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2巻

2-2

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 道具袋から取り出した地図によると、このダンジョンの構造は下層に向かってほぼ一直線のゆるやかな下り坂になっている。階段が存在しないようなのだ。
 太い道が中心にあり、脇道がそこから枝分かれしている形は、地図上ではちょうど太い一本の大木が書かれているようだった。
 大木の一番先端でダンジョンマスターが出現したという記録があるが、指輪が何処にあるかは不明だ。と言うのも儀式の度に出現場所が変わるので、予測が出来ないらしい。面倒だが虱潰しらみつぶしに探索するしかない。
 俺達の少し前を、ディアベルが使役しえきするウィルオーウィスプが浮遊して、松明たいまつの代わりを務めてくれている。これは冒険者にとってかなりありがたい。
 そもそも松明はそれほど先まで照らせないし、片手が塞がってしまう。片手が使えないと、いざという時に盾や武器を構えるのが難しい。
 ウィルオーウィスプは、単純に周囲が明るくなる以上の恩恵を俺達パーティーに与えていた。
 マップに先行した冒険者達の反応は無く、代わりに敵を示す赤い光点が迫っていた。
 数は五匹。移動速度はあまり速くないので、十分に迎撃準備を整えられる。

「敵の反応だ。数は五、ディアベル、灯りを増やしてくれ。俺が前に出るからシャリーはその援護。クレアは敵が見えたら攻撃開始だ」
「了解した、主殿」
「は~い」
「わかりました、ご主人様」

 ディアベルが更に複数のウィルオーウィスプを召喚して、周囲を灯りで満たす。暗がりからの奇襲を避けるためだ。
 一人先行した俺の視界に、光に照らされた敵の姿がぼんやりと見えてきた。一見元の世界に居たコモドオオトカゲに似ていたが、あれとは違って全身が白い。顔はのっぺりとして目が無い。ペタペタと歩きながら、口からは先端が二つに分かれた長細い舌をペロペロと出し入れしている。コモドオオトカゲと違って獰猛どうもうさは感じないが、とてつもなく不気味な外見だった。

『白大蜥蜴とかげ:レベル28』

 まるで深海魚のように奇妙な姿だし、レベルも以前潜ったダンジョンの魔物より高い。それに毒の心配もある。コモドオオトカゲは噛み付いた獲物を仕留めるための毒を持っていたはずだ。こいつも同じとは限らないが、用心するに越したことは無い。

「みんな! こいつは毒があるかもしれない。噛まれないように気をつけろ!」

 仲間達がうなずくのを確認すると、俺は魔法を放つべくイメージを固めていく。新たにレベルが上がった『氷結魔法レベル2』を試してみよう。今回使うのは、今まで役に立たないので使わなかった吹雪を起こす魔法だ。ちなみに鋭い氷のかたまりを飛ばす魔法は、強化されて槍状に変化するようになっていた。
 射程に入った白大蜥蜴に向かって魔法を発動させると、俺の眼前で猛烈な吹雪が発生した。周囲の気温が一気に下がり、魔法の範囲外に居る俺達も寒さに震える。直撃を食らった蜥蜴達は爬虫類はちゅうるいだけあって冷気に弱いらしく、移動速度が極端に遅くなった。
 ノロノロと動く蜥蜴達に向けて、すかさずクレアが強弓を放ち、一匹を仕留める。それを合図に俺とシャリーは抜刀して斬りかかった。
 反撃しようとするも体の動きが鈍い蜥蜴の体に俺達の剣が突き刺さる。
 続いてディアベルの召喚したモグラに似た土の精霊ノームが、鋭い鉤爪かぎづめを振るって蜥蜴の一匹を切り裂いた。残りの一匹にクレアが第二射を放ちとどめを刺す。それであっけなく蜥蜴達は全滅した。
 俺達も力をつけているだけあって、これぐらいのレベルの敵なら難無く勝てるようになったな。
 新たに獲得した『経験値アップ:レベル3』の恩恵か、かなり下のレベルの敵を倒しただけなのに全員のレベルが上がっていた。


 ●エスト:レベル42
 『フロアマスター討伐』『不死殺し』
  HP 848/848
  MP 781/781
  筋力:レベル5(+4)
  知力:レベル4(+5)
  幸運:レベル1(+2)

