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第359話 リーベの力
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リオグランド王城まで戻ると、フォルザ達はなかなか帰って来ない俺に痺れを切らしたのか、各自思い思いの姿勢で体を休めていた。フォルザは座った姿勢で腕を組みながら瞑目している。アミスターは机に突っ伏して寝息を立てているし、グリトニルの文官は眠気に抗っているのか、うつらうつらと舟をこいでいた。唯一起きていたのはティグレだけだ。彼女は窓辺で優雅にお茶を飲みながら、戻ってきた俺に気がつくとヒラヒラと手を振った。
「お帰りエスト君。随分時間がかかったようだけど…その前にそちらの二人を紹介してもらっていいかな?」
「ええ。でもその前に、全員起こす必要がありますね」
俺はその場で素早く魔力を練り上げ、極小の爆発魔法を作り上げて破裂させる。爆竹程度の音が室内に響き渡り、寝ていた連中が慌てて起き上がった。
「な、なんだ!?」
「…いつのまにか寝てしまっていたか…む、エスト。戻ったのだな。その二人は?」
「紹介します。こちらはリヴァイアサンのリーベさんと、その娘であり俺の妹でもあるレヴィアです。二人は今回の件で重要な役割を担ってもらうため、俺が連れて来ました」
どう見ても姉妹ぐらいにしか見えない二人を見て、紹介された面子は口をポカンと開けていた。誰もが振り返るような美女と美少女が海の支配者リヴァイアサンだと言われても、普通は即座に理解できない。唯一この中でアミスターだけがレヴィアと面識があるが、その母親のリーベは完全に初対面だろう。
「みなさん初めまして。私の名はリーベ。よろしくお願いしますね」
「レヴィアよ!よろしく頼むわ!」
相手が誰であろうと大らかな態度のリーベと、強気のレヴィア。二人の異質さにやや気圧され気味だったフォルザ達だったが、そこは一国を代表する人物だけあって、すぐに態度を改め挨拶をよこした。
「お初にお目にかかる。私はこのリオグランドの第一王子フォルザと申す者。大海の支配者であるリーベ殿と、その娘レヴィア嬢に出会えたのは光栄の至り、今後ともよろしくお願いしたい」
「俺はアミスター。ファータの代表だ。レヴィアの嬢ちゃんは久しぶりだな。あの時は世話になった。リーベさん、あんたの娘さんにはファータが随分世話になったんだ。みんな感謝してるよ」
「私の名はティグレ。そこのフォルザの妹です。リーベさんもレヴィアちゃんも、エスト君の身内なら、それほど礼儀には煩くなさそうだよね。これからよろしくね」
「初めまして。私はグリトニル聖王国の…」
あと一人グリトニルの文官が名乗っていたようだが、興味がないのでそこは割愛しよう。お互いに挨拶を済ませ、レヴィアとリーベの二人を空いている席に腰かけさせた後、俺は彼女達を連れて来た経緯とその目的について語り始めた。
「あの後シーティオのフォルティス公爵を尋ねたんですが…」
会議の後公爵を訪ねて鎧の技術提供を申し入れたものの、導入したところで理が無いとわかり、その後公爵の助言に従ってレヴィアとリーベの力を借りる事にするまでの説明を終えると、フォルザ達は自分の頭を抱え込んでしまった。
「確かにお二方の言う通り、防壁の前に堀を造るのは当たり前の発想だったな…」
「盲点と言うか…なんでそんな当たり前の事に気がつかなかったんだ…?」
「疲れで判断が鈍ったと思いたいわね。でなきゃ私達馬鹿みたいだし」
わかる。わかるぞその気持ち。俺も指摘された時は恥ずかしさでどうにかなりそうだったしな。まあそれはともかく、これで会議の参加者には二人を連れて来た理由が理解できた。後は具体的にどう協力してもらうかの協議だ。
俺達の注目が集まった事でレヴィアは居心地悪そうにしているが、リーベは相変わらず穏やかな笑みを浮かべて余裕の態度だ。こちらから話を振ろうかと口を開きかけたその時、それを制するように彼女が話し始めた。
「結論から言うと、エスト君の提案は可能です。私達の力を使えば水を自在に操る事が出来るわ。それが湖の水であろうが、海の水であろうがね。ただ、私達に出来るのはあくまでも水を操る事だけ。掘っても居ない堀に水を張る事は出来ないから、誰かが事前に水堀を掘る必要があるの。掘りさえ出きれば後は簡単。ただそこに水をためておく事もできるし、海に繋がっているのであれば、流れを固定して川の様にも出来る」
彼女達の力なら何もない場所でも川の様に出来るのかと単純に考えていたのだが、そこまで簡単な話では無かったようだ。
「流れを固定とは…例えば低所から高所へも可能と言う事ですかな?」
「そうよ。私かレヴィアが解除しない限り、その流れは永遠に続く事になる」
「それはなんとも…」
「凄まじい力ね…」
重力を無視した力を永遠に続けられるとは、俺が思っていた以上にリーベの力は凄いものだったらしい。伊達に数千年も生きていないと言う訳か。だが今のリーベの発言のおかげで、水堀造りはそう困難な事ではなさそうだと予想できた。なにせ地形の高低差を考えなくていいのだ。大陸の端から端まで水堀を掘れば、後は勝手に敵を阻む障害となってくれるだろう。
