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連載
第367話 破壊工作する勇者
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男達に案内された場所は、建物と建物の間にボロ布を張って雨だけを防ぐ簡易式のテントだった。ヒビが入った木製のテーブルはあるものの、椅子が無いのか何かの木箱で代用していた。リーダー格の男はその内の一つに座り、早速本題を切り出して来た。
「それで、俺達に頼みたい仕事ってのは何だ?」
「情報収集を頼みたい。この街にある重要拠点…例えば軍の集積所の詳しい場所だとか、軍の構成だとか。不正に弱かったり金に汚かったりする役人の名前だとかだ。出来るか?」
俺の申し出に男はしばらく考え込む。スラムのゴロツキ程度にわかる内容ではないと思うが、蛇の道は蛇とも言うし、何処で誰が繋がっているかわかった物じゃない。試してみる価値は十分ある。
「絶対とは言い切れねえが、仲間に頼めばある程度の事はわかると思う。しかし…なんだってそんな事を知りたいんだ?」
当たり前だが男達が不審な目を向けてくる。そりゃこんな事を聞きたい奴なんか、これからテロをやりますって言ってるようなものだからな。警戒したくなるだろう。
「…あんた達…ひょっとして魔王様に反逆でもするつもりか?」
男が発した言葉に取り巻き達が緊張する。ここで否定するのは簡単だが、俺はここが勝負所だと直感した。一応敬称はつけているものの、なぜか男達は魔王を支持していないように思えたのだ。失敗するとこの連中で情報収集をする案がパアになるが、上手くいけば情報収集よりも便利に使える手駒が手に入るかも知れない。
「…今の魔王は一部の者を厚遇し、ここに居る様な人々の存在を無かった事にしている。俺はその現状を変えねばならないと考えているんだ」
俺の言葉に男達は咄嗟に周囲を警戒した。魔族領で魔王批判をすると言う事の意味は部外者である俺にも簡単に想像がつく。独裁軍事国家の指導者が自身に批判的な人種を生かしておく訳がないのだ。それだけに、今の俺の言葉に男達が焦りを浮かべたのは当然だったろう。
「本気かよ…?だが、ハッタリでそんな事を言うには度胸があり過ぎるな。確認しておくが、あんた達は最近貧民街の人間に協力を求めている奴等の仲間じゃないんだよな?」
「…どう言う事だ?」
「知らないのか?最近どっかの魔族が私兵を集めているってんで、貧民街の住民に声をかけて回ってる奴が居るんだよ。何の目的でそんな事してるのかわからなかったから、てっきりあんた達がそいつの仲間だと思ったんだけどな…」
私兵を集める魔族?一体何の目的でそんな事をしてるんだろうか。南に侵攻する為なら魔物頼りだろうし、あえて私財を投入してまで私兵を集める必要があるとも思えない。ひょっとして…そっちが反逆の本命じゃないのか?これは調べる必要があるな。
「いや、俺達は違うな。ついでにそいつらの事も調べておいてもらえるか?目的がわかれば報酬を弾む。どれぐらいで調べられそうだ?」
「そうだな…三、四日もあればある程度の事はわかると思うが」
「ならその時にまた来る。今度は金と食料を持って来よう」
話は終わりだとばかりに席を立つ俺達に、男は慌てたように立ち上がった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。まだあんたの名前も聞いてないんだ。それぐらい聞かせてくれてもいいだろう?」
なるほど。そう言えば一度も名乗った覚えがない…エストって名前をそのまま名乗る訳にもいかないだろうし…適当に名乗るとするか。
「ズーマー、俺の名はズーマーだ」
「俺はホベロだ。ところで、どうやって食料を持ってくる気なんだ?」
「俺は転移が使えるからな。四日後、ここに直接現れる。じゃあ頼んだぞ」
そう言い残し、俺達は転移でグラン・ソラス城まで戻ってきた。指輪の変身を解き、全員でホッと息を吐く。トラブルが起きても力ずくで切り抜けられるとは言え、どうしても緊張してしまうからな。それにそろそろ指輪の効果時間が切れそうだったのでちょうどよかった。ホッとしたのも束の間、交渉中に我慢していたディアベルが早速質問してきた。
「主殿、あの連中を使って何を企んでいるんだ?」
「情報収集は最低限やってもらいたいな。軍事拠点がわかれば侵攻が始まった時点で破壊して混乱させるつもりだよ。連中の言ってた私兵を集めてる奴等が魔王に反意を持っているなら、密かに支援して魔族領を混乱させる」
要は前世の欧米のやり方を真似しようと言う訳だ。反乱勢力が魔王に勝つ必要などない。出来る限り戦力を均衡にして、共に潰し合ってくれればこちらとしては万々歳だ。ありえないとは思うが、万が一反乱勢力が勝ってしまった場合のみ注意しなければならない。アルカイダを支援して後に裏切ったアメリカのように、国内でテロをやられるようなしっぺ返しは避けたいからな。支援するなら最後まで。裏切るなら皆殺しが前提だ。
「考えたな主殿。確かにそれならこちら側の被害は少なくなりそうだ」
「まあこれぐらいなら誰でも思いつくと思うけどね」
