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休日にせっせと推し活中の私も、普段はお仕事を頑張っている。
特に今日は、わたしが担当になる予定の新しい入居者様がいらっしゃる日だ。にこやかに行こう。
「斉藤さん、そろそろ。お出迎えに行こうか」
「もうですか?少し早いような」
「うん、池澤様についての最終確認もあるんだ」
「?はい、承知しました」
ホーム長に声をかけられ、お出迎えの為にエントランスへと向かう。ちなみに、池澤様というのが新ご入居者様だ。
「そういえば、池澤様は今日はお孫さんといらっしゃるのですよね?」
「ああ、まあ、うん、そうなんだけど。……斉藤さんはソルってアイドルグループは知ってるかい?」
「ああ、先日名前だけ知りました。詳しくはないです」
「さすが、二次元オタクの星だね!」
ホーム長のそれは、褒めているのかは怪しいが、私がオタクなのは隠していないのでスタッフ皆の共通認識になっている。私が三次元にあまり興味がないことと共に。
ホーム長まで知ってるってどうなのとも思わないこともないが、ちょっとしたコミュニケーションツールにもなっているので、ヨシとしている。
「彼らが何か?」
「そう、実はね。今日ご入居される池澤様は、そのソルのリヒト君という子のおばあ様なんだ」
「へぇ、そうなんですね」
「うんうん、想像した通り、興味がなさそうで良かったよ。今、人気急上昇で、うちのスタッフでも話しているのを聞いたことがあるからね。斉藤さんなら、冷静に対応してくれると思って」
「なるほど。理解しました」
他のスタッフも、もちろん仕事なので、誰もがそつなくこなすとは思うけど、ホーム長としてはちょっとでも浮わつくことがないに越したことはないのだろう。
しかし、「ソル」の「リヒト」か。
この前の失礼な奴が本当に彼だったとしたら、ちょっとやりづらいなあ。かなり塩対応したし。でもきっと、私にも気づかないわよね。少ししか話していないし、化粧も全然違うから、わからないはずだ。うん。
それにしても、付き添いが彼なんてイメージと違う……っても、やっぱりこの前会った奴は他人の空似だったのかもしれないな。悠里もチラッとしか見てなかったし。
そう、思っていたが。
「初めまして。池澤美智子の孫の池澤璃人です。祖母をよろしくお願いいたします」
黒ぶちメガネをかけて、深く帽子を被っているが……奴に似ている。すっごい爽やか笑顔だけど。
いや、でも態度は別人だし。
違うと思いたい。
「これからお世話になりますねぇ」
車椅子に乗った池澤様は、にこやかで小さくてかわいらしいおばあ様だ。
「こちらこそよろしくお願いいたします。こちらの斉藤が池澤様の担当になります」
「斉藤野々日です。よろしくお願いいたします」
ホーム長に紹介されて、二人に挨拶をする。
「まあまあ!かわいらしいお嬢さんね!よろしくね」
「はい。さっそくお部屋に参りましょう。お孫さんもご一緒にお願いいたします。車椅子は私が押しますね」
お孫さんが先日の奴と同一人物かどうかは少し気になるが、今は仕事中だ。集中しないとね。池澤様が安心できるように、丁寧に優しく、笑顔で答えて話を進める。
「では、私は一度失礼致します。後は斉藤がご案内しますので」
ここでホーム長とは別れて、私だけでお二人を案内する。
「まあ、キレイな廊下ね。壁紙も落ち着いていて素敵だわ」
「ありがとうございます」
池澤様の言葉に、笑顔で答える。
うちの施設の廊下は広い。なんせ、ひと月に数十万を頂く施設なので、設備はホテルのようなのだ。とは言ってもやはり認知症の方なんかももちろんいらっしゃるし、仕事内容は他と大差はないと思うけどね。でも、施設がキレイなだけでも仕事はしやすい。
「こんなにいいところに、ありがとうね、璃人。結構高いんじゃないのかい?」
「ばあちゃんはそんなこと気にしなくてもいいの!俺がちゃんと仕事で稼いでいるんだから」
「ありがたいねぇ。そういえば斉藤さんは璃人の仕事をご存知なのかしら?」
「はい。ホーム長から伺っております」
「その割には普通ねぇ。璃人、あなたまだまだなんじゃないの?」
「ハイハイ」
「あ、いえ!充分に人気者な方ですよ!うちのスタッフでもファンが沢山おります!私は今、仕事中ですから」
私は全くのファンではないが、池澤様がしゅんとするのは居たたまれないので、なんとかフォローする。
その後もあれこれ話しながら歩いて、お部屋に着く。そして荷物などの確認をしてもらい、家具家電類の使い方やルールを説明し、ひとまず終了だ。
その間、彼は私に対してなんのアクションもなく。やはり他人の空似だったんだな。ちょっと安心したよ。
「では、以上ですね。私も一旦下がらせていただきます。何かございましたら、こちらのナースコールでお呼び下さい」
「分かったわ。ご丁寧にありがとう」
「璃人さんも、あと一時間くらいはいていただいても構いませんので」
「ああ、ありがとうございます」
「では……」
私は軽く会釈をして部屋を出ようとしたのだが。
「やっぱり気になるな。斉藤さん、どこかでお会いしませんでしたか?」