 ▼所持スキル
 『経験値アップ:レベル3』『剣術:レベル4』
 ※隠蔽中のスキルがあります。

 新たなスキルを獲得できます。次の中から選んでください。

 『幸運アップ』
 『隠密:レベル2』

 ●クレア:レベル41
 『フロアマスター討伐』
  HP 591/591
  MP 210/210
  筋力:レベル4(+1)
  知力:レベル2(+1)
  幸運:レベル4(+1)

 ▼所持スキル
 『弓術:レベル4』『みかわし:レベル3』
 『剣術スキル:レベル3』『扇撃ち:レベル4』
 『強弓:レベル2』

 ●ディアベル:レベル38
 『フロアマスター討伐』
  HP 389/389
  MP 592/592
  筋力:レベル3(+1)
  知力:レベル4(+1)
  幸運:レベル3(+1)

 ▼所持スキル
 『精霊召喚(炎)(土)(風):レベル3』『剣術:レベル3』

 ●シャリー:レベル34
 『フロアマスター討伐』
  HP 381/381
  MP 120/120
  筋力:レベル4(+1)
  知力:レベル1(+1)
  幸運:レベル3(+1)

 ▼所持スキル
 『嗅ぎ分け:レベル2』『剣術:レベル3』
 『大跳躍:レベル1』『みかわし:レベル3』

 今回のレベルアップで、シャリーの『みかわし』がレベル3に上がっていた。
 俺はどんなスキルを獲得しようか? いい加減皆に比べて異常に低い『幸運』の値を何とかしたいが、今回は隠密のレベルを上げておく。一人での偵察も可能になるかもしれないしね。


 さあ、探索を続けよう。
 実際にダンジョンに潜ってから気がついたが、クロノワールの用意してくれた地図と俺のマップスキルを比べると、若干ではあるが差異があった。
 恐らくこの地図は、前回の儀式の時に作られたものなんだと思う。
 クロノワールの見た目が二十歳前後だから、その父親の歳となると四十~五十歳ぐらいか。て事は、この地図が作られたのは最低でも二十年から三十年前だろう。
 ダンジョンは内部の構造が頻繁ひんぱんに変化するから、現状でこの地図はあまり役に立ちそうに無い。加えて俺のマップスキルは、地形の把握は出来るが、重要なアイテムの位置までわかるほど便利なスキルでもない。
 虱潰しに調べるしかないと言っても、適当に目に付いた部屋を調べていては時間がいくらあっても足りない。
 となれば方法は限られてくる訳で、大通りを挟んだ右側か左側かを選んで、とにかく前進しながら、片側の部屋のみを順番に見て行くしかない。
 当たりハズレの予想などできない状況では、どちらを選んでも同じ気がする。運任せなので、ここは俺達の中で一番幸運の値が高いクレアに決めてもらう事にした。

「私が決めるんですか? ご主人様ではなく?」
「どっちが正解かわからないからさ。ここは運試しだからクレアに頼むよ。別に責任取れとか言わないし、軽く決めてくれれば良いよ」

 突然の提案に驚いたクレアは目を白黒させていた。軽く決めろとは言っても、クレアの性格からして重く受け止めてしまうんだろうな。案の定難しい顔をしてしばらく考え込んだ後、決断した。

「右側にしましょう。何となくこっちのほうが良い気がします」
「よしわかった。じゃあ右でいこう。皆もそれで良いな?」

 不満などあるはずもなくディアベルとシャリーが頷く。
 シャリーはニコニコしながら頷いていたので意味がわかってないっぽいな。でも可愛いから許す! 思わず無言で頭を撫で回すと、パタパタと尻尾を振って喜んでいた。
 まずダンジョンマスターを倒してから、ゆっくりとダンジョン内を探索する事も考えた。しかし勝てる保証もないし、ダンジョンマスターが弱ったところを皇子側の冒険者に出し抜かれたく無いしで探索を優先させた。
 しばらくは敵も出現しなかったので、俺達はひたすら小部屋に入っては出るという単調な作業を続けていた。なんだろう、なんかベルトコンベアーで流れてくる刺身にタンポポを載せてる気分になってきた。
 単調で退屈な作業のせいで、俺達の目から次第に光が失われていく。
 無心で探索していると、中央にこれみよがしに宝箱が置いてある部屋に辿り着いた。

