージュ。
「なによう。でもまあ、遠慮なく。!!美味しい!!」
美味しいは正義だ!きなこがけバニラアイス、最高!この黒蜜がまた…次は抹茶のチョコレートケーキにいってみよう。となりの、わらび餅も気になる。あづまの国よ、ありがとう。
「幸せだ~」
様々なスイーツがたくさん載っているプレートに、幸福感MAXの私。
「ふっ、ダリシアは昔から食べるの好きだよな」
アンドレイが懐かしそうに言う。
「確かに。姉様が食べている姿を見ると、こっちも幸せになるよね」
サージュにまで言われる。姉の威厳0だわ……。
でもだって、美味しいは間違えようのない正義よー!
「それ、褒めてるの?サージュ」
「もちろんだよ!ね、兄上!」
「まあな。いい笑顔をしているのは確かだ」
「ちょっと、アンドレイの言い方には含みを感じるけど……この前来たときは、この限定プレートが売り切れていたから。今日いただけて、かなり嬉しいわ!ありがとう、二人とも」
半分以上食べ物に釣られてだが、満面の笑顔で二人にお礼を言う。レイチェル様とも仲良くして頂いているけれど、ここに一人ではなかなか来ない(来れない)し。これでしばらく満足だわー。
「ルーエン兄様との時?」
「え、ええ」
何だろう、サージュに不穏な雰囲気が。
「……婚約、するの?ルーエンお兄様と」
わー!また話が戻った!
「だから、まだ分からないわ。サージュ、今日はずいぶんとルーエン様のことを聞くわね?」
「まあね。大事な姉様のお相手だから」
「あら、ありがとう。そうね、条件であるとか……研究を考えると、いいご縁とは思うわ」
「……ルーエン兄様のこと、やっぱり好きなの?」
きゃー!!やっぱりそこに戻るのね!
「だから、好きなのかはまだ……」
私がもう一度、少し前と同じ発言をしようとすると。
「俺はダリシアが好きだ」
横から、アンドレイがそんなことを言ってきた。
サージュと共に、目を丸くする私。
「あ、ありがとう…?私も、アンドレイもサージュも好きよ?」
そう言うことよね?幼馴染みに婚約話が出て、寂しい感じの。
「違う!」
「えっ?」
「俺は、一人の女性としてダリシアが好きだ。ルーエンとてはなく、俺と、婚約して欲しい」
「アン……ドレイ……」
そこにいるのは、いつもわたしに悪態をついてくる弟では無く。
だからと言って、いつもの外面のよい王子でも無く。
真剣な顔の、私の知らないアンドレイがいた。
サージュの言葉に固まる私。好き?私が?ルーエン様を?確かに初恋の人だ。再会した今だって、素敵な人だと思っている。私を否定しないし、話も合う。……主に魔法研究についてだけれども!