でもまあ、咄嗟の思い付きにしては良い線いっていると思う。必要になるかどうか今のところハッキリしないものの、中古の武器などを集めていた方が良いかも知れない。武器が無ければ反乱どころじゃないからな。早速ルシノアに相談して、その辺の手配をしておこう。四日などすぐに過ぎるのだから。
「それで、俺達に頼みたい仕事ってのは何だ?」
「情報収集を頼みたい。この街にある重要拠点…例えば軍の集積所の詳しい場所だとか、軍の構成だとか。不正に弱かったり金に汚かったりする役人の名前だとかだ。出来るか?」
俺の申し出に男はしばらく考え込む。スラムのゴロツキ程度にわかる内容ではないと思うが、蛇の道は蛇とも言うし、何処で誰が繋がっているかわかった物じゃない。試してみる価値は十分ある。
「絶対とは言い切れねえが、仲間に頼めばある程度の事はわかると思う。しかし…なんだってそんな事を知りたいんだ?」
当たり前だが男達が不審な目を向けてくる。そりゃこんな事を聞きたい奴なんか、これからテロをやりますって言ってるようなものだからな。警戒したくなるだろう。
「…あんた達…ひょっとして魔王様に反逆でもするつもりか?」
男が発した言葉に取り巻き達が緊張する。ここで否定するのは簡単だが、俺はここが勝負所だと直感した。一応敬称はつけているものの、なぜか男達は魔王を支持していないように思えたのだ。失敗するとこの連中で情報収集をする案がパアになるが、上手くいけば情報収集よりも便利に使える手駒が手に入るかも知れない。
「…今の魔王は一部の者を厚遇し、ここに居る様な人々の存在を無かった事にしている。俺はその現状を変えねばならないと考えているんだ」
俺の言葉に男達は咄嗟に周囲を警戒した。魔族領で魔王批判をすると言う事の意味は部外者である俺にも簡単に想像がつく。独裁軍事国家の指導者が自身に批判的な人種を生かしておく訳がないのだ。それだけに、今の俺の言葉に男達が焦りを浮かべたのは当然だったろう。
「本気かよ…?だが、ハッタリでそんな事を言うには度胸があり過ぎるな。確認しておくが、あんた達は最近貧民街の人間に協力を求めている奴等の仲間じゃないんだよな?」
「…どう言う事だ?」
「知らないのか?最近どっかの魔族が私兵を集めているってんで、貧民街の住民に声をかけて回ってる奴が居るんだよ。何の目的でそんな事してるのかわからなかったから、てっきりあんた達がそいつの仲間だと思ったんだけどな…」
私兵を集める魔族?一体何の目的でそんな事をしてるんだろうか。南に侵攻する為なら魔物頼りだろうし、あえて私財を投入してまで私兵を集める必要があるとも思えない。ひょっとして…そっちが反逆の本命じゃないのか?これは調べる必要があるな。
「いや、俺達は違うな。ついでにそいつらの事も調べておいてもらえるか?目的がわかれば報酬を弾む。どれぐらいで調べられそうだ?」
「そうだな…三、四日もあればある程度の事はわかると思うが」
「ならその時にまた来る。今度は金と食料を持って来よう」
話は終わりだとばかりに席を立つ俺達に、男は慌てたように立ち上がった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。まだあんたの名前も聞いてないんだ。それぐらい聞かせてくれてもいいだろう?」
なるほど。そう言えば一度も名乗った覚えがない…エストって名前をそのまま名乗る訳にもいかないだろうし…適当に名乗るとするか。
「ズーマー、俺の名はズーマーだ」
「俺はホベロだ。ところで、どうやって食料を持ってくる気なんだ?」
「俺は転移が使えるからな。四日後、ここに直接現れる。じゃあ頼んだぞ」
そう言い残し、俺達は転移でグラン・ソラス城まで戻ってきた。指輪の変身を解き、全員でホッと息を吐く。トラブルが起きても力ずくで切り抜けられるとは言え、どうしても緊張してしまうからな。それにそろそろ指輪の効果時間が切れそうだったのでちょうどよかった。ホッとしたのも束の間、交渉中に我慢していたディアベルが早速質問してきた。
「主殿、あの連中を使って何を企んでいるんだ?」
「情報収集は最低限やってもらいたいな。軍事拠点がわかれば侵攻が始まった時点で破壊して混乱させるつもりだよ。連中の言ってた私兵を集めてる奴等が魔王に反意を持っているなら、密かに支援して魔族領を混乱させる」
要は前世の欧米のやり方を真似しようと言う訳だ。反乱勢力が魔王に勝つ必要などない。出来る限り戦力を均衡にして、共に潰し合ってくれればこちらとしては万々歳だ。ありえないとは思うが、万が一反乱勢力が勝ってしまった場合のみ注意しなければならない。アルカイダを支援して後に裏切ったアメリカのように、国内でテロをやられるようなしっぺ返しは避けたいからな。支援するなら最後まで。裏切るなら皆殺しが前提だ。
「考えたな主殿。確かにそれならこちら側の被害は少なくなりそうだ」
「まあこれぐらいなら誰でも思いつくと思うけどね」
でもまあ、咄嗟の思い付きにしては良い線いっていると思う。必要になるかどうか今のところハッキリしないものの、中古の武器などを集めていた方が良いかも知れない。武器が無ければ反乱どころじゃないからな。早速ルシノアに相談して、その辺の手配をしておこう。四日などすぐに過ぎるのだから。
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