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第251話 鳴動
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累計ユニークアクセスが200万に到達しました。ありがとうございます。書籍化に関して7月末ぐらいに何か動きを報告出来ると思います。
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「アルクがやられただと!?」
「ああ…勇者達を足止めするために一人で残った。もう生きてはいまい」
四天王の一人剣のブレイドがランスの話に目を剝いた。四天王の一角が崩れる。その知らせは魔族領を駆け回り、多くの魔族達を不安と驚愕に陥れる事となった。中にはトートの様に自らがのし上がる機会と考える者も少数居たが、彼等はそれを決して口に出す事はしない。アルクが倒されたとの一報を聞いて不機嫌になっている魔王の不興を買えば命に係わる危険があるからだ。
「あのアルクがやられるとは…勇者達はそれほど手強いのか?」
「強い。勇者以外にもアルクを上回る弓使いが居たからな。よく見れなかったが、他の面子も同レベルだろう。何より厄介なのは勇者エストだ。奴は恐るべき剣の使い手で、恐らくあのまま続ければ俺はやられていただろう。だが奴の本当の怖さは剣技や魔法などではなく、強いくせに勝つためには何でもやる形振りの構わなさにある。人と話している時でも平気で背後から攻撃してくるのだ。あれは勇者ではなく野盗か何かだと思った方が良い」
散々な言われようだが、直接戦った彼はエスト達の強さや戦い方などを身に染みて理解していた。お互い堂々と名乗りを上げて戦いの戦端を切るかと思えば突然の不意打ち、剣技のみで戦う戦士かと思えば盾での殴打や足蹴りや目つぶしなど使える物は何でも使う戦い方。ランスなどは戦いが始まれば彼の頭からは『卑怯』と言う単語がすっぽりと抜け落ちたような印象を受けた。
アルク敗れるの一報を聞いた魔王は「そうか…」と一言呟いたきり黙り込んでしまったらしい。だが魔族領にとってアルクが敗れた事は衝撃的ではあるがそれほど痛手でも無い。何故なら力を増幅する黒の指輪の奪取には成功しているのだ。これさえ手に入れば今まで受けてきたエストの妨害など気にする必要も無い。
神の力を宿す装備の力を弱めて邪神の復活を果たす。今まで魔族達が目的として動いてきた事だが、実のところ全ての封印を弱めなくてもそれに近い状態にまで持っていく事は出来る。そしてそれが唯一可能なのが黒の指輪だった。そこにあるだけであらゆる力を増幅させるこの指輪の力なら、魔王城の地下から漏れ出る邪神の力を増す事が出来る。そうすれば直接邪神は復活せずとも魔物達の活性化や魔族達の強化は可能なのだ。
なら最初から黒の指輪だけを狙えば良さそうなものだが、そう簡単に魔族達の思惑通り事が運んだりはしない。まず肝心の指輪がどこにあるのかを調べる必要があるのだが、魔族は他の種族と敵対している場合がほとんどなので話を聞いてもらうどころか、見つかれば高確率で戦闘になる。長い年月をかけていざ話をする段階に至っても指輪の在処など簡単に話すはずがないし、何より代々指輪を守る守り人達の存在があった。リザードマンの中でも特に腕の立つ連中の守りを突破するのは容易ではなく、それを排除するには内通者を作らなければならない。比較的身分の高い者達の中で金銭で問題を抱えている者を調べ上げて取引を持ち掛ける。それらの工作に長い時間をかけ、やっとグルーンの側近である二人のリザードマンの買収に成功したのだ。彼等は彼等で苦労しているのだった。
「なんにせよ、これで時間さえかければ我等の力は増し南方に進出する事が出来る。今はゆっくり休めランス」
「そうさせてもらおう。…次こそは俺の手で勇者を仕留めて見せる。アルクの仇を取らせてもらおう」
------
