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4巻
4-2
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長くクネクネと折れ曲がった地下道を俺達は進む。
叱られた事でシュンとしたアデルフィアは横を歩くディアベルを時折チラチラ見ているが、当のディアベルは目を合わそうとせず厳しい顔で真っ直ぐ前を向いたままだ。恐らくディアベルの性格からして、アデルフィアが俺達にちゃんと謝罪するまで赦さないつもりなんだろう。なかなか厳しいお姉ちゃんである。
「ここです。どうぞ中に」
木で出来た扉を開けると酒場のような造りの空間があった――と言うか酒場だ。
カウンター一つとテーブル。後は酒類が入っていると思われる樽が置いてある。解放軍の憩いの場ってとこだろう。今の時間は誰も利用していないらしく、部屋に居るのは俺達だけだ。席に着くなり、アデルフィアが謝罪してきた。
「まずは先ほどの無礼をお詫びさせてください。姉さんの恩人に大変な失礼をしてしまい、申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げるアデルフィア。ここでようやくディアベルの表情が緩んだ。妹と一緒に立ち上がり、俺達に頭を下げてくる。
「すまない主殿、クレア、シャリー。礼儀を知らぬ妹で申し訳ない」
「いいって。気にしてないから。クレアとシャリーもそうだろ?」
「私は別に気にしてませんよ」
「シャリーおこってないよ」
思った通り誰も怒っていないので、謝罪はこのぐらいにしておこう。ディアベルが妹と再会するという当初の目的はこれで達成できた訳だが、本番はここからだ。
俺はアデルフィアに現在の解放軍の状況を説明してもらう事にした。
「説明って……主殿、協力してくれるのか?」
「当たり前だろ? どうせディアベルの事だから妹に力を貸したいって言い出すと思ってたし、なら俺達も手を貸すのが当然じゃないか」
「主殿! ありがとう! みんなが力を貸してくれるなら、これほど心強い事は無い」
話の流れについていけないのか、アデルフィアが混乱した様子でディアベルに質問する。
「姉さん? どういう事なの?」
「アデルフィア、私達のレベルを確認してみろ」
言われたアデルフィアが怪訝な顔をしながらも俺達のレベルを確認した途端、すぐにその顔が驚きに変わった。
「ね、姉さん……一体何をしたらこんな高レベルになるのよ! 全員レベル70前後のパーティーなんて聞いた事無いわ!」
「驚くのも無理はない。この力は主殿のおかげなのだ。そこのシャリーなど、剣を握って半年も経っていないのにその強さだぞ?」
混乱したアデルフィアに、ディアベルが俺との出会いから今までの事を詳しく話し始めた。
ダンジョンでの出会いから帝国での騒動。光竜連峰でのファフニルとの出会い。その後の邪神の封印をめぐっての魔族との戦いやリオグランドでの闘技会。話が進むにつれて、常人では考えられないような内容に圧倒されたのか、アデルフィアの口は開いたままになる。
「――という訳で、アデルフィアの捜索に力を貸してもらったのだ」
「ちょっと待って……軽く頭が混乱してきたわ。姉さん達がありえないぐらい強い理由は理解できた。でも良いの? 私は自分の意志で戦っているけど、エストさん達には全然関係ないのに……」
「さっきも言ったけど、ディアベルが協力するなら俺達も手伝う。アデルフィアにとってディアベルが家族なように、俺達にとってもディアベルは家族なんだ。助けるのは当然だ」
「……主殿!」
一人感涙しているディアベルを眺めつつ、アデルフィアは苦笑していた。
「自分の奴隷を家族なんて呼ぶ人、初めて会った。いいわ、そういう事なら是非協力をお願いします。あなた達が力を貸してくれるなら、怖いものなどありません」
差し出された手をしっかりと握り返し、反射的に指で感触を確かめてしまう。うん、手触りのいい素晴らしい手だ!
そんな俺の行動を見逃さなかったのか、感動的な場面だというのに、なぜかクレアとディアベルが飛び掛かって来て俺を羽交い締めにし、アデルフィアから引き剥がそうとする。
何をするんだ二人とも! 俺はただ握手をしていただけなのに!
「言い忘れていたがアデルフィア。主殿は若い女と見るや淫獣と化すので隙を見せてはいけない。これは姉として、女としての忠告だ」
「人聞きの悪い事言うなよ! 今まで一度だって手を出してないのに……!」
ああ、さっきまでの尊敬の眼差しは何処へやら。アデルフィアは、冷め切った目で俺を見つめていたのだった。
アデルフィアの説明によれば、現在ファータに駐留しているシーティオ軍は約五千。本国にはこの数倍の戦力があるようだが、経済的に困窮しているシーティオには、これ以上軍を派遣する余裕が無いらしい。
解放軍としてはファータに駐留するシーティオ軍を撃退した後、再度侵攻できないようにある特殊な方法で島を防衛する計画を立てているそうだ。その事はひとまず置いておいて、今は駐留軍をどうするかを考えよう。
現在駐留軍は旧ファータ王城を拠点にしている。王都にはまだ数多くの住民が住んでいて、日々不当な搾取や暴力に苦しめられているらしい。軍の規模として五千という数はそれほど多いものではないが、それでも解放軍より遥かに多い。正面から戦えば勝ち目は無いだろう。
解放軍は散発的な襲撃を繰り返して敵を誘い出した後撃滅し、敵の消耗を強いる作戦のようだ。だが現状は城の襲撃どころか森の中で追い回される始末だから笑えない。手詰まり状態だとアデルフィアは頭を抱えていた。
「王城とその周辺の地図や、王城以外の兵士の駐留場所などはわかっているの?」
「それなら資料があります。……これです」
アデルフィアが差し出した資料をつぶさに観察する。それによると、王城は盆地の中に位置している。王都は王城から少し南の高台にあり、城とは隣接していない。王城の東には一本の川が流れていて、王城はその川の水面よりも位置が低い。これならあの手が使えるか?