「じゃあ、水堀造りは俺とディアベルの二人で行うよ。壁の向こう側だと万が一敵が襲撃した時、転移を使える俺達なら逃げる事が可能だし。二人には堀が完成してから手伝ってもらうって事でいいかな?」
「ええ、それでいいわ」
「任せて兄様!私と母様なら余裕よ!」
二人の了解も得た事だし、これで方針は決定した。早速明日から水堀造りに励むとしよう。
「お帰りエスト君。随分時間がかかったようだけど…その前にそちらの二人を紹介してもらっていいかな?」
「ええ。でもその前に、全員起こす必要がありますね」
俺はその場で素早く魔力を練り上げ、極小の爆発魔法を作り上げて破裂させる。爆竹程度の音が室内に響き渡り、寝ていた連中が慌てて起き上がった。
「な、なんだ!?」
「…いつのまにか寝てしまっていたか…む、エスト。戻ったのだな。その二人は?」
「紹介します。こちらはリヴァイアサンのリーベさんと、その娘であり俺の妹でもあるレヴィアです。二人は今回の件で重要な役割を担ってもらうため、俺が連れて来ました」
どう見ても姉妹ぐらいにしか見えない二人を見て、紹介された面子は口をポカンと開けていた。誰もが振り返るような美女と美少女が海の支配者リヴァイアサンだと言われても、普通は即座に理解できない。唯一この中でアミスターだけがレヴィアと面識があるが、その母親のリーベは完全に初対面だろう。
「みなさん初めまして。私の名はリーベ。よろしくお願いしますね」
「レヴィアよ!よろしく頼むわ!」
相手が誰であろうと大らかな態度のリーベと、強気のレヴィア。二人の異質さにやや気圧され気味だったフォルザ達だったが、そこは一国を代表する人物だけあって、すぐに態度を改め挨拶をよこした。
「お初にお目にかかる。私はこのリオグランドの第一王子フォルザと申す者。大海の支配者であるリーベ殿と、その娘レヴィア嬢に出会えたのは光栄の至り、今後ともよろしくお願いしたい」
「俺はアミスター。ファータの代表だ。レヴィアの嬢ちゃんは久しぶりだな。あの時は世話になった。リーベさん、あんたの娘さんにはファータが随分世話になったんだ。みんな感謝してるよ」
「私の名はティグレ。そこのフォルザの妹です。リーベさんもレヴィアちゃんも、エスト君の身内なら、それほど礼儀には煩くなさそうだよね。これからよろしくね」
「初めまして。私はグリトニル聖王国の…」
あと一人グリトニルの文官が名乗っていたようだが、興味がないのでそこは割愛しよう。お互いに挨拶を済ませ、レヴィアとリーベの二人を空いている席に腰かけさせた後、俺は彼女達を連れて来た経緯とその目的について語り始めた。
「あの後シーティオのフォルティス公爵を尋ねたんですが…」
会議の後公爵を訪ねて鎧の技術提供を申し入れたものの、導入したところで理が無いとわかり、その後公爵の助言に従ってレヴィアとリーベの力を借りる事にするまでの説明を終えると、フォルザ達は自分の頭を抱え込んでしまった。
「確かにお二方の言う通り、防壁の前に堀を造るのは当たり前の発想だったな…」
「盲点と言うか…なんでそんな当たり前の事に気がつかなかったんだ…?」
「疲れで判断が鈍ったと思いたいわね。でなきゃ私達馬鹿みたいだし」
わかる。わかるぞその気持ち。俺も指摘された時は恥ずかしさでどうにかなりそうだったしな。まあそれはともかく、これで会議の参加者には二人を連れて来た理由が理解できた。後は具体的にどう協力してもらうかの協議だ。
俺達の注目が集まった事でレヴィアは居心地悪そうにしているが、リーベは相変わらず穏やかな笑みを浮かべて余裕の態度だ。こちらから話を振ろうかと口を開きかけたその時、それを制するように彼女が話し始めた。
「結論から言うと、エスト君の提案は可能です。私達の力を使えば水を自在に操る事が出来るわ。それが湖の水であろうが、海の水であろうがね。ただ、私達に出来るのはあくまでも水を操る事だけ。掘っても居ない堀に水を張る事は出来ないから、誰かが事前に水堀を掘る必要があるの。掘りさえ出きれば後は簡単。ただそこに水をためておく事もできるし、海に繋がっているのであれば、流れを固定して川の様にも出来る」
彼女達の力なら何もない場所でも川の様に出来るのかと単純に考えていたのだが、そこまで簡単な話では無かったようだ。
「流れを固定とは…例えば低所から高所へも可能と言う事ですかな?」
「そうよ。私かレヴィアが解除しない限り、その流れは永遠に続く事になる」
「それはなんとも…」
「凄まじい力ね…」
重力を無視した力を永遠に続けられるとは、俺が思っていた以上にリーベの力は凄いものだったらしい。伊達に数千年も生きていないと言う訳か。だが今のリーベの発言のおかげで、水堀造りはそう困難な事ではなさそうだと予想できた。なにせ地形の高低差を考えなくていいのだ。大陸の端から端まで水堀を掘れば、後は勝手に敵を阻む障害となってくれるだろう。
「じゃあ、水堀造りは俺とディアベルの二人で行うよ。壁の向こう側だと万が一敵が襲撃した時、転移を使える俺達なら逃げる事が可能だし。二人には堀が完成してから手伝ってもらうって事でいいかな?」
「ええ、それでいいわ」
「任せて兄様!私と母様なら余裕よ!」
二人の了解も得た事だし、これで方針は決定した。早速明日から水堀造りに励むとしよう。
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