雪辱を誓うランスとブレイドが話している頃、魔族を率いる魔王はランスが回収して来た黒の指輪を手に魔王城の地下を目指していた。その背後には四天王の一人である精霊魔法使いであるフューリとシャヴォール、トートらの姿があった。
魔王城の地下には太古の戦いで勇者に封印された邪神が眠っている。眠り続ける邪神から漏れ出る瘴気は強烈で強大であり、階を一段降りる毎に冷や汗が噴き出てくる。そんな中唯一涼しい顔で歩みを進めるのは魔王のみ。その姿を目にした彼等は改めて自分達が仕える王に忠誠を誓うのだった。
魔王城の最下層…そこは何も無いただの広い空間が広がるだけだった。だが、そこには地上と比較にならない程瘴気が渦巻き、トートやシャヴォールなどは立っているだけで震えが止まらなくなってくる。そんな中魔王はスッと手をかざし土魔法を発動させると、自らの足元に底も見えないような深い穴を掘り、その中に指輪を投げ込んだ。放物線を描きながら闇の中に飲み込まれていく黒の指輪。その光景をただ茫然と見ていた彼等だったが、突如ドクンと何かが鳴動したのを肌で感じた。魔王はそんな彼等に構うことなく、今空けたばかりの穴を土魔法で塞いでしまう。
「魔王様、これで我等の力が増すと?」
「…そうだ。これで邪神の力は増し我等闇の眷属の力は増大する。その力をもってこの大陸中を我等の支配下に治める。時間はかかるが今は力を溜め込む時だ」
四天王の一人、フューリが恐る恐る質問すると、魔王はそれを面倒くさそうに振り返って答えた。魔王の言う通りこれで時間が経過するごとに邪神の力は増していき、それと同時に魔族や魔物の強さも増していく。それは魔族以外全ての種族にとって悪夢以外の何物でも無かった。
「目的はすんだ。戻るぞ」
魔王を先頭に再び今来た道を戻る魔族達。だがトートだけは歩みを遅らせ、一人黒の指輪が投げ入れられた穴倉の位置に目を向けていた。
「…場所は大体把握した。事が起きれば使わせてもらうとするか」
トートはニヤリと笑うと、魔王達が不自然に思わないように彼等の背中を追うのだった。
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「アルクがやられただと!?」
「ああ…勇者達を足止めするために一人で残った。もう生きてはいまい」
四天王の一人剣のブレイドがランスの話に目を剝いた。四天王の一角が崩れる。その知らせは魔族領を駆け回り、多くの魔族達を不安と驚愕に陥れる事となった。中にはトートの様に自らがのし上がる機会と考える者も少数居たが、彼等はそれを決して口に出す事はしない。アルクが倒されたとの一報を聞いて不機嫌になっている魔王の不興を買えば命に係わる危険があるからだ。
「あのアルクがやられるとは…勇者達はそれほど手強いのか?」
「強い。勇者以外にもアルクを上回る弓使いが居たからな。よく見れなかったが、他の面子も同レベルだろう。何より厄介なのは勇者エストだ。奴は恐るべき剣の使い手で、恐らくあのまま続ければ俺はやられていただろう。だが奴の本当の怖さは剣技や魔法などではなく、強いくせに勝つためには何でもやる形振りの構わなさにある。人と話している時でも平気で背後から攻撃してくるのだ。あれは勇者ではなく野盗か何かだと思った方が良い」
散々な言われようだが、直接戦った彼はエスト達の強さや戦い方などを身に染みて理解していた。お互い堂々と名乗りを上げて戦いの戦端を切るかと思えば突然の不意打ち、剣技のみで戦う戦士かと思えば盾での殴打や足蹴りや目つぶしなど使える物は何でも使う戦い方。ランスなどは戦いが始まれば彼の頭からは『卑怯』と言う単語がすっぽりと抜け落ちたような印象を受けた。
アルク敗れるの一報を聞いた魔王は「そうか…」と一言呟いたきり黙り込んでしまったらしい。だが魔族領にとってアルクが敗れた事は衝撃的ではあるがそれほど痛手でも無い。何故なら力を増幅する黒の指輪の奪取には成功しているのだ。これさえ手に入れば今まで受けてきたエストの妨害など気にする必要も無い。
