華落つること知る多少

俺とお前の距離

第18話 ＿＿＿

ガチャッ

「よぉーすっ！」
突然、男が部屋に入ってきた。
怯えていた蕾華は思わず後ずさりをしてしまった。

「さっきは手酷くやられたみたいだね」

そういうと、男は蕾華の頭を撫で、蕾華をベッドの上に乗せた。

「ご…めんなさ…い。」
「あ？どした？まぁ…気にしなくて良いよ。若頭はちょっとイライラしてるだけだろうし、またなんかあったら俺らが仲裁にはいるからさ」

部屋に静寂が走った。
蕾華は俯いたまま何も話さない。

部下の一人が部屋を出ようとした時だった。

「あのっ！な、名前…教えてもらえませんか?」
「真矢野蓮雅まやのれんが。早くその性格直せ。」
そう告げると真矢野は部屋を後にした。

蕾華は一人になった部屋でただ窓の外から見える風景をまるで魂が抜けたように眺めていた。

＿＿＿＿


『蕾華の調子はどうだ？』
「かれこれ2時間程窓の外を眺めています。」


真矢野が璃葉に電話をしていた。
璃葉は仕事中にも関わらず合間を縫って部下に蕾華の状態を聞こうと電話を掛けていたのだった。

「食事はどうしますか？若頭が蕾華と2人で食べますか？」

『あーそうだな。そうしてくれ。あと3時間ぐらいでこっちも片が付きそうだからお前も程良い時間に帰ってくれ。』
「はい。わかりました。食事は用意しておきますので、若頭もお仕事お疲れ様です。」

電話が切れ、真矢野は一度部屋を出て食事の買い出しに出た。
流石に運転中に監視映像を見る訳にもいかないので盗聴器の音を片耳で聴きながら買い出しに出かけた。


真矢野のイヤホンから聞こえる音は室内に流れる
ザーというノイズだけであった。