豊臣秀吉が備中高松城を水攻めした戦法を真似できるかもしれない。
あの戦では大軍で取り囲んで逃げ場が無いようにしてからの水攻めだったが、解放軍にそんな人数はいない。各地に散らばる戦力を総動員しても千を超えるか超えないかぐらいだ。
ならどうするか? ここは物理的に出られなくしてしまえばいい。夜陰に紛れて城の周囲に土魔法で壁を築いて水の逃げ場を完全になくし、水没までの時間を短縮してしまおう。
王城を遠距離からドラゴンブレスで狙撃するという手も考えたが、あれほどの魔法を連発するのはいくらなんでも厳しい。それに、一撃叩き込んでせっかく一か所に集まっている敵を分散させる愚を犯したくない。
俺の提案にアデルフィアは目を丸くして驚いていた。この世界には、城ごと水没させるという発想は今までなかったらしい。だがこれなら王城の敵戦力を一気に殲滅する事も可能なので、随分と乗り気なようだ。
「私としてはすぐに行動に移したいのですが、その前にうちのリーダーに話をつけないといけません。今リーダーは部隊を率いて襲撃に出ていますので、もう少ししたら帰って――来たようですね」
複数の足音が近づいて来て、酒場の扉が勢いよく開け放たれた。
先頭はエルフの男だ。綺麗な金髪を背中に流し、大きな弓を装備している。部外者の俺達を警戒しているのか、鋭い目つきで観察してくる。
その後ろに居るのは先頭のエルフより一回りは大きなダークエルフの男。エルフとは思えないほど筋骨隆々で、背中には一本の長大な剣をぶら下げている。こちらは特に俺達を警戒している様子は無い。
その横では小柄なエルフの女が、やはり警戒の色を浮かべて立っていた。白に近い金髪をポニーテールにした、活発な印象の娘だ。こちらも先頭の男と同様、弓を手に持っていた。
「リーダー、お帰りなさい。紹介します。こちらは私の姉のディアベル。そしてその主人であるエストさんに、仲間のクレアさんとシャリーちゃんです。今エストさん達に協力してもらってシーティオを追い出す作戦を練っていたとこなんです」
アデルフィアの説明に男は眉一つ動かさず、逆に彼女を詰問し始める。
「アデルフィア、この隠れ家に見知らぬ人間を入れるとはどういう了見だ? 侵入者は誰であろうが排除する。その決まりを忘れたのか?」
「それはわかっていますが、私の生き別れの姉さんなんですよ? 元はファータの軍人だったし、エストさん達もその姉の仲間なんですから、そこまで警戒しなくても……」
「その気の緩みが油断を生み、敗北に繋がるのだ。もうここに入ってしまった以上、外に出す訳にはいかない。アデルフィアに免じて殺しはしないが、閉じ込めさせてもらうぞ」
「ちょっと待ってください! 何もそんな事しなくても!」
アデルフィアの抗議を、男はまるで聞き入れる様子が無い。完全に俺達を敵として扱うつもりのようだ。
……さて、この状況はどうしたものかな? さっきまではアデルフィアに協力するつもりでいたが、こんな男がリーダーを務める組織に協力するのは嫌になってきた。蹴散らして帰ろうかなどと考えていた俺だが、男の口から出た言葉でそれどころではなくなった。
「それに獣人は信用できん。我等の仲間も獣人の手引きによって捕らえられているではないか。ましてそんな汚らわしい連中を引き連れている男など、信用に値しない」
瞬間、頭に血が上った俺は行動に移していた。
「主殿! まって――」
すぐにマズいと思ったのだろう、ディアベルが慌てて俺を止めようとしたものの、その時には既に男の顔面を殴りつけた後だ。華奢な体格のエルフは、俺に殴られると壁まで吹っ飛んで叩きつけられる。全ては一瞬の出来事だった。
「あああ……もう滅茶苦茶だ……!」
頭を抱えるディアベルには悪いが、俺は少しも後悔していない。誰であろうが俺の仲間を侮辱する奴は叩きのめしてやる。我ながら短気だと思うが、スッとしたから問題ない!
突然の事態にアデルフィアは口を開けて放心状態だ。リーダーを殴り飛ばされた解放軍の二人は慌てて戦闘態勢を取ろうとしている。だが遅い。俺はダークエルフの懐に飛び込むと顎先を一撃して昏倒させ、女エルフに対してはその大きな耳に近距離で怒鳴りつけた。
「おらああああ!!」
「きゃあああ!」
突然の奇行に驚いた女エルフは、腰を抜かしてペタリとその場に座り込む。すかさず押さえ込んで武装を取り上げる事を忘れない。
「よし、制圧完了!」
「よし、じゃない! 何してるんですか!」
正気を取り戻したアデルフィアが猛抗議してくるが慌てる必要は無い。俺は売られた喧嘩を買っただけだ。
「俺達は不当に身柄を拘束されそうになったんだぞ? 反撃するのは当然じゃないか」
「……私には貴方がいきなり殴りかかったようにしか見えなかったんですが……」
「それは見解の相違だな」
ジト目で睨んでくるアデルフィア。すると今度は別の所から抗議が飛んできた。絶賛拘束中の女エルフからだ。
「あなた達、こんな真似をしてタダで済むと思っているの? 今の行動で私達解放軍を全て敵に回したのよ?」
「せっかく味方をしてやろうというのに、その機会を自ら手放す愚かな選択をしたお前達のリーダーが悪い。この程度で簡単に倒される男に任せるより、俺にやらせた方がいくらかマシだ。さっきアデルフィアとも話していたが、俺にはシーティオ軍を蹴散らす事の出来る策がある。まずはそれを説明したいんだが……暴れないと言うなら拘束を解こう」
何を言っているんだコイツはという表情で俺を睨みつける女エルフだったが、アデルフィアに俺達のレベルを確認するように促され、驚愕に目を見開く。女エルフのレベルは22と低い。ダークエルフは39で、リーダーの男は41だ。恐らくこの二人がリーダーの側近だろうから、解放軍はあまり高レベルの者が居ないのかもしれない。
「わかったわ。暴れても無駄みたいだし、話だけでも聞くべきね」
「賢明な判断で助かるよ」
女エルフを解放すると、彼女はすぐに倒れたままのリーダーを介抱しに走り、アデルフィアは気絶しているダークエルフを介抱する。やがて二人とも気が付いたようで、頭を振りながら立ち上がった。
