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10.ファータ・マレッサにて
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新学期初日も無事に終わり、王子二人にエスコートされ、『ファータ・マレッサ』に入る。
「アンドレイ殿下、サージュ殿下、ダリシアちゃん、ようこそ。ダリシアちゃん、今日は王子様二人のエスコートなのね?モテモテじゃない?」
ここのオーナーである、レイチェル=クレイデイ伯爵夫人が、部屋まで案内をしながら声をかけてくれる。
先日お邪魔した時も、ルーエン様が個室を予約してくれていて、レイチェル様が案内をしてくれた。レイチェル様は、王妃様や聖女様と学園の同級生でお二人とずっと親しくされていて、ありがたくもお二人に可愛がってもらっている私を、一緒に可愛がってくれている……ので。その、先日のルーエン様とのデ、デートの時は、ニヤニヤ……もとい、微笑ましく見守られているようで、かなり恥ずかしかったのだ。けど、今日は。
「レイチェル様。先日は素敵な時間をありがとうございました。今日は確かに王子様二人と一緒ですけれど。幼馴染みで、姉と弟のようなものですわ。モテモテなどではなくて、二人のエスコートの練習台なのですよ」
「あら、そうなの?」
私の返事に、含みのあるような笑顔で、殿下方の方をちらっと見るレイチェル様。
そのレイチェル様の視線に、アンドレイは憮然とした感じを隠そうともせずにおり、そしてサージュは苦笑している。
「二人とも。私と勘違いされて困るのは分かるけれど、そんなに表情を出してはレイチェル様に失礼よ」
二人が表情を崩すのは珍しいなと思いつつ諌めると、二人はその表情をますます深くする。
「アンド……!」
「ふふふっ、大丈夫よ、ダリシアちゃん。私は構わないわ。寧ろ、ちょっと止めてあげて?」
私が更に言い募ろうとするのを、なぜか笑いながらレイチェル様に止められる。
「私こそ、ごめんなさいね?三人とも自分の子どものように可愛くて、つい」
「いえ、そんな。ありがとうございます、レイチェル様。失礼しました」
私はまだ、???が取れないでいたが、落ちつきを取り戻したサージュがそつなくレイチェル様に返事をする。
「……失礼しました、レイチェル様」
アンドレイも我を取り戻して答える。
「ふふ。どういたしまして。……応援は、しているわ」
レイチェル様の最後の言葉は聞こえなかったけれど、二人がきちんとしてくれて良かった。その辺はさすがに王子様だ。
そしてまた少し歩いて。
「さあ、お部屋はこちらよ。どうぞごゆっくりお寛ぎくださいませ」
案内された部屋は、窓一面から整えられた庭園が見渡せる、とても素敵な部屋だった。
「わあ、すごい、素敵!」
「お気に召しましたか?姉様」
「ええ!この前、ルーエン様と来たときのお部屋もアンティークに囲まれて素敵だったけれど!また全く違うお部屋もあるのね。何度も来たくなりますね、さすがレイチェル様だわ!」
部屋の入り口で固まっているアンドレイには気づかず、レイチェル様のセンスに大興奮の私。
「ありがとう、ダリシアちゃん。何度でもいらしてね」
「はい!ありがとうございます!」
「では私は、これで失礼しますね。オーダーもご予約頂いているので…スタッフがお持ちしますね」
レイチェル様が、カーテシーをして部屋から出ていく。
何故かアンドレイの前で、胸に拳をグッと当てて。
「これはちょっと、遅かったかな」
「ん?何?サージュ」
「何でもないよ。座ってオーダーが来るのを待とう?姉様。兄上もぼんやりしてないで、ほら」
「……ああ」
サージュに仕切られる形で、着席する私たち。
「ねぇ、これってエスコートの練習になってる?何だか、いつもの私たちと変わらないような……」
うん、場所がお城ではないだけで。
「そうだね、それじゃあ、いつもと違う話をしようか」
「違う、話?」
サージュが妙に含みを持たせて話す。何だか急に落ち着かなくなってきた。
