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第358話 見落とし
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城に戻った俺は、早速レヴィア達を探すために城内を歩き回った。だが行けども行けども一向に彼女達の姿が見えない。買い物にでも行っているのかと思っていると、ちょうど通りかかったドロシーとノアの魔法使いコンビが教えてくれた。
「レヴィアならリーベさんと城を出ましたよ」
「畑の様子を見てくると言っていたような」
「そっか、ありがとう」
二人に礼を言って城外にある畑に足を向ける。それにしても畑の様子を見る…か。これが台風の時なら死亡フラグが立ってるかもな。そんな事を考えつつ畑に辿り着くと、そこでは多くの人が農作業に精を出していた。来るべき魔族との戦いに向けて、領地を上げて作物の栽培を奨励しているためだ。作業する大部分が地元の農民だが、非番な筈の女の子達の姿もある。自主的に頑張ってくれているのだろう。その中に他の人と同じような、よく言えば動きやすく、悪く言えば野暮ったい格好をしたレヴィアとリーベの姿があった。
「あ、兄様~!」
俺に気がついたレヴィアが元気いっぱいに手を振る。手を上げてそれに応え二人の下に近寄ると、二人はかごに入れたいくつかの野菜を手に取りながら俺に差し出して来た。
「見て見て兄様、私と母様が収穫したのよ!」
「おお、結構育ってるな。レヴィアがちゃんと世話したおかげだな」
褒められた事が嬉しいのか、レヴィアは無邪気な笑みを浮かべていた。リーベがこの城に来てからと言うもの、レヴィアは前に比べて随分活動的になったと思う。精神的な支柱が側に居る為か社交的になり、何にでも興味を示すようになった。この農作業もそうだ。以前はただ城から眺めていただけだが、自らやりたいと言い出したのだ。
「ところでエスト君、何か私達に用があったんじゃないの?」
無邪気に笑う娘を穏やかな表情で見つめていたリーベが、俺に話を促す。流石に年の功と言うか、俺が用もなく訪れるとは思っていないようだ。歳の事を言うと殺されるかも知れないから絶対口にしないが。
「実は二人に頼みたい事があるんだ。今光竜連峰との境目で防壁造りをやってるのは二人とも知ってるだろうけど、そこに魔物達が襲撃して来てね。その事で二人に相談したい」
「うんわかった!私も手伝う!」
「早いな!とりあえず先に話だけでもさせてくれ」
俺の頼みなら無条件で引き受けてくれるレヴィアにリーベが苦笑していた。場所を城内の食堂に変えて、メイド達にお茶を用意してもらう。防壁造りや農作業で疲れた体に染み渡る芳醇な香りを楽しみながら、俺は話始めた。
「実は、防壁の近くに水路を造ろうと考えているんだ」
二人にこれまでの経緯を話す。魔物の襲撃や地下からの侵攻に対する対処方法、公爵の提案で二人の力を借りたい事などだ。俺の話が終わると二人は顔を見合わせる。そして不思議そうにこちらを見てくるのだ。…俺、自分で気がつかない内に何か変な事言ったんだろうか?
「兄様、それって…」
「エスト君。今の話しで気がついた事があるんだけど…わざわざ水路を防壁の後ろに造る必要があるのかしら?」
「え?どういう事?」
彼女達の言ってる意味が解らず必死で考えを巡らせるが、次第に頭が混乱してきた。地下から出てくる敵に対して、水攻めは有効な策じゃないのか?それとも水は駄目だとか?