「貴様……やってくれたな。覚悟は出来ているんだろうな?」
間抜けにも一撃で倒されたリーダーは殺気を放ちながら俺を睨んでくるが、今更そんな視線を向けられたところで犬が吠えている程度にしか思わない。そんな態度が癇に障ったのか、激高して詰め寄ろうとするリーダーを女エルフが必死に止める。
「なぜ止める!」
「お願い。まずは彼らの話を聞いてちょうだい。それに彼らのレベルを確認して。私達が敵う相手じゃないわ」
女エルフに言われたリーダーは俺達のレベルを確認すると、悔しそうに唇を噛みしめる。自分では勝てないと理解したのだろう。
「こいつは凄いな! お前等、何者なんだ?」
リーダーと違ってダークエルフの男は素直に感嘆の声を上げる。こっちの男は話がわかるタイプのようだ。
「私が説明します。彼らの素性とこれからの事を」
さっきした説明を、アデルフィアが更に簡潔にリーダー達に伝えていく。話が邪神の件に差しかかった時の反応は三者三様だった。リーダーは明らかに信じていない難しい顔で黙ったままで、女エルフは驚きのあまり声も無い。唯一ダークエルフの男だけが冒険譚を聞く少年のように興奮していて、少しも聞き漏らすまいといった態度だ。
「そんな荒唐無稽な話は信じられないな」
全てを聞き終えた後、口を開いたリーダーが発した第一声がこれだ。話の規模が大きすぎて胡散臭いのは自分でも理解しているし、信じられないのも無理はない。だがコイツの場合、俺の事が気に入らないから信じないだけのような気がする。
「そうは言ってもよ、こいつ等のレベルは他に説明がつかないだろ? 長命の種族ならともかく、人間や獣人がこのレベルに到達しようと思っても無理だぞ?」
ダークエルフの懸命な説得にもリーダーは取り合わない。デカい耳のくせに聞く耳を持ってないな。
「……何か、証拠になる物は無いの? その、光る剣や盾以外で」
女エルフの言葉に何かないかと考え込む。装備が光を発して強力だというだけでは、説得力に欠けるのだろう。しかし何をもって証拠とすれば……と、そこまで考えて宙を見上げた時、パタパタと羽ばたいているドランが目に入った。
「そうだよ。こいつが居るじゃないか。ドラン! 隠密を解いて皆に姿を見せてやってくれ」
「グワッ」
突然誰も居ない空間に向かって話しかけた俺を三人は怪訝な顔で見ていたが、突如聞こえた鳴き声と共に姿を現したドランに度肝を抜かれたようだ。
「ドラゴン! そんな、今まで影も形も無かったのに!」
「今の話にあった光竜連峰に棲むドラゴンの使いって、この子の事? まさか本当に居るなんて……」
「すげえ! って事はお前達は本当に世界を救うために旅をしているのか! まるで大昔の勇者じゃないか!」
これでようやく信じてもらえたようだ。普段は存在感の希薄なドランだが、こういう時は頼りになる。本人は飛んでいるのに疲れたらしく、騒がしい三人組を無視してテーブルの上でくつろぎ始めた。
「……わかった。君達の話を信じよう。疑って悪かった。それに先ほど、君の仲間を侮辱した件も謝罪する。申し訳ない」
そう言ってリーダーが頭を下げる。これには俺達だけで無く解放軍の面子も驚いていた。てっきり意固地になって協力を拒むタイプと思い込んでいたが、わかってくれたようだ。これは俺も頭を下げるべきだろう。
「こっちこそいきなり殴って悪かった。謝罪代わりと言ってはなんだが、その分働かせてもらうよ」
「期待させてもらおう」
差し出された手を握り、固く握手を交わす。雨降って地固まるとはこの事だ。
俺とリーダーは笑顔だったが、振り回された周りの面子は若干白い目で俺達を見ていた。
「ではまず自己紹介をさせてもらおう。私は解放軍のリーダーを務めるレベリオだ」
「私はエルフィ」
「俺はアミスターだ。よろしくな」
俺達も簡単に自己紹介を済ませ、早速シーティオ軍を撃退する作戦の説明に移る。俺の案はこうだ。
まず夜陰に乗じて王城の周囲に土魔法で土塁を築き、完全に囲んでしまう。
それと並行して川の上流で堤を造り、水を堰き止める。ある程度壁が出来た時点で堤を切って水を流し込めば、後はシーティオ軍がもたもたしている間に城ごと水没という寸法だ。
盆地を囲うように壁を築き上げるので城からは距離がある。夜なら気付かれる可能性は低いものの、それでも速度が優先される。魔法を使える者はぶっ倒れるまで頑張ってもらう必要があるだろう。
「むう……よくこんな手を思いつくな」
「本当ね」
「やっぱり勇者と呼ばれる奴は凄い事考えるんだな」
褒めてもらえるのは嬉しいけど、知っている歴史上の戦法を真似ただけなので心中は複雑だった。
とりあえず王城のシーティオ軍はこれで何とかなると思う。しかし問題は、本国から送られてくる増援にどう対処するかだ。流石に駐留軍が全滅したら、無理をしてでも再び大軍を派遣してくる可能性が高い。その辺はどうするつもりなんだろうか?
「ある竜の力を借りようと思う。このファータ近海には昔から海竜が出没していて、大昔はその竜の力を借りて海の恵みを得ていたという記録が残っているんだ。かの竜は潮の満ち引きや海流を操る能力も持っているようだし、シーティオ軍を阻むぐらい造作も無いだろう」
海竜か……確かに力を借りる事が出来れば強力な守護神代わりになりそうだ。しかし気になる点がいくつかある。まず昔は力を貸してくれていたのに、なぜ今は交流が無くなっているのか? それと海竜自体の居所だ。流石に海の中だとお手上げだぞ。
「古の勇者と行動を共にしていた我等の祖先がこの国を興す時、当時仲間の一人だった海竜の助力を得ていたらしい。だが長い年月が過ぎるうちにお互いに疎遠になり、ある日を境にぱったりと交流が無くなったそうだ」
ふむ、悪い関係ではなかったが、今は顔見知り以下か。しかしそんな相手が今更協力してくれるだろうか? 疎遠になっていたのに一方的な都合で力を貸せなんて、俺だったらムカつくけどな。それとも竜ともなるとそんな事は気にしないのかね?
