華落つること知る多少

出会い…そして

第1話 墓を立てて上げたいんです！

「ハァ　ハァ　ハァ… なんで俺がこんなことに！」
そ

その日は鳴海蕾華ナルミライカにとって人生最悪の日だった。
母親は自分が産まれてすぐに離婚し、
借金まみれになり、挙句の果てに闇金に手をつけたのだった。
母親は保険金で借金を返そうとしたが足りず、その責任は息子である蕾華に来た。


当然、16歳の蕾華には返済することは出来る訳もなくヤクザに追われているのだった。





路地裏に逃げ、どうにか撒いたと思ったその時、蕾華は気付いた。
『ここは、袋小路』だと。

一つしかない入り口からゾロゾロと黒いスーツと危ない空気を纏った人達がを囲う。


「ごめんなさい、金は…俺が工面します。だから、もう少し…ま、待って…く、くだ…さい。」
蕾華は地面にこうべを垂れ涙を流し、懇願した。涙で地面が濡れていく。
どうか…どうか…臓器だけになるのは嫌だ!



そこにコツコツと響き渡る革靴の音が一つ。

「お前は、何故そこまでして懇願する？」

蕾華が恐る恐る頭を上げた先には見下す様に自分を見つめる人が居た。


「僕の…僕の…は、母は…あ、あなた…達にお、お金を返す為、し、死に…ました。
でも、俺にとっては…ゆ、…唯一の…家族だったから…は、は、墓を…墓を立ててあげたいんです！」
受け入れられなくても、自分の意志を伝えたかった。自分が今ここで死に、骨が何処かでバラバラになっていたとしても、最期まで親の事を想っていたかった。


「気に入った。お前を俺の犬にしよう。」
「へ？」
そいつは興味深いという顔をして僕を見つめた。

蕾華にとって予想だにしない回答だった。『犬』というものはまだ理解出来ないけど
生きているならそれで良いやと、蕾華は軽く見ていた。