「姉様に回りくどく聞いても仕方ないから、単刀直入に聞くね。ルーエン兄様のこと、好きなの?」
落とされた爆弾に、私は固まった。
「アンドレイ殿下、サージュ殿下、ダリシアちゃん、ようこそ。ダリシアちゃん、今日は王子様二人のエスコートなのね?モテモテじゃない?」
ここのオーナーである、レイチェル=クレイデイ伯爵夫人が、部屋まで案内をしながら声をかけてくれる。
先日お邪魔した時も、ルーエン様が個室を予約してくれていて、レイチェル様が案内をしてくれた。レイチェル様は、王妃様や聖女様と学園の同級生でお二人とずっと親しくされていて、ありがたくもお二人に可愛がってもらっている私を、一緒に可愛がってくれている……ので。その、先日のルーエン様とのデ、デートの時は、ニヤニヤ……もとい、微笑ましく見守られているようで、かなり恥ずかしかったのだ。けど、今日は。
「レイチェル様。先日は素敵な時間をありがとうございました。今日は確かに王子様二人と一緒ですけれど。幼馴染みで、姉と弟のようなものですわ。モテモテなどではなくて、二人のエスコートの練習台なのですよ」
「あら、そうなの?」
私の返事に、含みのあるような笑顔で、殿下方の方をちらっと見るレイチェル様。
そのレイチェル様の視線に、アンドレイは憮然とした感じを隠そうともせずにおり、そしてサージュは苦笑している。
「二人とも。私と勘違いされて困るのは分かるけれど、そんなに表情を出してはレイチェル様に失礼よ」
二人が表情を崩すのは珍しいなと思いつつ諌めると、二人はその表情をますます深くする。
「アンド……!」
「ふふふっ、大丈夫よ、ダリシアちゃん。私は構わないわ。寧ろ、ちょっと止めてあげて?」
私が更に言い募ろうとするのを、なぜか笑いながらレイチェル様に止められる。
「私こそ、ごめんなさいね?三人とも自分の子どものように可愛くて、つい」
「いえ、そんな。ありがとうございます、レイチェル様。失礼しました」
私はまだ、???が取れないでいたが、落ちつきを取り戻したサージュがそつなくレイチェル様に返事をする。
「……失礼しました、レイチェル様」
アンドレイも我を取り戻して答える。
「ふふ。どういたしまして。……応援は、しているわ」
レイチェル様の最後の言葉は聞こえなかったけれど、二人がきちんとしてくれて良かった。その辺はさすがに王子様だ。
そしてまた少し歩いて。
「さあ、お部屋はこちらよ。どうぞごゆっくりお寛ぎくださいませ」
案内された部屋は、窓一面から整えられた庭園が見渡せる、とても素敵な部屋だった。
「わあ、すごい、素敵!」
「お気に召しましたか?姉様」
「ええ!この前、ルーエン様と来たときのお部屋もアンティークに囲まれて素敵だったけれど!また全く違うお部屋もあるのね。何度も来たくなりますね、さすがレイチェル様だわ!」
部屋の入り口で固まっているアンドレイには気づかず、レイチェル様のセンスに大興奮の私。
「ありがとう、ダリシアちゃん。何度でもいらしてね」
「はい!ありがとうございます!」
「では私は、これで失礼しますね。オーダーもご予約頂いているので…スタッフがお持ちしますね」
レイチェル様が、カーテシーをして部屋から出ていく。
何故かアンドレイの前で、胸に拳をグッと当てて。
「これはちょっと、遅かったかな」
「ん?何?サージュ」
「何でもないよ。座ってオーダーが来るのを待とう?姉様。兄上もぼんやりしてないで、ほら」
「……ああ」
サージュに仕切られる形で、着席する私たち。
「ねぇ、これってエスコートの練習になってる?何だか、いつもの私たちと変わらないような……」
うん、場所がお城ではないだけで。
「そうだね、それじゃあ、いつもと違う話をしようか」
「違う、話?」
サージュが妙に含みを持たせて話す。何だか急に落ち着かなくなってきた。
「姉様に回りくどく聞いても仕方ないから、単刀直入に聞くね。ルーエン兄様のこと、好きなの?」
落とされた爆弾に、私は固まった。
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