「居所については判明している。この島の北にある浅瀬を越えた先の島だ。ちょうど島の中央ぐらいに古い洞窟があって、その最深部に居る。説得が可能かはわからないが、やってみるしかない」
なら直接乗り込むのは俺達を含む少数でいいな。
問題は本当に今でも居るかどうかだ。もう寿命が来て死んでたり、他の場所に移ったりしてると、作戦が成り立たなくなるぞ。これは順番を変えて先に海竜の件を片付けた方がいいだろう。
「王城を攻撃するのはシーティオ本国からの増援を阻止してからにしよう。連絡手段が絶たれれば、城内に居る将兵の士気も下がりやすいだろうし」
「確かにな。ではまず海竜から攻略するとしよう。潜入するメンバーは――」
そこで顔を見合わせる解放軍。リーダー達幹部がまとめて居なくなったら、統率が取れずに緊急時の対処が出来なくなる恐れがある。しかし全て俺達パーティーに押し付けるのも気が引けるってところか。
「行くのは俺達とアデルフィアだけでいい。それでいいな?」
あまりぞろぞろついて来られても動きが鈍くなるし、アデルフィア一人ならそれほど影響は無い。それにせっかく再会したばかりの姉妹だ。なるべく一緒に居させてあげたい。
「私は構いませんけど、リーダー?」
「ううむ……正直押し付ける形になって申し訳ないが、君達に任せた方が確実だろうな。アデルフィア、エスト殿達の案内は任せたぞ。十分気を付けてくれ」
「任せてください。姉さん達の邪魔にならないよう頑張ります」
よし、これで話は決まりだ。出発は翌日の朝という事になり、その日はささやかだが、隠れ家に住む解放軍のメンバー達との食事会が開かれた。ディアベルとアデルフィアはずっと離れずに二人で話し込んでいたようだ。離れていた間のお互いの身の上話をしていたのだろう。
翌朝、出発する俺達をレベリオ達が見送ってくれた。
「では行って来るよ」
「君達なら大丈夫だろうが、油断はしないようにな」
目指すは島の北、浅瀬の向こうにある海竜の洞窟だ。
北にある島は徒歩で二時間ほどの距離だった。現在の時間帯は潮が引いて、歩きでも渡る事が出来る。ぬかるんだ地面を歩く感触が少し気持ち悪かったが、気にせず前に進んで行く。
「海竜の洞窟の中って、魔物とか居るの?」
「わかりません。昔の記録では洞窟の最深部で海竜との交流があったと伝えられていますが、解放軍のメンバーで実際に入った人は居ないでしょう」
俺の問いに難しい顔をして答えるアデルフィア。それなら魔物が居ると想定した方が無難か。
浅瀬を越えて一時間ほど進んだ俺達は、前方に岩をくり抜いたような形をしている大きな穴を発見した。あれが目的地である海竜の洞窟の入り口のようだ。
「ここですね。古い文献とリーダーから預かった資料の通りです。間違いないでしょう」
「よし、じゃあいつものように俺が先頭に立つ。アデルフィアはクレアの後ろだ。ディアベルは最後尾で警戒しててくれ」
「わかりました」
「承知した」
俺を先頭にシャリーが続き、その後にクレア、アデルフィア、ディアベルの順番だ。何かあった時のため、ドランにはアデルフィアについてもらっている。大概の敵ならドランのブレスで対処できるだろう。
洞窟の中は最深部が海に繋がっているだけあって、少し潮の匂いがする。それに苔が多くジメジメして、まるで熱帯雨林のような湿度の高さに辟易する。ガルシア王国のダンジョンなどより長居したくない環境だった。幸い複雑な分岐や罠などは無く、本当に自然に出来上がった洞窟のようだ。
人間にとっては不快な場所でも、それを好む生物や魔物は居るらしい。展開していたマップスキルに敵の反応が表れた。
ひたすら下に降りて行く一本道に近い形状の洞窟の奥から、上半身が鱗の生えた人の形で、下半身がタコの足という気持ち悪い魔物がこっちに向かって来た。その体に毛の類は一切なく、二つある眼も何処を見ているのかわからない。不気味な形状の存在だった。これも一応半魚人と言うべきなんだろうか?
その形状から動きが遅いと思われたが、足にある吸盤を巧みに使い、壁や天井などに飛び移りながら素早く迫って来る。その動きは立体的で、魚類というより蜘蛛に近い。
「うわ……気持ち悪い」
アデルフィアが顔をしかめながら呟いている。同感だが、今はこの敵を排除するのが先決だ。武器を構える俺達を見て、アデルフィアも慌てて自分の武器を構える。
グラン・ソラスに魔力を通し飛び出した俺のすぐ後にシャリーが続く。確認できる敵の数は五匹のみ。これならすぐに終わるだろう。
目前に迫った三匹の内、一匹の脳天に背後から飛んできた矢が突き刺さり、頭を爆散させる。敵が怯んだ隙を見逃さず、俺とシャリーがそれぞれ受け持った敵の首を間髪を容れずに斬り落とした。
「サラマンダー!」
ディアベルの召喚した炎の精霊サラマンダーが、後方の二体に向かってブレスを吐き出す。今召喚したサラマンダーは普段より立派な体格をしていて、そのブレスは通常の倍ほどの太さと速さがあった。狭い通路を覆いつくすような威力のブレスを吐かれては逃げ場などあるはずもなく、哀れ二体の半魚人は、一瞬で消し炭にされてしまった。
「……何もする暇が無かった……」
即座に敵を全滅させたので、アデルフィアは立っているだけで戦闘が終わってしまった。
それにしても今のディアベルは、随分と気合いが入っていたようだ。普段より強力なサラマンダーがその証拠だろう。久しぶりに会った妹に良いところを見せたかったのかもしれない。なかなか可愛いところがあるじゃないか。
「姉さん、火の精霊の影響力が少ない所であんな凄いのを喚び出すなんて、本当に強くなったのね!」
「う……うむ。それほどでもないが」
照れて顔を赤くしているディアベルを俺達はニヤニヤと眺める。普段冷静なディアベルにしては珍しい光景だから、自然と笑みがこぼれてしまうのだ。
「な、何だみんな! そんな顔で人を見るものではない!」
だがすぐに、笑ってばかりもいられなくなった。マップに特大の反応が表れたからだ。
この反応の大きさからして、海竜で間違いないだろう。マップ上ではまだ青い光点なので敵意は無いようだが、この後の交渉次第でどう転ぶかわからない。とりあえず、海竜不在で別の手を考えなければならない、という事態を避けられた事だけは喜んでいいだろう。
洞窟の最深部は海竜が棲めるだけあって、かなり広大な空間だった。外海と繋がっているらしい水を湛えた穴も見える。