「水より油とかの方が良い…のかな?燃やした方が効果的とか?」
「ううん、そこじゃなくて」
「どこから出てくるか解らない敵に水を流し込む準備をするより、あらかじめ防壁の前に深い堀を用意しておいて、そこに水を張ればいいんじゃないかしら?それこそ城の水堀みたいに」
「あ!」
なるほど!言われてみれば当然の発想だった。確かに彼女達の言う通りの対処法をとっておけば、地下からの攻撃を防ぐとともに防壁の防御力も飛躍的に向上する。水があれば防壁に取りつく事すら不可能になるじゃないか。なんでそんな当たり前の事を今まで思いつかなかったんだろう…俺を含むフォルザ達会議の参加メンバーは、少々おつむが足りなかったらしい。
「言われるまで気がつかなかった。二人とも頭いいなぁ」
「えへへ、褒められちゃった」
「きっと疲れが溜まってたのよ。エスト君は色々働き過ぎだもの」
慰めてくれるのは嬉しいが、俺は自分の間抜けぶりに顔が赤くなりそうだった。だが二人のおかげで防壁の欠点はかなり改善されることになる。これは素直に喜ぶべきだろう。
「じゃあ早速行きましょうか。私とレヴィアの力があれば、湖から水を移動させる事ぐらい簡単よ。それが無理でも他の方法があるしね」
どうやらリーベも協力してくれるようだ。海の支配者リヴァイアサンの親子が協力してくれるのだから、間違いなく上手くいく。俺は二人の手を取りしっかり握りしめると、フォルザ達の待つリオグランド王城に転移した。
「レヴィアならリーベさんと城を出ましたよ」
「畑の様子を見てくると言っていたような」
「そっか、ありがとう」
二人に礼を言って城外にある畑に足を向ける。それにしても畑の様子を見る…か。これが台風の時なら死亡フラグが立ってるかもな。そんな事を考えつつ畑に辿り着くと、そこでは多くの人が農作業に精を出していた。来るべき魔族との戦いに向けて、領地を上げて作物の栽培を奨励しているためだ。作業する大部分が地元の農民だが、非番な筈の女の子達の姿もある。自主的に頑張ってくれているのだろう。その中に他の人と同じような、よく言えば動きやすく、悪く言えば野暮ったい格好をしたレヴィアとリーベの姿があった。
「あ、兄様~!」
俺に気がついたレヴィアが元気いっぱいに手を振る。手を上げてそれに応え二人の下に近寄ると、二人はかごに入れたいくつかの野菜を手に取りながら俺に差し出して来た。
「見て見て兄様、私と母様が収穫したのよ!」
「おお、結構育ってるな。レヴィアがちゃんと世話したおかげだな」
褒められた事が嬉しいのか、レヴィアは無邪気な笑みを浮かべていた。リーベがこの城に来てからと言うもの、レヴィアは前に比べて随分活動的になったと思う。精神的な支柱が側に居る為か社交的になり、何にでも興味を示すようになった。この農作業もそうだ。以前はただ城から眺めていただけだが、自らやりたいと言い出したのだ。
「ところでエスト君、何か私達に用があったんじゃないの?」
無邪気に笑う娘を穏やかな表情で見つめていたリーベが、俺に話を促す。流石に年の功と言うか、俺が用もなく訪れるとは思っていないようだ。歳の事を言うと殺されるかも知れないから絶対口にしないが。
「実は二人に頼みたい事があるんだ。今光竜連峰との境目で防壁造りをやってるのは二人とも知ってるだろうけど、そこに魔物達が襲撃して来てね。その事で二人に相談したい」
「うんわかった!私も手伝う!」
「早いな!とりあえず先に話だけでもさせてくれ」
俺の頼みなら無条件で引き受けてくれるレヴィアにリーベが苦笑していた。場所を城内の食堂に変えて、メイド達にお茶を用意してもらう。防壁造りや農作業で疲れた体に染み渡る芳醇な香りを楽しみながら、俺は話始めた。
「実は、防壁の近くに水路を造ろうと考えているんだ」
二人にこれまでの経緯を話す。魔物の襲撃や地下からの侵攻に対する対処方法、公爵の提案で二人の力を借りたい事などだ。俺の話が終わると二人は顔を見合わせる。そして不思議そうにこちらを見てくるのだ。…俺、自分で気がつかない内に何か変な事言ったんだろうか?
「兄様、それって…」
「エスト君。今の話しで気がついた事があるんだけど…わざわざ水路を防壁の後ろに造る必要があるのかしら?」
「え?どういう事?」
彼女達の言ってる意味が解らず必死で考えを巡らせるが、次第に頭が混乱してきた。地下から出てくる敵に対して、水攻めは有効な策じゃないのか?それとも水は駄目だとか?
「水より油とかの方が良い…のかな?燃やした方が効果的とか?」
「ううん、そこじゃなくて」
「どこから出てくるか解らない敵に水を流し込む準備をするより、あらかじめ防壁の前に深い堀を用意しておいて、そこに水を張ればいいんじゃないかしら?それこそ城の水堀みたいに」
「あ!」
なるほど!言われてみれば当然の発想だった。確かに彼女達の言う通りの対処法をとっておけば、地下からの攻撃を防ぐとともに防壁の防御力も飛躍的に向上する。水があれば防壁に取りつく事すら不可能になるじゃないか。なんでそんな当たり前の事を今まで思いつかなかったんだろう…俺を含むフォルザ達会議の参加メンバーは、少々おつむが足りなかったらしい。
「言われるまで気がつかなかった。二人とも頭いいなぁ」
「えへへ、褒められちゃった」
「きっと疲れが溜まってたのよ。エスト君は色々働き過ぎだもの」
慰めてくれるのは嬉しいが、俺は自分の間抜けぶりに顔が赤くなりそうだった。だが二人のおかげで防壁の欠点はかなり改善されることになる。これは素直に喜ぶべきだろう。
「じゃあ早速行きましょうか。私とレヴィアの力があれば、湖から水を移動させる事ぐらい簡単よ。それが無理でも他の方法があるしね」
どうやらリーベも協力してくれるようだ。海の支配者リヴァイアサンの親子が協力してくれるのだから、間違いなく上手くいく。俺は二人の手を取りしっかり握りしめると、フォルザ達の待つリオグランド王城に転移した。
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