「ごしゅじんさま、なんか箱があるよ」
「主殿、あれはもしや……」
「ご主人様……」

 皆の言いたいことはわかる。あれはどう見ても罠だろう。でもお宝の可能性もゼロではないので、一応調べてみる事にした。
 部屋の四方に視線を飛ばし、吹き矢などの飛び道具が飛んでくる穴が無いかチェックする。次は床のタイルの配置が不自然ではないか、色が変わっていたりしないかを注意深く観察した。
 部屋自体に罠は無さそうだ。って事は、宝箱自体が罠の可能性大だな。
 考えられるのは鍵穴に毒針がある仕掛けだ。不用意に鍵穴に針金を突っ込んだり覗いたりすると、針が飛び出してくる。
 他には、宝箱を開けると毒ガスが噴出したり爆発したりする罠もある。
 後はミミック――外見が宝箱そっくりで、うかつに近づいた冒険者を捕食する魔物である可能性だ。宝箱にしか見えないが柔軟性に富み、体をくねらせ飛び跳ねて移動する。
 攻撃力は極めて高く、生半可な実力の冒険者だと一撃で倒されるとか。しかも厄介な事に、ミミックは以前戦ったゴーレムと同じで、動き出すまでは敵味方の判定が出来ない。
 生憎あいにくと俺達には、本物の宝箱かミミックかを判定するスキルや魔法は無い。だがミミックの場合、体内にお宝が隠されている可能性が高いので倒したい。
 ならどうするか? 近寄らずに攻撃するのが一番確実だろう。
 他の罠の存在を考慮して、皆を後ろに下がらせた。俺は少し離れた位置から炎の槍をイメージして魔法を準備する。
 撃ち出す槍の数は一本だけ。本物の宝箱だった場合、内部のお宝まで破壊してしまう恐れがあるので、数を絞ったのだ。爆発魔法は威力が強すぎて使えないから、この辺が妥当だろう。

「よし!」

 覚悟を決めて宝箱に向けて炎の槍を放った。狙い違わず命中して宝箱は炎に包まれる。
 カタカタと震えるだけだったので、ミミックではなかったかと氷結魔法で消火しようとした瞬間、宝箱がバカッと口を開けて飛び掛ってきた。
 不意を衝かれて反応が遅れた俺は、噛みつかれる直前、咄嗟に盾をかざして防御した。
 ガキッという鈍い音がして、俺の盾をミミックの歯が貫通していた。

「うおおおお!?」

 ビックリした! 凄いビックリした!
 貫通したミミックの歯は、幸い腕に接触する部分ではなかったので怪我をする事は無かった。慌てて走り寄ってきた皆がミミックに対して攻撃を仕掛ける。
 盾に歯が食い込んで身動きの取れないミミックは、三人に立て続けに攻撃されて絶命した。噛み砕こうと盾を軋ませていたミミックの力が抜けて地面に落ちる。

「ご主人様、お怪我はありませんか!?」
「大丈夫。物凄ものすごく焦ったけどなんとか無事だよ」

 思わぬ奇襲を受けたが、その甲斐かいはあった。焼け焦げたミミックの体を調べると、綺麗な装飾が施された腕輪が出てきたのだ。邪悪な気配は感じないし、強い魔力を感知できる。
 サイズは少々小さめで、パーティーの中ではシャリー以外装備できそうになかった。
 危険は無いと判断し、シャリーに装備させてその場で飛んだり跳ねたりしてもらったものの、特に変化は見当たらない。
 攻撃力の強化なのかと思って、軽く手合わせをしてみた。
 さっきのミミック戦の経験値でまたレベルアップしたので、シャリーの攻撃は速さも力も向上している。だが、やはり腕輪の恩恵は感じられなかった。
 次に俺の方から攻撃してみると、その時初めて変化が現れた。横合いから軽く放った一撃が、シャリーに届く少し前の空間で、見えない何かに衝突したように弾かれたのだ。
 試しに違う部分に攻撃すると、同じく弾かれる。
 武器をしまってゆっくりとシャリーに手を伸ばすと、いつものように普通に触ることが出来た。