その広い空間のちょうど真ん中辺りに、一匹の巨大な生物がとぐろを巻いて眠っていた。あれが海竜だろう。その姿は東洋の竜に近く、体は白銀の鱗で覆われていた。
俺達の接近に気が付いたのか、海竜はとぐろを解いて大きな体を持ち上げ始める。十分な高さを持つ洞窟なのに、それでも海竜が直立するのは無理なようで、体の半分ほどを持ち上げるにとどまった。
ファフニルと戦った時の威圧感によく似ている。これは戦闘になったら危ないかもな。
叱られた事でシュンとしたアデルフィアは横を歩くディアベルを時折チラチラ見ているが、当のディアベルは目を合わそうとせず厳しい顔で真っ直ぐ前を向いたままだ。恐らくディアベルの性格からして、アデルフィアが俺達にちゃんと謝罪するまで赦さないつもりなんだろう。なかなか厳しいお姉ちゃんである。
「ここです。どうぞ中に」
木で出来た扉を開けると酒場のような造りの空間があった――と言うか酒場だ。
カウンター一つとテーブル。後は酒類が入っていると思われる樽が置いてある。解放軍の憩いの場ってとこだろう。今の時間は誰も利用していないらしく、部屋に居るのは俺達だけだ。席に着くなり、アデルフィアが謝罪してきた。
「まずは先ほどの無礼をお詫びさせてください。姉さんの恩人に大変な失礼をしてしまい、申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げるアデルフィア。ここでようやくディアベルの表情が緩んだ。妹と一緒に立ち上がり、俺達に頭を下げてくる。
「すまない主殿、クレア、シャリー。礼儀を知らぬ妹で申し訳ない」
「いいって。気にしてないから。クレアとシャリーもそうだろ?」
「私は別に気にしてませんよ」
「シャリーおこってないよ」
思った通り誰も怒っていないので、謝罪はこのぐらいにしておこう。ディアベルが妹と再会するという当初の目的はこれで達成できた訳だが、本番はここからだ。
俺はアデルフィアに現在の解放軍の状況を説明してもらう事にした。
「説明って……主殿、協力してくれるのか?」
「当たり前だろ? どうせディアベルの事だから妹に力を貸したいって言い出すと思ってたし、なら俺達も手を貸すのが当然じゃないか」
「主殿! ありがとう! みんなが力を貸してくれるなら、これほど心強い事は無い」
話の流れについていけないのか、アデルフィアが混乱した様子でディアベルに質問する。
「姉さん? どういう事なの?」
「アデルフィア、私達のレベルを確認してみろ」
言われたアデルフィアが怪訝な顔をしながらも俺達のレベルを確認した途端、すぐにその顔が驚きに変わった。
「ね、姉さん……一体何をしたらこんな高レベルになるのよ! 全員レベル70前後のパーティーなんて聞いた事無いわ!」
「驚くのも無理はない。この力は主殿のおかげなのだ。そこのシャリーなど、剣を握って半年も経っていないのにその強さだぞ?」
混乱したアデルフィアに、ディアベルが俺との出会いから今までの事を詳しく話し始めた。
ダンジョンでの出会いから帝国での騒動。光竜連峰でのファフニルとの出会い。その後の邪神の封印をめぐっての魔族との戦いやリオグランドでの闘技会。話が進むにつれて、常人では考えられないような内容に圧倒されたのか、アデルフィアの口は開いたままになる。
「――という訳で、アデルフィアの捜索に力を貸してもらったのだ」
「ちょっと待って……軽く頭が混乱してきたわ。姉さん達がありえないぐらい強い理由は理解できた。でも良いの? 私は自分の意志で戦っているけど、エストさん達には全然関係ないのに……」
「さっきも言ったけど、ディアベルが協力するなら俺達も手伝う。アデルフィアにとってディアベルが家族なように、俺達にとってもディアベルは家族なんだ。助けるのは当然だ」
「……主殿!」
一人感涙しているディアベルを眺めつつ、アデルフィアは苦笑していた。
「自分の奴隷を家族なんて呼ぶ人、初めて会った。いいわ、そういう事なら是非協力をお願いします。あなた達が力を貸してくれるなら、怖いものなどありません」
差し出された手をしっかりと握り返し、反射的に指で感触を確かめてしまう。うん、手触りのいい素晴らしい手だ!
そんな俺の行動を見逃さなかったのか、感動的な場面だというのに、なぜかクレアとディアベルが飛び掛かって来て俺を羽交い締めにし、アデルフィアから引き剥がそうとする。
何をするんだ二人とも! 俺はただ握手をしていただけなのに!
「言い忘れていたがアデルフィア。主殿は若い女と見るや淫獣と化すので隙を見せてはいけない。これは姉として、女としての忠告だ」
「人聞きの悪い事言うなよ! 今まで一度だって手を出してないのに……!」
ああ、さっきまでの尊敬の眼差しは何処へやら。アデルフィアは、冷め切った目で俺を見つめていたのだった。
アデルフィアの説明によれば、現在ファータに駐留しているシーティオ軍は約五千。本国にはこの数倍の戦力があるようだが、経済的に困窮しているシーティオには、これ以上軍を派遣する余裕が無いらしい。
解放軍としてはファータに駐留するシーティオ軍を撃退した後、再度侵攻できないようにある特殊な方法で島を防衛する計画を立てているそうだ。その事はひとまず置いておいて、今は駐留軍をどうするかを考えよう。
現在駐留軍は旧ファータ王城を拠点にしている。王都にはまだ数多くの住民が住んでいて、日々不当な搾取や暴力に苦しめられているらしい。軍の規模として五千という数はそれほど多いものではないが、それでも解放軍より遥かに多い。正面から戦えば勝ち目は無いだろう。
解放軍は散発的な襲撃を繰り返して敵を誘い出した後撃滅し、敵の消耗を強いる作戦のようだ。だが現状は城の襲撃どころか森の中で追い回される始末だから笑えない。手詰まり状態だとアデルフィアは頭を抱えていた。
「王城とその周辺の地図や、王城以外の兵士の駐留場所などはわかっているの?」
「それなら資料があります。……これです」
アデルフィアが差し出した資料をつぶさに観察する。それによると、王城は盆地の中に位置している。王都は王城から少し南の高台にあり、城とは隣接していない。王城の東には一本の川が流れていて、王城はその川の水面よりも位置が低い。これならあの手が使えるか?