あれっ。
特に今日は、わたしが担当になる予定の新しい入居者様がいらっしゃる日だ。にこやかに行こう。
「斉藤さん、そろそろ。お出迎えに行こうか」
「もうですか?少し早いような」
「うん、池澤様についての最終確認もあるんだ」
「?はい、承知しました」
ホーム長に声をかけられ、お出迎えの為にエントランスへと向かう。ちなみに、池澤様というのが新ご入居者様だ。
「そういえば、池澤様は今日はお孫さんといらっしゃるのですよね?」
「ああ、まあ、うん、そうなんだけど。……斉藤さんはソルってアイドルグループは知ってるかい?」
「ああ、先日名前だけ知りました。詳しくはないです」
「さすが、二次元オタクの星だね!」
ホーム長のそれは、褒めているのかは怪しいが、私がオタクなのは隠していないのでスタッフ皆の共通認識になっている。私が三次元にあまり興味がないことと共に。
ホーム長まで知ってるってどうなのとも思わないこともないが、ちょっとしたコミュニケーションツールにもなっているので、ヨシとしている。
「彼らが何か?」
「そう、実はね。今日ご入居される池澤様は、そのソルのリヒト君という子のおばあ様なんだ」
「へぇ、そうなんですね」
「うんうん、想像した通り、興味がなさそうで良かったよ。今、人気急上昇で、うちのスタッフでも話しているのを聞いたことがあるからね。斉藤さんなら、冷静に対応してくれると思って」
「なるほど。理解しました」
他のスタッフも、もちろん仕事なので、誰もがそつなくこなすとは思うけど、ホーム長としてはちょっとでも浮わつくことがないに越したことはないのだろう。
しかし、「ソル」の「リヒト」か。
この前の失礼な奴が本当に彼だったとしたら、ちょっとやりづらいなあ。かなり塩対応したし。でもきっと、私にも気づかないわよね。少ししか話していないし、化粧も全然違うから、わからないはずだ。うん。
それにしても、付き添いが彼なんてイメージと違う……っても、やっぱりこの前会った奴は他人の空似だったのかもしれないな。悠里もチラッとしか見てなかったし。
そう、思っていたが。
「初めまして。池澤美智子の孫の池澤璃人です。祖母をよろしくお願いいたします」
黒ぶちメガネをかけて、深く帽子を被っているが……奴に似ている。すっごい爽やか笑顔だけど。
いや、でも態度は別人だし。
違うと思いたい。
「これからお世話になりますねぇ」
車椅子に乗った池澤様は、にこやかで小さくてかわいらしいおばあ様だ。
「こちらこそよろしくお願いいたします。こちらの斉藤が池澤様の担当になります」
「斉藤野々日です。よろしくお願いいたします」
ホーム長に紹介されて、二人に挨拶をする。
「まあまあ!かわいらしいお嬢さんね!よろしくね」
「はい。さっそくお部屋に参りましょう。お孫さんもご一緒にお願いいたします。車椅子は私が押しますね」
お孫さんが先日の奴と同一人物かどうかは少し気になるが、今は仕事中だ。集中しないとね。池澤様が安心できるように、丁寧に優しく、笑顔で答えて話を進める。
「では、私は一度失礼致します。後は斉藤がご案内しますので」
ここでホーム長とは別れて、私だけでお二人を案内する。
「まあ、キレイな廊下ね。壁紙も落ち着いていて素敵だわ」
「ありがとうございます」
池澤様の言葉に、笑顔で答える。
うちの施設の廊下は広い。なんせ、ひと月に数十万を頂く施設なので、設備はホテルのようなのだ。とは言ってもやはり認知症の方なんかももちろんいらっしゃるし、仕事内容は他と大差はないと思うけどね。でも、施設がキレイなだけでも仕事はしやすい。
「こんなにいいところに、ありがとうね、璃人。結構高いんじゃないのかい?」
「ばあちゃんはそんなこと気にしなくてもいいの!俺がちゃんと仕事で稼いでいるんだから」
「ありがたいねぇ。そういえば斉藤さんは璃人の仕事をご存知なのかしら?」
「はい。ホーム長から伺っております」
「その割には普通ねぇ。璃人、あなたまだまだなんじゃないの?」
「ハイハイ」
「あ、いえ!充分に人気者な方ですよ!うちのスタッフでもファンが沢山おります!私は今、仕事中ですから」
私は全くのファンではないが、池澤様がしゅんとするのは居たたまれないので、なんとかフォローする。
その後もあれこれ話しながら歩いて、お部屋に着く。そして荷物などの確認をしてもらい、家具家電類の使い方やルールを説明し、ひとまず終了だ。
その間、彼は私に対してなんのアクションもなく。やはり他人の空似だったんだな。ちょっと安心したよ。
「では、以上ですね。私も一旦下がらせていただきます。何かございましたら、こちらのナースコールでお呼び下さい」
「分かったわ。ご丁寧にありがとう」
「璃人さんも、あと一時間くらいはいていただいても構いませんので」
「ああ、ありがとうございます」
「では……」
私は軽く会釈をして部屋を出ようとしたのだが。
「やっぱり気になるな。斉藤さん、どこかでお会いしませんでしたか?」
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