「ふむ……」
「防御のための腕輪という事か?」
「凄く便利なアイテムですね」

 ディアベルとクレアの言うとおり、この腕輪には装備している人間を守ってくれる効果があるようだ。確かに凄いアイテムだが……良い事ばかりではなかった。
 シャリーのステータスを見てみると、普段から使うことも無くいつも満タン状態のMPが20も減っている。今の軽い手合わせで二回防御したから、一回攻撃を防ぐ毎にMPを10消費するようだ。
 あまりMPに余裕の無いシャリーからすれば、結構厳しいかもしれないな。
 だが俺達がフォローすれば、MP切れで気絶する事態は回避できるに違いない。
 さて、今回のレベルアップでステータスがどう変化したか見てみよう。


 ●エスト:レベル43
 『フロアマスター討伐』『不死殺し』
  HP 869/869
  MP 803/803
  筋力:レベル5(+4)
  知力:レベル4(+5)
  幸運:レベル1(+2)

 ▼所持スキル
 『経験値アップ:レベル3』『剣術:レベル4』
 ※隠蔽中のスキルがあります。

 新たなスキルを獲得できます。次の中から選んでください。

 『幸運アップ』
 『電撃魔法:レベル1』

 ●クレア:レベル42
 『フロアマスター討伐』
  HP 609/609
  MP 221/221
  筋力:レベル4(+1)
  知力:レベル2(+1)
  幸運:レベル4(+1)

 ▼所持スキル
 『弓術:レベル4』『みかわし:レベル3』
 『剣術スキル:レベル3』『扇撃ち:レベル4』
 『強弓:レベル2』

 ●ディアベル:レベル39
 『フロアマスター討伐』
  HP 399/399
  MP 618/618
  筋力:レベル3(+1)
  知力:レベル4(+1)
  幸運:レベル3(+1)

 ▼所持スキル
 『精霊召喚(炎)(土)(風):レベル3』『剣術:レベル3』

 ●シャリー:レベル35
 『フロアマスター討伐』
  HP 392/392
  MP 110/130
  筋力:レベル4(+1)
  知力:レベル1(+1)
  幸運:レベル3(+1)

 ▼所持スキル
 『嗅ぎ分け:レベル2』『剣術:レベル3』
 『大跳躍:レベル1』『みかわし:レベル3』

 今回は『電撃魔法:レベル1』を獲得する事にした。
 罠に対して有効な魔法でも覚えられると更によかったんだが、雷系統の魔法を使えるようになったのは素直に嬉しい。まるで本物の勇者みたいじゃないか。
 次に敵と遭遇する前に、このミミックの部屋がちょうどいい広さなので、さっそく試してみよう。
 すると他の系統と同様に、何種類かタイプの違う攻撃魔法が確認できた。
 まず一つ目、俺の眼前から一筋の雷光を放つタイプ。標準の射程は十メートルくらいだろうか。威力を落とすと更に射程を延ばせたが、それでも倍の二十メートルぐらいが限界だった。
 これ以上だと当たっても効果が望めそうもないので、実戦では使えない。
 次に、自分を中心にして何本かの雷を落とすタイプ。どうやら敵味方の識別ができるようだ。
 なぜわかったかと言えば、この魔法を不用意に唱えた時、俺のすぐ側にいたクレア達を勝手に避けてくれたからだ。