豊臣秀吉が備中高松城を水攻めした戦法を真似できるかもしれない。
あの戦では大軍で取り囲んで逃げ場が無いようにしてからの水攻めだったが、解放軍にそんな人数はいない。各地に散らばる戦力を総動員しても千を超えるか超えないかぐらいだ。
ならどうするか? ここは物理的に出られなくしてしまえばいい。夜陰に紛れて城の周囲に土魔法で壁を築いて水の逃げ場を完全になくし、水没までの時間を短縮してしまおう。
王城を遠距離からドラゴンブレスで狙撃するという手も考えたが、あれほどの魔法を連発するのはいくらなんでも厳しい。それに、一撃叩き込んでせっかく一か所に集まっている敵を分散させる愚を犯したくない。
俺の提案にアデルフィアは目を丸くして驚いていた。この世界には、城ごと水没させるという発想は今までなかったらしい。だがこれなら王城の敵戦力を一気に殲滅する事も可能なので、随分と乗り気なようだ。
「私としてはすぐに行動に移したいのですが、その前にうちのリーダーに話をつけないといけません。今リーダーは部隊を率いて襲撃に出ていますので、もう少ししたら帰って――来たようですね」
複数の足音が近づいて来て、酒場の扉が勢いよく開け放たれた。
先頭はエルフの男だ。綺麗な金髪を背中に流し、大きな弓を装備している。部外者の俺達を警戒しているのか、鋭い目つきで観察してくる。
その後ろに居るのは先頭のエルフより一回りは大きなダークエルフの男。エルフとは思えないほど筋骨隆々で、背中には一本の長大な剣をぶら下げている。こちらは特に俺達を警戒している様子は無い。
その横では小柄なエルフの女が、やはり警戒の色を浮かべて立っていた。白に近い金髪をポニーテールにした、活発な印象の娘だ。こちらも先頭の男と同様、弓を手に持っていた。
「リーダー、お帰りなさい。紹介します。こちらは私の姉のディアベル。そしてその主人であるエストさんに、仲間のクレアさんとシャリーちゃんです。今エストさん達に協力してもらってシーティオを追い出す作戦を練っていたとこなんです」
アデルフィアの説明に男は眉一つ動かさず、逆に彼女を詰問し始める。
「アデルフィア、この隠れ家に見知らぬ人間を入れるとはどういう了見だ? 侵入者は誰であろうが排除する。その決まりを忘れたのか?」
「それはわかっていますが、私の生き別れの姉さんなんですよ? 元はファータの軍人だったし、エストさん達もその姉の仲間なんですから、そこまで警戒しなくても……」
「その気の緩みが油断を生み、敗北に繋がるのだ。もうここに入ってしまった以上、外に出す訳にはいかない。アデルフィアに免じて殺しはしないが、閉じ込めさせてもらうぞ」
「ちょっと待ってください! 何もそんな事しなくても!」
アデルフィアの抗議を、男はまるで聞き入れる様子が無い。完全に俺達を敵として扱うつもりのようだ。
……さて、この状況はどうしたものかな? さっきまではアデルフィアに協力するつもりでいたが、こんな男がリーダーを務める組織に協力するのは嫌になってきた。蹴散らして帰ろうかなどと考えていた俺だが、男の口から出た言葉でそれどころではなくなった。
「それに獣人は信用できん。我等の仲間も獣人の手引きによって捕らえられているではないか。ましてそんな汚らわしい連中を引き連れている男など、信用に値しない」
瞬間、頭に血が上った俺は行動に移していた。
「主殿! まって――」
すぐにマズいと思ったのだろう、ディアベルが慌てて俺を止めようとしたものの、その時には既に男の顔面を殴りつけた後だ。華奢な体格のエルフは、俺に殴られると壁まで吹っ飛んで叩きつけられる。全ては一瞬の出来事だった。
「あああ……もう滅茶苦茶だ……!」
頭を抱えるディアベルには悪いが、俺は少しも後悔していない。誰であろうが俺の仲間を侮辱する奴は叩きのめしてやる。我ながら短気だと思うが、スッとしたから問題ない!
突然の事態にアデルフィアは口を開けて放心状態だ。リーダーを殴り飛ばされた解放軍の二人は慌てて戦闘態勢を取ろうとしている。だが遅い。俺はダークエルフの懐に飛び込むと顎先を一撃して昏倒させ、女エルフに対してはその大きな耳に近距離で怒鳴りつけた。
「おらああああ!!」
「きゃあああ!」
突然の奇行に驚いた女エルフは、腰を抜かしてペタリとその場に座り込む。すかさず押さえ込んで武装を取り上げる事を忘れない。
「よし、制圧完了!」
「よし、じゃない! 何してるんですか!」
正気を取り戻したアデルフィアが猛抗議してくるが慌てる必要は無い。俺は売られた喧嘩を買っただけだ。
「俺達は不当に身柄を拘束されそうになったんだぞ? 反撃するのは当然じゃないか」
「……私には貴方がいきなり殴りかかったようにしか見えなかったんですが……」
「それは見解の相違だな」
ジト目で睨んでくるアデルフィア。すると今度は別の所から抗議が飛んできた。絶賛拘束中の女エルフからだ。
「あなた達、こんな真似をしてタダで済むと思っているの? 今の行動で私達解放軍を全て敵に回したのよ?」
「せっかく味方をしてやろうというのに、その機会を自ら手放す愚かな選択をしたお前達のリーダーが悪い。この程度で簡単に倒される男に任せるより、俺にやらせた方がいくらかマシだ。さっきアデルフィアとも話していたが、俺にはシーティオ軍を蹴散らす事の出来る策がある。まずはそれを説明したいんだが……暴れないと言うなら拘束を解こう」
何を言っているんだコイツはという表情で俺を睨みつける女エルフだったが、アデルフィアに俺達のレベルを確認するように促され、驚愕に目を見開く。女エルフのレベルは22と低い。ダークエルフは39で、リーダーの男は41だ。恐らくこの二人がリーダーの側近だろうから、解放軍はあまり高レベルの者が居ないのかもしれない。
「わかったわ。暴れても無駄みたいだし、話だけでも聞くべきね」
「賢明な判断で助かるよ」
女エルフを解放すると、彼女はすぐに倒れたままのリーダーを介抱しに走り、アデルフィアは気絶しているダークエルフを介抱する。やがて二人とも気が付いたようで、頭を振りながら立ち上がった。