神の力を宿す装備の力を弱めて邪神の復活を果たす。今まで魔族達が目的として動いてきた事だが、実のところ全ての封印を弱めなくてもそれに近い状態にまで持っていく事は出来る。そしてそれが唯一可能なのが黒の指輪だった。そこにあるだけであらゆる力を増幅させるこの指輪の力なら、魔王城の地下から漏れ出る邪神の力を増す事が出来る。そうすれば直接邪神は復活せずとも魔物達の活性化や魔族達の強化は可能なのだ。
なら最初から黒の指輪だけを狙えば良さそうなものだが、そう簡単に魔族達の思惑通り事が運んだりはしない。まず肝心の指輪がどこにあるのかを調べる必要があるのだが、魔族は他の種族と敵対している場合がほとんどなので話を聞いてもらうどころか、見つかれば高確率で戦闘になる。長い年月をかけていざ話をする段階に至っても指輪の在処など簡単に話すはずがないし、何より代々指輪を守る守り人達の存在があった。リザードマンの中でも特に腕の立つ連中の守りを突破するのは容易ではなく、それを排除するには内通者を作らなければならない。比較的身分の高い者達の中で金銭で問題を抱えている者を調べ上げて取引を持ち掛ける。それらの工作に長い時間をかけ、やっとグルーンの側近である二人のリザードマンの買収に成功したのだ。彼等は彼等で苦労しているのだった。
「なんにせよ、これで時間さえかければ我等の力は増し南方に進出する事が出来る。今はゆっくり休めランス」
「そうさせてもらおう。…次こそは俺の手で勇者を仕留めて見せる。アルクの仇を取らせてもらおう」
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雪辱を誓うランスとブレイドが話している頃、魔族を率いる魔王はランスが回収して来た黒の指輪を手に魔王城の地下を目指していた。その背後には四天王の一人である精霊魔法使いであるフューリとシャヴォール、トートらの姿があった。
魔王城の地下には太古の戦いで勇者に封印された邪神が眠っている。眠り続ける邪神から漏れ出る瘴気は強烈で強大であり、階を一段降りる毎に冷や汗が噴き出てくる。そんな中唯一涼しい顔で歩みを進めるのは魔王のみ。その姿を目にした彼等は改めて自分達が仕える王に忠誠を誓うのだった。
魔王城の最下層…そこは何も無いただの広い空間が広がるだけだった。だが、そこには地上と比較にならない程瘴気が渦巻き、トートやシャヴォールなどは立っているだけで震えが止まらなくなってくる。そんな中魔王はスッと手をかざし土魔法を発動させると、自らの足元に底も見えないような深い穴を掘り、その中に指輪を投げ込んだ。放物線を描きながら闇の中に飲み込まれていく黒の指輪。その光景をただ茫然と見ていた彼等だったが、突如ドクンと何かが鳴動したのを肌で感じた。魔王はそんな彼等に構うことなく、今空けたばかりの穴を土魔法で塞いでしまう。
「魔王様、これで我等の力が増すと?」
「…そうだ。これで邪神の力は増し我等闇の眷属の力は増大する。その力をもってこの大陸中を我等の支配下に治める。時間はかかるが今は力を溜め込む時だ」
四天王の一人、フューリが恐る恐る質問すると、魔王はそれを面倒くさそうに振り返って答えた。魔王の言う通りこれで時間が経過するごとに邪神の力は増していき、それと同時に魔族や魔物の強さも増していく。それは魔族以外全ての種族にとって悪夢以外の何物でも無かった。
「目的はすんだ。戻るぞ」
魔王を先頭に再び今来た道を戻る魔族達。だがトートだけは歩みを遅らせ、一人黒の指輪が投げ入れられた穴倉の位置に目を向けていた。
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トートはニヤリと笑うと、魔王達が不自然に思わないように彼等の背中を追うのだった。
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