……でも、公爵家の木に一緒に登ろうと言ってくれた。昔の小さな約束を覚えていてくれて。シア姫、って恥ずかしいのに揶揄って笑う、意地悪な笑顔も嬉しくて。研究ばかりじゃ婚約者候補らしくないと、あれこれ考えてくれて……。私達二人だと、結局出掛けられたのはここに来た時だけ、だけど。
研究も、若造がとか女がとかを一切出さず、対等に意見を求められたり求めたり。こんな充実感は初めてなのだ。でも。
「よく、分からないわ」
あれこれ考えて、私の口から出たのは何とも言えない返事。これは、いわゆる恋なのか?ただの懐かしさと共に研究をできる、居心地の良さだけではないのかとも思うのだ。
私の曖昧な返事に、サージュが何か言おうと口を開くと同時に、部屋のドアがノックされる。
「どうぞ」
「失礼します。お待たせ致しました、限定プレートと、初摘み茶でございます」
そのままサージュが答え、給仕が部屋に入り、素早くテーブルセッティングをする。この給仕の優雅さも、ファータ=マレッサはさすがだ。
それにこの、限定プレート!先日のルーエン様との時は席だけの予約だったので売り切れてしまっていたのだ。
ルーエン様の、好きなものを選んで欲しくて、の気持ちも嬉しかったし、『春の宵』はいろんな意味でまた嬉しかったけれど、実は、かなり気になっていたのだ。
所詮私、まだまだ色気より食い気だなあ…。
そして、給仕が去った後。
「さて、頂こうか!ダリシア姉様のために、二人で限定プレートの取り置きを頼んだんだ」
「えっ、そうなの?お店にご迷惑なんじゃ?」
さらりと王子権限を感じて、心配してしまう。
「……王子権限を使った訳じゃないからな?俺とサージュの誕生日が近いだろ?プレゼントだって、レイチェル様が」
私の思考を読んだように、アンドレイが言う。アンドレイにはよく心を読まれるのよね。なぜだ。さすがは幼馴染みか。うーん、でも私は最近のアンドレイの心は読めないなあ。とか考えつつ。
「わ、じゃあ良かった!けれど、それはそれで私までご相伴にあずかって申し訳ないわね」
「気にしないでよ、付き合ってもらってるんだし!ね、兄上!」
「ああ。……それにダリシアに食べさせたかったし……」
「何?ああ、の後聞こえなかったわ、アンドレイ。もう一度いい?」
「~~~!何でもない!とにかく、気にせずに食え!」
「兄上……」
何故か額に手を当てる、サージュ。
「なによう。でもまあ、遠慮なく。!!美味しい!!」
美味しいは正義だ!きなこがけバニラアイス、最高!この黒蜜がまた…次は抹茶のチョコレートケーキにいってみよう。となりの、わらび餅も気になる。あづまの国よ、ありがとう。
「幸せだ~」
様々なスイーツがたくさん載っているプレートに、幸福感MAXの私。
「ふっ、ダリシアは昔から食べるの好きだよな」
アンドレイが懐かしそうに言う。
「確かに。姉様が食べている姿を見ると、こっちも幸せになるよね」
サージュにまで言われる。姉の威厳0だわ……。
でもだって、美味しいは間違えようのない正義よー!
「それ、褒めてるの?サージュ」
「もちろんだよ!ね、兄上!」
「まあな。いい笑顔をしているのは確かだ」
「ちょっと、アンドレイの言い方には含みを感じるけど……この前来たときは、この限定プレートが売り切れていたから。今日いただけて、かなり嬉しいわ!ありがとう、二人とも」
半分以上食べ物に釣られてだが、満面の笑顔で二人にお礼を言う。レイチェル様とも仲良くして頂いているけれど、ここに一人ではなかなか来ない(来れない)し。これでしばらく満足だわー。
「ルーエン兄様との時?」
「え、ええ」
何だろう、サージュに不穏な雰囲気が。
「……婚約、するの?ルーエンお兄様と」
わー!また話が戻った!
「だから、まだ分からないわ。サージュ、今日はずいぶんとルーエン様のことを聞くわね?」
「まあね。大事な姉様のお相手だから」
「あら、ありがとう。そうね、条件であるとか……研究を考えると、いいご縁とは思うわ」
「……ルーエン兄様のこと、やっぱり好きなの?」
きゃー!!やっぱりそこに戻るのね!
「だから、好きなのかはまだ……」
私がもう一度、少し前と同じ発言をしようとすると。
「俺はダリシアが好きだ」
横から、アンドレイがそんなことを言ってきた。
サージュと共に、目を丸くする私。
「あ、ありがとう…?私も、アンドレイもサージュも好きよ?」
そう言うことよね?幼馴染みに婚約話が出て、寂しい感じの。
「違う!」
「えっ?」
「俺は、一人の女性としてダリシアが好きだ。ルーエンとてはなく、俺と、婚約して欲しい」
「アン……ドレイ……」
そこにいるのは、いつもわたしに悪態をついてくる弟では無く。
だからと言って、いつもの外面のよい王子でも無く。
真剣な顔の、私の知らないアンドレイがいた。
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