「貴様……やってくれたな。覚悟は出来ているんだろうな?」
間抜けにも一撃で倒されたリーダーは殺気を放ちながら俺を睨んでくるが、今更そんな視線を向けられたところで犬が吠えている程度にしか思わない。そんな態度が癇に障ったのか、激高して詰め寄ろうとするリーダーを女エルフが必死に止める。
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「お願い。まずは彼らの話を聞いてちょうだい。それに彼らのレベルを確認して。私達が敵う相手じゃないわ」
女エルフに言われたリーダーは俺達のレベルを確認すると、悔しそうに唇を噛みしめる。自分では勝てないと理解したのだろう。
「こいつは凄いな! お前等、何者なんだ?」
リーダーと違ってダークエルフの男は素直に感嘆の声を上げる。こっちの男は話がわかるタイプのようだ。
「私が説明します。彼らの素性とこれからの事を」
さっきした説明を、アデルフィアが更に簡潔にリーダー達に伝えていく。話が邪神の件に差しかかった時の反応は三者三様だった。リーダーは明らかに信じていない難しい顔で黙ったままで、女エルフは驚きのあまり声も無い。唯一ダークエルフの男だけが冒険譚を聞く少年のように興奮していて、少しも聞き漏らすまいといった態度だ。
「そんな荒唐無稽な話は信じられないな」
全てを聞き終えた後、口を開いたリーダーが発した第一声がこれだ。話の規模が大きすぎて胡散臭いのは自分でも理解しているし、信じられないのも無理はない。だがコイツの場合、俺の事が気に入らないから信じないだけのような気がする。
「そうは言ってもよ、こいつ等のレベルは他に説明がつかないだろ? 長命の種族ならともかく、人間や獣人がこのレベルに到達しようと思っても無理だぞ?」
ダークエルフの懸命な説得にもリーダーは取り合わない。デカい耳のくせに聞く耳を持ってないな。
「……何か、証拠になる物は無いの? その、光る剣や盾以外で」
女エルフの言葉に何かないかと考え込む。装備が光を発して強力だというだけでは、説得力に欠けるのだろう。しかし何をもって証拠とすれば……と、そこまで考えて宙を見上げた時、パタパタと羽ばたいているドランが目に入った。
「そうだよ。こいつが居るじゃないか。ドラン! 隠密を解いて皆に姿を見せてやってくれ」
「グワッ」
突然誰も居ない空間に向かって話しかけた俺を三人は怪訝な顔で見ていたが、突如聞こえた鳴き声と共に姿を現したドランに度肝を抜かれたようだ。
「ドラゴン! そんな、今まで影も形も無かったのに!」
「今の話にあった光竜連峰に棲むドラゴンの使いって、この子の事? まさか本当に居るなんて……」
「すげえ! って事はお前達は本当に世界を救うために旅をしているのか! まるで大昔の勇者じゃないか!」
これでようやく信じてもらえたようだ。普段は存在感の希薄なドランだが、こういう時は頼りになる。本人は飛んでいるのに疲れたらしく、騒がしい三人組を無視してテーブルの上でくつろぎ始めた。
「……わかった。君達の話を信じよう。疑って悪かった。それに先ほど、君の仲間を侮辱した件も謝罪する。申し訳ない」
そう言ってリーダーが頭を下げる。これには俺達だけで無く解放軍の面子も驚いていた。てっきり意固地になって協力を拒むタイプと思い込んでいたが、わかってくれたようだ。これは俺も頭を下げるべきだろう。
「こっちこそいきなり殴って悪かった。謝罪代わりと言ってはなんだが、その分働かせてもらうよ」
「期待させてもらおう」
差し出された手を握り、固く握手を交わす。雨降って地固まるとはこの事だ。
俺とリーダーは笑顔だったが、振り回された周りの面子は若干白い目で俺達を見ていた。
「ではまず自己紹介をさせてもらおう。私は解放軍のリーダーを務めるレベリオだ」
「私はエルフィ」
「俺はアミスターだ。よろしくな」
俺達も簡単に自己紹介を済ませ、早速シーティオ軍を撃退する作戦の説明に移る。俺の案はこうだ。
まず夜陰に乗じて王城の周囲に土魔法で土塁を築き、完全に囲んでしまう。
それと並行して川の上流で堤を造り、水を堰き止める。ある程度壁が出来た時点で堤を切って水を流し込めば、後はシーティオ軍がもたもたしている間に城ごと水没という寸法だ。
盆地を囲うように壁を築き上げるので城からは距離がある。夜なら気付かれる可能性は低いものの、それでも速度が優先される。魔法を使える者はぶっ倒れるまで頑張ってもらう必要があるだろう。
「むう……よくこんな手を思いつくな」
「本当ね」
「やっぱり勇者と呼ばれる奴は凄い事考えるんだな」
褒めてもらえるのは嬉しいけど、知っている歴史上の戦法を真似ただけなので心中は複雑だった。
とりあえず王城のシーティオ軍はこれで何とかなると思う。しかし問題は、本国から送られてくる増援にどう対処するかだ。流石に駐留軍が全滅したら、無理をしてでも再び大軍を派遣してくる可能性が高い。その辺はどうするつもりなんだろうか?
「ある竜の力を借りようと思う。このファータ近海には昔から海竜が出没していて、大昔はその竜の力を借りて海の恵みを得ていたという記録が残っているんだ。かの竜は潮の満ち引きや海流を操る能力も持っているようだし、シーティオ軍を阻むぐらい造作も無いだろう」
海竜か……確かに力を借りる事が出来れば強力な守護神代わりになりそうだ。しかし気になる点がいくつかある。まず昔は力を貸してくれていたのに、なぜ今は交流が無くなっているのか? それと海竜自体の居所だ。流石に海の中だとお手上げだぞ。
「古の勇者と行動を共にしていた我等の祖先がこの国を興す時、当時仲間の一人だった海竜の助力を得ていたらしい。だが長い年月が過ぎるうちにお互いに疎遠になり、ある日を境にぱったりと交流が無くなったそうだ」
ふむ、悪い関係ではなかったが、今は顔見知り以下か。しかしそんな相手が今更協力してくれるだろうか? 疎遠になっていたのに一方的な都合で力を貸せなんて、俺だったらムカつくけどな。それとも竜ともなるとそんな事は気にしないのかね?