「きゃっ!?」
「ごしゅじんさまがシャリーの事いじめる……」
「主殿……! 不注意だぞ!」

 クレアは驚いただけだったけど、シャリーは尻尾を丸めて怯えてしまい、ディアベルには滅茶苦茶怒られた。俺が悪いんだから頭を下げるしかなかった。

「ち、違う違う! ワザとじゃないんだよ!」

 二人の機嫌を直すのに一苦労したが、気を取り直して検証を続けよう。
 確認できた最後の一つは、自分の体の一部に雷を纏わせて攻撃する方法だ。素手の状態でも使えるし、剣に纏わせる事も出来る。それだけでなく、足や胴体、頭にも纏わせる事ができた。
 なぜ自分が感電しないのかわからないが、魔法発動中は体全体が絶縁体ぜつえんたいのような物で保護されているのかもしれない。手だけ光るなら、何とかフィンガーという技名をつけるところだったのに。おしい。
 以上の三パターンが確認できた。それにしても、使えるスキルを手に入れたもんだ。戦術の幅が大きく広がるだろう。
 魔法の検証も終わったので探索を再開する。ダンジョンが広いので時間がかかってしょうがない。
 二十部屋くらいの調査が終わった。既に探索開始から半日は経過しているだろうか?
 歩き続けたことで疲労も蓄積している。クレア達もダンジョン内に入った時より口数が少なくなっているし、そろそろ休憩を考えるべきか?
 だが、まだ四分の一も進んでいない。マップスキルで全ての部屋を把握する事は出来ないが、大体の数ならわかる。先の事を考えるとウンザリするな。
 キリが良いのであと五つ部屋を探索したら食事休憩としよう。
 一つ二つと順調に終わらせ、後一つ、というところで敵の反応が現れた。中から出てくる気配は無いので戦闘準備をしてから突入する事にする。
 ドアの両脇にそれぞれ俺とシャリー、ディアベルとクレアが配置に就く。ディアベルに合図を送ると、彼女が部屋のドアを蹴破った。
 すかさず俺が身を乗り出し、部屋の中に爆発魔法の光球を放つ。サッとドアの脇に身を隠すと、炸裂音と爆風が猛烈な勢いでドアから吹き出してきた。
 間髪入れずに抜刀して部屋になだれ込む。気分は特殊部隊の隊員だ。「FBI!!」というやつだ。
 部屋に居るのが人間なら、これで制圧が完了して「お前には弁護士を呼ぶ権利があーる!」と叫ぶところだが、中に居たのは生物ですらなかった。それはいびつな形のブリキ缶を、人の形に無理に繋げたようなガラクタの塊に見えた。俺達が突入した事で起動したのか、カタカタと音を立てながら素早く襲い掛かってきた。

『ブリキゴーレム:レベル33』

 さっきの爆発の影響か、ゴーレムは左腕がもげて右腕一本になっている。体全体も所々へこんでいるから、かなりのダメージを負っているはずだ。にもかかわらず、まるでダメージなど感じさせない動きで、剣状になっている腕を振り上げ鋭い斬撃を浴びせてきた。
 攻撃を避けた俺達はばらばらに散らばると、まず敵の足を止めるために遠距離攻撃を始める。

「ノームよ! 奴の動きを止めろ!」
「これでどうです!」

 ディアベルの土魔法で土の縄を作り拘束しようとしたが、簡単に切り裂かれた。クレアの強弓も相手が生物でないために、刺さったところで決定打にはなりにくい。

「やああ!」

 シャリーが接近して二刀流で斬りかかる。少し遅れて俺も続く。手数の多さでゴーレムを圧倒するシャリーだが、いかんせんパワーが足りない。ゴーレムの鋭い一撃を受け止めようとして、体ごと跳ね飛ばされてしまった。

「シャリー!?」
「だ、だいじょうぶだよ!」

 振り下ろされた追撃は、体に当たる直前で腕輪の見えない盾が自動発動し防いだようだ。
 そこに走りこんだ俺が斬りかかる。片腕一本で防御するゴーレム。なかなか速いが俺程ではない。このまま攻撃を続けても勝てそうだが、油断せずに早めに終わらせる事にした。

「これでもくらえ!」

 さっき覚えたばかりの電撃魔法を剣に纏わせ、斬撃を受け止めたゴーレムの体内に流し込んだ。
 電撃を喰らったゴーレムは体を激しく痙攣けいれんさせて動きを止める。
 俺はすかさず首と胴を切り裂いてとどめを刺した。
 使ってみて実感したが、やはりこの電撃魔法は接近戦で絶大な威力を発揮するな。並大抵の相手には負ける気がしない。
 ゴーレムの体内からは赤く光る魔石が獲れた。なかなかの純度だから売値にも期待できる。ちなみに白大蜥蜴からは少し小さめの魔石が獲れたが、ミミックからは何も出なかった。たぶんお宝自体がミミックの核になっているんだろう。

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