華落つること知る多少

雷華と璃葉

第35話 一日 PART2

「蓮雅、今何時だ？」

「えー、12時17分ですね。」

執務机に座る璃葉が目の前にいた真矢野に聞いた。

「そろそろお昼にしますか？」
「あぁ。そうだな。」

「お昼は何食べます？あ、誰か居ますかね？この時間。」

「いや、昼は部屋で食べる。だからお前もその辺にいる奴ら誘って勝手に食べろ。」

璃葉はそう告げるとパソコンを閉じ、事務所を出て雷華の待つ部屋へと向かったのだった。


＿＿＿

ドアの開く音がした。

絨毯の上を歩く鈍い音が聞こえてドアの方を見ると璃葉が入ってきた。

「お、おかえりなさぃ…」
「あぁ。腹は減ったか？」

「うん。」
「分かった。今作る。お前もキッチン、来るか？」

雷華は璃葉の何気ない一言が命令に感じて静かに璃葉の後ろをついて行った。

キッチンに着くなり璃葉はエプロンを付け、手を洗い料理を作り始めた。




トントンと食材を切る音が静かな部屋に響く。


「何を作ってるの？」
美味しそうな匂いが漂う中、雷華は璃葉に聞いた。
「んぁ？もやし炒めと、味噌汁。お前、なんか嫌いな食べ物とかあるか？」

「特にないかな？……多分。」

数分後、璃葉は昼食を作り終えてテーブルを雷華と囲んだ。

「…おいしい。」
雷華は意外に思っていた。非人道的な事をしている人間の割に、家庭の味を作れるのだなと。

「そうか、なら良かった。」
「意外に美味しい。」
「キッチンにすら立てない人間は黙れ。」


雷華は料理は得意ではないが、作れない訳ではなかった。
だがキッチンは包丁やはさみがあり、雷華が逃げようとする時に刃物を持っていると危険性な為、立つ事すら許されなかった。

「午後も仕事？」
「あぁ。それがなんだ。」
「いや、特に…ただ、なんとなく聞いてみたかっただけ。」

「くだらない話はやめろ。時間の無駄だ。寂しいなら寂しいと言え、回りくどいのは嫌いだ。」


璃葉は立ち上がり、食べかけをそのままシンクに置くとどこかに電話して部屋を出ようとした。

「待って！」
「ん。なんだ？」
部屋を後にしようと扉を開けかけていた璃葉が振り向いた。

「………寂しい….です。」

「あぁ。分かった。」
淡白な返事をして璃葉は部屋を出た。