「居所については判明している。この島の北にある浅瀬を越えた先の島だ。ちょうど島の中央ぐらいに古い洞窟があって、その最深部に居る。説得が可能かはわからないが、やってみるしかない」
なら直接乗り込むのは俺達を含む少数でいいな。
問題は本当に今でも居るかどうかだ。もう寿命が来て死んでたり、他の場所に移ったりしてると、作戦が成り立たなくなるぞ。これは順番を変えて先に海竜の件を片付けた方がいいだろう。
「王城を攻撃するのはシーティオ本国からの増援を阻止してからにしよう。連絡手段が絶たれれば、城内に居る将兵の士気も下がりやすいだろうし」
「確かにな。ではまず海竜から攻略するとしよう。潜入するメンバーは――」
そこで顔を見合わせる解放軍。リーダー達幹部がまとめて居なくなったら、統率が取れずに緊急時の対処が出来なくなる恐れがある。しかし全て俺達パーティーに押し付けるのも気が引けるってところか。
「行くのは俺達とアデルフィアだけでいい。それでいいな?」
あまりぞろぞろついて来られても動きが鈍くなるし、アデルフィア一人ならそれほど影響は無い。それにせっかく再会したばかりの姉妹だ。なるべく一緒に居させてあげたい。
「私は構いませんけど、リーダー?」
「ううむ……正直押し付ける形になって申し訳ないが、君達に任せた方が確実だろうな。アデルフィア、エスト殿達の案内は任せたぞ。十分気を付けてくれ」
「任せてください。姉さん達の邪魔にならないよう頑張ります」
よし、これで話は決まりだ。出発は翌日の朝という事になり、その日はささやかだが、隠れ家に住む解放軍のメンバー達との食事会が開かれた。ディアベルとアデルフィアはずっと離れずに二人で話し込んでいたようだ。離れていた間のお互いの身の上話をしていたのだろう。
翌朝、出発する俺達をレベリオ達が見送ってくれた。
「では行って来るよ」
「君達なら大丈夫だろうが、油断はしないようにな」
目指すは島の北、浅瀬の向こうにある海竜の洞窟だ。
北にある島は徒歩で二時間ほどの距離だった。現在の時間帯は潮が引いて、歩きでも渡る事が出来る。ぬかるんだ地面を歩く感触が少し気持ち悪かったが、気にせず前に進んで行く。
「海竜の洞窟の中って、魔物とか居るの?」
「わかりません。昔の記録では洞窟の最深部で海竜との交流があったと伝えられていますが、解放軍のメンバーで実際に入った人は居ないでしょう」
俺の問いに難しい顔をして答えるアデルフィア。それなら魔物が居ると想定した方が無難か。
浅瀬を越えて一時間ほど進んだ俺達は、前方に岩をくり抜いたような形をしている大きな穴を発見した。あれが目的地である海竜の洞窟の入り口のようだ。
「ここですね。古い文献とリーダーから預かった資料の通りです。間違いないでしょう」
「よし、じゃあいつものように俺が先頭に立つ。アデルフィアはクレアの後ろだ。ディアベルは最後尾で警戒しててくれ」
「わかりました」
「承知した」
俺を先頭にシャリーが続き、その後にクレア、アデルフィア、ディアベルの順番だ。何かあった時のため、ドランにはアデルフィアについてもらっている。大概の敵ならドランのブレスで対処できるだろう。
洞窟の中は最深部が海に繋がっているだけあって、少し潮の匂いがする。それに苔が多くジメジメして、まるで熱帯雨林のような湿度の高さに辟易する。ガルシア王国のダンジョンなどより長居したくない環境だった。幸い複雑な分岐や罠などは無く、本当に自然に出来上がった洞窟のようだ。
人間にとっては不快な場所でも、それを好む生物や魔物は居るらしい。展開していたマップスキルに敵の反応が表れた。
ひたすら下に降りて行く一本道に近い形状の洞窟の奥から、上半身が鱗の生えた人の形で、下半身がタコの足という気持ち悪い魔物がこっちに向かって来た。その体に毛の類は一切なく、二つある眼も何処を見ているのかわからない。不気味な形状の存在だった。これも一応半魚人と言うべきなんだろうか?
その形状から動きが遅いと思われたが、足にある吸盤を巧みに使い、壁や天井などに飛び移りながら素早く迫って来る。その動きは立体的で、魚類というより蜘蛛に近い。
「うわ……気持ち悪い」
アデルフィアが顔をしかめながら呟いている。同感だが、今はこの敵を排除するのが先決だ。武器を構える俺達を見て、アデルフィアも慌てて自分の武器を構える。
グラン・ソラスに魔力を通し飛び出した俺のすぐ後にシャリーが続く。確認できる敵の数は五匹のみ。これならすぐに終わるだろう。
目前に迫った三匹の内、一匹の脳天に背後から飛んできた矢が突き刺さり、頭を爆散させる。敵が怯んだ隙を見逃さず、俺とシャリーがそれぞれ受け持った敵の首を間髪を容れずに斬り落とした。
「サラマンダー!」
ディアベルの召喚した炎の精霊サラマンダーが、後方の二体に向かってブレスを吐き出す。今召喚したサラマンダーは普段より立派な体格をしていて、そのブレスは通常の倍ほどの太さと速さがあった。狭い通路を覆いつくすような威力のブレスを吐かれては逃げ場などあるはずもなく、哀れ二体の半魚人は、一瞬で消し炭にされてしまった。
「……何もする暇が無かった……」
即座に敵を全滅させたので、アデルフィアは立っているだけで戦闘が終わってしまった。
それにしても今のディアベルは、随分と気合いが入っていたようだ。普段より強力なサラマンダーがその証拠だろう。久しぶりに会った妹に良いところを見せたかったのかもしれない。なかなか可愛いところがあるじゃないか。
「姉さん、火の精霊の影響力が少ない所であんな凄いのを喚び出すなんて、本当に強くなったのね!」
「う……うむ。それほどでもないが」
照れて顔を赤くしているディアベルを俺達はニヤニヤと眺める。普段冷静なディアベルにしては珍しい光景だから、自然と笑みがこぼれてしまうのだ。
「な、何だみんな! そんな顔で人を見るものではない!」
だがすぐに、笑ってばかりもいられなくなった。マップに特大の反応が表れたからだ。
この反応の大きさからして、海竜で間違いないだろう。マップ上ではまだ青い光点なので敵意は無いようだが、この後の交渉次第でどう転ぶかわからない。とりあえず、海竜不在で別の手を考えなければならない、という事態を避けられた事だけは喜んでいいだろう。
洞窟の最深部は海竜が棲めるだけあって、かなり広大な空間だった。外海と繋がっているらしい水を湛えた穴も見える。
その広い空間のちょうど真ん中辺りに、一匹の巨大な生物がとぐろを巻いて眠っていた。あれが海竜だろう。その姿は東洋の竜に近く、体は白銀の鱗で覆われていた。
俺達の接近に気が付いたのか、海竜はとぐろを解いて大きな体を持ち上げ始める。十分な高さを持つ洞窟なのに、それでも海竜が直立するのは無理なようで、体の半分ほどを持ち上げるにとどまった。
ファフニルと戦った時の威圧感によく似ている。これは戦闘になったら危ないかもな。
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